【2023年度最新版】世界の再生可能エネルギーの発電割合!
- 2024年11月08日
- 発電・エネルギー
世界の再生可能エネルギーによる発電割合について、わかりやすくご紹介します。再生可能エネルギーは、その環境負荷の低さから導入の試みが進んでいます。業種や官民を問わずさまざまな施策がとられ、世界全体でも特に重要なトピックと言えるでしょう。そんな注目を集めている再生可能エネルギーですが、実際にはどの程度活用されているのでしょうか。この記事では世界全体での再生可能エネルギーによる発電割合や、そもそも再生可能エネルギーにはどのようなものがあり、なぜ注目が集まっているのか、今後の課題や展望についても詳しくご説明します。
目次
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再生可能エネルギーとは
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各再生可能エネルギーによる発電割合
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再生可能エネルギー活用の課題・展望
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まとめ:再生可能エネルギーを将来のために活用しよう!
1. 再生可能エネルギーとは
地球温暖化対策として注目が集まっている「再生可能エネルギー」とは何か、どういったものが含まれるのかといった基本的なことや、再生可能エネルギーが広まった背景を解説します。
(1)再生可能エネルギーとは
再生可能エネルギーとは、発電時に温室効果ガスを排出せず、永続的に利用することができるエネルギーのことです。主な再生可能エネルギーとしては、太陽光や風力、地熱、水力、バイオマス(生物資源)などが挙げられ、自然界に存在する熱や生物が由来であるエネルギーが含まれます。
(2)再生可能エネルギーの種類
再生可能エネルギーには様々なものが含まれますが、中でも太陽光や風力、バイオマス、水力、地熱による発電が広く普及しています。それぞれ以下のような特徴があります。
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太陽光:太陽の光エネルギーを、光が当たると電気が発生する太陽電池によって、直接電気に変換する発電方法です。太陽光は概ねどのような地域でも利用でき、また屋根など未利用のスペースに設置できるため、多くの地域で導入されています。
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風力:風でタービンを回し、風のエネルギーを電気エネルギーに変換することによって発電します。エネルギーの変換効率が良い反面、安定した風量を必要とするため、設置は風を受けやすい地域に限られます。
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バイオマス:排泄物や生ごみなど、生物由来の資源を利用して発電します。生物は二酸化炭素を吸収しながら成長するため、カーボンニュートラルに貢献することに加え、廃棄物になってしまうものを利活用するために、資源の自然循環を促進することができます。
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水力:河川にダムを設置したり、農業用水や上下水道を利用したりと、水流でタービンを回すことで発電します。水流を利用するため自然条件によらず安定しているうえに、発電時にCO2を排出しないことが長所であり、大規模なダムのほかに、適地が残る中小水力発電の開発が期待されています。
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地熱:地中の熱エネルギーを利用して発電します。地中深くまで穴を掘るため、地上の環境に左右されず発電が行えるほか、発電によって発生した高温の蒸気や熱水を、農業用ハウスや魚の養殖、地域の暖房などに再利用し、エネルギーを無駄なく活用することが期待されています。
出典:経済産業省『なっとく!再生可能エネルギー(太陽光発電)』
出典:経済産業省『なっとく!再生可能エネルギー(風力発電)』
出典:経済産業省『なっとく!再生可能エネルギー(バイオマス)』
出典:経済産業省『なっとく!再生可能エネルギー(水力発電)』
出典:経済産業省『なっとく!再生可能エネルギー(地熱発電)』
(3)再生可能エネルギーが広まった背景
世界で再生可能エネルギーが注目されるようになった背景には、温室効果ガス排出削減のための国際的な枠組みとして、パリ協定が採択されたことがあります。地球温暖化が深刻化する中、これまでは冷暖房温度の設定の見直しなど、省エネ行動による対策のみが行われてきましたが、これは限界があるとして、さらなる排出削減および、エネルギーそのものの脱炭素化が求められるようになりました。
そこで、自然由来であり枯渇することがないうえに、発電時に温室効果ガスを排出しない新しいエネルギーとして、再生可能エネルギーの導入が促進されるようになりました。
出典:国立環境研究所『なぜ今、再生可能エネルギーが注目されているのですか? 』(2021年11月26日)
2. 各再生可能エネルギーによる発電割合
2023年に行われた最新の調査によると、2022年度の全世界での総エネルギー発電量は29165TWh(テラワット時)であり、そのうち再生可能エネルギーの発電量は、約3割を占める8538TWhでした。 この章では世界の再生可能エネルギーの発電割合について、発電方法ごとに解説します。
日本の再生可能エネルギーの割合について詳しくはこちら
【2023年度版】日本の再生可能エネルギーの割合と今後の見通し
(1)太陽光発電
世界の発電電力量のうち、太陽光発電によるものは1323TWhであり、全体の4.5%を占めています。これは未だ多くを占める石炭の10317TWhや、天然ガスの6631TWhと比べると低くはありますが、2021年度の太陽光発電による発電量と比較すると約300TWh伸びており、着実に成長を遂げていると言えます。
日本国内の発電電力量では、太陽光発電が占める割合は9.9%となっています。既存の電力会社以外も売電が可能になったことにより、新規事業として比較的導入しやすい太陽光発電設備を使い始めた事業者が増えたことが一因とされています。
中でも九州は太陽光による発電割合が高く、2022年末時点で1144万kWの発電設備が電力系統に接続されています。この背景には、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取る「FIT制度」が関与しています。
出典:Energy Institute『Statistical Review of World Energy』p.49,55(2023年6月27日)
出典:ISEP『2022年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)』(2023年4月14日)
(2)風力発電
世界の発電電力量のうち、風力発電によるものは2105TWhであり、全体の7.2%を占めています。再生可能エネルギーの利用と原子力発電の縮小が進むヨーロッパを中心に導入が進んでいますが、地球温暖化の進展を食い止めるため、2050年までのCO2排出量実質ゼロを達成するには、2030年までに7400TWhに発電量を増やさねばならず、急速な開発が求められます。
日本国内の発電電力量では、風力発電が占める割合は0.9%と少なくなっています。日本でも風を受けることはできますが、陸上には大規模な設備を設置する用地が少ないことが要因の一つであるため、海の中に設置する洋上風力発電の導入が進んでいます。
出典:Energy Institute『Statistical Review of World Energy』p.49,55(2023年6月27日)
出典:ISEP『2022年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)』(2023年4月14日)
出典:IEA『Wind』
出典:経済産業省『なっとく!再生可能エネルギー(風力発電)』
(3)水力発電
世界の発電電力量のうち、水力発電によるものは4334TWhであり、14.9%となっています。発電量では、多くの川と国土を持つ中国やブラジル、カナダが特に多くなっています。
日本国内の発電電力量では、水力発電が占める割合は7.1%となっています。水力発電は明治時代から行われてきたために、大規模なダムなどを新設する用地がなく、既存の設備発電効率や出力を上げなければいけないほかに、河川の上流や山間部といった建設の難しい土地の開発が必要であり、新規の開発は停滞しています。
出典:Energy Institute『Statistical Review of World Energy』p.49,55(2023年6月27日)
出典:ISEP『2022年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)』(2023年4月14日)
出典:資源エネルギー庁『水力発電は安定供給性にすぐれた再生可能エネルギー』(2018年1月30日)
(4)バイオマス・地熱発電
世界の発電電力量のうち、バイオマス・地熱発電によるものは2領域合わせて777TWhであり、2.7%となっています。バイオマスによる発電は、7割ほどが木質ペレットやサトウキビの搾りかすを燃焼することによって行われているため、広大な森林や農地を保有している中国やブラジルの発電量が多くなっています。一方、地熱発電は火山活動が活発な地域でのみ行えるため、国際的にはあまり導入されていません。
日本国内の発電電力量では、バイオマス発電が占める割合は4.6%、地熱発電が占める割合は0.3%となっています。日本は豊富な地熱資源量を持ってはいますが、地中の資源は目に見えないためリスクが高いこと、温泉資源との兼ね合いが懸念されることなどから、地熱発電の十分な開発が進んでいません。バイオマス発電は電力需要の高まりによって、前年度より20%ほどの増加をみせています。
出典:Energy Institute『Statistical Review of World Energy』p.49,55(2023年6月27日)
出典:ISEP『2022年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)』(2023年4月14日)
出典:REN21『RENEWABLES 2023 GLOBAL STATUS REPORT』p.40
出典:Ember『Global Electricity Review 2023』(2023年4月12日)
3. 再生可能エネルギー普及の課題・展望
(1)安定性の問題
太陽光発電や風力発電では、その日の天気や風量といった天候に左右され、計画的に発電をすることができません。そのため、電力の需給が崩れて停電が起きる可能性があり、再生可能エネルギー以外の安定して発電できる電源を作っておいたり、必要以上に発電した場合には貯めておいたりして、不足分を補う手立てをとる必要があります。
ここで重要になるのが、必要な時に燃料の投入量を調節して、出力をコントロールすることのできる火力発電の維持と、大規模な発電所への蓄電池の設置です。特に火力発電は、一見温室効果ガスの排出を続けてしまうように思えますが、全体として電気の供給及び価格を安定化させることで、さらなる再生可能エネルギーの導入拡大に繋がると考えられます。
出典:資源エネルギー庁『再生可能エネルギー拡大に欠かせないのは「火力発電」!?』(2017年11月16日)
出典:資源エネルギー庁『知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~「蓄電池」は次世代エネルギーシステムの鍵』(2017年10月17日)
(2)設置場所の問題
自然の力を利用する、再生可能エネルギーによる発電設備では、景観や生態系に影響を与え、環境に大きく負荷をかけてしまうことがあります。例えば太陽光発電では森林を切り拓いて設置する事例があり、動植物の生息環境を破壊してしまうほか、風力発電では国立公園や鳥獣保護区と重なって建設されるために、風の強い山の尾根筋に設置した風車が、鳥類の飛翔ルートを乱してしまう懸念がされています。また、風力発電や地熱発電では適地が限られるために、開発地域に偏りが生じてしまいます。
国として統一したマスタープランを作成し、環境アセスメントを厳格に行って、環境価値の高い地域を保護するとともに、既存の人工地などを最大限に活用して新たな自然の開発を避けることが、これからの再生可能エネルギーの導入拡大には求められるでしょう。
出典:WWFジャパン『日本各地で進む再生可能エネルギー開発の現状と課題』(2022年6月9日)
4. まとめ:再生可能エネルギーを将来のために活用しよう!
再生可能エネルギーとは、自然由来の枯渇することなく永続的な利用が可能なエネルギーのことであり、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなどが含まれます。これらのエネルギーは地球温暖化の深刻化により、発電時に温室効果ガスを排出しないことから注目が集まりましたが、発電量の割合では全体の3割程度にとどまっており、さらなる導入拡大が求められます。
しかし安定性や設置場所の問題は依然として残っており、多角的な視点からの開発が必要でもあります。今後の再生可能エネルギー導入拡大と、それを後押しする技術の発展に着目し、最先端を行く脱炭素経営を心がけましょう。