J-クレジットとは?基礎知識や制度の仕組みを解説

J-クレジット制度とは、自社のCO2排出削減量をクレジットとして他者と取引できる制度であり、企業の脱炭素化に向けて大きな役割を果たすことができます。また、企業によってはCO2排出量削減の取り組みが難しいこともありますが、J-クレジット制度の活用でCO2排出量削減に貢献することができます。

ここでは、J-クレジット制度の基礎知識や制度の仕組み、活用で得られるメリットなどをご紹介します。CO2排出削減量に余裕がある企業は新しいビジネスチャンスが期待でき、CO2排出量削減に課題がある企業にとって課題解決に有効な手立てとなるはずです。

目次

  1. J-クレジットとは?

  2. J-クレジット制度の仕組み

  3. J-クレジット制度活用で得られるメリット

  4. まとめ:J-クレジット制度を有効活用して脱炭素に貢献できる企業を目指そう!

1. J-クレジットとは?

J-クレジットは、企業のカーボンニュートラルの取り組みに有効な手立てとなる制度です。ここでは、J-クレジットがどのような制度なのかをご紹介します。

J-クレジットとは

J-クレジットとは、カーボンクレジット制度のひとつで、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの利用、森林管理などによる温室効果ガスの排出削減・吸収量をクレジットとして認証する制度のことです。クレジットの認証は、温室効果ガス排出の削減対策を講じない場合に予想される温室効果ガス排出量(=ベースライン)と、実際に対策を講じた際の温室効果ガス排出削減量との差の部分がクレジットとして認証される仕組みです。

また、認証されたクレジットは、他者が購入し削減することができなかった排出量を埋め合わせすることができます。このようにJ-クレジット制度は、クレジットを作り出す者とそれを購入する者とで成り立ち、省エネ・低炭素投資などを促進するとともに、クレジットの活用により国内の資金循環を生み出すことで、経済と環境の好循環を促進します。

J-クレジット制度とは

出典:経済産業省『地球温暖化対策計画における Jークレジット制度』p,2.(2021/5/12)

出典:J-クレジット制度事務局『J-クレジット制度について』p,3.p,5.(2023/07/31)

出典:経済産業省『カーボン・クレジット・レポート』p,13.(2022/06/28)

J-クレジット制度の活用状況

J-クレジット制度のプロジェクト登録件数は、2022年度は994件となっており、2013年度と比べると4倍近い伸び率となっています。この数値からも分かるように、多くの企業や団体がJ-クレジット制度を積極的に活用するようになっています。また、クレジット認証を受けたプロジェクトでのCO2排出削減量(2022年度)は、累積で818万トン(CO2換算)となっています。

プロジェクト登録件数の推移

出典:環境省『J-クレジット制度の最新状況及び『 気候変動 × デジタル 』 プロジェクトの検討状況』p,6.p,7.(2023/02/09)

J-クレジット制度が企業に必要とされる背景

世界中で多くの企業がカーボンニュートラルに取り組んでいる中、日本の企業でも脱炭素化が求められています。カーボンニュートラル実現に向けてCO2排出量を削減するためには、企業は自社のCO2排出量を知り削減する努力が必要です。

しかし、企業によってはCO2削減の取り組みに限界があるため、どうしても削減できない量に関しては他の企業などが創出した削減量をJ-クレジットで購入し、埋め合わせ(=カーボン・オフセット)をすることも重要となります。このCO2排出削減量の需要と供給によって、経済の循環が良くなる効果も期待されています。

出典:経済産業省『成長に資するカーボンプライシングについて③ ~炭素税、排出量取引、クレジット取引など~』p,9.(2021/04/21)

出典:J-クレジット制度事務局『カーボン・オフセット  ガイドライン  Ver.2.0』p,8.(2021/03/26)

2. J-クレジット制度の仕組み

J-クレジット制度は、クレジットを作り出す側と購入する側で成り立っています。ここでは、J-クレジット制度の仕組みについてご紹介します。

(1)クレジットを創る

クレジットを創出する(売る)場合、制度の登録方法に従ってクレジットを発行します。クレジットを発行するためには、まず、自社でCO2排出削減・吸収事業を実施、または計画していなければなりません。そして、クレジット計画プロジェクト登録後は、実施計画に基づいてCO2排出削減・吸収量を数値化・報告し、認証されればクレジット発行となります。さらに、実施計画には、省エネルギー設備の導入や太陽光発電などの再生可能エネルギーの利用、バイオ炭の農地施用、植林活動などさまざまな方法があります。

クレジット創出の流れ

出典:J-クレジット制度事務局『J-クレジット制度パンフレット』p,2.(2023/03/23)

出典:J-クレジット制度事務局『J-クレジット制度について』p,14.p,15.p,16.p,17.(2023/07/31)

(2)クレジットを売る/買う

創出者はクレジットが発行されると、クレジットを売り出すことができるようになります。また、売り出されたクレジットの購入が可能となり、購入希望者はクレジットを選んで購入することができます。

J-クレジットの取引には、売りたい側と買いたい側がクレジット売買価格と売買量を決める「相対取引」と、政府保有のクレジットを入札方式で取引する「入札取引」があります。J-クレジットのプロジェクトには期限が設けられているので、購入側は定期的に情報を取得することも大切です。

出典:J-クレジット制度事務局『J-クレジット制度パンフレット』p,3.(2023/03/23)

(3)クレジットを使う

J-クレジットで購入したCO2排出削減量は、自社のCO2排出削減量としてさまざまな取り組みで活用することができます。例えば、投資家向けに自社の環境情報提供(CDP)や、パリ協定に基づいたCO2排出削減目標量(SBT)などで報告することが可能です。また、地球温暖化対策推進の法律(温対法)でのCO2排出量報告の調整や、カーボン・オフセットとして自社の環境貢献度をアピールする手段にも活用できます。

出典:J-クレジット制度事務局『J-クレジット制度パンフレット』p,4.(2023/03/23)

3. J-クレジット制度活用で得られるメリット

企業のカーボンニュートラルが求められる中、J-クレジット制度を活用する企業・団体が増えています。ここでは、J-クレジット制度活用のメリットをご紹介します。

J-クレジット創出者が得られるメリット

J-クレジット創出者は、カーボンニュートラルに向けたさまざまなメリットを得ることができます。まず、CO2排出量削減を行うことで環境保全に貢献することができます。環境保全の取り組みは、自社が環境のことを考えていることを消費者や投資家へアピールすることにもつながります。

また、省エネ設備や再生可能エネルギーを利用することで、自社のランニングコストを低減することができます。さらに、クレジットの売却によって収益を生み出すことができます。このようにJ-クレジットには、環境保全に取り組みながら利益を得るという好循環が生まれるメリットがあります。

出典:J-クレジット制度事務局『J-クレジット制度について』p,4.(2023/07/31)

J-クレジット活用者が得られるメリット

J-クレジット制度では創出者だけでなく、活用者(購入者)にもメリットが期待できます。J-クレジット制度を通して購入したCO2排出削減量は、自社のCO2排出削減量として扱うことができるので、さまざまな環境対策事業で報告することが可能です。

設備の導入コストがかかるなどの理由で、思うようにCO2排出削減目標量が出せない企業などにとっては、購入という形で手軽にCO2排出量削減に貢献することができます。そして、各種報告などを通じて、自社の環境問題への意識の高さをアピールできるメリットもあります。

出典:J-クレジット制度事務局『J-クレジット制度について』p,4.(2023/07/31)

4.まとめ:J-クレジット制度を有効活用して脱炭素に貢献できる企業を目指そう!

J-クレジット制度は、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの利用、森林管理などによるCO2排出削減・吸収量をクレジットとして認証する制度のことです。企業の脱炭素経営を促す効果があり、クレジット創出者・活用者ともにメリットがあります。

CO2排出削減量を売り買いすることで、環境保全と経済の好循環を生み出すJ-クレジット制度を有効活用して、自社の脱炭素への貢献をアピールしましょう。

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