農業分野におけるバイオ炭の有効活用からカーボンクレジットへの活用まで徹底解説

農業でのバイオ炭の活用は、CO2排出量削減などに大きな役割を果たすことから、注目されています。バイオ炭の原材料は、従来の農業で利用されているものも多く、それらを炭にすることで環境対策に大きく貢献できるようになります。

ここでは、バイオ炭の基礎知識やバイオ炭が農業で期待される理由、バイオ炭導入で得られるメリットなどをご紹介します。バイオ炭の知識を深めて、ぜひ農業でバイオ炭を導入を検討するきっかけとしてみて下さい。

目次

  1. バイオ炭とは何か

  2. 農業分野でバイオ灰が期待される理由

  3. バイオ炭を取り巻く状況

  4. バイオ炭の利用で得られるメリットとは

  5. バイオ炭に活用できるJ-クレジット制度

  6. まとめ:バイオ炭を有効活用してCO2排出量削減に貢献し社会貢献を目指そう!

1. バイオ炭とは何か

自然由来の原材料を利用したバイオ炭には、しっかりとした定義があります。ここでは、バイオ炭の定義や、今後、バイオ炭の原材料として期待される資源についてご紹介します。

バイオ炭とは

バイオ炭の定義は「燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物」とされ、その種類には「土壌改良資材由来のもの」「木炭由来のもの」「肥料由来のもの」があり、それら全てをまとめてバイオ炭と呼びます。

バイオ炭の大きな特徴として、CO2を土壌に閉じ込める「炭素貯留効果」が認められています。ただし、バイオ炭はアルカリ性の性質を持っているため、土壌の性質に合わせて上手に取り入れる必要があり、過剰に利用した場合、農作物の育ちが悪くなるなどの影響があるので注意が必要です。

バイオ炭の種類

出典:農林水産省『バイオ炭をめぐる事情』p,3.(2023/9/29)

出典:経済産業省『第 35 回 ・バイオ炭とは ~農業分野での脱炭素~』p,1.(2021/10/21)

出典:農林水産省『バイオ炭の施用量上限の目安について』( 2020/09/29)

バイオ炭に期待される原材料

バイオ炭の原材料となるものに、地域未利用バイオマスとしての「スギ・ヒノキの間伐材」、「放棄竹林」があります。未利用バイオマスとは、稲わらやもみ殻、剪定枝、森林の間伐材などのことで、特にスギやヒノキの間伐材を利用したバイオ炭は農作物の収穫量の増加の効果に期待があります。

また、時代の変化と共に利用が減少した竹は、竹炭にすることで環境浄化作用があることから放棄竹林がバイオ炭の原材料として期待されています。

米の生産の副産物として多量に得ることができるもみ殻も、間伐材や放棄竹林のように運ぶ必要がないため、コスト面においても有効なバイオ炭の原材料とされています。これらの地域未利用バイオマスを原材料としたバイオ炭の積極的な有効活用に期待がかかります。

出典:農林水産省土『木分野の木材利用拡大 技術の拡大』p,16(2020/3/13)

出典:農林水産省『自然の恵みを活かす!再生可能エネルギーを知る』(2022/03/27)

2. 農業分野でバイオ炭が期待される理由

バイオ炭は、その特徴からCO2排出量削減に大きな効果があります。しかし、バイオ炭が期待される理由は他にもあります。ここでは、農業分野でバイオ炭が期待される理由をご紹介します。

地球温暖化対策に貢献などの付加価値がある

農業でバイオ炭を使うことは、生産者だけでなく、その野菜を購入した消費者もCO2排出量削減に貢献することができます。生産者は、バイオ炭を活用した畑を作ることでCO2排出量を削減でき環境を守ることに貢献、環境のことを考えて育てた農作物は、消費者へのアピールにつながります。そして、消費者は環境対策を意識した野菜を購入することで、間接的にCO2排出量削減に貢献することができます。

出典:農林水産省『バイオ炭をめぐる事情』p,6.(2023/9/29)

CO2排出量のクレジット化による販売収益がある

バイオ炭は、炭素貯留効果が認められていることからCO2排出量を削減する効果があります。この削減したCO2排出量はクレジットとして、第三者のCO2排出削減量として売ることができます(=カーボンオフセット)。バイオ炭を活用している生産者は、自身でCO2排出量削減に貢献するだけでなく、自身の農地で創出したCO2排出量で利益を得ることができます。

出典:農林水産省『バイオ炭をめぐる事情』p,6.p,7.(2023/9/29)

3. バイオ炭を取り巻く状況

CO2排出量削減に期待がかかる農業でのバイオ炭の活用ですが、実際の活用状況はどうなのでしょうか。ここでは、農業でのバイオ炭の活用状況や活用する際の条件などをご紹介します。

バイオ炭利用の現状

2018年度のデータでは、バイオ炭の利用量は約2500トンとなっており、日本の農地面積全体のわずか0.006%程度であることから、まだまだバイオ炭の普及率が低いことが分かります。

CO2貯留量で見てみると、5000トン(CO2換算)が土壌に溜められたことになりますが、仮に、バイオ炭の普及率が増えて農地面積全体の10%にバイオ炭が活用されると、CO2貯留量は900万トン(CO2換算)となります。これは、2018年度の5000トン(CO2換算)の1800倍の貯留量であり、とても大きな効果が得られることになります。

出典:経済産業省『第 35 回 ・バイオ炭とは ~農業分野での脱炭素~』p,2.(2021/10/21)

バイオ炭の農地適用条件と施用量上限の目安

バイオ炭を農地で活用するに当たって、2020年9月に策定された「バイオ炭の農地施用」の方法論のもと、5つの適用条件があります。

具体的には、「1. 農地または採草放牧地の鉱質の土壌に施用」「2. 燃焼しない水準に管理された酸素濃度のもと、350℃超の温度で焼成」「3. 原料に木材が含まれる場合は国産とする」「4. 原料は利用用途がないものに限る」「⑤原料に塗料、接着剤などを含まない」ことが条件として挙げられます。

また、バイオ炭を活用する場合は施用量に上限が設けられており、土壌の種類によっても施用量が変わります。一例として、pH6.5以下の一般的な作物に対しては、黒ぼく土の場合227トン/ha、未熟土の場合22.7トン/ha、その他の土壌113トン/haとなっています。また、pH6以下の作物では未熟土に限り施用しないなどの条件があるので、農業でバイオ炭を活用する際は、しっかりとした理解が必要です。

出典:農林水産省『バイオ炭をめぐる事情』p,7.(2023/9/29)

出典:農林水産省『バイオ炭の施用量上限の目安について』( 2020/09/29)

4. バイオ炭の活用で得られるメリットとは

農業でバイオ炭を活用することで、「土壌改良」と「CO2吸収」のメリットが得られます。ここでは、その具体的な特徴をご紹介します。

土壌改良のメリット

バイオ炭の活用の大きなメリットとして、農地の土壌改良の効果が期待できることが挙げられます。バイオ炭はpH8〜10程度のアルカリ性なので、酸性の土壌の状態を農作物が育てやすい土壌に整えることができます。

また、土壌の保水性や通水性、通気性を向上させる効果も併せて、作物の収穫量が増加する期待があります。ただし、施用する土壌の状態に合わせて適切な施用が必要であり、過剰に施用してしまうと土壌の状態に悪い影響を及ぼし、農作物の収穫にも影響が出てしまいます。必ず、適切な施用量を守ることが大切です。

出典:経済産業省『第 35 回 ・バイオ炭とは ~農業分野での脱炭素~』p,1.(2021/10/21)

出典:農林水産省『バイオ炭をめぐる事情』p,3.(2023/9/29)

出典:農林水産省『バイオ炭の施用量上限の目安について』( 2020/09/29)

CO2吸収のメリット

農業でバイオ炭を取り入れる目的のひとつに、CO2吸収の効果があります。本来、植物に取り込まれたCO2は、土壌に取り込まれると微生物の働きにより分解され、すぐに大気中に放出されてしまいます。

しかし、炭にすることで分解されにくくなり、CO2を土壌に留めておくことができるので、CO2吸収と削減の効果が期待できます。バイオ炭を施用した畑で作られた農作物を消費者が購入することで、結果的に生産者から販売、購入までの一連の流れでCO2削減効果が生まれます。

出典:農林水産省『バイオ炭をめぐる事情』p,3.p,6.(2023/9/29)

出典:経済産業省『第 35 回 ・バイオ炭とは ~農業分野での脱炭素~』p,1.(2021/10/21)

5. バイオ炭に活用できるJ-クレジット制度

J-クレジット制度とは

J-クレジット制度とは、再生可能エネルギーの利用や省エネ設備導入などによって創出したCO2排出削減量や、森林管理などで創出したCO2吸収量をクレジットとして国が認める制度です。企業や自治体の脱炭素の取り組みを促し、なおかつクレジット化することで資金を循環させることを目的としています。

バイオ炭で吸収したCO2吸収量もクレジット化が認められているので、農業を担う生産者はCO2排出量削減の取り組みでバイオ炭を活用し、そこで創出したCO2吸収量をクレジット化することで収益を得ることができ、バイオ炭のコスト削減につながります。

出典:農林水産省『バイオ炭をめぐる事情』p,7.(2023/9/29)

出典:J-クレジット制度事務局『J-クレジット制度について』p,3.(2023/11/29)

バイオ炭を活用したJ-クレジット制度での貢献

生産者がJ-クレジット制度でバイオ炭を導入する目的は、クレジット化による収入が大きな目的と考えますが、それ以外にも、未利用バイオマスの活用による地域環境保全の促進や生産者が利用する畑の土壌改良なども併せて考えることが必要です。その上で、未利用バイオマスの調達や廃棄処理などのバイオ炭をつくり上げるための調達コストの削減につなげていくことが重要となります。

バイオ炭施用のコストとメリット

出典:農林水産省『バイオ炭をめぐる事情』p,8.p,9.(2023/9/29)

6. まとめ:バイオ炭を有効活用してCO2排出量削減に貢献し社会貢献を目指そう!

農業におけるバイオ炭導入は、環境を通じて企業のイメージアップと収益向上につながります。バイオ炭のCO2吸収の効果によって自社から排出するCO2排出量削減は、企業が環境に貢献しているというイメージに大きくつながります。

環境に配慮した野菜を消費者が購入することで生産者から消費者までCO2削減の取り組みにつながるので、自社の環境への貢献をアピールできます。

また、自社で創出したCO2吸収量はクレジット化して売ることで、収益を増やすことができます。バイオ炭には、脱炭素の取り組みの他にも、土壌改良の効果があり農作物の収穫量を増やすことも期待できます。バイオ炭を有効利用して環境貢献と同時に自社の収益向上を目指しましょう!

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