早生樹とは?基礎知識や有効活用の方法や効果を解説

今後の林業の救世主とも成りえる「早生樹」とは何か、詳しくご説明します。林業は今、樹木の枯渇や価格高騰により低迷の危機を迎えており、未来を盛り上げるためにも早急な対応が必要とされています。

そこで、活躍が期待されているのが早生樹です。早生樹の導入では、国産広葉樹の生産を増やすとともに、森林の維持や造成にかかるコストを削減することができると考えられています。ここでは、早生樹の特徴や注目されている背景、早生樹の活用で得られるメリット、早生樹を実際に有効活用している企業の事例などをご紹介します。

目次

  1. 早生樹とは

  2. 早生樹の活用で得られる効果とは

  3. 早生樹の有効活用における取り組み事例

  4. まとめ:早生樹の有効活用を進め資源確保を確立しよう!

1. 早生樹とは

早生樹には、従来資材として利用されてきた樹木とは大きな違いがあります。ここでは、早生樹の特徴や利用の必要性、国内の取り組み状況などをご紹介します。

早生樹とは

早生樹とは、文字通り「早く」「成長する」樹木のことです。早生樹には主に、センダン、コウヨウザン、チャンモドキなどの種類があります。スギやヒノキでは、木材として伐採することができるようになるまでに40〜50年かかるのに対して、早生樹は10〜25年と、短期間で伐採し木材として利用できるという利点があります。

また、成長が早いことによって、植樹・伐採・利用のサイクルも早く回ることになるので、整備がしやすい環境となり、造林にかかるコストを削減することができるとも考えられています。

出典:林野庁『近畿中国森林管理局における早生樹造林の取組』(2023/07/05)

出典:九州森林管理局『森林の育て方、木材生産』

出典:農林水産省『2ɇ 低コスト造林に向けた取組 - 1 早生樹とは』p,1.(2020/08/24)

出典:福岡県『カーボンニュートラルなふくおかへ』(2022/06/01)

早生樹が期待される背景

近年では、国産木材へのニーズが高まっている一方で、天然林から得られる木材資源の不足や、従来の樹種は成長に時間を要する点などから、材価の高い国産広葉樹の確保が難しくなっています。また、海外の輸入木材においても、広葉樹の枯渇問題や「クリーンウッド法」による違法伐採の取り締まりおよび木材の利用保護などにより利用が難しくなっています。

さらに、木材を生産する上で不可欠な造林では、植栽や下刈りといった初期費用が多くかかるにもかかわらず、費用の回収ができる伐採までに従来では約50年と、かなりの時間がかかることも問題とされています。

このような資源不足の解消や、森林の育成にかかる管理コスト削減に対する解決策として注目されているのが早生樹です。早生樹は短期間で生育し、低コストで管理することができるため、生育期間が長い樹種の生産において資金源となる効果にも期待がかかっています。

出典:林野庁『近畿中国森林管理局における早生樹造林の取組』(2023/07/05)

出典:林野庁『早生樹造林のための技術開発について』p,2.(2017/02/02)

出典:農林水産省『早生樹利用による森林整備手法ガイドライン(令和3年度改訂版)』p,3.(2022/03/03)

出典:林野庁『クリーンウッド法の概要』

日本国内の早生樹に関する取り組み状況

国内における早生樹の取り組みは、九州地方や中国地方など、暖かい地域で行われているのが特徴ですが、2018年度のデータによると「既に取り組みを始めている」が10県とまだまだ少ない状況です。

しかし、1府20県で「検討中」としていることから、早生樹導入拡大への期待が感じられます。既存の取り組みでは主に、合板にして建築材や船舶材として用いるコウヨウザンが導入されていますが、地域によってはケヤキやキリの代替えとして家具に用いるゼンダンや、バイオマス燃料になるチャンチンモドキなど、数種類を一挙に導入しているものもあります。

出典:農林水産省『地方の取組の状況と国の支援策について』p,2.(2019/03/29)

出典:農林水産省『2ɇ 低コスト造林に向けた取組 - 1 早生樹とは』p,1.(2020/08/24)

2. 早生樹の活用で得られる効果とは

早生樹に期待が集まる中、実際に活用することでどのような効果が生まれるのでしょうか。ここでは、早生樹を活用することで得られる効果をご紹介します。

林業が直面している課題

林業が直面する大きな課題として、木材の価格の高騰が挙げられます。価格が高騰した理由としては、国内での木材のニーズが高まる中、原木となる樹木の枯渇や世界での木材のニーズの高まりによって輸入木材の価格が上昇したため、国産木材の価格も上昇したことが考えられています(=ウッドショック)。

日本で一番生産量が多い樹木はスギで、生産量全体の6割を占めていますが、このスギの価格も近年は上昇傾向となっています。これに比例するように、国産木材のニーズも高まっているものの、日本の木材自給率は約4割に留まり、まだまだ輸入木材に頼らざるをえない状況となっています。

木材供給量及び木材自給率の推移

出典:林野庁『木材供給量及び木材自給率の推移』p,1.(2023/08/31)

出典:林野庁『① 林業生産の動向』p,1.p,2.p,3.p,8.(2023/11/30)

出典:林野庁『早生樹造林のための技術開発について』p,2.(2017/02/02)

早生樹を活用するメリットとは?

早生樹の最大のメリットは、短期間で木材を調達できる点にあります。日本で最も生産量が多いスギは、資源として調達できるまでに約50年かかります。しかし、早生樹は10年〜25年で成長するので、スギが1回伐採される間に早生樹は2回以上の伐採が可能となります。

木材自体の生産量が増加すれば、木材の枯渇や価格高騰に歯止めが効き、林業の収益が向上するとみられています。また、低密度に植栽を行うことで、植栽や下刈りなどの管理コストを削減できるため、地域に合った最良の方法を選択することができるようになります。

出典:林野庁『早生樹造林のための技術開発について』p,2.(2017/02/02)

出典:林野庁『合板用材としての早生樹(テーダマツ、スラッシュマツ等) の可能性』p,2.(2022/01/27)

出典:林野庁『① 林業生産の動向』p,8.(2023/11/30)

3. 早生樹の有効活用における取り組み事例

最後に、早生樹の有効活用に取り組んでいる企業の事例をご紹介します。

一般財団法人広島県森林整備・農業振興財団、広島県樹苗農業協同組合

一般財団法人広島県森林整備・農業振興財団、広島県樹苗農業協同組合」では、荒廃農地でコウヨウザンを植林することで、農地を有効活用しながら林業での活用につなげる取り組みを行なっています。

もともと、広島県にはコウヨウザンの国内最大の林があったことがこの取り組みのきっかけとなり、民間の助成金の助けを借りながら森林保有者が安心してコウヨウザンを植林できる体制を整えています。

出典:国土交通省『35 早生樹(コウヨウザン)の苗木生産と荒廃農地等への植林』p,1.p,2.(2019/03/15)

株式会社モリショウ

木質バイオマス発電事業を行う「株式会社モリショウ」は、森林資源確保の実現に向けて、自社で早生樹の苗種センターを開設しました。

これは、この事業に必要な木製バイオマスの原材料の調達から、電気の供給までを一貫して行っている企業体制から成るもので、地域の民間事業者と共に地域の森林を活用し運用することで、地域の森林保全と資金の循環を生み出しています。早生樹の活用で、地域の林業の活性化に貢献しています。

出典:経済産業省『地域共生型 再生可能エネルギー事業顕彰』p,6.(2023/08/02)

4. まとめ:早生樹の有効活用を進め資源確保を確立しよう!

林業の活性化に期待がかかる早生樹についてご紹介しました。早生樹は、従来木材資源として活用されてきたスギやヒノキなどよりも成長が早いことから、資源確保の向上を目指すことができます。

また、植栽や下刈りの手間が大きく省けることから、管理コストの削減にも期待があります。地域の荒廃農地で早生樹の植林を行なえば、農地の有効活用や地域の資金の循環にもつながります。早生樹の特性を最大限に活用し、地域密着を含めた新しい林業の確立を目指しましょう。

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