サスティナビリティボンドとは?生物多様性の保全に向けた取り組み

地球温暖化や森林減少の影響で生態系へのダメージは計り知れないものになり、生物多様性が失われつつあります。その中で生物多様性の保全に向けた取り組みが進められており、取り組みのひとつであるサスティナビリティボンドに注目が集まっています。このサスティナビリティボンドとはいったいどんなものなのでしょうか。

この記事では、生物多様性の保全に向けた世界の取り組みとサスティナビリティボンドの概要、民間企業におけるサスティナビリティボンドの活用についてまとめています。

目次

  1. 生物多様性の保全に向けた世界の取り組み

  2. サステナビリティボンドとは

  3. 民間企業におけるサステナビリティボンドの活用

  4. まとめ:投資をする際はESG投資やサスティナビリティボンドにも注目してみよう!

1. 生物多様性の保全に向けた世界の取り組み

生物多様性の保全に関する各国の取り組みを掲げた「愛知目標」と「2030年ターゲット」について解説しています。

(1)愛知目標

「愛知目標」とは、2010年に名古屋市で開催された生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)で採択された目標です。生物多様性保全のために各国が取り組むべき項目を掲げています。

2050年に自然と共生する世界の実現に向けて、2020年までに達成すべき20項目を掲げていましたが、2020年時点でいずれも完全に達成することができませんでした

自然との共生を実現させるためには、生物多様性の保全だけでなく、気候変動対策や食料の生産・消費様式の変革など、あらゆる分野の取り組みを連携させていく必要があるとの結論に至りました。

出典:生物多様性条約事務局『地球規模生物多様性概況第5版』p.14-21

(2)2030年ターゲット

2030年ターゲットとは、2022年にカナダのモントリオールで開催された生物多様性条約の第15回締約国会議(COP15)で採択された目標です。2050年に自然と共生する世界の実現に向けて、2030年までに目指す姿を示した「2030年ミッション」。その具体的な取り組みとして、「2030年ターゲット」が掲げられました。

23項目ある「2030年ターゲット」は、生物多様性における脅威の低減に向けた取り組み、自然資源の持続可能的な利用に向けた取り組み、国や企業、消費者が行う取り組みの3つに分類されており、愛知目標に比べ、企業の取り組みを促す目標が多いのが特徴です。また、生物多様性の保全に関連することはもちろん、遺伝資源の管理や利用、ジェンダーや先住民など、生物多様性以外にも多くの重要な観点が盛り込まれています。

出典:Convention on Biological Diversity『COP15:Nation adopt four goals,23 targets for 2030 in landmark UN biodiversity agreeement』(2022年12月19日)

2. サステナビリティボンドとは

生物多様性の保全に向けた取り組みのひとつであるサステナビリティボンドについて解説しています。

(1)サステナビリティボンドの概要

サステナビリティボンドとは、資金用途を環境や社会の持続可能性に貢献するプロジェクトに限定した債券です。

もともとは、資金用途が再生可能エネルギーの推進や生物多様性の保全といったグリーンプロジェクトに限定されている債券である「グリーンボンド」と、資金用途が人権問題や差別への取り組みといったソーシャルプロジェクトに限定されている債券である「ソーシャルボンド」、この2つの債券が存在していました。サステナビリティボンドで得た資金は、グリーンプロジェクトとソーシャルプロジェクト双方に利用可能です。

これまで29件のサステナビリティボンドが起債され、そのうち欧州が17件を占めています。2013年から2017年までにおけるサステナビリティボンドの累計発行額は218億ドル(およそ3兆1800億円)で、2017年の発行額が前年比の約2倍に成長するなど、その利用が急速に広がっています。

出典:株式会社日立総合研究所『サステナビリティボンド』

出典:三菱UFJファイナンシャル・グループ『グリーン/ソーシャル/サステナビリティボンド』

(2)サステナビリティボンドの背景

サステナビリティボンドが注目される背景には、世界的なESG投資の拡大があります。ESG投資とは、投資候補となる企業の財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)という3つの要素を考慮した投資手法のことです。2016年のESG投資資産残高は約23兆ドル(およそ3400兆円)と世界の運用資産の26%まで拡大しています。

ESG投資の拡大を受けてグリーンボンドは特に成長しており、2017年の発行額は約1,600億ドル(およそ23兆5000億円)となりました。また、2015年に採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」への意識が高まりつつあることで、環境分野にとどまらず、社会問題解決に向けた投資ニーズも拡大しています。

このような状況が、グリーンプロジェクトとソーシャルプロジェクトいずれにも利用可能であるサステナビリティボンドに注目が集まるきっかけとなりました。

出典:株式会社日立総合研究所『サステナビリティボンド』

出典:オリックス銀行『ESG投資とは?注目の理由や動向、メリットなどを徹底解説』

(3)サステナビリティボンドの浸透

日本では2017年に東京都で取り組みが始まり、2022年までに18の自治体で約3300億円のサステナビリティボンドが発行されています。環境保護に取り組む企業を応援するという目標の他、産業の活性化を行うという側面も持っています。特に、静岡県では県産の木材利用をさらに発展させるという目的のもとサステナビリティボンドが発行されています。

また政府系金融機関でもサステナビリティボンドが発行されています。商工中金は2022年に日本の経済発展のためのパーパスを定めており、国内の信用金庫等と連携しながらサステナビリティボンドに取り組んでいます。

出典:読売新聞『環境や社会貢献向け「ESG債」広がる…18自治体発行、計3300億円に』(2022年12月18日)

出典:商工中金『第5回期限前償還条項付無担保社債(サステナビリティボンド)』(2023年2月16日)

3. 民間企業におけるサステナビリティボンドの活用

イギリスの香港上海銀行(HSBC)とスターバックスにおけるサステナビリティボンドの活用例について解説しています。

(1)イギリスの香港上海銀行(HSBC)

イギリスの大手金融機関である香港上海銀行(HSBC)は2017年に10億ドル(およそ1500億円)のサステナビリティボンドを発行しました。その調達資金は再生可能エネルギー発電施設の建設や公共交通網の整備など、環境や社会の持続可能性に貢献するプロジェクトに活用されています。

同社の起債には、北米の投資家を中心に想定のおよそ3倍の応募が集まり、ESG投資需要の高さが見て取れる結果となりました。

出典:株式会社日立総合研究所『サステナビリティボンド』

(2)スターバックス

スターバックスは、サステナビリティボンドの発行により、2016年にアメリカで5億ドル(およそ730億円)、2017年に日本で850億円を調達しました。同社は調達資金を利用してコーヒー豆の調達量を拡大するとともに、小規模農家に対して技術支援や設備投資のための融資を提供することで、長期的に安定したコーヒー栽培や農家の生産性向上に取り組んでいます。

これらの取り組みは自然資源の持続可能な利用のみならず、生物多様性の保全や農業の推進にも貢献しています。

これまでサステナビリティボンドは政府の金融機関や自治体などの公共機関によって発行されるのが一般的でしたが、直近では民間企業が独自でサステナビリティボンドを発行することも増えつつあります。

出典:株式会社日立総合研究所『サステナビリティボンド』

4. まとめ:投資をする際はESG投資やサスティナビリティボンドにも注目してみよう!

この記事で述べたように、生物多様性の保全に向けた取り組みの一つとしてサステナビリティボンドに注目が集まっています。サステナビリティボンドは環境問題だけでなく、社会問題にもアプローチできるため、政府や民間問わず、今後も進んでいく事でしょう。

以前に比べ投資へのハードルは下がり、今ではスマホひとつで投資をする人も少なくありません。サスティナビリティボンドの需要がより高まれば、環境問題や社会問題の改善が期待できるでしょう。今後、投資をする際には環境や社会に配慮されたESG投資やサスティナビリティボンドに注目してみてください。

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