EVトラックに関する取り組みと、実用化に向けて解決すべき課題とは

近年、環境問題が深刻化する中で、ガソリンを動力源とする従来のトラックから、電動モーターや電池を主な動力源とするEV(Electric Vehicle)トラックへの移行が進められています。EVトラックは、排気ガスを排出しないため、CO2排出量の削減や都市部の大気汚染の軽減に貢献するとともに、環境に配慮した持続可能な選択として注目されています。しかし、航続距離やバッテリー、充電箇所などの問題があり、実用化にはまだ解決すべき課題が残っています。

この記事では、EVトラックの概要と多数の課題、実用化に向けた取り組みについてまとめています。

目次

  1. EVトラックとは

  2. EVトラックにおける課題

  3. EVトラックに関する取り組み

  4. まとめ:環境に配慮されたEV車両の利用について考えてみよう!

1. EVトラックとは

EVトラックの概要と特徴について解説しています。

(1)EVトラックの概要

EVトラックとは、ガソリンの代わりに電動モーターや電池を主な動力源とするトラックのことです。走行時の温室効果ガスの排出をゼロにすることが可能となり、環境への影響を最小限にできます。近年、自動車メーカーなどの企業がEVトラックの開発に取り組んでおり、市場での関心も高まっています。

出典:日本経済新聞『EVトラックとは』

(2)EV(電気自動車)の特徴

EV(電気自動車)には以下のような特徴があります。

  • CO2排出ゼロ

従来のガソリン車では、エンジンでガソリンを圧縮・燃焼させ、動力にするために、CO2が排出がされていましたが、EVはバッテリーに貯められた電気を動力とするため、運転中にCO2を排出せず、環境への負荷を低く抑えることができます。

  • 経済性

EVは、エネルギー効率が90%以上とガソリン車に比べてかなり高く、経済的です。また、減速時や下り坂ではモーターから電気を発生させ、自ら発電しバッテリーに蓄えることができます。他にも購入費用や税金、電力供給機器の購入費用の減免、エンジンオイルの交換が不要、ブレーキパッドの消耗が少なく、メンテナンス費用を抑えることができます。

  • 静かな走行

EVにはエンジンがないため、エンジンの燃焼音や振動がなく、静かに走行できます。また、加速の速さや操作の容易さから、なめらかな運転ができます。

  • エネルギーの有効活用

大きなバッテリーを搭載しているため、余剰分の電力を貯蔵したり、逆に引き出したりする蓄電池として活用可能で、停電時には非常用電源としても活用できます。

出典:NISSAN『電気自動車とは?』

(3)EV(電気自動車)の課題

EVは走行時のCO2排出削減をはじめとする様々なメリットがあるものの、輸送業にEVトラックを取り入れるには、まだ多くの課題が残っています。特にバッテリー面と充電面に着目し、EVトラックの普及を妨げる要因にはどのようなものがあるのか、解説します。

バッテリー面の課題

現在EVにおいて主流であるリチウムイオン電池は、ディーゼル軽油に比べて体積エネルギー密度が小さいという欠点があります。つまり、EVのエネルギー効率が高いという点を差し引いてもなお、ディーゼル車と同様の航続距離を発揮するには、割高で重い電池を多く搭載する必要があり、荷台スペースが狭くなったり、コストが割高になったりする恐れがあります。長い航続距離が求められる大型トラックで特に問題となります。

また、トラックの寿命に対して電池の耐久性が不十分であるため、電池を交換する必要性があることも課題の1つです。

出典:公益社団法人 全日本トラック協会「電気トラックに関する動向調査 調査報告書」(p.45,46)2018年3月26日

充電面の課題

EVの充電には、大きく分けて普通充電と急速充電の2つがあります。普通充電設備は長時間の駐車が可能な事業所等のプライベートエリアや、商業施設等のパブリックエリア、急速充電設備は高速道路のSAなどが考えられます。これら2つを合わせると、充電ステーションの箇所数には問題がありませんが、充電渋滞の発生など設置基数には課題が残っており、特に急速充電ステーションは、近年新設数が伸び悩んでいます。

また、トラックは電池容量が大きいために、急速充電設備の利用が望ましいですが、現状の設備は駐車スペースが小さすぎたり、トラックを何台も収容できなかったりすると同時に、EVトラックの大型化に伴い、更なる高速充電を行う超急速充電設備の普及も求められています。

出典:公益社団法人 全日本トラック協会「電気トラックに関する動向調査 調査報告書」(p.32~38)2018年3月26日

3. EVトラックの発展に向けた取り組み

EVトラックの導入を進めるため、経済産業省は全EVにおいて、基礎(自宅やマンション等)、経路(サービスエリアやコンビニ等)、目的地(駐車場や商業施設等)の3カ所における充電インフラの整備を重点的に行うべきだと公表しています。

また、充電設備を設置するための補助額を引き上げ、サービスエリアなどの施設では、急速充電ができる設備や複数台同時に充電ができる設備を整えたりするなど、充電インフラを改善する方針です。

出典:内閣府『充電インフラの普及に向けた取組について』p5~8

出典:東京都環境局『カーボンニュートラルに向けたトラックに関する技術展望』p47.48

(2)EVトラックの実用例

ハイブリッドトラック

燃料エンジンと電気モーターの両方を使用します。小型商用車では、他の次世代自動車に先んじて普及しつつあります。大型商用車についても市販車が登場し、これから普及が進む段階です。

  • 燃料:ガソリンと電気

  • 特徴:ガソリンエンジンと電気モーターを併用して走行。バッテリーは走行中に自動充電される。

電気(EV)トラック

バッテリーに貯めた電気を使用して動作するトラックです。小型商用車については市販車も登場し、これから普及する段階です。

  • 燃料:電気のみ

  • 特徴:バッテリーを充電して走行。ガソリンエンジンはない。

燃料電池トラック

水素と酸素の化学反応から電気を生み出す燃料電池を使用するトラックです。国内外の車両メーカー等が協働し、小型商用車ではコンビニ配送を、大型商用車では幹線輸送を想定し、供給インフラとともに実証試験を実施しています。しかし、一般の運送事業者までの普及にはまだ長い道のりであるとされています。

  • 燃料:水素

  • 特徴:水素と酸素の化学反応で電気を生成し、走行する。

出典:経済産業省『「⾮化⽯エネルギーへの転換」に関するトラック運送業界の認識と課題』p1~4

出典:トヨタモビリティ東京『ハイブリッドカー・プラグインハイブリッドカー・燃料電池自動車の違いとは?』(2017/9/8)

4. まとめ:環境に配慮されたEV車両の利用について考えてみよう!

この記事で述べたように、EVトラックの利用は温室効果ガスを排出削減するため、環境への負担軽減に貢献します。また、高いエネルギー効率による経済性や次世代の送電網の基盤としての公共性など、EVトラックにはメリットが多くあり、今後も需要が高まっていくことが予想されます。しかし、リチウムイオン電池の性能や充電スタンドの不足など、普及までの課題が多いことも事実です。

次世代の交通・運輸手段として注目されるであろうEVトラックについて、この記事を通して理解を深め、他の一歩先を行く脱炭素経営に役立てましょう。

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