産業廃棄物が未来を担う建設業の循環型社会について解説

持続可能な社会を実現する循環型社会を目指すため、産業廃棄物を排出する建設業においても対応が求められています。建設業における産業廃棄物の処理に関しては、法律に沿った対応が必要であり、産業廃棄物から生じた資源の有効活用が重要視されています。

ここでは、建設業における産業廃棄物と一般廃棄物との違いや、産業廃棄物における課題、建設業による産業廃棄物と循環型社会の取り組みなどについて分かりやすくご紹介します。

目次

  1. 建設業における産業廃棄物とは

  2. 循環型社会を目指す建設リサイクルの取り組み

  3. 世界的課題に対応したプラスチック資源循環戦略

  4. まとめ:建設業における産業廃棄物の課題を理解し循環型社会に貢献できる企業を目指そう

1. 建設業における産業廃棄物とは

廃棄物は、基本的に産業廃棄物と一般廃棄物に組み分けされ、建設業で排出される廃棄物においても適切な処理が必要となります。ここでは、産業廃棄物の基礎知識についてご紹介します。

産業廃棄物とは?

産業廃棄物とは、企業などが事業活動を行なった際に出た、廃棄物処理に定められた20種類の廃棄物のことです。建設産業において廃棄物処理法に定められた廃棄物は「がれき類・汚泥・木くず・廃プラスチック類・ガラス/陶器類くず・金属くず・紙くず・繊維くず・廃油・ゴムくず・燃え殻・廃酸・廃アルカリ・鉱さい・動植物性残さ・動物系固形不要物・動物のフン尿・動物の死体・ばいじん・産業廃棄物を処理するために処理したもの」が挙げられます。

一方、一般廃棄物とは、家庭から出たゴミやオフィスや飲食店から出た紙くずなどの事業系ゴミを含む産業廃棄物以外のゴミを指します。

出典:国土交通省『建設リサイクルの基本的事項 建設副産物の定義 建設リサイクルの概念』p,3.p,4.(2019/12/02)

出典:環境省『令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第2部第3章第1節 廃棄物等の発生、循環的な利用及び処分の現状』(2023/06/29)

建設副産物とは?

建設副産物とは、建設工事に応じて発生した物品のことで、廃棄物及び再生資源物を含む全てが対象となります。その中でも、コンクリート魂や建設発生木材のような原材料として利用価値があるものや、建設発生土や金属くずのようにそのまま利用価値があるものを、再生資源としています。

出典:国土交通省『建設リサイクルの基本的事項 建設副産物の定義 建設リサイクルの概念』p,5.(2019/12/02)

建設産業における産業廃棄物の排出量と最終処分量

令和3年度の産業廃棄物排出量は370,568千トンとなっており、その内、建設業から排出された産業廃棄物は75,146千トンで全体の約20%を占めています。前年度の建設業の産業廃棄物排出量が、78,214千トン(全体の約20%)であることから、横這いの状況だということが伺えます。

また、産業廃棄物から建設副産物を取り除き、最終的に処分される量は、平成30年度では建設廃棄物7,440万トンに対して最終処分量は212万トンとなっています。

図-Ⅲ・1 産業廃棄物の業種別排出量(令和3年度実績値)

alt属性:図-Ⅲ・1 産業廃棄物の業種別排出量(令和3年度実績値) 

出典:環境省『令和4年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和3年度速報値』p,27.p,47.(2023/03/30)

出典:環境省『建設廃棄物の現状』(2022/01/18)

建設業における産業廃棄物処理の責任

産業廃棄物は、事業者が責任を持って適切に処理をすることが、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」によって定められています。建設工事によって発生した廃棄物(=建設廃棄物)も、法律に沿って適切に処理することが求められています。また、建設廃棄物の再利用による廃棄物の減量や、処理が困難とならない製品を開発することも同時に求められています。

出典:環境省『環廃産第110329004号 平成23年3月30日 各都道府県・各政令市産業廃棄物行政主管部(局)長』p,6.(2011/3/30)

出典:経済産業省『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』p,1.(2004/4/28)

2. 循環型社会を目指す建設リサイクルの取り組み

循環型社会は、さまざまな法律が組み合わさり形成されています。ここでは、循環型社会の構築システムと建設リサイクル法についてご紹介します。

循環型社会をつくるための取り組み

持続可能な社会を実現させるには、循環型社会を構築することが必要です。循環型社会とは、大量生産、大量消費、大量廃棄を抑え、廃棄物から再利用できるものを資源として活用し資源を循環させ最終処分量を減らすと同時に、天然資源の消費を抑え、環境負荷を軽減させることを目的とした社会のことです。

循環型社会を構築するには、「循環型社会形成推進基本法」のもと、一般的な枠組みとして、廃棄物を適切に処理する目的の「廃棄物処理法」、リサイクルの促進を目的とした「資源有効利用促進法」、国が積極的に再生品の調達を促す「グリーン購入法」が定められています。資源有効利用促進法においては、リサイクルの観点から、建設廃棄物の適切な処理を目的とする「建設リサイクル法」が定められています。

循環型社会形成推進のための法体系

出典:国土交通省『参考資料 建設リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する資料』p,4.p,6.(2008/07/25)

出典:環境省『循環型社会への新たな挑戦』p,3.(2008/09/09)

建設リサイクル法の定義

建設リサイクルとは、建設副産物から生じた資源の再利用や、他の産業廃棄物から成る再生資材を建設資材として活用など、建設分野における省資源、資源循環を目的とした取り組みです。コンクリート塊を再生クラッシャランとして道路路盤材としての活用、建設発生木材をバーティクルボードとして住宅用資材としての活用などが挙げられます。

建設リサイクルの定義出典:国土交通省『建設リサイクルの定義』(2018/05/19)

建設リサイクルが必要とされる背景

建設リサイクル法が制定された背景として、廃棄物の増加に伴う最終処分場のひっ迫の懸念があります。建設業の産業廃棄物の割合は全体の約20%であること、不法投棄の問題、老朽化による建築物の建て替え時期を迎えているなどの理由から、廃棄物が増加し最終処分場に大きな負荷がかかっていることが原因として挙げられます。これらの課題を解決し、循環型社会の実現に向けて資源の循環利用するために設けられたのが、建設リサイクル法です。

出典:環境省『建設リサイクル法の概要 | 環境再生・資源循環』(2000/05/30)

出典:国土交通省『建設リサイクルを取り巻く社会情勢』p,2.(2019/12/02)

3. 世界的課題に対応したプラスチック資源循環戦略

持続可能な開発目標(=SDGs)では、廃プラスチックへの対応が求められており、廃プラスチックの問題は世界共通の課題となっています。ここでは、廃プラスチックの課題に対応したプラスチック資源循環戦略と建設業に求められる対応をご紹介します。

建設業におけるプラスチック資源循環戦略とは

プラスチック資源循環戦略とは、製品の設計から処分・廃棄までに排出したプラスチック類を適切な方法で分別、再利用しプラスチック資源を循環させる取り組みです。

建設現場では、断熱材などの材料となる発泡スチロールや塩化ビニル管、ホースなど様々な種類の廃プラスチック類が排出されることから、建設業でも廃プラスチック類の適切な処理、廃プラスチック類の排出の抑制、廃プラスチック類の再資源化の取り組みが求められます。

建設業における混合廃棄物混入廃プラスチックと合わせた廃プラスチック類の総排出量は、平成24年度は53,6万トン、平成30年度が73,3万トンと37%の増加となっています。

出典:国土交通省『建設リサイクルを取り巻く社会情勢』p,15.p,16.(2019/12/02)

出典:国土交通省『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律の施行に伴う 中央建設業審議会の所掌事務追加に係る検討状況について』p,2.p,3.(2021/10/04)

出典:国土交通省『廃プラスチック、廃塩ビ管・継手の 現状等について』p,5.(2020/02/13)

プラスチック資源循環戦略のおもな取り組み

建設業で排出した廃プラスチックを循環させるためには、特に廃棄量の多い廃プラスチックを取り出した後、細かく分類し新しく再生させ再利用します。具体的には、塩化ビニル管や包装ビニールは、そのまま同じものとして再生し利用、硬質プラスチックは、ペレットとして再生利用するなど、廃プラスチックの種類によっても再生利用方法が異なります。

プラスチック資源循環戦略のリサイクルの取り組みでは、2035年度までに使用済みプラスチックを100%リサイクル・リデュースによる有効活用を目指しています。

出典:国土交通省『廃プラスチック、廃塩ビ管・継手の 現状等について』p,11.(2020/02/13)

4. まとめ:建設業における産業廃棄物の課題を理解し循環型社会に貢献できる企業を目指そう

建設業から排出される産業廃棄物は全体の約2割を占めていることから、積極的な対応が求められています。持続可能な社会の実現を目指すためにも、建設リサイクル法のもと適切な処理が必要であり、建設副産物から生じた有効資源の再利用が今後の建設業にとって、重要な取り組みとなります。限られた資源を枯渇させないためにも、産業廃棄物の課題に取り組み循環型社会に貢献できる企業を目指しましょう。

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