SLL(サステナビリティリンクローン)とは?実際の活用事例も紹介!


SLL(サステナビリティリンクローン)とはなにか、わかりやすく解説します!SLLはサステナビリティへの取り組みを促進する仕組みとして注目されており、多くの企業で利用されています。SLLでは国際的な指針が策定されており、日本国内でも環境省などによって取り組みが推奨されています。また借り手・貸し手双方にメリットがあることから、今後も拡大していく可能性があります。本記事では実際の活用事例についてもご紹介します。

目次

  1. SLL(サステナビリティリンクローン)の概要

  2. SLL(サステナビリティリンクローン)に期待される事項

  3. SLL(サステナビリティリンクローン)のメリット

  4. SLL(サステナビリティリンクローン)の活用事例

  5. まとめ:SLL(サステナビリティリンクローン)を活用して野心的なサステナビリティ目標へチャレンジしよう!

1. SLL(サステナビリティリンクローン)の概要

SLLはサステナビリティに関する取り組みを推進する融資の一種です。サステナビリティと融資が、どのように結びつくのでしょうか。SLLの概要について解説します。

SLLはSPTsを達成することを奨励するローン

SLLは、借り手が野心的なSPTs(サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット)を達成することを奨励するローンです。事前にSPTsで設定した水準に対してKPI(重要業績評価指標)を定め、KPIで測定したサステナビリティの改善度合いと融資条件が連動するという仕組みになっています。

出典:環境省「サステナビリティ・リンク・ローンとは」

SLLPについて

SLLでは国際的な指針である、SLLP(サステナビリティ・リンク・ローン・原則)が定められています。SLLPは、世界のシンジケート・ローン市場で活動する大手金融機関の代表者で構成される作業部会によって策定されました。

SLLPはLSTA(ローン・シンジケーション&トレーディング・アソシエーション)という業界団体のサイトで、ダウンロードすることができます。

出典:LSTA「SUSTAINABILITY LINKED LOAN PRINCIPLES (SLLP)」

2. SLLに期待される事項

SLLのおおまかな仕組みがわかったところで、主要な設定条件などSLLに期待される事項を見てみましょう。SLLを実行するにあたっては、KPIやSPTsの設定はもちろん、レポーティングについてもあらかじめ決めておく必要があります。

KPIの設定

SLLは、借り手のパフォーマンスを一つ又は複数のKPIを使って測定し、それを貸付条件と連携させることによって借り手のサステナビリティ向上を目指すものです。そのためKPIの選定は、SLLの信頼性にとって重要なポイントとなります。KPIには、借り手のビジネス全体にとって関連性があり、 一貫した方法論に基づき測定が可能であることが求められます。さらにSPTsの野心性を評価するために、外部指標とのベンチマークができることも必要です。

出典:環境省「グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン2022年版」p112~113

SPTsの設定

KPIに対するSPTsの設定は、借り手が現実的だと考える野心度の表明であると言えます。簡単に達成できてしまう目標では、SLLの意味がありません。SPTsは野心的で、かつ科学的根拠や他社水準が明確である必要もあります。さらにSPTsは外部へも公表され、適切性について第三者の評価を求めることが望ましいとされています。

出典:環境省「グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン2022年版」p113~115

レポーティングと検証

SLLの借り手企業は、SPTsの達成状況について、貸し手金融機関への定期的なレポーティングが求められます。SPTsを達成しているかどうかで、金利の引き下げ/引き上げなど、融資条件の見直しが行われます。またSLLの利用によって社会からの支持を得るため、一般への情報公開が行われる場合もあります。またこうしたレポーティングは、透明性確保のため第三者の検証を受ける必要があります。

出典:環境省「グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン2022年版」p116~118

3. SLLのメリット

SLLが注目されるのは、SLLにさまざまなメリットがあるからです。SLLの活用は、借り手・貸し手・そして社会にとってもメリットをもたらします。SLLのメリットについて解説します。

借り手のメリット

SLLの借り手にとっては、SLLの利用により以下のようなメリットがあります。

  • サステナビリティ経営による企業価値向上

  • サステナビリティへの取り組みの社会からの支持獲得

  • SPTs達成による金利優遇などのインセンティブ

  • サステナビリティへの関心が高い貸し手との関係構築

SPTsを達成しなければこれらのメリットを十分に得ることはできませんので、借り手にとってはサステナビリティへの取り組みが促進されるのです。

出典:環境省「サステナビリティ・リンク・ローンとは」

貸し手のメリット

SLLの貸し手から見ると、以下のようなメリットが考えられます。

  • サステナビリティ支援を通じた社会からの支持獲得

  • サステナブルな社会実現への貢献

  • 借り手の経営のサステナブル化による優良融資先の維持

  • 借り手との対話を通じた関係強化やビジネスチャンスの獲得

融資先がサステナブルな企業であることは、多くの金融機関にとって重要なポイントです。SLLには、こうした傾向を後押しする効果があるでしょう。

出典:環境省「サステナビリティ・リンク・ローンとは」

環境・社会面からのメリット

地球環境や社会面においても、SLLはメリットをもたらします。

  • 環境保全の促進

  • SLLを実施している金融機関の預金者啓発

  • SLLを通じた社会課題の解決

昨今では環境問題や持続可能性への関心が高まってきていますので、SLLは今後ますます社会に受け入れられていくことでしょう。

出典:環境省「サステナビリティ・リンク・ローンとは」

4. SLLの活用事例

SLLを活用している企業は、日本国内にも多数存在します。日本企業のSLL活用事例をご紹介します。

芙蓉総合リース株式会社

芙蓉総合リース株式会社は、「循環型社会実現への貢献」を自社の重要課題として掲げています。当該課題に対応するKPIとして、「廃プラスチックのマテリアル/ケミカルリサイクル率」を選定し、SPTとして「2025年度のKPIを80.0%以上とすること」を設定しました。これに対し日本政策投資銀行は、複数の金融機関による融資(シンジケートローン)を、SLLとして行いました。

出典:日本政策投資銀行「芙蓉総合リース(株)に対し、シンジケーション方式DBJ-対話型サステナビリティ・リンク・ローンを実施」(2023/3/31)

株式会社三菱ケミカルホールディングス

株式会社三菱ケミカルホールディングスは、炭素循環事業領域において、「バイオプラスチック」「ケミカル・マテリアルリサイクル」「CO2回収・利活用」を推進しています。日本政策投資銀行は、ケミカルリサイクルに関するプロジェクト推進の定量目標をSPTsとして設定したSLLを実行し、プラスチック資源循環の促進に寄与する取り組みを支援しています。

出典:日本政策投資銀行「(株)三菱ケミカルホールディングスに対し、DBJ-対話型サステナビリティ・リンク・ローンの実施」

リファインホールディングス株式会社

リファインホールディングス株式会社は、国内におけるマテリアルリサイクル量の増加を目標としたSPTを設定し、2023年6月にニッセイSLLという融資を受けています。ニッセイSLLを実行する日本生命相互会社としては、SLLPに適合した初のSLL案件となります。本SLL実行にあたっては、株式会社格付投資情報センターから第三者意見を取得するなど、透明性の確保が図られています。

出典:日本生命相互会社「当社初のニッセイ・サステナビリティ・リンク・ローンの実行について」(2023/7/3)lp1~2

5. まとめ:SLLを活用して野心的なサステナビリティ目標へチャレンジしよう!

SLLは借り手がサステナビリティに関する野心的な目標を定め、目標達成度合いによって融資条件が変わるというローンです。サステナブルな取り組みを促進するものとして、借り手・貸し手・社会それぞれにメリットがあり、国際的な基準が策定されているほか、環境省なども推奨している仕組みです。

持続可能な経営を目指す企業のみなさまは、SLLを活用して野心的なサステナビリティ目標へチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

アスエネESGサミット2024資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
アスエネESGサミット2024