需要が高まるバイオ燃料の現状とは?自動車産業の導入事例を解説
- 2023年10月31日
- CO2削減
温室効果ガスは地球温暖化の大きな原因として知られており、その対策として「バイオ燃料」の利用が世界的に注目されています。特に米国は長らくバイオ燃料の研究や開発に力を入れてきました。
そして、近年では「次世代バイオ燃料」への関心が高まりつつあり、日本の自動車産業もその普及と研究開発に注力しています。本記事では、今後のエネルギー需要に応えるためのバイオ燃料の現状と、その未来的な展望について深く掘り下げて解説します。
目次
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バイオ燃料の概要
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地球温暖化対策のカギを握る再生可能天然ガス(RNG)
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バイオ燃料の需要急増中の海外の現状
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遅れをとる日本のバイオ燃料使用例
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まとめ:需要急増中のバイオ燃料を学び、まずは自分たちにできることを考えてみよう!
1. バイオ燃焼の概要
(1)バイオ燃焼とは?
バイオ燃料の定義
バイオ燃料は、生物体(バイオマス)のエネルギーを利用した燃料を指します。樹木や木材、廃材、生ゴミ、家畜の糞尿などの有機系廃棄物もバイオマスとして扱われます。
CO2排出と循環
バイオ燃料を燃やす際にはCO2が排出されますが、このCO2は植物の光合成により再び植物体内に固定化されるため、循環型のエネルギー資源として利用が可能です。これにより、大気中のCO2濃度の上昇を抑制し、地球温暖化の防止に寄与することが期待されます。
バイオ燃料の種類
バイオ燃料には固体燃料(薪や木炭)、液体燃料(メタノール、エタノール、バイオディーゼル)、気体燃料(バイオガス)など、さまざまな形態が存在します。自動車用燃料としては、主に液体燃料が使用されています。
バイオ燃料の使用
現在、市販のガソリン車やディーゼル車でバイオ燃料をそのまま使用すると、エンジンや燃料供給装置に損傷のリスクがあるため、ガソリンや軽油に少量のバイオ燃料を混ぜて使用されています。
バイオ燃料の生産・供給
バイオエタノールは、さとうきびやとうもろこしを発酵させて製造され、バイオディーゼル燃料は、植物油や廃食油をアルコールと反応させて製造されます。
出典:一般財団法人環境優良車普及機構『なるほど!ザ・Word~低公害車用語解説~第13回 バイオ燃料』
2. バイオ燃料の需要急増中のアメリカの現状
ここでは主に米国におけるバイオ燃料の現状について解説します。
(1)米国は1973年以降からバイオ燃料の需要急増
バイオ燃料の注目
カーボンニュートラル燃料として、欧州ではe-fuelの研究開発が進められていますが、北米、特に米国ではバイオ燃料の開発が急増しています。これは、研究途上のe-fuelの利用に時間がかかると予想されるため、既に技術的に確立されているバイオ燃料を重視しているからです。
米国のバイオ燃料の歴史
米国は1960〜70年の大気汚染時代からバイオ燃料を重視してきました。大気浄化法や燃料無鉛化の取り組み、オイルショックなどの歴史的背景があり、バイオエタノールやバイオディーゼルの生産・利用が増えてきました。政策面でも、再生可能燃料基準を設けるなどの支援が行われています。
出典:日経クロステック「米国がe-fuelではなくバイオ燃料を選ぶワケ」(2021/11/15)
(2)バイデン政権は安全に配慮したバイオ燃料の夏季販売を発表
バイデン政権は2022年4月に、エタノール15%混合のガソリンを販売する許可を発表しました。それまでは、エタノール混合のガソリンは安価でありながらも、高温時の使用はスモッグ発生の恐れがあることから夏季の使用は禁止していました。2022年4月以降は十分に安全面に配慮したうえで、ガソリンの価格抑制を目指します。
また、今回の発表時にバイオ燃料生産者に対して7億ドルの支援と、安全性に配慮した給油・流通施設などのバイオ燃料インフラに1億ドルの支援実施も発表しました。
出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「バイデン米政権、エタノール混合ガソリンの夏季販売を解禁、ガソリン価格抑制狙う」(2022/04/13)
3. 日本のバイオ燃料使用例
ここでは日本の自動車関連企業でバイオ燃料を活用する事例を紹介します。
(1)バスにミドリムシ由来のバイオディーゼル燃料を利用
株式会社ユーグレナと、いすゞ自動車株式会社が共同開発したバイオディーゼル燃料「DeuSEL®(デューゼル)」はミドリムシが原料です。いすゞ自動車株式会社は、大手の商用車製造メーカーで、数多くの輸送車両を製造販売しています。
共同開発の背景には、世界規模のバイオ燃料需要急増により、バイオディーゼル燃料の原料である使用済み食用油の価格高騰問題が挙げられます。そのような問題が懸念されるなかで、株式会社ユーグレナが食用油の原材料よりも油脂生産の効率が高い特徴を持つ、環境に配慮したユーグレナ由来の燃料を製造を実現化させるため、いすゞ自動車株式会社と共同開発契約を締結しました。
バイオディーゼル燃料「DeuSEL®(デューゼル)」の性能試験で、いすゞ製のエンジンを用いて石油由来の軽油と同等の性能を確認。世界初のミドリムシ由来のバイオディーゼル燃料製造が可能と証明されました。
出典:いすゞ自動車株式会社「ユーグレナ社、ユーグレナ由来原料を100%使用した次世代バイオディーゼル燃料を試製-いすゞ、性能実証試験を実施-」((2022/11/02)
(2)ENEOSと複数の自動車メーカーによるバイオエタノール共同研究
ENEOS株式会社は、自動車メーカーとともに民間6社による研究組合を設立しました。燃料製造の効率化を研究する「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合」は2022年7月に設立。参加した民間企業は、ENEOS株式会社、スズキ株式会社、株式会社SUBARU、ダイハツ工業株式会社、トヨタ自動車株式会社、豊田通商株式会社です。
同研究組合では、カーボンニュートラル実現に向け、自動車用バイオエタノールの製造技術を効率化させるための研究を開始しました。具体的な研究には、食糧と競合しない「第2世代バイオエタノール燃料」の製造技術向上、製造時に発生するCO2の活用法、バイオエタノール燃料の原材料を獲得するために収穫量の最大化や、作物の成分最適化を目的とする栽培方法の研究にも力を入れています。
出典:スズキ株式会社「民間6社による「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合」を設立~カーボンニュートラル社会の実現に向け、バイオエタノール燃料製造の研究を開始~」(2022/07/20)
(3)マツダは追加投資の少ない次世代バイオ燃料に注目
自動車メーカーのマツダは、先述した株式会社ユーグレナが製造した環境に配慮するバイオ燃料「サステオ」に注目。サステオが手の届く存在であることを広めるために2020年からサステオを混ぜた軽油で走行する実証実験を行っています。
実証実験に使用した車両は通常のディーゼル車と同様であり、既存のディーゼル車にそのまま使用できることを証明しました。その結果、2021年11月にはスーパー耐久レースへ出場し完走したことで、PRの機会も急増しています。
日本でもバイオ燃料の需要を高めるために、実証実験を続け、2023年のスーパー耐久レースで24時間完走という結果を出しています。
出典:マツダ株式会社「カーボンニュートラルに向けた次世代バイオ燃料の取り組み!マツダが考える未来とは?」(2022/10/10)
出典:PR TIMES「2023スーパー耐久シリーズ第2戦において、次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」給油車両で24時間完走」(2023/05/29)
4. まとめ:需要急増中のバイオ燃料を学び、車の購入時に地球温暖化について考えよう!
バイオ燃料には固体、液体、気体の3つの形態があり、自動車用燃料としては液体燃料が主に使用されています。市販のガソリン車やディーゼル車でのバイオ燃料の直接使用は、エンジンへの損傷リスクがあるため、通常の燃料に混ぜて使用されています。
米国は1973年以降、バイオ燃料の需要が急増しており、特にバイオエタノールやバイオディーゼルの生産・利用が増加しており、バイデン政権は2022年4月に、エタノール15%混合のガソリンの夏季販売を許可し、バイオ燃料生産者やインフラに対する支援策も発表しました。
企業で自動車を保有する機会があれば、環境に優しい燃料の使用を検討してみましょう。