ケミカルリサイクルとは?廃棄物の再利用に向けた様々な取り組み

ケミカルリサイクルとはどのようなものなのか、わかりやすく解説します。近年、環境問題が深刻化する中で、廃プラスチックのリサイクルが問題となっています。そこで注目されているのが、廃プラスチックを化学的に分解し、全く新しいものに作り変えてしまうケミカルリサイクルです。

この記事では、廃プラスチックやケミカルリサイクルとはどのようなものなのかといった基礎的な部分から解説し、リサイクル会社がどのような取り組みを行っているのか、そしてこの分野の推進のため、日本政府はどのような対策を行っているのかについてまとめます。

目次

  1. ケミカルリサイクルの概要

  2. リサイクル会社による様々な取り組み

  3. 廃プラスチック推進のための政府の取り組み

  4. まとめ:環境に配慮された再生材を積極的に利用してみよう!

1. ケミカルリサイクルの概要

ケミカルリサイクルの概要と、すでに取り入れられている具体的な事例について解説しています。

(1)ケミカルリサイクルとは

ケミカルリサイクルとは、廃プラスチックのリサイクルの方法の1つです。

廃プラスチックは、使用済みのプラスチック製品を指し、これらの廃棄物はリサイクルされて再利用されることが多く、廃プラスチックのリサイクル方法には、主に以下の3つの方法があります。

ケミカルリサイクル

廃プラスチックを化学的に分解して化学原料に再生する方法。

ガス化された化学工業原料から、繊維製品や肥料が作られることがあります。また、鉄を作る際の還元剤や、化学製品の原料、ガス、油などにも変わることができます。

マテリアルリサイクル

廃プラスチックを原料として再度プラスチック製品に再生する方法。

主にパレット、土木建築資材、工業用品、ベンチ、建築資材、シート、ボトル、文具などに再利用されます。

サーマルリサイクル

廃プラスチックを固形燃料にしたり、焼却して熱エネルギーとしてリサイクルする方法。

廃プラスチックと古紙などを原料に「RPF」という固形燃料を作ることができ、また、廃プラスチックを含むごみを焼却した際の熱で発電や温水プール、暖房などに利用されます。

これらのリサイクル方法は、長年の技術開発により多くの手法が開発され、実用化されてきました。廃プラスチックの有効利用率は、2020年で86%となっており、これは日本の高いリサイクル技術と、正しい分別・排出・回収のルールによって支えられています。

出典:一般社団法人プラスチック循環利用協会『廃プラスチックのリサイクルをわかりやすく解説かいせつ!』(2022.12.21)

(2)ケミカルリサイクルの具体的な事例

主なケミカルリサイクルの方法は以下のようなものがあります。

ガス化

いろいろなプラスチックが混ざっているものを、熱で分解してガスにする方法。このガス化リサイクルシステムで回収した水素や一酸化炭素は、アンモニアや二酸化炭素などの原料として利用できます。

コークス炉化学原料化

廃プラスチックを蒸焼にして、コークスや炭化水素油、コークス炉ガスを作る方法です。

高炉原料化

使用済みプラスチックを製鉄所でコークスの代わりに使用する方法。これにより、原料炭の節約や水素の有効利用が図られ、二酸化炭素の排出削減が期待されます。

そのほかに、油化という使い終わったプラスチックを石油に戻す技術がありましたが、大量のエネルギーが必要で、採算が取れずに大型設備が撤退しました。

出典:一般社団法人プラスチック循環利用協会『ケミカルリサイクル』(2022/12/20)

2. リサイクル会社による様々な取り組み

リサイクル業を営むニューホープエナジー社、プラスチックエナジー社、ブライトマーク社、この3社の取り組みについて解説しています。

(1)ニューホープエナジー社による取り組み

ニューホープエナジー社について

ニューホープエナジー社は、ケミカルリサイクルのパイオニアです。この会社の最初のプラントは2018年からテキサス州タイラーで稼働しており、現在進行中の拡張により、世界最大の熱分解施設になります。

さらに、廃プラスチックを再生可能な化学原料に変換することにより循環経済をサポートする、追加のプロジェクトを開発しています。

ニューホープエナジー社による取り組み

ニューホープエナジー社はテキサス州に高度なリサイクルプラントを建設する予定です。そのプラントでは使用済みプラスチック廃棄物をリサイクル原料に変換し、それをトータルエナジーズ社が一部購入して、ポリマーに変換するという方針で取り組みを進めています。

そのプラントは2025年に生産を開始する予定であり、ラムステクノロジーと提携して開発された特許取得済みの熱分解技術を利用します。埋め立てまたは焼却される予定の年間30万トン以上の混合プラスチック廃棄物を処理する方針です。

出典:TotalEnergies『Plastic Recycling: TotalEnergies and New Hope Energy partner on U.S. Advanced Recycling Project』(2022/5/18)

(2)プラスチックエナジー社による取り組み

プラスチックエナジー社について

プラスチックエナジー社は、ケミカルリサイクルのリーダー的存在であり、プラスチック廃棄物の防止に役立つ持続可能なソリューションを提供しています。プラスチックエナジー社のケミカルリサイクル技術は、使用済みプラスチック廃棄物を再生プラスチックを製造するための最適な原料(TACOIL)に変換するというものです。

プラスチックエナジー社による取り組み

プラスチックエナジー社は、既存の稼働中のプラントに加えて、スペインのセビリアに新たなリサイクルプラントを建設する予定であり、リサイクル技術を活用して、使用済みプラスチック廃棄物をTACOILに変換します。

このプラントは2025年初頭に稼働する予定で、年間3万トンの廃プラスチックを処理します。変換されたTACOILはトータルエナジーズで高品質のポリマー製造に利用される予定です。

出典:TotalEnergies『Plastic Energy and TotalEnergies sign an Agreement for an Advanced Recycling Project in Spain』(2022/1/11)

(3)ブライトマーク社による取り組み

ブライトマーク社について

ブライトマーク社はサンフランシスコに拠点を置く廃棄物処理業者で、混合プラスチックの再資源化に取り組んでいます。

2025年までに工場新設時のおよそ10倍にあたる年間100万トンの混合プラスチックの処理を目指しています。

ブライトマーク社による取り組み

ブライトマーク社はおよそ2.6億ドル(約400億円)を投じてインディアナ州に先進的な廃プラスチック処理施設を建設中です。プラスチックから燃料へのリサイクルを実現する米国初の工場で、年間10万トンの混合プラスチックを、超低硫黄軽油(ULSD)、ナフサおよびワックスとして再資源化します。

プラスチックのリサイクルによる燃料の生成は、温室効果ガスの排出削減も期待でき、従来型の原油の採取と比較すると温室効果ガスの排出をおよそ14%も削減できます。

出典:Bright Innovation『米廃棄物処理業者、プラスチックケミカルリサイクル施設建設』(2020/12/2)

4. 政府の補助金活用事例

政府が募集している補助金プラスチックに関する補助金の活用事例を2つ紹介します。

(1)アスクル株式会社の補助金活用事例

アスクル株式会社では、環境省の「令和2年度脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」において、「使用済みプラスチック製品のリサイクルバリューチェーン構築実証事業」が採択されました。

この取り組みは、オフィスから排出されるクリアホルダーなどの使用済みのプラスチック製品を回収し、マテリアルリサイクルを通じて再製品化を目指すものです。

アスクル株式会社は、この実証事業を通じて、使用済みプラスチック製品のリサイクルのためのバリューチェーンを構築し、さらに多くの企業や製品を対象に活動を拡大していく方針です。また、アスクルは「エシカルeコマース」を目指し、サプライチェーン全体でのCO2削減を進めることで、サステナブルな社会の実現に貢献していく考えです。

出典:アスクル株式会社『アスクル、環境省の「令和2年度脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」に選定』(2020/12/14)

(2)株式会社RICOHの補助金活用事例

株式会社リコー(以降、リコー)は、環境省の「令和2年度脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業(補助事業)」において、自社の「独自の発泡技術による軽量でしなやかな発泡PLAシート素材開発」が採択されたと発表しました。

このシートは植物由来100%のポリ乳酸(PLA)を使用し、リコー独自の超臨界CO2技術で微細発泡させることで、強度としなやかさを両立させています。リコーはこの素材を石油由来のプラスチックの代替として実用化を目指しています。

リコーは、この実証事業を通じて、製造コストの大幅な削減や用途開発の促進、素材の物性評価などを行い、発泡PLAシート素材の実用化を加速させる予定です。

出典:RIKOH『https://jp.ricoh.com/release/2020/0923_1』(2020/9/23)

5. まとめ:環境に配慮された再生材を積極的に利用してみよう!

この記事で述べたように、廃プラスチックを新たなプラスチックの素材や別の原料に変換するケミカルリサイクルについての研究が日々行われています。

ケミカルリサイクルの知名度はまだそこまで高くなく、実用化するには品質やコストの問題など、解決しなければならない課題が山積みです。

しかし、ケミカルリサイクルによって作られた再生材を利用することは、気候変動対策や環境への配慮にもつながります。企業で使用されるものを再生材に変更するなどを行うことで、環境問題へ貢献できますので、ぜひケミカルリサイクルによって生成された再生材を積極的に利用してみましょう。

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