グリーンファイナンス推進機構とは?グリーンファンドも解説!
- 2022年06月15日
- その他
2013年、環境省は低炭素社会実現のための基金を設立し「グリーンファイナンス推進機構」を地域低炭素化出資事業を担う基金設置法人に選定しました。
今回はグリーンファイナンス推進機構やその業務、環境関連事業であるグリーンプロジェクトを支援するグリーンファンド、世界的な潮流となっているSDGsやESG投資などについて解説します。
目次
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グリーンファイナンス推進機構とは?
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グリーンファイナンス推進機構の業務
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グリーンファンドの出資対象
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グリーンファンドを後押しするSDGsとESG
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まとめ:中小企業もグリーンファンドの融資対象に成り得る
1. グリーンファイナンス推進機構とは?
2013年、環境省は二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの削減に資金を呼び込むため、「地域低炭素化出資事業」を開始しました。グリーンファイナンス推進機構は、地域低炭素化出資事業を担う基金設置法人に選定されました。
では、グリーンファイナンスとはどのような意味のことばなのでしょうか。グリーンファイナンスとは「空気や水・土の汚染除去、温室効果ガス排出量削減、エネルギー効率改善、再生可能エネルギー事業への投資など、環境に良い効果を与える投資への資金提供を意味する広範囲の概念」のことで、近年、金融の世界で注目されている考え方です。
出典:大和証券『グリーンファイナンス | 金融・証券用語解説集』
こうした再生可能エネルギー事業を主体とするグリーンファイナンスへの投資を推進し、低炭素化プロジェクトを促進することがグリーンファイナンス推進機構の運用目的です。
2. グリーンファイナンス推進機構の業務
(1)グリーンファンドによる出資
グリーンファイナンス推進機構の主な業務は、低炭素社会創出のための金融に関する調査研究、情報収集・提供、相談・助言、事業支援などとされています。
出典:グリーンファイナンス推進機構『一般社団法人グリーンファイナンス推進機構』
これらを達成するため、グリーンファイナンス推進機構は、環境省が設置した「地域低炭素化出資事業」の資金をもとに「グリーンファンド」を組成。グリーンファンドは風力発電や中小水力発電といった低炭素化プロジェクトに出資し、脱炭素化を目指します。
その財源に充てられているのが2012年から徴収された地球温暖化対策税です。2012年から始まった地球温暖化対策税は2016年まで段階的に上げられ現在に至ります。
(2)グリーンボンドの発行
グリーンボンドとは、「企業や地方自治体等が、国内外のグリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券」のことです。グリーンボンドで調達した資金は、環境関連事業(グリーンプロジェクト)に投資されます。
出典:グリーンボンド発行促進プラットフォーム『グリーンボンドとは』
グリーンファイナンス推進機構は、金融機関や地方自治体、グリーンプロジェクトを推進する事業者などがグリーンファンドを発行し資金調達することを支援します。
3. グリーンファンドの出資対象
グリーンファンドの出資条件は、その事業が二酸化炭素を削減するもので、長期的に採算がとれる事業です。ただし、出資を受けるのは民間事業者であり、国などが直接その事業を行うわけではありません。あくまで、民間の事業者に対して事業資金を提供します。
出典:グリーンファイナンス推進機構『グリーンファンドの出資対象 - グリーンファイナンス』
具体的には、風力発電や中小水力発電、バイオマス発電、地熱発電など再生可能エネルギーの発電に対する支援や、熱融通・供給システムのへの支援、LRT(次世代路面電車システム)やEV(電気自動車)などへの支援があげられます。金融面で支援することにより、再生可能エネルギーの普及を図るのが狙いです。
出典:グリーンファイナンス推進機構『グリーンファンドの出資対象 - グリーンファイナンス』
4. グリーンファンドを後押しするSDGsとESG
(1)SDGsとは何か
SDGsとは、「2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」のことです。
出典:外務省『SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform 』
SDGsは17のゴールを設定しています。17の目標では「気候変動や経済的不平等、イノベーション、持続可能な消費、平和と正義などの新たな分野を優先課題」とし、その実現のための行動を全国連加盟国に求めています。
出典:国連開発計画(UNDP)『持続可能な開発目標(SDGs)』
世界中から貧困をなくしつつ、経済発展と地球環境保護とを両立させることが求められているといってよいでしょう。利益最優先の考え方は世界的なビジネスにおいて、通用しなくなるかもしれません。
(2)機関投資家によるESG投資
ESG投資とは、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のこと」です。
巨額の資金を運用する機関投資家の中で、企業経営が持続可能な発展(サステナブル)に則ったものかを投資基準の指標の一つとして考えることが定着しつつあります。
経済産業省のHPによれば、2016年に比べ2018年ではESGを意識した投資やESGに積極的ではない企業を投資対象から外すネガティブ(排他的)スクリーニングなどが増加したことが読み取れます。
世界最大の投資ファンド運営会社であるBlackRockは、こうしたESG投資の傾向は年々強まると予想しています。
出典:BlackRock『サステナブル投資 | 投資を学ぶ | ブラックロック・ジャパン株式会社』
グリーンファイナンス推進機構による投資やその支援によって組成されるグリーンボンドは投資を受けやすくなると考えられるのです。
5. まとめ:中小企業もグリーンファンドの融資対象と成り得る
2013年以来、グリーンファイナンス推進機構は30件、4000万円から20億円規模の出資を決定しました。出資を受けた企業はシャープのような有名企業も一部含まれますが、多くは地方の建設会社や再生可能エネルギー事業者などの中小企業が融資対象となっています。
出典:グリーンファイナンス推進機構『出資事例 - グリーンファイナンス』
今後、世界的なSDGsやESG投資の流れが加速するにつれ、日本国内の融資においても環境に配慮しているか否かは重要な投資基準となるでしょう。中小企業がグリーンプロジェクトに参入する際は、こうしたファンドの有効活用も選択肢の一つとなるのではないでしょうか。