企業の社会的責任(CSR)とは?その具体例と今後の課題

この記事では企業の社会的責任(CSR)についての意味や、現在実践されている具体的な例をご紹介します。

「企業の社会的責任(CSR)」について、SDGsやコンプライアンスなどとの意味の違いや、どのような目的があり実際にどのような活動が行われているのかわからない人も多いと思います。「企業の社会的責任(CSR)」は、今後の企業経営に欠かせない要素となりますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

  1. 企業の社会的責任(CSR)とは?

  2. 日本は企業の社会的責任(CSR)に対してどんな取り組みを行っているのか

  3. 社会的責任(CSR)への有名企業の実践例

  4. まとめ:各企業が責任をもって社会的責任を実践しよう!

1. 企業の社会的責任(CSR)とは?

CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略で、日本語では「企業の社会的責任」と訳されます。ここではまず企業の社会的責任(CSR)についての意味や必要性について解説します。

企業の社会的責任の定義

企業の社会的責任(CSR)とは、「企業は利益の追求だけでなく環境や人権に向けて配慮した行動を実践し、1.法律や社会規範を遵守すること、2.企業情報を開示すること、3.企業活動の透明性を高めること、4.顧客・従業員・株主・地域社会などへの説明責任を果たすことの4つを行って、信頼性を高めていく必要がある」と言う考え方です。

今までは業績のみで評価される時代もありましたが、昨今では企業に対する見方は「環境や人権にいかに配慮しているか」と言う点が重要視されてきています。

これは企業や組織の不祥事に対して社会が厳しい目を向け始めていること、また、国際的に社会的責任に関する規格や基準ができつつあることが要因となります。

出典:経済産業省中小企業庁「CSRで会社が変わる、社会が変わる」(2022/8)(p4)

社会課題と経営の両立

近年では、環境や人権など国際社会に共通する普遍的な課題への関心が高まっており、政府や国際機関だけでなく企業も、環境や人々の暮らしに大きな影響を与えていることから、積極的な取り組みが求められています。

1999年のダボス会議では、当時のアナン国連事務総長が企業が守るべき原則として「国連グローバル・コンパクト」という「人権」「労働」「環境」の3分野での9原則を提唱しました。これは2004年に「腐敗防止」に関する原則が追加され、現在は4分野10原則となっています。

この趣旨に賛同し参加する企業は、2022年には日本企業480社以上を含め、160以上の国々にある17,500以上の団体となっており、加盟企業には年に1回自社のCSR活動の進捗状況を国連に報告することが義務付けられています。

この背景には、商品やサービスに関する偽装、粉飾決算、談合事件、顧客情報の漏えいなどの諸問題の発生により、国際的な企業不信を招いたことも大きな要因と言えます。日本でもこのような状況を踏まえ、経団連は2002年に「企業行動憲章」を策定し、企業倫理に関する経営者のイニシアチブの強化や、不祥事が起きた場合の社会に対する説明責任などが決められています。

出典:経済産業省中小企業庁「CSRで会社が変わる、社会が変わる」(2022/8)(p.6.8)

企業の社会的責任(CSR)とSDGs、コンプライアンスの違いとは

CSRと似たような意味で使われることも多い「SDGs」や「コンプライアンス」の違いとはどこにあるのでしょうか。それぞれの意味について解説します。

SDGsとは、2015年に国連で採択された、先進国・途上国すべての国を対象とした、経済・社会・環境の面でバランスのとれた社会を目指す世界共通の目標です。SDGsでは、17のゴールと169のターゲットにより、人々が人間らしく暮らしていくための社会的基盤を2030年までに達成することを目指しています。

コンプライアンスとは「法令遵守」のことで、企業活動における法令や条例を守る組織内の一連の行動を指します。また、社会的な良識や規範、倫理を守るという意味も含まれています。

つまり、企業の社会的責任は「企業の根本的なあり方・考え方」であり、SDGsはその指針となる国際的な目標で、企業の社会的責任を守ることがコンプライアンスであると理解することができます。

出典:経済産業省中小企業庁「CSRで会社が変わる、社会が変わる」(p5.10)

2. 日本は企業の社会的責任(CSR)に対してどんな取り組みを行っているのか

CSRについて、日本では政府・企業がそれぞれどのような取り組みを行っているのでしょうか。ここでは日本でのCSRへの取り組みを政府と産業界それぞれで解説します。

政府の取り組み

経済産業省では、2004年に「企業の社会的責任(CSR)に関する懇談会」を設け、産業界・学界などの有識者が参加する懇談会を行なっています。

この中で企業がCSRに取り組む意義として、「リスクの低減」「従業員の意欲向上」「新商品・サービス市場の開拓」「ブランド価値の向上」「優秀な人材の確保」などのメリットがあり、企業の価値を向上させる上で重要な要素であるとしています。

また、この取り組みは企業ごとの自主性・多様性・独創性により促進されるとして、政府が規制的に介入するのではなく、民間中心の取り組みを補完的に支援していくことが重要との考えを示しています。

他にも厚生労働省は「労働におけるCSRのあり方に関する研究会」を開催、環境省も「社会的責任(持続可能な環境と経済)に関する研究会」を開くなど、各省で独自の取り組みが行われています。

出典:経済産業省「企業の社会的責任(CSR)に関する懇談会中間報告書について」(2004/9)(p4~5)

産業界の取り組み

産業界では、2002年に経団連が「企業行動憲章」を制定しており、これは実質的にCSR憲章とも呼べるもので、消費者・顧客・市場・株主・従業員・環境・社会貢献など、CSRで求められるステークホルダー(利害関係者)との関係が網羅されています。

また、2004年に発表された「企業の社会的責任(CSR)推進にあたっての基本的考え方」では、CSRは官主導ではなく、民間の自主的取り組みによって進められるべきとしています。

出典:国立国会図書館「企業の社会的責任(CSR)」(2005/3/24)(p10)

出典:日本経済団体連合会「企業の社会的責任(CSR)推進にあたっての基本的考え方」(2004/2/17)

3. 社会的責任(CSR)への有名企業の実践例

ここでは企業のCSR活動の実践例をご紹介します。 

(1)トヨタ車体株式会社

トヨタ車体株式会社では、社会貢献活動として、緑化活動や福祉活動の他、地域の自治体と連携した子どもへの次世代育成などに取り組んでいます。

地域の環境改善

工場や関連企業がある地域への植林・緑化活動や、健全な子どもの育成のための、自社所属選手によるスポーツ指導や工場見学の受け入れなど、地域の環境改善のための活動を行っています。

ボランティア活動

また、社員の積極的なボランティア活動に向け、「TABふれあいクラブ」というボランティアクラブを運営しています。さらにエコポイント制度を採用することにより、ボランティア活動やエコ活動の内容、活動時間に応じてポイントを付与し、そのポイントとフェアトレード商品や環境配慮商品を交換できるようにすることで、更なる社会貢献につながる仕組みをつくっています。

出典:トヨタ車体株式会社 『CSR活動』

(2)ソニー株式会社

ソニー株式会社(以下ソニー)では、1990年より、環境保全に関する指針の発行を行っています。2003年からは環境報告書を「CSRレポート」に変更し、2010年には新環境計画として自らの事業活動および製品のライフサイクルを通して環境負荷をゼロにすることを目指す「Road to Zero」を策定しました。

製造事業所の使用エネルギー削減への取り組み

製造事業所を中心に「建物省エネ診断」として現地調査・ヒアリングを行い、中長期削減施策の提言を実施しています。

オフィスビルの省エネルギー

本社ビルにおいて空調システム、外壁、下水道などの設備を見直し、年間のCO2排出量を一般のオフィスビル対比で約50%削減を達成しました。また、ソニー・エレクトロニクス新本社ビル、ソニー・ピクチャーズエンタテイメントスタジオ内オフィスについてもアメリカの「グリーンビルディング審議会」からLEEDゴールド認証を取得しています。

グリーン電力の導入

再生可能エネルギー導入をすすめ、2009年度にはグローバルで年間約12.8万トンの温室効果ガス削減を達成しています。また、物流・サプライチェーンでの温室効果ガス排出量の削減にも積極的に取り組んでいます。

イノベーション

テレビの消費電力の削減、色素増感太陽電池(色素が吸収した光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池のことで、光電変換効率は世界最高の9.5%)の開発、リン酸鉄リチウムを使用したリチウムイオン電池(長寿命で環境負荷を軽減でき、レアメタルより資源的に豊富なリン酸鉄リチウムを使用)の開発など、環境負荷の少ない製品の開発をすすめています。

出典:ソニー株式会社 『冨田委員資料』( p.7~p16)

味の素株式会社

味の素株式会社は、創業100周年の2009年に「グローバル健康貢献企業グループ」を策定し、「地球持続性」「食資源」「健康な生活」を取り組むべき課題としてCSRの柱としています。

地球持続性

味の素を作る際のアミノ酸発酵生産行程で多くの水やエネルギーを使用していることから、低資源発酵生産に取り組んでいます。これは再生可能エネルギーの活用や副生物(生産過程で副次的に生産されるもの)の有効活用などにより、環境負荷の少ない生産を目指すものです。

食資源

原材料の農産物などの食資源を有効に活かし切る技術開発に力を入れ、アミノ酸製造で生成される栄養豊富な副生物を肥料や飼料に加工して利用するなどの「バイオサイクル」に取り組んでいます。

健康な生活

途上国などで問題となっている栄養不足による病気などの課題に対して、離乳期の子どもの栄養改善などの取り組みを行っています。また、生活習慣病対策食や、高齢者向けのおいしさにも配慮した介護食などの開発にも取り組んでいます。

出典:経済産業省「CSRの戦略的な展開に向けた企業の対応に関する調査報告書」(2011/3)(p54~55)

IKEUCHI ORGANIC 株式会社

IKEUCHI ORGANIC 株式会社(以下池内タオル)は日本有数のタオル産地「今治市」のタオルメーカーで、環境へ配慮した製品つくりが評価され、2010年にはグリーン購入大賞の中小企業部門賞を受賞しています。

安全性と環境負荷の低減の両立

池内タオルでは、「母親が自分の命より大切にする赤ちゃんに安全なタオルを」を基本理念に、自社の国内製造にこだわっています。工場の電力は100%風力発電で、「風で織るタオル」を商標とし、2002年にはニューヨークの展示会でグランプリとなる「ベスト・ニュープロダクツ・アワード」を受賞しています。

出典:経済産業省「CSRの戦略的な展開に向けた企業の対応に関する調査報告書」(2011/3)(p56~57)

4. まとめ:各企業が責任をもって社会的責任を実践しよう!

世界的に企業のモラルが問われている現在、グローバル企業ではCSRへの取り組みは必須と言えるでしょう。

日本でも2050年のカーボンニュートラルをはじめ、環境や人権、労働といった問題が見直され、企業においても自社の目標・取り組みの情報開示が進んでいます。

持続可能な社会の実現には企業の経済活動が大きく影響しています。自社でのCSR活動について見つめ直し、企業の社会的責任とは何かを考えてみましょう。

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