工場で発生する廃棄物の処理方法は?企業の取り組み事例も解説

工場で発生する廃棄物の処理方法に関して、わかりやすく解説します!工場から発生する大量の廃棄物の処理コストは、事業者にとっては常に大きな課題です。また環境負荷へのさまざまな配慮も必要となります。

工場を保有する事業者にとって、廃棄物の削減やリサイクルは喫緊の課題と言えるでしょう。実際に多くの工場で、排出物処理に関する地道な努力や技術開発が進められています。廃棄物処理についての企業取組事例もご紹介します。

目次

  1. 工場で発生する廃棄物の種類は?

  2. 製造業における産業廃棄物の排出量

  3. 工場の廃棄物の処理コストと環境負荷を減らす方法

  4. 企業の取り組み事例

  5. まとめ:工場で発生する廃棄物の処理方法について検討し、環境負荷軽減へ取り組もう!

1. 工場で発生する廃棄物の種類は?

廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に区分されます。家庭から出るゴミは全て一般廃棄物ですが、事業活動に伴い発生する廃棄物は一般廃棄物か産業廃棄物いずれかとなります。それぞれの取り扱いについて解説します。

一般廃棄物とは

一般廃棄物とは「産業廃棄物以外の廃棄物」です。一般廃棄物の中にも家庭ゴミと事業に伴い発生する廃棄物がありますが、事業系一般廃棄物は事業者が自らの責任において適正に処理しなければなりません。これらは通常は廃棄物処理業者に処理を委託するか、処理施設へ自ら持ち込むことになります。

出典:環境省「一般廃棄物・産業廃棄物の区分について」P1-2

産業廃棄物とは

産業廃棄物とは「事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定めるもの」「輸入された廃棄物」と規定されています。

先述のとおり事業系の廃棄物は全て事業者が処理責任を負いますが、その中でも産業廃棄物については、自ら処理する場合では産業廃棄物処理基準に従わなければいけません。また、産業廃棄物が運搬されるまでの間保管基準に従って保管したり、産業廃棄物の処理を委託する場合は最終処分が終了するまで注意を払ったりするなどの義務を負います。

出典:環境省「環境経済基礎情報>産業廃棄物」

2. 製造業における廃棄物の排出量

工場から発生する事業系一般廃棄物や産業廃棄物は、どのくらいの排出量なのでしょうか。製造業における廃棄物の排出量についてデータをご紹介します。

事業系一般廃棄物の排出量

令和3年度の日本国内における事業系一般廃棄物は1171万tでした。事業系一般廃棄物について業種別の国全体の統計は公表されていませんが、例として大阪市においては、令和3年度における製造工場・倉庫からの排出量は、事業系一般廃棄物全体の6.2%でした。

出典:環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について」(2023/3/30)P2

出典:大阪市「【令和3年度】業種・業態別 事業系一般廃棄物排出実態調査の結果について」(2023/5/11)

産業廃棄物の排出量

産業廃棄物については、令和3年度の日本国内における総排出量3億7056万tのうち、製造業からの排出量は9981万tで、全体の約26.9%を占めています。製造業の中で最も多いのはパルプ・紙・紙加工品製造業(3098万t)で、次いで鉄鋼業(2235万t)となっています。

産業廃棄物の業種別排出量

出典:環境省「産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和3年度速報値」P23-24

3. 工場の廃棄物の処理コストと環境負荷を減らす方法

工場からの廃棄物の処理にはコストを要します。また廃棄物が多くなれば、それだけ環境への負荷も大きくなります。処理コストと環境負荷の問題を解決するには、「3つのR」が鍵となります。

処理コストへの対応

工場から排出される廃棄物は、多くの場合処理を専門業者へ委託します。そのため委託コストが発生するだけでなく、処理業者へ引き渡すまでの保管コストがかかる場合もあります。これらのコストを減らすには「処理単価を減らす」か、「排出量を減らす」かのいずれかしかありません。

環境負荷の観点からはこのうち「排出量を減らす」ことが最も望ましいと言えます。このように、一見相反するように見える環境負荷の低減と処理コストの削減は両立することができます。排出量を減らす方法には「再利用・再資源化」も含まれます。

出典:経済産業省「廃棄物マネジメントの先進的な取組事例について」P6

3Rとは

経済産業省では3R政策を実施しています。3Rとは以下3つの言葉の頭文字です。

  • Reduce(廃棄物の発生抑制)

  • Reuse(再利用)

  • Recycle(再資源化)

3R政策は、環境と経済が両立した循環型社会を形成することを目的とした、工場からの廃棄物にも当てはめることができる考え方です。3Rを工夫・実行することで、廃棄物の排出量を抑制し、環境負荷を軽減させるとともに処理コストも低減することができます。

出典:経済産業省「3R政策」

4. 工場の廃棄物処理に関する企業の取り組み事例

企業における工場で発生する廃棄物の排出量の削減やリサイクルなど、工場廃棄物の処理に関する取り組み事例をご紹介します。

日産車体

日産車体株式会社は、ISO14001(環境マネジメントに関する国際規格)の認証を1997年に取得して以来、「再資源化率100%」を目標として取り組み、平成29年度では、事業活動で発生する残存物9867tのうち約92%にあたる9101tをリサイクル資源として売却、残り約8%の766tの廃棄物をセメント原料や路盤材などへリサイクルすることで、直接・焼却後のものともに埋め立てる廃棄物をゼロにして、再資源化率100%の目標を達成しています。

具体的な取り組みとしては、「資源ステーションによる分別」や「プラスチック類の分別」、「塗装工程の廃棄物削減(塗料汚泥含水率低減による廃棄物削減・塗料色替シンナーの再生利用)」を実施しています。

出典:神奈川県「【事例1】自動車製造工程における廃棄物削減活動 」P84-87

旭化学工業

旭化学工業株式会社福井事業所では、廃棄物は可燃物・不燃物・ポリ容器・パレットなどに分別し、鉄くずやステンレスを有価物とすることで、資源の有効利用をはかっています。また廃棄物は廃棄物置場にて保管し、量がまとまった時点で廃棄物引き取り業者に処理を依頼することで、トラック燃料の節約や排気ガス削減に協力しています。

また発生抑制策として「廃液のリユース」や「設備改善による不良品発生率の低減」、再生利用策として「反応溶剤や蒸留初留分のリサイクル」や「洗浄用液の有効利用」にも取り組んでいます。

出典:福井県「廃棄物の減量化・リサイクル事例集」P17-18

リコー

株式会社リコー福井事業所では、分別先が不明な廃棄物を置いておくと正しい分別先が後日フィードバックされる「わかりませんコーナー」や、廃棄物の正しい捨て方を紹介するイントラネット上の「分別ナビ」を設置し、再生資源として有価で売却できる紙ゴミ・段ボール・金属類・廃トナーなどを確実に回収できるように工夫しています。

また「感熱紙の塗布工程の改善」「紙芯の再利用」「新技術での精度改善による原料ロスの削減」などにも取り組み、廃棄物排出量を抑制しています。

出典:福井県「廃棄物の減量化・リサイクル事例集」P24-26

森永乳業

森永乳業株式会社 東京多摩工場では、1999年に廃熱回収ボイラーを設置し、製造過程で発生する廃液などを自家処理することで、外部排出量の大幅削減を実現しています。廃熱回収ボイラーで発生した蒸気は、製造工程で有効活用されています。

また、廃棄物の分別徹底により、金属類・段ボール・紙ゴミ・廃プラスチック類を有価で売却しています。有価にならない廃棄物についても、有用に再資源化を行っている外部処分先を委託先として選択するなど、工場からの廃棄物排出抑制に取り組んでいます。

出典:環境省「3R活動先進事例集」(2010年3月)P10-11

5. まとめ:工場で発生する廃棄物の処理方法について検討し、環境負荷軽減へ取り組もう!

工場で発生する廃棄物は、事業性一般廃棄物・産業廃棄物いずれについても、事業者自身が処理責任を負わなければいけません。廃棄物の処理には外部業者への委託などコストがかかるほか、環境負荷への配慮も必要になります。

コストと環境負荷の問題をどちらも解決するためには、「リデュース(抑制)・リユース(再利用)・リサイクル(再資源化)の「3R」が重要なポイントとなります。多くの企業がこの3Rに基づき、工場での廃棄物の排出抑制やリサイクルに向けた取り組みを行っています。

工場で発生する廃棄物の処理方法について、3Rの観点でよく検討し、コストの低減と環境負荷の軽減を両立させる賢い経営を行いましょう。

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