タクソノミーとは?各国の動向をわかりやすく解説

タクソノミーとはなにか、わかりやすく解説します!タクソノミーとは英語で「分類体系」を意味し、たとえばIT分野ではデータを階層構造で整理したものなどを指します。しかし環境分野で使われるタクソノミーとは経済指標のひとつであり、全く違った趣旨となります。

タクソノミーとしてはEUタクソノミーが有名ですが、そのほかにも世界各地でタクソノミーが検討・策定されています。世界での動向や日本企業の事例についても取り上げます。

目次

  1. タクソノミーとは

  2. EUタクソノミーにおける環境4項目

  3. EUタクソノミーに関する企業事例

  4. まとめ:EUタクソノミーを理解し、環境経営を実現しよう!

1. タクソノミーとは

環境分野でタクソノミーとは、事業活動における基準のことを指します。タクソノミーの概要と、中でも有名なEUタクソノミーについて解説します。

タクソノミーの概要

環境分野で使われるタクソノミーとは、「環境面でサステナブルな経済活動」を示す分類です。一口にサステナブルと言っても、そこにはさまざまな解釈が存在します。

そこでグリーン(環境にやさしいこと)やサステナビリティ(持続可能性)の定義の一貫性、ハーモナイゼーション(国際的に制度などの調和を図ること)などが、タクソノミーが用いられる目的です。またタクソノミーによってサステナブルであることの基準が明確になれば、環境に良い商品と見せかけ消費者等に誤解を与える「グリーンウォッシュ」を防止できます。

出典:環境省「EUにおけるサステナビリティ開示関連規則の策定の動き」P5  

EUタクソノミー

タクソノミーの中でもよく取り上げられるのが「EUタクソノミー」です。EUの政策執行機関である欧州委員会は、2018年5月にEUタクソノミー規則案を公表しました。EUタクソノミー規則において「環境面でサステナブルである」と認められるには、以下の4項目を充足する必要があります。

(1)6つの環境目的の1つ以上に実質的に貢献する

「6つの環境目的」とは、具体的には以下のとおりです。

  • 気候変動の緩和(再生可能エネルギー利用やエネルギー効率改善による温室効果ガス排出の回避・減少・除去促進)

  • 気候変動の適応(気候による悪影響の減少、気候変動への悪影響増加の回避)

  • 水資源と海洋資源の持続可能な利用と保全(水資源・海洋資源の良好な状態)

  • 循環経済への移行(循環経済、廃棄物抑制、リサイクル社会への移行)

  • 汚染の防止と管理(汚染からの保全を高度化)

  • 生物多様性とエコシステムの保全と再生(生物多様性・生態系サービスの保全や改善)

(2)6つの環境目的のいずれにも重大な害とならない(DNSH)

たとえばCO2を大量に排出すれば6つの環境目的のうち「気候変動の緩和」に対して害になりますし、原材料の非効率な使用があれば「循環経済への移行」に対して害になります。

(3)最低安全策(人権等)に準拠している

労働における基本的原則及び権利の確保を確認する手続きを指し、具体的にはOECD(経済協力開発機構)の多国籍企業行動指針や、ビジネスと人権に関する国連指導原則等を実行しているかによって判定されます。

(4)専門的選定基準(上記1・2の最低基準)を満たす

「6つの環境目標」については、そのうち1つ以上に貢献したり、それぞれに重大な害とならないだけではなく、ライフサイクル全体で、短期的及び長期的な視点を持った、科学的根拠に基づく基準を満たさなければなりません。

出典:環境省「EUにおけるサステナビリティ開示関連規則の策定の動き」P6-8

2. タクソノミーを巡る動向

タクソノミーについてはEUだけでなく、世界各地で検討や策定が行われています。タクソノミーを巡る世界の動向について解説します。

ASEAN

ASEAN各国は気候変動問題に関して、世界で最も影響を受けやすい地域のひとつと言われています。そのためASEAN主要国は環境問題の解決を促すサステナブルファイナンス(サステナブルな事業への融資・投資)へ注目しており、サステナブルファイナンスの枠組み整備の一環として2021年にASEANタクソノミーが発表されています。

ASEANタクソノミーにおいては、「気候変動の緩和」「気候変動への適応」「健全な生態系の保護」「資源の強靱性の推進」という4つの環境目標が設定されています。またこれら4つの目標に透明性の高い方法で取り組み、「重大な害を与えないこと(DNSH)」と「持続可能な金融システムへの移行に向けた改善努力を行うこと」が必須基準となっています。

ASEANタクソノミーは、ASEAN 加盟国にとっての包括的なガイドとして策定されており、「グリーンな活動」と認められる具体的な指標設定については、各国・産業の事情に応じて選択できるものとなっています。

出典:金融庁「ASEAN 諸国のサステナブルファイナンスに関する委託調査」P4

出典:ASEAN Taxonomy, ASEAN Cptital Market Forum「ASEAN TAXONOMY FOR SUSTAINABLE FINANCE ver.1」p8-9、23

中国

中国では、中国人民銀行が、中国国家発展改革委員会と、中国証券監督管理委員会とともに、中国版タクソノミーである「Green Bond Endorsed Projects Catalogue(改訂版)」を2021年4月に公表しています。

中国でグリーンボンド(気候変動対策資金を調達するための債権)を発行する機関は、中国版タクソノミーを遵守し、そのプロジェクトが確実に環境に良い影響をもたらすことを証明しなければなりません。

中国版タクソノミーでは「気候変動への対応」「環境改善」「より効率的な資源の活用」という3つの環境目的が示されており、基準充足のためにはこのうちひとつに貢献する必要があります。

中国版タクソノミーは、4階層の分類と6つのカテゴリーで構成されており、合計204の経済活動について「ホワイトリスト」が作成されています。ホワイトリストとはタクソノミーに適合する活動内容を具体的に示したもので、たとえば「グリーンな建築物の材料」には、省エネ壁材や外装用断熱材壁、省エネガラス、などが該当します。さらに製品の特性と技術的な仕様について、国家規格を満たす必要があるなどと定められています。

出典:IPSF「Common Ground Taxonomy – Climate Change Mitigation」p15-16,19,21-22

国際的な動き

ISO(国際標準規格)や世界銀行などさまざまな国際機関がタクソノミーについて積極的に取り上げています。特にIPSF(持続可能な金融に関する国際プラットフォーム)では、経済活動のタクソノミーに関して加盟国間で具体的な比較作業を開始しています。

今後EUなどを中心に定められたタクソノミーが、国際的なグリーン判定の基準となるかもしれません。実際にEUと中国は、CGT(コモン・グランド・タクソノミー)という共通タクソノミーの国際化を目指しています。

出典:ISO「ISO 14030-3:2022」

出典:World Bank Group「DEVELOPING A NATIONAL GREEN TAXONOMY」p9 

出典:IPSF「Common Ground Taxonomy – Climate Change Mitigation」p9-10

日本

日本ではサステナブルファイナンスの仕組みは導入されていますが、サステナブルファイナンスの基準となるタクソノミーに相当するものはありません。タクソノミーがないということは、投資家が日本の企業へ投資しようとする際、投資先のサステナビリティ特性に関する正確な情報を入手できない状態にあるということです。

国際的な投資ガイドラインを推進しているPRI(責任投資原則)が2022年に実施した調査によると、サステナビリティ関連情報について、日本においても回答のうち約60%がタクソノミーの開発を支持しています。

出典:国連責任投資原則「日本におけるサステナブルファイナンス・タクソノミーの必要性」P4,10

3. タクソノミーに関する企業事例

日本には現在タクソノミーに相当するものはありませんが、国内各企業でもタクソノミーを意識した事例が見られます。

(1)川崎重工業株式会社

川崎重工株式会社では、2022年12月に欧州向けに実施した水素ウェビナーにおいて、水素発電事業の規模を問われた際「EU タクソノミーでは低炭素燃料との混焼と 2035 年以降の専焼が必要となるので、水素発電で20%程度のシェア獲得を目指す」旨の回答をしています。

また「EU タクソノミーでは 2035 年以降の水素専焼が義務付けられているが、当社が提供するガスタービンは法規的な要求に対し技術的には既に対応できる状態である」とも述べています。

出典:川崎重工業「2022/12/12 欧州 IR 水素ウェビナーにおける主要な質疑応答」p1

(2)三菱重工業株式会社

三菱重工株式会社は、2020年にグループが取り組んでいくべきと定めた重要課題である 「マテリアリティ」を改定しました。これはEUタクソノミーなど国際的な規範やガイドラインにおいて、サステナビリティの重要性が高まっていることをふまえたものであるとしています。

改定されたマテリアリティでは、カーボンニュートラル社会の実現に向け、エネルギー生産において脱炭素化を目指す「エナジートランジション」と、エネルギー消費で脱炭素・省エネ・省人化を実現する「社会インフラのスマート化」 が掲げられています。

出典:三菱重工業「三菱重工グループのサステナビリティ」

(3)積水化学工業株式会社

積水化学工業株式会社では、自社製品について、社内で「サステナビリティ貢献製品」の認定を行っています。認定基準については社外アドバイザーの意見を取り入れており、EUタクソノミーでも求められている「複数の課題への配慮」が十分であるかなどを確認することをベースとしています。

出典:積水化学工業「統合報告書2022」P44

4. まとめ:タクソノミーを理解し、環境経営を実現しよう!

タクソノミーは事業活動において「サステナブルであること」を判断する基準です。特に金融分野においては、投資・融資先がサステナブルであるかどうかを知るためにタクソノミーが活用されます。

EUタクソノミーをはじめとして各国でタクソノミーを検討・策定しており、国際標準となるタクソノミーを定めようという動向もあります。一方日本では、タクソノミーに相当するものはまだ開発されていませんが、投資家などから日本においてもタクソノミーを開発することが求められています。

タクソノミーについて理解し、社外からの評価にも耐えられる環境経営を実現しましょう。

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