ウェルビーイング(Well-being)とは?企業に必要とされるウェルビーイング経営

ウェルビーイングとは、ストレス社会において人が元気に自分らしく生きるための重要なキーワードです。

特に、近年は少子化・高齢化によって人材の確保が難しい状況となっており、ウェルビーイングを重要視した経営は、この課題をクリアし、業績を向上させる効果に期待があることから、積極的に取り入れたい経営手法です。ここでは、ウェルビーイングの基礎知識やウェルビーイングと健康の関係性、ウェルビーイングに効果的な経営方法などをご紹介します。

目次

  1. ウェルビーイング(Well-being)とは何か?

  2. ウェルビーイング(Well-being)に大きく影響する健康

  3. ウェルビーイング(Well-being)に寄り添うダイバーシティ経営

  4. ウェルビーイング(Well-being)を取り入れた企業事例

  5. まとめ:ウェルビーイング(Well-being)の理解を深め、働きがいのある企業を目指そう

1.ウェルビーイング(Well-being)とは何か?

ウェルビーイングは、働き手の働く意欲に強く影響するものであり、これは働き手の確保にも直結しています。ここでは、ウェルビーイングの意味と、必要とされるようになった背景をご紹介します。

ウェルビーイングとは?

ウェルビーイングとは、個人が健康で幸福感に満たされていることであり、具体的には、身体的、精神的、社会的に満たされている状態にある、または、その状態が持続していることを指します。企業におけるウェルビーイングとは、労働者が自分の望む生き方に沿って働ける環境が整っており、働きがいがあって、身体的、精神的、社会的に良好な状態を指します。

出典:厚生労働省『雇用政策研究会報告書』p,5.(2019/07/25)

ウェルビーイングが必要とされる背景

ウェルビーイングが必要とされる背景には、少子化や高齢化による働き手の減少が大きく影響しています。人口減少が進む現代では、中小企業のみならず社会全体で、働き手の確保が必要とされています。

働き手に働く意欲があったとしても、職場が自分の意に沿わない環境であった場合には、働く意欲が低下したり、働くこと自体を諦めてしまったりする状況となり、結果的に企業においても深刻な働き手不足となってしまいます。このような人口減少によるもの以外が要因となる働き手不足を解消するためにも、企業におけるウェルビーイング経営は重要です。

出典:厚生労働省『人口減少・社会構造の変化の中で、ウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環』p,1.(2019/01/15)

2. ウェルビーイング(Well-being)に大きく影響する健康

企業がウェルビーイングに取り組むにあたって、働き手の健康面を考慮する取り組みが大きく影響します。ウェルビーイングにおける健康についてご紹介します。

健康の定義

ウェルビーイングにおける健康とは、WHO(世界保健機関)の定義によると「肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態にあること」であり、「単に疾病又は病弱の存在しない」ことではありません。つまり、ウェルビーイングにおいて健康とは、病気やケガがないだけでなく、こころの状態も良好であり、環境においてもストレスがないことを健康だとしています。

こころの健康には、「情緒的健康:自分の感情に気がつき表現ができる」、「知的健康:状況に応じて適切な対応・解決ができる」、「社会的健康:周りや社会と前向きな関係を築ける」、「人間的健康:自身の人生の意味を見出し自身で人生の選択ができる」などが挙げられます。

出典:厚生労働省『WHO-FIC(WHO国際分類ファミリー)と ICF(国際生活機能分類)』p,1.(2012/09/25)

出典:厚生労働省『3 休養・こころの健康づくり』p,2.(2000/06/07)

企業が健康とウェルビーイングの取り組みで得られる効果

企業が健康とウェルビーイングに取り組むことで、働き手の仕事へのやりがいが増すとともに、生産性向上への期待ができます。ウェルビーイングによって働き手がより健康的に働ける状況から、結果的に企業の業績向上を引き起こすのです。これには、月経や更年期など女性特有の健康面やジェンダー平等など、働き手全体を視野に入れた取り組みが重要となります。

出典:厚生労働省『人への投資(仮訳)』p,7.(2023/05/02)

3. ウェルビーイングに寄り添うダイバーシティ経営

ダイバーシティ経営とは?

ダイバーシティ経営とは、多様な人材を活かすために、個々の能力を最大限に発揮できる環境を提供する経営手法を指します。これは、性別や年齢、人種、障がいの有無、性的志向、キャリア、経験など、様々な要素において多様な人材が、それぞれ持っている能力や特性などを最大限に発揮することにより、働きがいのある環境下で生産性を向上させ、さらには「自由な発想」をもってイノベーションを起こして新たな価値を生み出し、自社の競争力を強化させうると考えられています。

出典:経済産業省『多様な個を活かす経営へ』p,5.(2021/03/19)

ダイバーシティ経営の効果

ダイバーシティ経営には、「新しい商品やサービスを生み出す」、「商品やサービスを販売する方法を新たに生み出す」、「優秀な人材獲得・顧客満足度向上・社会認知度向上」、「働き手のモチベーション向上・環境改善」などの効果が期待できます。

これらは、働き手が持っている能力を発揮することで得られる効果であり、働き手にとって働きやすい環境が整うことで、商品やサービスの価値が向上し、結果的に企業の業績向上につながる期待があります。そのためには、自社の目指す経営において必要な人材・組織の確保、また、確保した人材や組織の能力を最大限発揮できる環境に整えることが重要となります。

ダイバーシティ経営に取り組む企業はそうでない企業に比べて、新入社員の採用や働き手の仕事に対する意欲、利益向上など、さまざまな分野において成果が出ていることが分かっています。

各経営成果が「良い/うまくいっている」と回答した中堅・中小企業の割合

出典:経済産業省『多様な個を活かす経営へ』p,5.p,6.(2021/03/19)

ダイバーシティ経営に必要な「インクルージョン」

ダイバーシティ経営を成功させるためには、「インクルージョン」をしっかりと視野に入れた取り組みが重要とされています。インクルージョンとは、働き手がその組織の一員としてしっかりと認められており、働き手自身がそれを認識できている状態を指します。インクルージョンは、働き手が組織に必要とされる人材であることから、自社で働く意欲を高める効果が期待できます。

出典:経済産業省『多様な個を活かす経営へ』p,7.(2021/03/19)

4. ウェルビーイング(Well-being)を取り入れた企業事例

ウェルビーイングは、企業の大事な支えとなっている働き手の働く意欲に直結しており、ウェルビーイング経営はストレス社会の現代においてとても重要なものとなっています。ここでは、さまざまなウェルビーイング経営を取り入れている企業の事例をご紹介します。

川崎とどろきパーク株式会社

神奈川県川崎市に根差す企業や多様な専門性を有する企業が集まって設立された「川崎とどろきパーク株式会社」では、「つながる ひろがる 未来をつくる」をコンセプトにした運動施設を運営しています。

この運動施設は、プロスポーツから市民スポーツまで幅広いニーズに対応した運動施設となっており、スポーツを中心とした憩いの場を提供しています。また、市民の安全と安心を守る設備も備え、100年後の未来へとつながる街づくりを進めています。

出典:経済産業省『スポーツの持つ力と ウェルビーイング社会』p,47.p,48.p,49.(2023/06/25)

株式会社高齢社

サービス業の「株式会社高齢社」は、その社名の通り「定年後も働きたい」というニーズに応えた会社で、入社資格は60歳からとなっています。働き手の負担を考慮し、本来ならひとりで担当する仕事を2人で担当して行う「ワークシェアリング方式」を採用、また、派遣先での円滑なコミュニケーションを目的とした「CS(顧客満足)マナー研修」を導入し、質の高いサービスを提供しています。

「働きたい」という気持ちを重視することで、働き手のやりがいが増し、それが顧客満足度の向上につながっています。

出典:経済産業省『ダイバーシティ経営企業100選 ベストプラクティス集』p,57.(2016/03/22)

株式会社 JTB グローバルマーケティング&トラベル

インバウンド専門の旅行会社「株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベル」は、ウェルビーイング経営の方針としてダイバーシティを位置づけ、その実現を経営基盤のひとつと定めています。

「自律創造型社員」の育成に取り組み、社員ひとりひとりが活躍の場が持てるように、働き方改革や若手育成、人材の最適配置、多様な人材の積極的な採用を行っています。多様な人材が協力できる組織になることで、生産性の向上や顧客への提案のクリエイティブ向上などの効果につながっています。

出典:経済産業省『令和 2 年度 新・ダイバーシティ経営企業 100 選』p,58,59.(2021/03/19)

株式会社丸井グループ

体調不良は、本来の力を十分に発揮できず、生産性の低下や業務の遅延につながります。40代〜50代の管理職世代の女性特有のものとしては、頭痛や手指のしびれなど様々な症状を引き起こす「更年期障害」があり、この女性特有の問題に積極的に取り組んでいるのが「株式会社丸井グループ(以下丸井グループ)」です。

丸井グループでは社員のほぼ半分が女性であるために、この問題を深刻にとらえており、女性の健康についてのセミナーを行い、男性社員にも女性の健康について理解してもらう場を提供することで、更年期障害などの女性の健康を「他人ごとにしない」環境作りを進めています。

出典:日本経済新聞『管理職襲う更年期問題 6300億円の経済損失も』(2023/08/08)

5. まとめ:ウェルビーイング(Well-being)の理解を深め、働きがいのある企業を目指そう

ウェルビーイングの意味や企業にとっての重要性などをご紹介しました。ウェルビーイングとは、個人が健康で幸福感に満たされている状態を指し、気持ちが満たされるには、健康面が大きく影響しています。ウェルビーイングが満たされていない状態が続くと、本来の能力が十分に発揮できず、仕事への意欲低下にもつながり、結果的に企業の大きな損失となる可能性があります。

ウェルビーイングは人それぞれ違いがあるために、企業側はひとりひとりに沿った対応が必要となります。優秀な人材の獲得及び企業としての競争力強化のためにもウェルビーイングへの理解を深め、働きがいのある企業を目指しましょう。

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