ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)とは?その意味や重要性を企業の取り組み事例と併せて解説

企業の経営の在り方として、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)という考え方があります。これはもとのダイバーシティ&インクルージョンにエクイティがプラスされた言葉で、今後、企業が社会的にも成功するためには、「エクイティ」の部分を積極的に取り込む必要があります。

ここでは、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の意味や具体的なアクション、企業の取り組み事例などをご紹介します。ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの理解を深め、ぜひ、社会的にも一歩先を行く企業を目指しましょう。

目次

  1. ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)とは何か

  2. ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の具体的なアクション

  3. 社会における性的マイノリティの意識改革

  4. ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)に取り組む企業

  5. まとめ:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の理解を深め、働きがいのある企業を目指そう

1. ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)とは何か

従来の企業経営では、ダイバーシティ&インクルージョンの考え方が一般的でした。しかし、最近は、エクイティが重要視されダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)という考え方が注目されています。ここでは、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの意味をご紹介します。

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)とは?

ダイバーシティ(Diversity)とは「多種多様性を認めること」であり、インクルージョン(Inclusion)とは「誰ひとりも取り残さないこと」を意味します。そこに、エクイティ(Equity)の「特徴の異なる人々に、その特徴に応じた適切な対応を行うこと」、つまり「違いを認める公平性」が加わったものが、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンです。

つまりダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)とは、すべての人が公平な立場で、自分の持ち味を発揮して、創造的に協働するということです。

出典:一般社団法人 日本経済団体連合会『「アンコンシャス・バイアスセミナー」を開催 (2022年1月13日 No.3528) | 週刊 経団連タイムス』(2022/01/13) 

出典:厚生労働省『IT企業における働き方改革』p,38.(2023/03/06)

「エクイティ」が重要視された理由

エクイティが重要視されるようになった背景には、産業構造や労働需要の変化、労働人口の減少を理由とする働き方改革が挙げられます。

今後、企業が持続的に成長していくためには、働き方改革で「働き手への投資」を行い、多様化した社会において企業も多様な人材を受け入れ、それぞれの働き手の個性や強みを最大限発揮できるような環境を整えて、新たな価値創造や企業価値の向上が期待される「エクイティ」を浸透させることが重要です。

出典:一般社団法人 日本経済団体連合会『2023年版経労委報告を公表 (2023年1月19日 No.3575) | 週刊 経団連タイムス』(2023/01/19)

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)のカギとなる「アンコンシャス・バイアス」

アンコンシャス・バイアスとは、特定の事柄や個人に対して、自身の過去の経験や社会的事情によって、個人の意思とは関係なく無意識に生じた、偏った物の見方のことです。

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを目指すには、アンコンシャス・バイアスの知識を理解し、経営者や管理者側がそれらを克服することが必要となります。

出典:一般社団法人 日本経済団体連合会『「アンコンシャス・バイアスセミナー」を開催 (2022年1月13日 No.3528) | 週刊 経団連タイムス』(2022/01/13) 

2.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の具体的なアクション

今後、世界ではダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の考え方が基本となり、企業もこの考え方に沿った経営が求められます。ここでは、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの具体的なアクションをご紹介します。

差別的取り扱いの排除

多種多様性を認め、なおかつ公平性を確保する為には、個人の差別的な扱いをなくす必要があります。具体的には、国籍や性別による労働賃金の格差廃止や、性別や年齢、障がいなどによる雇用条件の差別の廃止、弱い立場へのハラスメントの防止などが挙げられます。

出典:一般社団法人 日本経済団体連合会『企業行動憲章 実行の手引き(第9版)』p,105.(2023/01/20)

企業のシステムのスムーズな運用

企業全体においてダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの知識を浸透させることも今後の経営で重要となります。性別などに関わらず採用や昇進の機会を設けるなど、公平性を確保するためにも、社員全員での意識改革が必要です。

出典:一般社団法人 日本経済団体連合会『企業行動憲章 実行の手引き(第9版)』p,106.(2023/01/20)

不合理な待遇の格差をつくらない

正規雇用者だけではなく、同じ企業に勤める非正規雇用者に対しても、安定した賃金や福利厚生制度を設け、正規雇用者と非正規雇用者で待遇の格差をつくらないことを重要視する必要があります。また、企業の中で不合理な待遇の格差をつくらないためにも、非正規雇用者との間で納得できる話し合いの場を設けることも重要です。

出典:一般社団法人 日本経済団体連合会『企業行動憲章 実行の手引き(第9版)』p,106.(2023/01/20)

3. 社会における性的マイノリティの意識改革

近年、特に重要視されているのが「性的マイノリティ」への対応です。ここでは、性的マイノリティへの企業の意識改革についてご紹介します。

性的マイノリティとは?

性的マイノリティとは、性的なマイノリティ(少数者)、すなわち性的指向(どのような人を好きになるか、またはならないか)や性自認(自分の性をどのように捉えるか)といった、性に関する事柄において、少数派に属する人のことです。

性的指向の在り方や性自認は人それぞれであり、心と体の性別に違和がある、もともと性的感情がないなど、ひと言では表現することが難しい問題でもあります。

「L:レズビアン」「G:ゲイ」「B:バイセクシュアル」「T:トランスジェンダー」の頭文字をとり、これらに属さないタイプも含めた「LGBT」や、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字をとった「SOGI」という言葉でよく表現されています。

出典:厚生労働省『多様な人材が活躍できる 職場環境に関する企業の事例集』p,4.p,5.(2020/03/30)

出典:厚生労働省『職場におけるダイバーシティ推進事業 報告書』p,16.(2020/09/15)

性的マイノリティが感じているストレス

性的マイノリティには、社会で生活する上で自身が性的マイノリティであると周囲に伝えることができずに、ストレスを抱えるケースが多くあります。

性的マイノリティを理由とするハラスメントや、自身の思いとは別の性別でふるまう辛さ、健康診断が受けられないなど、その原因は幅広くあります。また、プライベートな話が出来ないことから人間関係がうまく築けず、孤立してしまうこともあります。

出典:厚生労働省『多様な人材が活躍できる 職場環境に関する企業の事例集』p,7.p,8.(2020/03/30)

出典:厚生労働省『職場におけるダイバーシティ推進事業 報告書』p,18.p,19.p,20.(2020/09/15)

企業の意識改革

企業側の対応としては、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の考えのもと、性的マイノリティへの理解を深めることが重要となります。実際に、性的マイノリティ当事者からの働きかけがきっかけとなり、対応を始める企業も少なくありません。

まずは、性的マイノリティのみならず様々な人が働きやすい環境を整えることが重要であり、当事者から自身が性的マイノリティであることを打ち明けられた場合では、それを受け止め、どのような対応を求めているのか社員の声に耳を傾けることが大切です。

出典:厚生労働省『多様な人材が活躍できる 職場環境に関する企業の事例集』p,20~.p,28.(2020/03/30)

4. ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)に取り組む企業

最後にダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)に取り組む企業をご紹介します。

本橋テープ株式会社

細幅織物専門メーカーの「本橋テープ株式会社」では、自社で働く人材を「人財」と表し、社員は会社の「財産」と考えて経営しています。2010年に静岡県が取り組む「男女共同参画社会づくり宣言」に参加したことを機に、女性やシニア層を積極的に雇用しています。女性の管理職登用も積極的に行い、幅広い性別及び世代で働きやすい環境を整えています。

出典:厚生労働省『本橋テープ株式会社』(2021/11/17)

社会福祉法人白岡白寿会

介護業の「社会福祉法人白岡白寿会」では、性的マイノリティに対する理解を深め、性的マイノリティ当事者が働きやすい環境を整えています。実際に当事者の話に耳を傾け、当事者の意思を尊重し、トイレや更衣室は自認する性別の方を利用することを受け入れています。また、スタッフにも研修を行うことで、性的マイノリティに関する知識を共有する場を提供しています。

出典:厚生労働省『多様な人材が活躍できる 職場環境に関する企業の事例集』p,45.(2020/03/30)

株式会社ピアライフ

不動産業の「株式会社ピアライフ」では、もともと歩合制だった給与制度にメスを入れ、社員内の顧客の取り合いなどの悪環境を改善しました。また、独自の働き方改革「ワークアメニティ11」を導入し、社員の資格取得のバックアップや男性社員の育児休暇の取得推進、午後7時以降の残業禁止など、社員が働きやすい会社を目指しています。さらに、聴覚障害や外国人など、多種多様な人材に寄り添った雇用にも取り組んでいます。

出典:厚生労働省『株式会社ピアライフ | 働き方改革特設サイト』(2020/12/10)

大橋運輸株式会社

運輸業の「大橋運輸株式会社」は、将来的な人材確保の危機からダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの取り組みを始めた企業です。雇用に関しては、障がい者や外国人、性的マイノリティの雇用も積極的に行っており、特に性的マイノリティに関しては、スタッフの理解を深めるためにも経営者自らが知識を得て支援しています。

出典:厚生労働省『多様な人材が活躍できる 職場環境に関する企業の事例集』p,48.(2020/03/30)

日本電気株式会社

「日本電気株式会社」は、メタバース(仮想空間)によるダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンに取り組んでいます。メタバースはアバターを介することから、社会的問題から起こりうる偏見を防ぐことができ、幅広いタイプの人たちが公平にコミュニケーションを図れる場になることが期待されます。また、働く場所や時間も限られないため、柔軟な働き方が可能となります。

出典:総務省『メタバースとダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン』p,4.(2023/03/23)

5. まとめ:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの理解を深め、働きがいのある企業を目指そう

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンについて、その意味や企業が取り組む具体的なアクションをご紹介しました。今後、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの考えは、企業経営の基本となり、積極的に取り入れることで社会的貢献につながり企業のイメージアップにもつながります。

また、幅広い人材を受け入れることは、企業の経営の可能性が広がることにもつながります。ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの理解を深め、社会的にも働きがいのある企業を目指しましょう。

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