サステナビリティ・リテラシーとは?!サステナビリティ経営に必要なポイントを解説!

サステナビリティ関連の情報開示や目標設定の要請と合わせて、サステナビリティ経営やSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)推進の重要性が高まっています。実際に課題に取り組んでいくために、今企業に求められるものはなんでしょうか?

その一つがサステナビリティ・リテラシーです。今回は、サステナビリティー・リテラシーとは何か、なぜ必要なのか、そしてサステナビリティ・リテラシーを育むためにはどのようなことに注意する必要があるのかということについて解説します。

目次

  1. サステナビリティ・リテラシーとは

  2. なぜサステナビリティ・リテラシーが必要なのか

  3. 社内のサステナビリティ・リテラシーを育むために:4つのポイント

  4. まとめ:成功への鍵となるサステナビリティ・リテラシー

サステナビリティ・リテラシーとは

サステナビリティ・リテラシーとはなんでしょうか。国連は次のように定義しています。

「サステイナビリティ・リテラシー」とは、持続可能な未来を築くことに深くコミットし、そのために十分な情報に基づいた効果的な意思決定を支援するための知識、スキル、考え方のことである。

出典:UN "Raising awareness and assessing sustainability literacy on SDG 7" (2022.12)

今日の企業には、持続可能で公正な社会の実現に向け、サステナビリティ経営やSXを進めていくことが求められています。サステナビリティ・リテラシーの考え方は、その推進のために、実践的な知識や理解、スキルに加え、それを支える価値観や倫理観を育むことが必要であるとする考え方です。従来の、知識と理解が必要であるという言説からその範囲を拡大し、価値観、考え方の変容をも射程に入れているという点が特徴です。

出典:Arran Stibbe (ed.) "The handbook of sustainability literacy" (2009)

なぜサステナビリティーリテラシーが必要なのか

知識と理解に加えて考え方の変容やスキルの育成が必要であるとするサステナビリティ・リテラシー。これが今、企業に必要な力だとされているのはなぜでしょうか。その背景について説明します。

サステナビリティの問題の緊急性と変革の必要性

ストックホルム・レジリエンス・センターは、2023年9月にプラネタリー・バウンダリーの4度目の更新を発表しました。ここに示されているのは、人類の繁栄のために必要な地球上のシステムが、既に崩壊しつつあるということです。

このような事態において私たちは、あらゆるレベルでより早く強力でかつ適切なサステナビリティへの変革を起こすことが求められています。社会の重要な活動主体の一つである企業もその例外ではなく、変革への社会的責任を果たしていく必要があります。

Planetary boundaries

出典:Azote for Stockholm Resilience Centre (based on analysis in Richardson et al 2023) (2023.9)

企業への影響:変革は成長の機会である

サステナビリティに関わる今後の変化は、企業にリスクと機会を同時に与えるものです。デトロイトが2022年に経営者を対象として実施した調査では、回答者の99%が既に気候変動の影響を受けていると回答しています。

また自然関連リスクに関して、世界経済フォーラムは2020年のレポートで、世界の経済価値(GDP)の50%は自然に中度または高度に依存しており、今後リスクはさらに高まることが予想されると発表しています。

積極的な変革を進めていくことは、リスクへの備えを強化するだけではなく、消費者や投資家のエンゲージメントを高め、競争優位性を高めることにも繋がります。企業は、今後の必要な変化を成長の機会として捉えることができるかどうかが重要になってきています。

出典:デトロイトマーツグループ『デトロイト2022年CxOサステナビリティレポート』(2022.2)(p.5)

出典:WEF "Nature risk rising: why the crisis engulfing nature matters for business and the economy" (2020.1) (p.8)

社内のサステナビリティ・リテラシーを高めるために:4つのポイント

2023年に博報堂が全国の企業のサステナビリティ関連業務経験者を対象に実施した調査では、80%以上の企業が、サステナビリティの推進のために知識・理解の醸成のための取り組みを実施したと回答しています。

単なる知識・理解のための取り組みから、クライメート・リテラシー養成のための取り組みにして行くためには、どのようなことに気をつける必要があるのでしょうか。4つのポイントに絞って説明します。

出典:博報堂プロダクツ『企業のサステナビリティコミュニケーションに関する調査』(2023.5.23)(p.2)

(1)変革が目標、情報開示や目標設定はその過程!

コミットメントや最終的な変革を明確な目標にすることが必要です。近年、国際的なサステナビリティ関連の情報開示や目標設定を進める動きが強まり、日本でも多くの企業が情報開示や目標設定の国際基準を取り入れています。

環境省の2023年6月の発表によると、TCFDの賛同企業数と SBT認定企業数はどちらも世界で一位となっており、サステナビリティに対する国内の企業の高い関心がうかがえます。

しかし、重要なことはそれらの開示した情報や設定した目標をもとに実際に変革を進めていくことであり、情報開示や目標設定は変革、行動のための準備段階であると位置付けなくてはなりません。

出典:環境省『脱炭素経営に向けた取組の広がり』(2023.6.30)

(2)価値観や考え方まで掘り下げる

サステナビリティの問題は社会の仕組みと大きく関わっています。IPBES(生物多様性版IPCCと言われ、生物多様性について世界中の専門家や行政官が参加して研究成果をまとめ、政策提言を行う政府間機関)は、サステナビリティの問題の解決には社会変革が必要であるとした上で、下記のように、変革のための介入のインパクトを分類しています。

情報開示や目標設定は、最も影響力の小さい介入に分類されるものです。最もインパクトの大きい介入としては、価値観の変容による開発パラダイムからの転換が挙げられています。

問題の根本原因が社会の仕組みと関わっている以上、企業においても価値観や規範事態の再構築なしには、本当の意味でのサステナビリティの推進は難しいでしょう。なぜサステナビリティを目指すことが必要なのかを社員一人ひとりが理解し、会社として、サステナブルな企業文化を形成していくことが必要です。

社会変革の仕組み

典:IPBES『IPBES自然の多様な価値と価値評価の方法論に関する評価報告書 政策決定者向け要約』(2022)(p.37)

(3)社員全員のサステナビリティ・リテラシーを育むことで、全員参加の最速で最適なアクションを実行できる

サステナビリティは担当者だけの問題ではありません。サステナビリティへの変革はDXと同様に業界の枠を超え、あらゆるセクターに影響します。社内のあらゆる部門、あらゆる役職がこの影響を受けます。裏を返せば、あらゆる人が、サステナビリティ推進のアクターとしてポジティブな変化を生むことができるということです。

今後適切なスピード感で実効性のある変化を生むためには、社員全員を動員できるかが重要であり、そのためには社員全員がサステナビリティ・リテラシーを身につけているかどうかが鍵になります。これは、すべての社員に対して同質で精緻なサステナビリティ・リテラシーを養成しなければならないということではありません。価値観や考え方を共有した上で、部門や役職に合わせて異なるスキルや知識を育むことが重要です。

(4)問題に対する適切な理解

現状を理解し、変革への目標をたて、行動していく際に前提となるのは、サステナビリティの問題として自分の企業の内部で、地域で、国内で、そして世界で今何が起こっているのか、今後どうなっていくのかに関する適切な理解を育むことです。

まとめ:成功への鍵となるサステナビリティ・リテラシー

企業が今後適切な変革を進めていくことができるかどうかは、サステナビリティ・リテラシーの養成を進めていくことができるかどうかにかかっています。上記にあげたような点に注意して社員への働きかけを行うことで、サステナビリティ・リテラシーが育まれ、企業においても効果のある変革を起こすことが可能になります。

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