30by30とは?意味や意義をわかりやすく解説

自然環境保護の取り組みである30by30(サーティ・バイ・サーティ)とはどのようなものであるのか、わかりやすくご説明します!生態系の保全は環境問題における重要課題です。生物多様性は、人間が生活や産業などあらゆる面において恩恵を受けている、守っていかなければならないものです。30by30は生態系保全の有効手段であり、世界目標としても検討されています。また30by30と関係の深いOECMについても取り上げます。

目次

  1. 30by30とは

  2. 30by30のロードマップ

  3. OECMについて

  4. まとめ:30by30の取り組みを理解し、自然共生サイトの保全に協力しよう!

1. 30by30とは

30by30は生態系の保全エリアに関する目標です。近年日本だけでなく世界各国でも30by30の動きが広まっています。まずは30by30の基本的な考え方を押さえておきましょう。

30by30は自然エリアの保全目標

30by30とは、2030年までに陸と海の30%以上を保全・保護しようとする目標です。2030年までに生物多様性の損失を食い止め回復させる、「ネイチャーポジティブ」というゴールを達成するための取り組みのひとつとなります。具体的には国立公園などの保護地域の拡充・管理と、保護地域以外の場所で生物多様性保全に貢献する場所(OECM)の認定が柱となっています。

出典:環境省「30by30基本コンセプト」P1-3

世界目標として検討中

30by30は、2020年までに陸域の17%、海域の10%以上を保全するとした愛知目標の次の目標に位置づけられる、「ポスト2020生物多様性枠組」の主要な目標として検討されています。2021年6月に英国で開催されたG7サミットでも、G7各国が少なくとも陸と海の30%を自国において保全するとしました。

出典:環境省「戦略計画2011-2020と愛知目標」

出典:環境省「30by30目標が目指すもの」p1

2. 30by30のロードマップ

ではこの30by30を実現するためには、どのような取り組みやステップが必要となってくるのでしょうか。そのためには、行政による保護地域の拡大とともに、民間が所有・管理するエリアについても保全エリアとして認定する仕組みがキーとなります。30by30のロードマップについて解説します。

保護地域の拡大など

わが国では陸域(湖沼などを含む)の20.5%、海域は13.3%が既に保護地域となっています。陸域については、現状からの上乗せを目指して、国立・国定公園の新規指定・大規模拡張候補地を選定する計画です。海域については、特に公園としての利用価値が高く多様な生物が生息する沿岸域において、2030年までに国立公園の面積を倍増させることを目指しています。

alt属性(30by30ロードマップ)

出典:環境省「30by30とは」

出典:環境省「30by30ロードマップ本文」P2

OECMの設定

OECMとはOther effective area-based conservation measuresの略語で、国立公園などの保護地区ではないものの、生物多様性の保全に有効な地域のことをいいます。

民間の取組によって生物多様性の保全が図られているエリアについて、環境省が「自然共生サイト」として認定する仕組みが2023年4月からスタートしました。自然共生サイトは生物多様性保全のために管理されている場所だけでなく、森林・企業敷地・都市の緑地なども管理や生物多様性保全の状況によって認定の可能性があります。

出典:環境省「30by30ロードマップ本文」P3

生物多様性などの見える化

ネイチャーポジティブ実現のためには、国土の30%という面積の目標を達成するだけでは十分ではありません。都市部や里山など、原生的な自然以外の場所でも生物多様性が豊かな場所を確保していく必要があります。

保護するべきエリアを把握するために、生物多様性の現状や保全上効果的な地域を可視化したマップを、2024年を目途に作成することが企図されています。

出典:環境省「30by30ロードマップ本文」P3-4

質を高める取り組み

保全されたエリアとその周辺エリアの自然環境の質を高めていくことが、生態系が健全に機能するためには不可欠です。原生的な自然だけではなく、人々が生活する場においても、自然環境の質を高めていくことが重要なのです。

そのため、様々な公的・民間資金を積極的に活用するとともに、マニュアルや情報を提供し、自然環境保全の取り組みを支援することが検討されています。

出典:環境省「30by30ロードマップ本文」P4

関連施策との連携

30by30の実現には、地域レベルで行われている関連した各種施策との連携を促進する必要があります。脱炭素・地域循環共生圏・プラスチックの資源循環・有機農業・都市におけるグリーンインフラなどの取り組みについて、自然共生サイトの取り組みと連携させることで、相乗効果が期待できます。

出典:環境省「30by30ロードマップ本文」P4-5

3. OECMについて

30by30 目標は、主に OECM により達成を目指すとされています。OECMにはCO2の吸収をはじめとするさまざまな効果があり、全国各地でいろいろな事例が出てきています。OECMの効果や事例、認定基準について解説します。

OECMによって期待される効果

OECM認定によって、以下のような効果が期待されます。

  • CO2の吸収・固定、防災・減災に寄与する自然の保護

  • プラ代替バイオマス資源の持続的な生産

  • 鳥獣被害の防止や、恵み豊かな里山の維持

  • 地元の安全安心な食べ物の生産

  • 免疫力を高め、健康な生活を支える身近な自然とふれあう

  • 疲れを癒し、充実した余暇を楽しみ、心を潤す

里地里山や企業林や社寺林など生物多様性の長期的な域内保全に貢献する地域は、OECM認定の可能性があります。

出典:環境省「30by30」

自然共生サイト試行事例

2022年度の自然共生サイト試行として、以下のような事例があります。

  • つくばこどもの森保育園(保育及び環境教育のための水田ビオトープ)

  • 三井住友海上駿河台ビル及び駿河台新館(ビルの屋上緑地・壁面緑化・植栽・街路樹)

  • 日本製紙 鳳凰社有林(高山植物等が生息する環境林分)

  • 富士通 沼津工場(自然樹林・整備樹林、茶畑等の庭園、芝生)

  • シャトー・メルシャン 椀子ヴィンヤード(ブドウ畑及び圃場としての草原)

  • 阪南セブンの海の森(大阪府内有数のアマモ場)

環境省では、自然共生サイトの認定を加速させるため、調査サイトが選定されています。調査サイトには、地区として自然共生サイトに登録・申請することが難しい地点や、生態系回復活動を行っている地点が登録されており、登録・申請手法や生態系回復手法の調査が行われています。

これらの知見は、のちに他の地域の自然共生サイト認定及び保護にも活用される予定です。調査サイトには以下のような事例があります。

  • 宍塚の里山(茨城県土浦市)

  • 久米島のサンゴ礁(沖縄県久米島町)

  • 久保川イーハトーブ世界(岩手県一関市)

  • 鳥川ホタルの里(愛知県岡崎市)

  • 道民の森(北海道当別町)

  • 恩納村サンゴ礁(沖縄県恩納村)

出典:環境省「OECMの設定・管理に関するこれまでの成果について」P6-8

自然共生サイトの認定基準

OECMの認定基準については、環境省のウェブサイトで公表されています。

・境界・名称(地理的に確定されている・面積が算出されているなど)

・管理権限(管理権限の存在・管理の衝平性など)

・管理措置(管理目的や内容の明確化・管理体制の継続性など)

・生物多様性(保全上の重要性・多様な生態系など)

・管理の有効性(管理の内容・恒常性・モニタリングなど)

出典:環境省「自然共生サイト 認定基準」P1-9

4. まとめ:30by30の取り組みを理解し、自然共生サイトの保全に協力しよう!

30by30は2030年までに、生物多様性に資する陸と海の30%以上を保全しようとする目標です。30by30実現には、国立公園など保護用地の拡大のほか、OECMの設定も重要なポイントとなります。

OECMは生物多様性が保護・管理されているエリアを幅広く認定するもので、民間所有の土地も都市部を含めいくつも認定されています。30by30の取り組みやOECMを深く理解し、自社が保有する土地があれば適切な管理を、さらには地域の生物多様性が高い土地の保全への協力を検討してみましょう。

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