COP28の重要課題とは?1.5℃目標や石油産業について詳しく解説!

アラブ首長国連邦(United Arab Emirates)で2023年11月から開催されるCOP28サミットでは気候変動に対する重要課題と具体的な目標が検討されます。2022年エジプトで開催されたCOP27サミットでは化石燃料の段階的な削減や石炭火力の削減など、具体的な行動方針の策定が焦点となり、さらに多くの課題も明らかとなりました。

この記事ではCOP27サミットまでのテーマや具体的対策を振り返るとともに、COP28サミットの開催で重要視される課題について解説します。

目次

  1. COPの概要とCOP27の結果

  2. COP28の開催と重要視される課題

  3. 1.5℃目標の現状とカーボンニュートラル

  4. 石油を中心とした産業との気候変動対策

  5. まとめ:COP27、COP28の情報を取り入れ、世界のカーボンニュートラル事情を取り入れよう!

1. COPの概要とCOP27の結果

COP27は気候変動対策の取組みを一歩前進させるための重要な節目として注目を集めました。サミットは各国の期待や思惑を反映する場となり、新しい目標や取り組み、そして緊張関係も明らかにされました。

(1)COPとは何か?

「COP」とは「Conference of the Parties」の略で、日本語では「締約国会議」と訳されるものです。これは「条約を結んだ国々による会議」という意味で、多くの「締約国会議」が存在しますが、特に「COP」として報道されるのは気候変動に関する会議です。

COPの始まりは、1992年に採択され、1994年に発効した「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」に関連しています。この条約は各国が共同で気候変動問題の解決に取り組むためのもので、197か国・地域が締結・参加しています。この条約のもと、国際的な会議であるCOPが開催され、「京都議定書」や「パリ協定」といった具体的な枠組みが定められています。

出典:経済産業省・資源エネルギー庁『あらためて振り返る、「COP26」(前編)~「COP」ってそもそもどんな会議?』(2022/3/3)

(2)COP27での主要な議論の内容

COP27は、気候変動枠組条約(UNFCCC)の第27回締約国会議として、2022年11月7日から18日までエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催され、気候変動の影響を最小限に抑えるための具体的な取り組みや方針が議論されました。

特に、温室効果ガスの排出削減や再生可能エネルギーの導入、持続可能な開発の推進など、多岐にわたるテーマが取り上げられました。また、各国が自らの目標を設定し、それを達成するための具体的な行動計画を策定することが求められました。具体的な決定事項をいくつか紹介します。

科学的知見と行動の緊急性

  • IPCC 第 6 次報告書第2・第3作業部会の成果への言及 等

エネルギー

  • 低炭素エネルギー及び再生可能エネルギーの増加 等

気候変動の緩和

  • パリ協定の 1.5℃ 目標に基づく取組の実施の重要性、整合的なNDC(各国が定めた温室効果ガス排出削減目標) の再検討・強化を求める 。グラスゴー気候合意の内容を引き継いで、全ての締約国に対して、排出削減対策がとられていない石炭火力発電を徐々に減らし、また非効率な化石燃料補助金からのフェーズ・アウトを含む努力を加速することを求める 等

気候変動への適応

  • 世界全体の適応ゴールに関する「グラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画」の作業の成果を歓迎 等

出典 環境省『COP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)の結果概要について』

2. COP28の開催と重要視される課題

COP28が目前に迫る中、そのアジェンダや主要テーマには多大な期待が寄せられています。特に、気候変動と生物多様性の保全を結びつける取組みは、今後の気候変動対策の重要課題であると認識されています。

(1)COP28の主要なテーマと期待

2023年の「グローバル・ストックテイク(パリ協定に基づいて各国が定めた温室効果ガス排出削減目標(NDC)の世界全体の進捗状況を評価する仕組み)」は、パリ協定の成果や進捗を再評価するための重要なプロセスとなります。各国の温室効果ガス削減の取り組みや、その効果についての報告と評価が行われることから、COP28では議論の中心となるでしょう。

また、2023年のCOP28は、産油国のUAE(アラブ首長国連邦)がホスト国となっていますが、これまで議論されてきた、化石燃料の削減と再生可能エネルギーへの移行という路線は変わらないと考えられています。

出典:東京商工会議所『WWFジャパン担当者に聞く、COP27の成果とCOP28への展望(後編)』

(2)気候変動と生物多様性の関連性

気候変動は現在「気候危機」とも称され、人間を含む全ての生物にとって大きな問題となっています。

気候変動は種の絶滅や生息地の変動などを引き起こし、生物多様性にも影響を及ぼします。生物多様性は人類の生存に欠かせないものであり、生物には国境が存在しないために、国際的な取り組みによって保護する必要があります。

生物多様性条約と国連気候変動枠組条約が採択された1992年のリオサミット以降、気候変動と生物多様性の保護に関する国際的な取り組みが進められてきました。

近年の国連会議では、これら2つの課題が相互に関連していることが強調され、対応が求められており、COP27では「シャルム・エル・シェイク実施計画」によって、気候変動の緩和・適応には生態系の保護・保全・再生が重要であると述べられました。

出典 環境省『気候変動と生物多様性の現状と国際的な動向』p.1

3. 1.5℃目標の現状とカーボンニュートラル

気候変動対策の取組みの中心には、1.5℃目標の達成が掲げられています。この目標の重要性を認識しつつ、各国や非国家アクターがカーボンニュートラルを目指して様々な施策を推進しています。

(1)世界のカーボンニュートラルの課題と目標

1.5℃目標とは、産業革命前と比較して地球の平均気温の上昇を1.5℃以下に抑えることを指しています。既に世界では地球規模での気候変動が発生しており、非国家アクター、つまり地方政府や企業、市民団体などによる、国家を超えた連携や具体的な行動を求める声が大きく、COPでもその取り組みが度々発表されています。

世界的な取組みの成果もあり、国際的な枠組みや連携が実現するなど、気候変動対策を加速させる好循環が生まれつつあります。

出典 東京商工会議所『WWFジャパン担当者に聞く、COP27の成果とCOP28への展望(後編)』

(2)日本の脱炭素化への取組み

日本は、2050年のカーボンニュートラル実現を宣言しました。

脱炭素化を推進する具体的な取組みの施策としては

・再生可能エネルギーの導入拡大

・エネルギー効率の向上

・水素の活用

・燃料電池技術の開発

などが挙げられます。

また、企業には、環境配慮型の製品の提供や、サプライチェーン全体でのCO2削減など持続可能なビジネスモデルを改めて構築することが求められています。

出典:経済産業省『今後の再生可能エネルギー政策について』p.2 p21 p.12

4. 石油を中心とした産業との気候変動対策

気候変動への対策は、国際社会の重要な課題となっています。特に、化石燃料産業は大きな排出源としての責任を負っているため、低炭素化等への取組みが注目されています。

COP28を目前にし、石油産業との連携と調整が促進されていく中で、その対策の方向性や課題が明確になってきました。

 (1)化石燃料の段階的な削減の必要性

アル・ジャーベル氏(COP28の議長:アブダビ国営石油会社CEO)の発言を受けて、化石燃料の段階的な削減は、気候変動の抑止として避けられないという認識が広がってきました。

しかしながら、石油やガス産業においては、Scope 3(製品の製造過程や使用、廃棄による排出)の排出量の計上が十分ではないという問題が指摘されています。

計算が正確でない以上、実際の排出量が公表されているものよりも大きい可能性があり、対策の取組みが不十分であるとの懸念が持たれています。

出典 ロイター『化石燃料の段階的縮小は不可避=UAEのCOP28議長』

(2)COP28は石油会社トップが議長

アラブ首長国連邦(UAE)政府は、今年11月にドバイで開催される国連の気候変動会議(COP28)の議長に、アブダビ国営石油会社のジャーベル最高経営責任者(CEO)を任命することを決定しました。

ジャーベル氏は、UAEの気候変動特使としての経験があり、過去10回以上のCOPに参加した経歴を持っていますが、環境NGOの気候行動ネットワーク(CAN)は、気候危機の原因となる産業のトップが議長を務めることに強く反対しており、これは利益相反であり、国連の気候会議が化石燃料ロビイストによって乗っ取られることに等しいとの立場を示しています。

出典:朝日新聞『COP28議長に石油会社トップ 「乗っ取りだ」環境NGO反発』(2023/1/12)

5. まとめ:COP27、COP28の情報を取り入れ、世界のカーボンニュートラル事情を取り入れよう!

COP(締約国会議)は、気候変動に関する国際的な会議で、特に「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」に基づくものとして知られています。2022年に行われたCOP27では、温室効果ガスの排出削減や再生可能エネルギーの導入など、気候変動対策の具体的な取り組みが議論されました。

日本も2050年のカーボンニュートラル実現を宣言しており、再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上などの施策を推進しています。

しかし、カーボンニュートラルの達成には石油産業との連携や調整、さらには化石燃料の段階的な削減が必要とされており、特にCOP28の議長に石油産業のトップが任命されたことについては議論が続いています。

企業内でも、COPでの議論から世界におけるカーボンニュートラルに向けたトレンドを掴み、最先端の取り組みを行っていきましょう。

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