固体電池の市場の動向と固体電池の概要を分かりやすく解説!

本記事では、全固体電池の最新の市場動向と環境への影響に焦点を当てて解説します。全固体電池は、その高いエネルギー密度と安全性の特徴から、電気自動車や再生可能エネルギーの貯蔵技術としての次世代の電池として大きな注目を集めています。

しかし、全固体電池の実用化に向けては、技術的な課題やコスト面での問題がまだ存在します。本記事では、これらの課題を詳しく探るとともに、市場の最新の動向や日本の産業戦略についても詳しく解説します。

目次

  1. 全固体電池の概要

  2. 全固体電池の環境への貢献

  3. 全固体電池の市場

  4. まとめ:全固体電池の市場に注目すると共に、環境問題への関心を持とう!

1. 全固体電池の概要

(1)全固体電池とは?

全固体電池とは、正極と負極の二つの活物質と、それらに接している電解質から構成される電池の一種で、その電解質が固体であることが特徴です。これまで電解質は液体が一般的でしたが、全固体電池ではすべてが固体で構成されています。

安全性、寿命、出力など多くの点で、電解液を用いた電池を上回る性能を持つことから大きな期待が寄せられています。しかし、実用化についてはまだ開発途上で、特に電気自動車(EV)の電源として注目を集めています。

全固体電池の特徴としては、発火の危険が小さく、安全であること、温度変化に強いこと、急速充電が可能であることなどが挙げられます。しかし、全固体電池の開発にはまだ課題があり、イオン伝導率の高い材料の探索や電極中で活物質と電解質の接合を維持することの難しさなどが挙げられます。

出典:産総研マガジン『全固体電池とは?科学の目でみる、 社会が注目する本当の理由』

(2)半固体電池とは?

半固体電池とは、電解質に液体と固体の中間であるゲル状の物質を使っている電池です。この電池は、電解質としてゲル状の物質を使用することで、可燃性の液体を使用するリチウムイオン電池に比べて、発火のリスクを大幅に減少させることができます。実際にEV内で衝突などの衝撃を受け、電池が破損する場合を想定した実験では、リチウムイオン電池はショート後すぐに電解質が気化し、煙を発生させてしまうのに対し、半固体電池は煙を発生させませんでした。今後の研究では、EV用の半固体電池の実用化を目指し、電池の大型化や低温での使用時間の短縮などの課題の改善が進められる予定です。

出典:NHK「“半分”固体に商機あり!? 「いいとこ取り」電池の可能性は」(2022/01/27)

2. 全固体電池の環境への貢献

(1)全固体電池とカーボンニュートラル

全固体電池は、電解質が固体であることから、化学的に安定しており、副反応が起こりにくく、材料が劣化しにくいという特性を持っています。また、電解質が漏れ出す心配がなく、高温でも動作可能であるため、電極材料の選択自由度が広がり、少ないスペースで高電圧・高容量のバッテリーを実現することが可能です。

これらの特性により、全固体電池はEVの航続距離を伸ばし、価格を抑えることが可能となり、より多くの人々がEVを利用することが可能となります。これにより、モビリティが排出するCO2を大幅に削減することが可能となり、カーボンニュートラル社会の実現に大きく寄与します。

出典:HONDA『カーボンニュートラル社会に向けて次世代電池がEVを変える!全固体電池の研究』

(2)全固体電池の活用方法

全固体電池の用途として期待されているものの1つは電気自動車です。現在、電気自動車にはリチウムイオン電池が使われていますが、全固体電池であれば、可燃性の有機溶媒を含まないので、事故による発火などのリスクがより小さくなることが期待されています。また、現在の電気自動車はガソリンによる給油に比べると時間がかかりますが、全固体電池であればより急速に充電することが可能になります。

また、熱に強い特徴を生かせば電子基板に直接ハンダ付けできるので、電子機器のバックアップ電源やIoTセンサ(インターネット通信をおこない情報収集・管理するセンサ)などでの活用も想定されています。パソコンやスマートフォンなどに使用すれば、より長時間、パワフルな作動が実現できるでしょう。

その他、リチウムイオン電池に比べて、より大容量、大出力が実現できることから、飛行機や船などでの活用も期待できますし、高温から低温まで温度変化に強いことから、宇宙空間で使用されるデバイスなどにも用途が広がることが期待されています。

出典:村田製作所『第4回 全固体電池とは?基礎知識や従来の電池との違い、実用化の可能性について専門家が解説』

3. 全固体電池の市場

(1)全固体電池の市場動向

全固体電池の世界市場は、2022年では60億円、2040年には3兆8,605億円に達すると予測されており、これは2021年比で約1072倍の増加となり、以下のようなものでの活用が期待されています。

全固体電池は、小型のものであればIoT機器やウェアラブルデバイスに搭載が進むと予想されています。スマートフォンなどの民生機器への採用は現状では低いものの、安全性や形状の自由度からワイヤレスイヤホンやスマートウォッチなどでの搭載が期待されています。

さらに、医療用、インフラ、航空・宇宙分野などでの利用も進行中で、特にエネルギー密度が高い全固体電池は、ドローンや空飛ぶクルマなどの飛行体用途での研究開発が活発に行われています。

出典:富士経済グループ『全固体電池の世界市場を調査』(2022/11/22)

(2)日本の全固体電池の産業戦略

経済産業省が公開している産業戦略から分かる全固体電池の産業戦略を解説します。

蓄電池産業政策の反省点

蓄電池産業政策は、このままでは全固体電池の実用化に至る前に、日本企業は疲弊し、市場から撤退する可能性が考えられており、以下のような反省点があげられています。

  • 全固体電池の技術開発に集中投資し、次世代技術で維持・拡大していくことが基本戦略だった点。

  •  中・韓企業が液系リチウムイオン電池(液系LiB) の技術で 日本に追いつき、コスト面も含めて国際競争力で逆転している点。 

  • 日本の産業界は国内志向であったため、グローバル市場の成長を十分に取り込めてこなかった点。

蓄電池産業政策の今後の方向性

  • 従来の戦略を見直し、我が国も民間のみに委ねず政府も上流資源の確保含め、液系LiBの製造基盤を強化するための大規模投資への支援を行い、国内製造基盤を確立する。

  • グローバルを意識して国内で確立した技術をベースに、グローバル市場をリードするプレーヤーが競争力を維持・強化できるよう、海外展開を戦略的に展開し、グローバルプレゼンスを確保する。

  • 全固体電池など次世代電池を世界に先駆けて実用化するために技術開発を加速し、次世代電池市場を着実に獲得する。

出典:経済産業省『蓄電池産業戦略』(2022/8/31)(p.12)

4. まとめ:全固体電池の市場に注目すると共に、環境問題への関心を持とう!

本記事では、全固体電池の市場動向、その環境への影響、そしてその課題と解決策について詳しく解説しました。全固体電池は、その高いエネルギー密度と安全性から、電気自動車や再生可能エネルギーの貯蔵における次世代の電池技術として注目されています。

しかし、その実現にはまだ多くの課題が存在します。これらの課題を解決し、全固体電池の実用化を進めるためには、継続的な研究開発と市場の拡大が必要です。これらの情報を活用し、全固体電池の市場動向を理解し、環境問題への対策としての全固体電池の可能性を探求していきましょう。

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