自動車におけるLCAとは?各自動車メーカーの対応もわかりやすく解説

環境問題を語るうえで欠かせないLCAとは何か、そして自動車との関係性について、わかりやすく解説します!LCAという考え方自体は、コカ・コーラ社が1969年に実施した飲料容器を対象とした研究が起源であると言われており、50年以上も前からあったものです。

現在LCAは製品やサービスの環境負荷を考えるうえでは、欠かせない視点となっています。中でも工業製品においては、カーボンニュートラルに向けてLCAの重要性がますます高くなっています。

本記事では日本の基幹産業である自動車とLCAの関係について、メーカーの事例も含めてご紹介します。

目次

  1. LCAとは?自動車におけるLCA

  2. 各自動車メーカーのLCA対応

  3. LCAの課題

  4. まとめ:LCAについて理解し、環境問題解決に活用しよう!

1. LCAとは?自動車におけるLCA

環境問題について考える際、重要なポイントとなるLCA。製品製造時の環境負荷だけでなく、製造前後における環境負荷も考慮しようとするLCAについて、その意味や自動車との関係について解説します。

LCAとは

LCAとはライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)の略で、製品やサービスの原料調達から廃棄までのライフサイクルを通じて、環境への影響を評価する手法です。

たとえば製品Aの方が製品Bより生産時の環境負荷が大きかったとしても、実際にユーザーに使用されるときや廃棄されるときには反対に、製品Bの方が環境負荷が大きく、ライフサイクルを通して見ると製品Aの環境負荷の方が小さいという可能性もあります。

CO2など温室効果ガスの排出量削減にあたっては、製品の生産時のみに着目するのではなく、ライフサイクル全体を考慮した排出量及び削減量を評価することが重要なのです。

LCAの概要

出典:環境省「再生可能エネルギー及び水素エネルギー等の温室効果ガス削減効果に関するLCAガイドライン」

自動車とLCA

自動車では排出ガスが温室効果ガスになることから、以前より自動車による環境負荷が問題となっていました。そのため昭和41年から新車に対する排出ガス規制が行われ、年々強化されています。

しかしこれまでの規制は「Tank to Wheel(TtW)」といって、走行時の排出のみに着目した算定対象範囲(バウンダリ)であり、ライフサイクルを通じた環境への影響を考慮できていなかったことから、近年では「Well to Wheel(WtW)」という燃料精製段階までを含むバウンダリが注目されています。

さらにLCAでは、WtWに加えて素材調達・製造・廃棄までが算定対象範囲となり、世界各国で電気自動車とガソリン車のLCA比較などの分析が進んでいます。

Tank to wheel、Well to Wheel、LCAのイメージ 出典:環境省「自動車による排出量のバウンダリに係る論点について」P6-13

出典:国土交通省「自動車の排出ガス規制(新車)」

2. 各自動車メーカーのLCA対応

自動車産業は日本における基幹産業であり、環境問題との関わりも特に重要です。国内自動車メーカー各社のLCA対応についてご紹介します。

(1)日産自動車

日産自動車株式会社は、車の使用だけでなく、製造に必要な原料採掘・製造・輸送・廃棄に至るすべての段階において、LCA手法で環境負荷を定量的に把握し、包括的な評価をしています。新規導入技術にあたってもLCAを実施したうえで、走行時や製造工程の効率化などを進めることで、より環境に配慮した車の開発に取り組んでいます。

またホームページ上で自社製の各モデルについて、LCAによる排出量を旧モデルと現行型で比較したものを掲載しています。たとえば「e-POWER」各種においては、同型のガソリン車と比較し18-23%のライフサイクルCO2削減を達成していることが示されています。

出典:日産自動車「ライフサイクルアセスメント (LCA)」

(2)マツダ

マツダ株式会社は、環境負荷低減の機会を特定する手段として、LCAを2009年より採用し、各段階における環境負荷低減に向けた活動に取り組んでいます。環境性能に関わる新技術を搭載した車においては、LCAの国際規格(ISO14040/ISO14044)に準拠した手法に基づいた、客観性・信頼性のある評価を行っています。

2018年度には世界5地域においてLCAを実施し、地域によって内燃機関自動車と電気自動車のライフサイクルでのCO2排出量の優位性が変化することを確認しました。こうしたLCAの結果も踏まえ、適材適所の技術開発を進めています。

出典:マツダ「LCA(ライフサイクルアセスメント)」

(3)スズキ

スズキ株式会社でもLCAの手法を採用し、走行段階だけではなく原材料の製造から廃車処理までのライフサイクル全体を対象に、環境負荷を具体的な数値で評価し、環境負荷の低減を企図して、LCAの結果を製品開発や事業活動に活かしています。

走行段階のCO2排出量を削減する研究開発も進められており、例えば「スイフト」というモデルでは、ハイブリッド技術の搭載により前モデル比でCO2を約4.3%削減しています。そのほかのモデルについても、ホームページ上にLCAライフサイクル段階別CO2排出量割合と削減状況を掲載しています。

出典:スズキ「LCA」

(4)ホンダ

本多技研工業株式会社では、2002年には環境負荷を事業の全領域において定量的かつオンタイムに把握する「Honda LCAシステム」を構築しています。このシステムを活用して生産・購買・販売・オフィス・輸送など各部門が低炭素化に向けて、活動を展開してきました。

本多技研工業株式会社は、LCAの推進はCO2排出低減だけではなく「カーボンニュートラル」「クリーンエネルギー」「リソースサーキュレーション」のTriple Action to ZEROを目指すうえにおいても重要な取り組みであると位置づけ、開発段階における低炭素化の提案・資源循環による環境負荷低減などにも幅広く活用していくとしています。

出典:本多技研工業「ESGデータブック2022」P17

出典:本多技研工業「環境マネージメントシステム『Honda LCAシステム』を構築」(2002/6/12)

(5)トヨタ

トヨタ自動車株式会社は1997年以降、すべての乗用車とその部品に対してLCAを実施し、従来品対比の環境性能向上を確認しています。LCAによる検証結果は各製品カタログにも掲載し、一般公表されています。

トヨタ自動車株式会社では、世界的に新たな規制としてWtWやLCAの導入が進むことを見越して、製品製造以上にエネルギー製造過程におけるCO2排出量低減がより重要になると考えています。特に電気自動車は電池製造において多くのCO2が排出されるため、再生可能エネルギーを100%使用した電池セル製造でCO2を30%程度削減することを目指しています。

出典:経済産業省「2030年に向けたトヨタの取組と課題」(2020/9/14)P10-12)

出典:トヨタ自動車「The MIRAI LCA レポート」(2015/6/10)P4

3. LCAの課題

自動車メーカーがそれぞれに対応しているLCAですが、手法としての課題もあります。基本的な考え方については国際基準があるものの、実際の運用は統一されているわけではありません。LCAの課題について解説します。

手法の確立

LCAは国際基準であるISO14040において規格化されてはいますが、その詳細な手法については、企業や地方自治体などの実施主体によりまちまちです。LCAは多くが対象製品についてデータを収集し、環境負荷項目に関する明細一覧を作成する「インベントリ分析」によるものですが、結果は総負荷の算出に終わり本来の評価(LCAの「A」:アセスメント)までは至っていません。

LCA はまだ発展途上であると言われており、今後は影響評価までできる手法として確立していくことが望まれます。

出典:経済産業省「ライフサイクルアセスメント」P153

分析データの整備

LCAに使用する分析データを整備することも課題です。LCAに用いるデータは仮定や前提によって大きく変化します。またデータそのものの精度・誤差・偏差によっても結果がばらつく可能性があります。データを網羅的にカバーしようとすれば、そのためのコストがかかることも考えられるでしょう。

LCA用のデータベースは各種存在しており、今後より一層のデータ整備や共通化が期待されます。

出典:経済産業省「ライフサイクルアセスメント」P153-154

4. まとめ:LCAについて理解し、環境問題解決に活用しよう!

LCAは製品のライフサイクル全体を通じて、環境への影響を評価する手法です。環境負荷軽減を考える上では、製造過程だけでなく原材料調達や廃棄までも含めてトータルの環境負荷を把握する必要があります。

自動車においては主に走行時の排出ガスへ着目した規制が行われてきましたが、今では各メーカーともLCAによる環境負荷把握を実施しています。手法としてまだ発展途上と言われているLCAですが、内容を理解して、環境問題解決に向けて活用しましょう。

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