ダボス会議(世界経済フォーラム)とは?意味や目的、2023年の世界経済の見通し

ダボス会議とは、世界の政治や経済のリーダー達が一堂に会し、世界的規模の課題を話し合う会議です。ダボス会議は、企業のトップの参加も可能であり、参加することで自社をアピールすることにもつながります。

ここでは、ダボス会議がどのような会議であり、どのような人たちが参加するのか、また、その背景にはどのような歴史があったのかなどを分かりやすくご紹介します。各界のトップが集うダボス会議に注目して、時代の流れに沿った企業を目指しましょう。

目次

  1. ダボス会議とは?

  2. ダボス会議の主な参加者

  3. ダボス会議の歴史と世界に与えた影響

  4. 2023年ダボス会議後の世界経済の見通し

  5. まとめ:ダボス会議を注視して世界の行く末を把握しよう!

1. ダボス会議とは?

ダボス会議は、スイスのダボスという村で開催される会議のことです。その会議ではどのような話し合いが行われているのか、ダボス会議の意味や目的をご紹介します。

(1)ダボス会議の意味

ダボス会議とは、世界経済フォーラムが主催する年次総会の通称であり、基本的に年に1回、1月にスイスのダボスで開催されます。ダボスでの開催は、世界経済フォーラム創設者のクラウス・シュワブ氏の意向によるもので、スイスとドイツの文化を象徴する山岳地帯にあるダボスの精神は協調と平等を表すとし、世界経済フォーラムの基本理念とされています。

出典:世界経済フォーラム『世界経済フォーラム50年の軌跡とこれから:年次総会のハイライト、そしてその先へ』(2020/01/21)

(2)ダボス会議の目的

ダボス会議の目的は、グローバル企業のリーダーや学者、活動家、若者のリーダー、市民社会のリーダーなど、様々な立場、身分、考え方を持つ、人類共通の未来に利害関係のある全ての人々を招集し議論をすることで、世界的な規模で経済問題に取り組むことです。ダボス会議の理念は、世界経済フォーラムの「ステークホルダー資本主義」に基づいたものとなっています。

これは、企業は株主、従業員、消費者、供給業者、地域社会など企業に関わる全てのステークホルダーに利益をもたらすべきだという考えであり、ダボス会議には政治、経済、学術等のリーダーの交流に弾みをつけるという目的もあります。

出典:世界経済フォーラム『世界経済フォーラム50年の軌跡とこれから:年次総会のハイライト、そしてその先へ』(2020/01/21)

出典:総務省『世界経済フォーラム(WEF) / World Economic Forum | 国際機関 | 世界情報通信事情』(2017/06/05 )

出典:内閣府『マルチステークホルダーの考え方 - 持続可能な未来のためのマルチステークホルダー・サイト - 』(2022/11/15)

2. ダボス会議の主な参加者

ダボス会議の参加者は、世界経済フォーラムからの招待によって参加できる仕組みとなっています。2023年1月の主な参加者は、国家元首・政府首脳が52名、財務省56名、貿易担当相30名、中央銀行総裁19名、各産業分野の企業最高経営責任者(CEO)60名という顔ぶれです。

参加者の特徴として、北欧、西欧の富裕層に偏りがちですが、世界経済フォーラムでは、アジアや中南米、アフリカなども積極的に招待しています。しかし、ウクライナ侵攻で制裁を受けたロシアの招待はなく、参加者の招待は、世界情勢が大きく関係しています。

出典: SWI swissinfo.ch『地政学的、経済問題を反映 今年のダボス会議の参加者 』(2023/01/13)

3. ダボス会議の歴史と世界に与えた影響

ダボス会議は、2020年1月に50周年を迎え、その50年の間にはさまざまな歴史が刻まれてきました。ここでは、ダボス会議が50年間で世界に与えた影響とその歴史をご紹介します。

(1)1970年代

1971年:第1回年次総会

1973年:環境に対する先見的な警告

1976年:アラブ世界と欧米の橋渡し

1979年:中国への扉を開く

1971年に、世界経済フォーラムの前身となる「ヨーロッパ経営フォーラム」が、ダボスで初めて開催されました。この時はまだ、経営技術についての意見交換の場でしたが、1973年に世界的規模の経済成長における持続可能性に疑問が投げかけられ、社会の経済の発展と環境面の制約の両立についての選択という問題が掲げられました。

また、1976年には、新興国による投資プロジェクトをダボス会議参加者に提示するためのプラットフォームを立ち上げ、その年開催のダボス会議においてアラブ世界と欧米の橋渡しを担いました。1979年には、初めて中国からの代表団をダボス会議に招待し、友好関係を結んでいます。

出典:世界経済フォーラム『世界経済フォーラム50年の軌跡とこれから:年次総会のハイライト、そしてその先へ』(2020/01/21)

(2)1980年代

1987年:冷戦終結の始まり

1988年:ギリシャ、トルコ間の戦争を回避

ヨーロッパ経済フォーラムの参加者が世界規模に広がったことで、1987年に名称を「世界経済フォーラム」に変更しました。この時、西ドイツの外相がソ連と欧米の歩み寄りを目指しソ連への積極的な対話を求め、冷戦の終結へと導いたとされています。

また、1988年には、戦争寸前まで関係が悪化していたギリシャとトルコの首相の対話の場となり、両国の信頼関係の樹立と共に対立を回避しました。後にトルコの首相は、ダボス会議でギリシャの首相と対話をしなければ、対立は回避できなかったと話しています。

出典:世界経済フォーラム『世界経済フォーラム50年の軌跡とこれから:年次総会のハイライト、そしてその先へ』(2020/01/21)

(3)1990年代

1990年:ドイツの統合と新しい欧州

1992年:マンデラとアパルトヘイトの終結

1998年:G20の誕生

1999年:コフィー・アナン氏とグローバルコンパクト

1989年10月ベルリンの壁が崩壊し、1990年にドイツはひとつになりました。その年のダボス会議で「新しいヨーロッパ」と名付けられた会合が開催され、初めて東西ヨーロッパのリーダー達が一堂に会しました。1998年には、世界的な金融システムの改革を実現させるため、先進国と途上国の各10カ国、計20カ国によるG20を誕生させました。

出典:世界経済フォーラム『世界経済フォーラム50年の軌跡とこれから:年次総会のハイライト、そしてその先へ』(2020/01/21)

(4)2000年代

2000年:ビル・クリントン氏とGAVI創設

2002年:「ダボスで行う年次総会」、米同時多発テロ事件を受け、ニューヨークへ移設

2005年:ジェンダー・ギャップレポートを初めて発表

2007年:迫り来る金融危機

2000年になると、ダボス会議の参加者に政界や経済界のトップが参加し、大きな転機となりました。特に在職中のアメリカ大統領の参加は、史上初のことでした。この時創設されたGAVIは、後に天然痘やマラリアなど様々な疫病に対する支援を行っています。

2005年には、初めて世界男女格差について取り上げ、ジェンダー・ギャップレポートを発表し、ジェンダー問題に本格的に取り組むことになります。2007年には、米国経済と不動産市場の懸念が高まり、資産価値の大幅な変動による国際的な金融危機に警告を鳴らしました。

出典:世界経済フォーラム『世界経済フォーラム50年の軌跡とこれから:年次総会のハイライト、そしてその先へ』(2020/01/21)

(5)2010年代

2012年:ヤングリーダーのコミュニティ

2016年:第四次産業革命の理解

2018年:「マネル(男性だけのパネル)ではない、本物のパネル」

2019年:自然界を脅かす緊急事態

これまでダボス会議の参加者は政界や経済界の重鎮が基本でありましたが、2012年に初めて20代のリーダー(グローバル・シェイパーズ)に注目し、若い人の関心事に目が向けられるようになりました。2019年には、現代の課題にもつながる気候変動による環境リスクやCO2排出量削減の取り組みなどが注目され、2050年ネットゼロエミッションの取り組みが課題に盛り込まれています。

出典:世界経済フォーラム『世界経済フォーラム50年の軌跡とこれから:年次総会のハイライト、そしてその先へ』(2020/01/21)

(6)2020年〜現在

2020年:ステークホルダーが作る、持続可能で結束した世界

近年では、ステークホルダー資本主義に改めて焦点を当て、パリ協定と持続可能な開発目標(SDGs)に向けた取り組みを重要とし進めています。しかし、気候変動の取り組みはまだまだ不十分な上、見せかけの環境対策だという抗議などもあり、政府や企業の目標を改める必要があるとしています。

出典:世界経済フォーラム『世界経済フォーラム50年の軌跡とこれから:年次総会のハイライト、そしてその先へ』(2020/01/21)

4. 2023年ダボス会議後の世界経済の見通し

「分断された世界における協力の姿」をテーマにした2023年のダボス会議が終了し、世界経済の今後の見通しがはっきりとしました。ここでは、2023年ダボス会議を終えて分かった今後の世界経済の見通しをご紹介します。

リスクはあるが懸念より回復の兆し

ロシアのウクライナ侵攻による急激な物価上昇やエネルギー不足の危機などが継続している中、中国がゼロコロナ政策を改めることで経済の正常化が進むと考えられています。当の中国もこれに対し、中国の経済は全体的に回復すると前向きな姿勢を見せました。

出典:読売新聞オンライン『ダボス会議「分断」あらわ、主要国首脳は参加見送り…ブレマー氏「地政学的な景気後退」』(2023/01/21)

一方で見通しは暗く、景気後退の可能性が高いとの意見も

世界経済の回復を期待する一方で、グローバル化の先頭に立っていた米国が自国優先の対応に方向性を変えたり、中国が多額の補助金で自国に企業を誘致したりしていることに加え、ロシアのウクライナ侵攻の継続などで、地政学的な観点では世界経済の景気は後退する可能性があるとの意見もあります。

出典:読売新聞オンライン『ダボス会議「分断」あらわ、主要国首脳は参加見送り…ブレマー氏「地政学的な景気後退」』(2023/01/21)

5. まとめ:ダボス会議を注視して世界の行く末を把握しよう!

ダボス会議は世界経済フォーラムが主催の年次総会であり、政界や経済界、各企業のトップが一堂に会し、世界的規模で経済問題に取り組むことが目的とされています。

近年では、気候変動による環境リスクや、持続可能な開発目標なども取り上げられ、その時代の象徴が映し出されています。ダボス会議の課題は、企業経営の理念にも大きな影響を与え、今後必要とされる企業経営の在り方が認識できます。今後のダボス会議を注視して、世界の行く末を把握しましょう。

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