トリプルボトムラインとは?企業のIR事例についても解説

企業を運営するうえで理解しておくべきトリプルボトムラインの考え方について、わかりやすく解説します!トリプルボトムラインとは、CSRなどのテーマに関連してよく使われる、企業の事業活動を損益だけで評価するのではなく、企業が社会や環境に与える影響という面からも評価しようという考え方です。

この記事では、トリプルボトムラインとは何か、そしてどのような要素から構成されるのか、さらにトリプルボトムラインをIRに活用している企業の事例までご紹介します。

目次

  1. トリプルボトムラインの概要

  2. トリプルボトムラインの3要素

  3. トリプルボトムラインに関する企業のIR事例

  4. まとめ:トリプルボトムラインについて理解し、IRなどに活用しよう!

1. トリプルボトムラインの概要

トリプルボトムラインは1990年代後半に提唱された、非財務指標も企業の評価に加味するべきという、現在のESGにも通じる考え方です。トリプルボトムラインとはなにかという点について、そのポイントを押さえておきましょう。

トリプルボトムラインとは

トリプルボトムライン(triple bottom line、TBL)は、元々会計に関するフレームワークです。企業の事業活動を損益だけで評価するのではなく、企業が社会や環境に与える影響という面からも評価しようという考え方です。

「経済」「社会」「環境」の3つの側面で構成されていることから、「トリプル(3つの)ボトムライン(最終損益)」と呼ばれています。

出典:環境省「企業の社会的責任(CSR)に関する考え方の展開」P2

トリプルボトムラインの意義

トリプルボトムラインは1997年に提唱され、その考え方はESGに継承されています。トリプルボトムラインにおける「経済・社会・環境」は、ESG(環境・社会・企業統治)と重なります。トリプルボトムラインは会計的な評価で、ESGは主に投資判断に資する情報ですが、両者が意図するものはほぼ一緒だと言えるでしょう。

企業が財務面だけでなく、環境や社会に対する責任や関わり方を意識することで、企業自体や関係する経済の持続的な発展が可能になるのです。

出典:内閣府「ESG/SDGsと消費者志向経営との関係」(2018.10.18)P4-5

2. トリプルボトムラインの3要素

トリプルボトムラインを構成する要素は先述の通り「経済」「環境」「社会」という3つの側面です。このうち「経済」は本来の企業会計に近い概念ですが、「環境」「社会」はいわゆる非財務情報と言えるでしょう。トリプルボトムラインの3要素について、解説します。

経済

企業にとって経済活動は、最も重要です。いくらその企業が環境や社会に良い影響を与えたとしても、きちんと利益を上げ企業として存続できなければ意味がありません。トリプルボトムラインは元々会計のフレームワークですが、経済はその中でも一般的な会計の損益計算に該当します。

出典:環境省「参考資料1 社会や市場からの要請の高まり」P7-9

環境

企業の事業活動において環境への配慮は、欠かすことのできないものになっています。昔は公害規制への対応のような個別課題でしたが、やがて省エネなど生産活動での配慮・循環関連法対応など循環型社会への取組が求められるようになりました。そして今では環境マネジメントシステムの導入・環境情報の公開・サプライチェーンマネジメントの展開など、環境経営の状況が評価される時代です。

出典:環境省「参考資料1 社会や市場からの要請の高まり」P7-9

社会

トリプルボトムラインにおける社会的側面とは、誠実な顧客対応・労働環境、家族への配慮・社会貢献活動・人権問題への対応・多様なステークホルダーとの良好な関係構築などを指します。元々は「搾取をしない」というようなレベルで考えられていましたが、今日ではより広い社会課題へ積極的にコミットすることが企業に求められていると言えます。

出典:環境省「参考資料1 社会や市場からの要請の高まり」P7-9

3. トリプルボトムラインに関する企業のIR事例

トリプルボトムライン自体はESGに置き換えられつつありますが、その根本的な考え方は現在でもしっかり残っており、トリプルボトムラインというフレームワークをIR情報に用いている企業もあります。そのいくつかをご紹介しましょう。

味の素グループ

味の素株式会社を中心とする味の素グループは「味の素グループサステナビリティデータブック2021」に、第三者意見を掲載しています。その中で欧州の有識者は以下のように述べています。

「25年以上前に初めて作られたトリプル・ボトムライン(TBL)のコンセプトは、ビジネスの推進と“合わせて”環境や社会への影響を改善するリーダーシップを反映しています。TBLは、ORではなく、ANDの概念です」

そして企業の利益とサステナビリティは相反するものではないと解説し、味の素グループの活動を賞賛しています。

出典:味の素「『味の素グループサステナビリティデータブック2021」P133

積水ハウス

積水ハウス株式会社は2005年4月21日のニュースリリース「積水ハウスは持続可能な社会の実現に貢献するため 『サステナブル』を企業活動の基軸に据えます」の中で、次のような表現を使っています。

当社は、2003年より、社内プロジェクトにおいて分析検討を加え、暮らしそのものを提供する企業としての独自性を踏まえ、トリプルボトムラインに「住まい手価値」を加えました。この4つの価値軸において、全体にバランスの取れた事業活動を推進することが『サステナブル』な企業であることにつながると考えています。

「住まい手価値」とは家族の想いに応える住まいの提案や快適・安心・安全な性能の提供を指しており、トリプルボトムラインに独自の要素をひとつ追加した形となっています。

出典:積水ハウス「積水ハウスは持続可能な社会の実現に貢献するため 「サステナブル」を企業活動の基軸に据えます」(2005/4/21)

リコーグループ

株式会社リコーは2010年6月25日のニュースリリース「2010年度版の『社会的責任経営報告書』『環境経営報告書』『アニュアルレポート』および会社案内『RICOH 2010』を発行」の中で、これら4つの報告書のうち「RICOH 2010」を除く3つがそれぞれトリプルボトムラインの「社会的側面」「環境的側面」「経済的側面」に対応したものであると説明しています。

出典:リコー「2010年度版の『社会的責任経営報告書』『環境経営報告書』『アニュアルレポート』および会社案内『RICOH 2010』を発行」(2010/6/16)

太平洋セメント

太平洋セメント株式会社は「グループ経営理念」の中で、トリプルボトムラインについて以下のように触れています。

「・・・将来においても競争力を維持していくために、従来からの経済原則の考え方に、社会的責任、環境維持管理を加えた“トリプルボトムライン”に沿って調和した事業活動をすること・・・」

これはSD(Sustainable Development、持続可能な発展 )概念について説明している箇所で、トリプルボトムラインの意味についても解説した形となっています。

出典:太平洋セメント「グループ経営理念」

マンダムグループ

株式会社マンダムは「アニュアルレビュー2016」のCSR報告の中で、「社会の持続可能な発展の実現」の例として、「トリプルボトムライン、社会・環境・経済のすべての側面での価値向上」を挙げています。これは「戦略的CSR」として位置づけられており、単にルールを守るだけでなく、積極的に社会へコミットしていこうという姿勢が見られます。

出典:マンダム「アニュアルレビュー2016」P46

4. まとめ:トリプルボトムラインについて理解し、IRなどに活用しよう!

トリプルボトムラインは元々会計フレームワークで、現在ではESGなどの概念に置き換えられている場合もありますが、基本となる考え方は今も残っています。経済(利益)だけではなく、社会・環境も加えた三つの側面それぞれについて責任を果たしていくことが、企業の事業活動に求められています。

ESGについて語られる中で、トリプルボトムラインにも触れられることは多々あります。トリプルボトムラインについて理解し、IRなどに活用しましょう。

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