インパクト投資とは?4つの要素とメリット・デメリットを解説
- 2023年09月12日
- SDGs・ESG
近年、リスク・リターンに加えてインパクトを価値判断に加えた、社会的・財務的リターンを期待するインパクト投資が注目を集めています。今回の記事ではインパクト投資とは・インパクト投資を構成する要素やメリット・デメリットを解説します。
目次
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インパクト投資とは?
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インパクト投資の4つの要素
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インパクト投資のメリット・デメリットとは?
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まとめ:インパクト投資を理解して、社会や環境に向けた取り組みをしよう!
1. インパクト投資とは
近年、注目を集めているインパクト投資ですが、定義や特徴、ESG投資との違いがわからない方は多いと思います。ここでは、インパクト投資の基本について詳しく解説します。
インパクト投資の定義とは
インパクト投資とは「社会面・環境面での課題解決を図ると共に、財務的な利益を追求する投資行動」を指します。従来の投資は、「リスク」と「リターン」の2軸によって価値判断が行われていました。そこに、「インパクト」の価値判断を取り入れ、かつ、投資による事業・活動の成果として社会的リターン・財務的リターンを両立させることを目的とした投資がインパクト投資です。
ここでのインパクトの判断はトレードオフの関係で成り立つものではなく、あくまで3つ目の判断軸となります。また、インパクト投資において以下の3つの用語とその定義を理解することが重要です。
このように、インパクト投資のインパクトとは「事業や活動の結果として生じた、社会的・環境的な変化や効果(短期、長期問わない)」です。そのため、短期的にリターンを得たい場合には好ましくない可能性もあります。
出典:GSG国内諮問委員会 『インパクト投資拡大に向けた提言書』p35
インパクト投資の特徴
インパクト投資の特徴として、社会的な課題解決を目的としていること、事業・活動より生じる社会的なインパクトの把握である社会的インパクト評価をした上で投資を行うことが挙げられます。
出典:GSG国内諮問委員会 『インパクト投資拡大に向けた提言書』p11,37
インパクト投資における評価方法
インパクト投資では、「社会的インパクト評価」という評価方法を用います。社会的インパクト評価とは、社会的インパクトを定量的・定性的に把握し、事業や活動について価値判断を加えることです。インパクト投資においては、投資家の理解と納得を得ることができるように、社会的インパクト評価を緻密に行う必要があります。
出典:GSG国内諮問委員会 『インパクト投資拡大に向けた提言書』p11,57
インパクト投資とESG投資との違い
環境・社会・ガバナンスの観点で投資を行うESG投資とインパクト投資は、どちらもサステナビリティやレスポンシビリティの実現などの社会的なインパクトを期待している点では共通しています。
しかし、特定の企業・業種に対する投資は「気候変動」や「社会問題」、「企業の長期成長戦略」などのESGへの配慮やリスク緩和の観点から除外されるのに対し、インパクト投資では「社会面・環境面での課題解決」と「経済的なリターンの両立」を「インパクト」として目的としている点に違いがあります。
出典:GSG国内諮問委員会 『インパクト投資拡大に向けた提言書』p37
2. インパクト投資の4つの要素とは
インパクト投資のグローバルなネットワーク組織であるGlobal Impact Investing Network(GIIN)は、インパクト投資の要素として「意図の存在」「投融資による収益」「投資資産の多様性」「インパクトの管理」の4つをあげています。一つ一つを詳細に解説します。
(1)意図の存在
この要素の「意図」とは、投資を通して社会面・環境面での課題解決への意図を意味します。ここでの社会面・環境面での課題解決とは、「社会や環境の持続可能性の向上に対し積極的な意義や役割を有する投資案件」と捉えることが出来ます。また、インパクト投資の意図は、ESG投資、責任投資、スクリーニングなどの方針とは違うものとされています。
(2)投融資による収益
この要素は、インパクト投資が財務的なリターン・社会的リターン双方の両立を目指していることを意味します。ここで目指される財務的リターンの範囲は、市場競争力がある、あるいは同程度の場合もあれば、平均を下回る場合もあります。財務的リターン的要素も満たすことを目的としているため、インパクト投資は一般的なフィランソロピーとは異なります。
、一定の収益を追求するものであり、投資家の戦略に応じ、 リスク調整後の市場金利と同等の水準を追求する場合、市場水準未満の収益も許容する場合があるが、いずれにせよ、収 益追求を行う点で慈善事業(philanthropy)と異なる点である。
(3)投資資産の多様性
この要素は、インパクト投資が、投資(株式・債券)、融資、リース等の財務的リターンを求める多様なアセットクラスをまとめて対象としていることを意味します。財務的リターンを目指さない寄付・補助金・助成金等はインパクト投資に含まれません。
(4)インパクトの管理
この要素は、インパクト投資においては、投資家は社会面・環境面の成果やパフォーマンスを把握し、報告を行っていることを意味します。
このように、インパクト投資は、財務的リターンや社会・環境面でのインパクトを把握した上で、それを投資判断に活用します。
出典:金融庁『事務局資料』p,12.(2023/01/30)
3. インパクト投資のメリット・デメリットとは?
インパクト投資のメリット
インパクト投資のメリットとして、リターンを期待することができる点・社会に貢献した活動ができる点の2つが挙げられます。
インパクト投資は、要素に「財務的リターンを目指すこと」が含まれています。インパクト投資は、慈善事業等と異なり、投資家の許容・期待範囲の元での財務的リターンが目指されているため、リターンを期待することが可能なのです。
また、インパクト投資は、要素に「意図があること」が含まれています。インパクト投資で行われる投資は、社会面・環境面での課題解決を企図して行われているため、インパクト投資によって社会貢献活動を行うことが可能です。
出典:GSG国内諮問委員会 『インパクト投資拡大に向けた提言書』p35,36
インパクト投資のデメリット
インパクト投資のデメリットとして挙げられるのは、短期的なリターンが必ずしも保証されるわけではない点です。
インパクト投資の「インパクト」とは、「事業や活動の結果として生じた、社会的・環境的な変化や効果(短期、長期問わない)」です。そのため、短期的にリターンを得たい場合には好ましくない可能性もあります。
出典:GSG国内諮問委員会 『インパクト投資拡大に向けた提言書』p11
4. まとめ:インパクト投資を理解して、社会や環境に向けた取り組みをしよう!
このように、インパクト投資は、従来のリスク・リターンの2つの側面だけでなく、社会的・環境的なインパクトにも焦点を当てた、新しい形の投資です。
また、インパクト投資は財務的リターンも期待した上で行われるという点で他の投資とは一線を画しています。インパクト投資を理解することで、社会的・環境的に貢献できる取り組みを行っていきましょう。