カーボンネガティブとは?企業が取り組むポイントや事例を解説

「カーボンネガティブ」とは、国が推進している「カーボンニュートラル」よりもCO2削減に大きな効果が得られ、企業にとっても今後、注目しておきたい取り組みです。カーボンニュートラルを確実に達成するためには、企業でのカーボンネガティブの取り組みが重要となります。

ここでは、カーボンネガティブの意味やベースとなる技術、企業の取り組み事例をご紹介します。カーボンニュートラルの先を行く取り組みを、企業でも目指して行きましょう。

目次

  1. カーボンネガティブとは何か?

  2. カーボンネガティブに期待のネガティブミッション技術

  3. カーボンネガティブの取り組み事例

  4. まとめ:カーボンネガティブの知識を深め、さらに先行く企業を目指しましょう!

1. カーボンネガティブとは何か?

カーボンネガティブとは?

「カーボンネガティブ」とは、大気中に放出されるCO2の量よりも大気から吸収するCO2の量の方が多い状態を指します。同じような意味合いの「カーボンニュートラル」は、CO2排出量とCO2吸収量の差を「実質ゼロ」にするというものです。

CO2削減効果としては、CO2排出量よりもCO2吸収量が上回る「カーボンネガティブ」の方が効果が大きいということになります。世界では、「カーボンネガティブ」の積極的な取り組みが注目を浴びています。

出典:日経ビジネス『カーボンネガティブとは? 企業による積極的な取り組みに注目する』(2022/07/07)

カーボンネガティブが必要とされる理由

国は、「2050年カーボンニュートラル宣言」を掲げており、さまざまな分野で温室効果ガス削減の取り組みを行なっています。2019年度における日本の温室効果ガス総排出量は12億1,200万トン(CO2換算)となっており、目標として2030年度までに2013年度の14億800万トン(CO2換算)よりも43%削減を目指しています。

2019年度の時点で2013年度比14.0%減を達成していますが、カーボンニュートラル達成にはCO2排出量削減を確実なものにしていく必要があり、そのためにはカーボンネガティブに取り組む必要があります。

出典:資源エネルギー庁『クリーンエネルギー戦略の策定に向けた検討』p,71.(2022/02/18)

出典:環境省『2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について | 報道発表資料 | 』(2021/04/13)

出典:環境省『1.温室効果ガスの総排出量』p,1.(2015/04/13)

2. カーボンネガティブに期待のネガティブエミッション技術

「2050年カーボンニュートラル宣言」を達成するためには、CO2排出量削減が必要であり、より高い効果を得るためにはカーボンネガティブの技術が不可欠となります。そこで注目したいのが「ネガティブエミッション技術」です。

ネガティブのエミッション技術が必要とされる理由

産業や運輸部門を中心に、年約0.5億トンから2.4億トンの温室効果ガスの排出が避けられない状況となっており、「2050年カーボンニュートラル宣言」の達成には、この排出量をゼロにする必要があります。

そのためには、年に数億トンのCO2除去が不可欠であるが、CO2除去のコストはCO2削減のコストよりも高いことからネガティブエミッション技術の拡大が急がれています。

出典:経済産業省『2050年カーボンニュートラル(CN)の達成に必要な、ネガティブエミッション技術(NETs)の社会実装・産業化に向けた方向性をとりまとめました』(2023/06/28)

ネガティブエミッション技術とは?

ネガティブエミッション技術(=NETs)とは、大気中のCO2を回収して吸収し、貯留・固定化することで大気中のCO2除去に貢献する技術のことで、自然のCO2吸収・固定化の過程に、人為的な工程を加えることでCO2除去の効果を加速させる技術やプロセスを指します。大きな取り組みとして「植林・再生林」「BECCS」「DACCS」「風化促進」「ブルーカーボン・ブルーリソース」などがあります。

ネガティブエミッション技術出典:経済産業省『ネガティブエミッション技術について』p,6.(2022/02/17)

植林・再生林

植林は新規エリアの森林化を図り、再生林は自然や人の活動によって減少した森林の再生や回復を図ります。この取り組みは、それぞれの地域に適した品種の選択がCO2固定化の効果および環境影響に重要であり、また、草原や農地への植林は生物多様性も含めその効果に注意が必要です。その中で、炭素固定速度を速める植物などの研究も進められています。

出典:経済産業省『ネガティブエミッション技術について』p,8.(2022/02/17)

BECCS

バイオマスエネルギー利用時の燃焼で発生したCO2を回収・貯留する技術のことで、一般には、バイオマス発電とCCS(EOR)とを組み合わせて、大気中CO2をバイオマスとして固定しエネルギーなどで活用、発生するCO2の貯留と組み合わせてネガティブエミッションを実現する方法です。

 バイオマスからの水素製造やバイオプロセスで発生するCO2を対象する場合や、炭酸塩化との組み合わせで固定化する場合も、 BECCSに含まれることがあります。

出典:経済産業省『ネガティブエミッション技術について』p,8.(2022/02/17)

DACCS

大気中のCO2を直接回収し貯留することで、ネガティブエミッションを実現する技術です。工学的プロセス(技術の課程)で得られたCO2を炭酸塩化等で固定化する場合も、ネガティブエミッションとなり、400ppm程度の希薄なCO2の回収に多くのエネルギー(熱・電気) を消費するため、コストおよびCO2削減効果の点からエネルギー消費の削減が不可欠となります。

出典:経済産業省『ネガティブエミッション技術について』p,12.(2022/02/17)

風化促進

玄武岩などの岩石を粉砕・散布し、風化を人工的に促進する技術です。風化の過程(炭酸塩化)で大気中のCO2を吸収することで、海洋生態系の保全や、耕作地の土壌pHの改善などをしながらCO2の削減が期待できます。

この原理は既に実証済みで、早期に社会での活用が可能であり、また、 CO2固定量あたりの必要面積が比較的少ないことや、玄武岩等の鉱物資源、耕作地・森林・海岸などの実施場所など日本国内で条件が整っていることも有利となっています。

:耕作地によるネガティブミッションを実現

出典:経済産業省『ネガティブエミッション技術について』p,14.p,15.(2022/02/17)

ブルーカーボン・ブルーリソース

ブルーカーボンとは、「海洋生態系の生物を通じて吸収固定される炭素」のことで、ネガティブエミッション技術として海洋への養分散布や優良生物品種等の利用で生物学的生産を促して海中のCO2吸収・固定化を人工的に加速する技術(=海洋肥沃・生育促進)や、海洋中の植物における自然分解によるCO2発生を防ぐ技術(=植物残渣海洋隔離)などがあります。

海洋のCO2吸収源は、マングローブ、塩性湿地、海草の3種とされていますが、海外および日本ではブルーカーボン吸収の可能性は、大型海藻が高いと考えられています。

 出典:経済産業省『ネガティブエミッション技術について』p,16.(2022/02/17)

出典:環境省『ブルーカーボンについて』p,3.(2022/03/16)

3. カーボンネガティブの取り組み事例

CO2削減の取り組みの可能性をより広げるためにはカーボンネガティブが効果的です。CO2排出量削減に留まらず、CO2吸収量に目を向けた取り組みは、企業にとってもとても大きな効果があるものとなります。ここでは、カーボンネガティブに取り組んでいる企業の事例をご紹介します。

川崎重工業

重工業メーカーの「川崎重工業」は、潜水艦や宇宙船など閉鎖空間で人が吐き出す息によって排出されるCO2除去技術を40年前から開発しています。具体的には、固体吸収材を用いてCO2分離回収するというもので、明石工場内に小型実証装置を設置し実証試験を実施した結果、5kg(CO2換算)/日の回収性能の確認に成功しています。

出典:経済産業省『ネガティブエミッション技術について』p,13.(2022/02/17)

鹿島建設株式会社

建設業の「鹿島建設株式会社」は、コンクリート製造時のCO2排出量を実質ゼロ以下に抑える技術を用いて製造された、カーボンネガティブコンクリート「CO2-SUICOM」を高速道路の橋脚工事に初導入しました。

その結果、自然に排出されるCO2排出量を100%削減、さらに10%のCO2の吸収を達成しました。差し引き22 kg/m3のCO2は橋脚に固定化され、カーボンネガティブコンクリートの使用で橋脚1基当たり59kgのCO2排出量削減の効果が実証されました。

出典:環境省『橋脚1基当たり59 kg、カーボンネガティブコンクリートのCO2削減効果』(2023/06/15)

株式会社TOWING

名古屋大学発 研究開発型ベンチャー企業「株式会社TOWING」は、もみ殻や剪定枝、畜ふんなどを利用した「高機能バイオ炭」で、脱炭素および減化学肥料を両立する農業エコシステムの実現を目指しています。

従来の土壌改良資材の投入工程の際に高機能バイオ炭を使用することで、土壌の「有機転換」「炭素固定」「CO2吸収量向上」などの効果が得られ、100年後の土壌からもCO2排出を防ぎ、また、畑作用途と水田用途と併せて温室効果ガスを4658万トン(CO2換算)の削減(10aあたり)に貢献できるとしています。

出典:国立研究開発法人 国立環境研究所『サステナブルな 食料生産エコシステム実現に向けた “高機能バイオ炭”の普及』p,10p,11..p,15.(2023/05/18)

4. まとめ:カーボンネガティブの知識を深め、さらに先を行く企業を目指そう!

カーボンネガティブとは、自然界におけるCO2排出量よりもCO2吸収量が多い状態のことであり、CO2排出量と吸収量の差を実質ゼロにするカーボンニュートラルよりも積極性のある取り組みと言えます。

カーボンネガティブを目指すためには、カーボンネガティブエミッションの技術が不可欠であり、企業はそれぞれの技術の知識を深めることが重要となります。カーボンネガティブの知識を深めて、ほかの企業よりも、さらに先を行く企業を目指しましょう。

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