GoogleのAI活用による気候予測と気候変動による影響を解説!

気候変動は地球全体に影響を及ぼしており、私たちの生活や将来に大きな課題が残っています。そのような中、Googleは人工知能(AI)を活用し、気候変動への取り組みに新たな道を切り拓いているため、本記事では最新の気候予測への取り組みとその他、カーボンニュートラル分野でのAI活用事例について解説をします。

目次

  1. 気候予測とカーボンニュートラル

  2. 現在の気候予測とAIを用いた気候予測

  3. カーボンニュートラル分野における気候変動とAI活用事例

  4. まとめ:AIの活躍とカーボンニュートラルの最新情報を知り、CO2削減に貢献しよう!

1. 気候予測とカーボンニュートラル

カーボンニュートラルと気候変動の関係について、各項目に分けて解説します。

気候変動の要因と現状

気候変動の原因となっている温室効果ガスは、経済活動・日常生活に伴い排出されています。国民一人ひとりの衣食住や移動といったライフスタイルに起因する温室効果ガスが我が国全体の排出量の約6割を占めるという分析もあり、国や自治体、事業者だけの問題ではありません。

カーボンニュートラルの実現に向けて、誰もが無関係ではなく、あらゆる主体が取り組む必要があります。

カーボンニュートラルとは何か?

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。具体的には、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを指します。ここでの温室効果ガスの「排出量」「吸収量」とは、いずれも人為的なものを指しています。

カーボンニュートラルと気候変動対策の関連性は?

カーボンニュートラルを目指すことは、気候変動問題の解決に直結します。地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、2015年にパリ協定が採択され、世界共通の長期目標として、世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)と、今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成することが合意されました。

この実現に向けて、世界が取組を進めており、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げているところです。

出典:環境省『カーボンニュートラルとは』(2021/7)

2. 現在の気候予測とAIを用いた気候予測

現在の気候予測とAIを用いた最新の気候予測について、解説します。

(1)現在の気候予測の手段

現在の気候予測の手段は、数値予報モデルを用いて将来の天候を予測しており、中でもアンサンブル予報という手法を用いています。

数値予報モデルとは、大気等の変動を表す流体力学や熱力学の方程式から、スーパーコンピュータを用いて数値計算することで、将来の天候の状態を予測する手法です。

しかし、長期間の予測を行う季節予報では初期値に含まれるわずかな誤差が大きくなってしまい、不確定さが増して予測不可能な状態になってしまう場合があります。そのため、複数の予報を行ってその結果を統計的に処理するアンサンブル予報という手法を用いて不確定さを考慮しています。

出典:気象庁『予測手法と予測に伴う誤差』

出典:気象庁『予測に伴う誤差とアンサンブル予報』

(2)googleが取り組んでいるAIを用いた気候予測

Google Researchチームは、AIと気象予報を組み合わせたMetNetというモデルを開発しました。このモデルは、1キロメートルという空間分解能で、時間分解能2分、最長12時間までの降水量予測を行います。

これは、従来のモデルが7〜8時間しか予測できなかったのに対し、より長時間、より精度高く予測できるという点で優れています。特に、短時間で局所的な大雨を予測する能力があります。

また、Google Earth EngineとGoogle Cloudを使用して、天気予報モデルを構築する方法が紹介されています。Google Earth EngineのアカウントとGoogle Cloudアカウントが必要で、モデルを構築するために使用するプロダクトが機能別に分けられています。いくつか機能を解説します。

  • 物理ベースのモデルとディープラーニングのモデル

物理ベースの気象モデルは、物理学をベースに互いに影響しあう自然の力を再現しようとするため、計算が非常に困難でした。一方で、ディープラーニングを使用した新しいアプローチでは、衛星画像のデータセットを使用してモデルをトレーニングし、雲の動きの気象パターンを見つけるモデルを構築し、視覚的なパターンから予測を行います。これにより、より少ない費用と時間でより正確な予測を得られます。

  • モデルの構築

モデルの構築は、データの入力から始まり、予測させる項目のラベルを出力することで終了します。データはEarth Engineに一元化されており、降水量(GPM)、衛星画像(GOES-16)、標高のデータが使用されます。また、モデルは2〜6時間の非常に短期間の天気予報を行うもので、ナウキャストと呼ばれています。

  • モデルの試用

Googleは、GitHub上でコードサンプルを提供しており、これを使用してモデルの構築を試すことができます。このチュートリアルは4つのノートブックに分かれており、最初から最後まで通して進めることも、特定の部分をスキップすることもできます。

出典:Google Cloud『ML を活用して天気と気候のリスクを予測』(2023/03/24)

(2)AIを用いた気候予測の研究

AIを用いた気候予測を可能とするため、気象庁と理化学研究所 革新知能統合研究センターは、気候観測・予測へのAI技術の活用に向けた共同研究を行っています。この研究では、AI技術を用いて降水量予測の精度を改善したり、全国の気温実況値を推定する技術を開発したりするなど、一定の研究成果を出しています。

具体的には、解像度や予報時間の異なる複数の数値予報結果をAI技術の活用によって最適に組み合わせる「統合型ガイダンス」による降水量予測の精度向上や、AI技術(ディープラーニング)により全国の気温実況値を推定する技術の開発などが行われました。

今後は気象庁において、本共同研究の成果を踏まえた技術開発を進める方針であるため、2030年を目標に気候観測・予測の精度を大きく向上させるための取組を推進していく予定です。さらに、気候分野におけるAI技術の更なる活用に向けて、引き続き、理化学研究所 革新知能統合研究センターと連携した取組を進めていくとのことです。

出典:気象庁『気象観測・予測への AI 技術の活用に向けた共同研究の成果について』(2023/06/30)

(3)統合ガイダンスとは?

統合ガイダンスは、数値予報課によって開発が進められている技術で、全球モデル、メソモデル、局地モデルなどの複数の数値予報結果をAI技術の活用によって最適に組み合わせることを目指しています。この技術の開発により、目先から5日先までの降水量、降雪量、風速などの量的な気候予測データのシームレス化・高精度化が可能となり、確率情報の作成が可能となります。これにより、特別警報級の豪雨となる確率メッシュ情報の提供など、集中豪雨等に対する早めの防災対応等に資する新たな予測情報の提供が可能となることを目指しています。

出典:気象庁『統合ガイダンス』(2021/02/24)

3. カーボンニュートラル分野における気候変動とAI活用事例

カーボンニュートラル分野において、AIは既に活用されていますので、その具体例を以下にて解説します。

  • エネルギー需要予測

AIは、気象データや過去の消費パターンを基にエネルギー需要を予測します。これにより、エネルギー供給と需要のバランスを保つことが可能になり、エネルギーの無駄遣いを防ぐことができます。

  • エネルギー効率の最適化

AIは、エネルギー消費を最適化するための戦略を提供します。これには、エネルギー消費のパターンを分析し、エネルギー効率の改善を提案することが含まれます。

  • 再生可能エネルギーの管理

AIは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの生成と配分を管理します。これにより、再生可能エネルギーの利用を最大化し、化石燃料の使用を減らすことができます。

  • CO2排出量の監視と予測

AIは、CO2排出量を監視し、将来の排出量を予測します。これにより、CO2排出量の削減目標を設定し、それを達成するための戦略を立てることが可能になります。

出典:経済産業省『【資料7】参考資料(脱炭素化に向けた次世代技術・イノベーション)_参考2 産業』(2018/02/19)

4. まとめ:AIの活躍とカーボンニュートラルの最新情報を知り、CO2削減に貢献しよう!

気候変動の分野はカーボンニュートラルと密接に関わっているため、気候を予測できる技術は今後も成長が見込まれると同時に発展が期待されている分野です。

また、今回記事で紹介したGoogleのAI技術は、気候変動と同時に医学研究においても大きな可能性を秘めている技術となっており、AIの活躍も期待されています。カーボンニュートラルは、1人1人の取り組みによって貢献する事ができますので、出来ることから取り組んで行きましょう。

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