エコロジカルフットプリントとは?企業が取り組むべきアクションをご紹介

エコロジカルフットプリントとは、企業が持続可能な開発目標(=SDGs)を達成するための重要なキーワードです。ここでは、エコロジカルフットプリントの意味や企業が取り組めるアクションなどを、エコロジカルフットプリントを意識した企業の取り組み事例を交えてわかりやすく解説します。エコロジカルフットプリントへの理解を深めて、自社のエコアクションのアピールを目指しましょう。

目次

  1. エコロジカルフットプリントとは?

  2. 企業が取り組めるアクションとは?

  3. エコロジカルフットプリントにおける企業の取り組み事例

  4. まとめ:エコロジカルフットプリントへの理解を深め、アクションを起こせる企業へ

1. エコロジカルフットプリントとは?

環境問題やSDGsが取り上げられる場面で耳にするエコロジカルフットプリントとは、どのようなことを指すのでしょうか。エコロジカルフットプリントの具体的な意味や企業における重要性をご紹介します。

エコロジカルフットプリントとは?

エコロジカルフットプリントとは、「人間活動が地球環境を踏みつけにした足跡」という比喩で表した言葉であり、私たちが消費する資源を生産したり、社会経済活動から発生するCO2を吸収したりするのに必要な生態系サービスの需要量を地球の面積で表した指標のことを言います。

簡単に説明すると、人が自然環境にどれくらい負荷をかけているかを示した数値のことです。エコロジカルフットプリントは、「人口×1人あたりの消費×生産・廃棄効率」で求めることができます。エコロジカルフットプリントは、すでに2010年代後半には地球1.7個分に達しており、この時点で多くの分野で人々が安全に暮らしていける限界を超えていることが確認されています。

出典:環境省『平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第3章第1節 持続可能性と豊かさの評価』

出典:環境省『税制グリーン化の目指すべき方向性について』p,5.(2023/02/10)

カーボンフットプリントとの違い

エコロジカルフットプリントと似たような意味合いで、「カーボンフットプリント」という言葉があります。どちらもSDGsに取り組む企業にとって重要なものでありますが、このふたつの定義は全く違うものです。

具体的には、エコロジカルフットプリントは、土地および水域面積にかかる全体的な環境負荷の数値であるのに対して、カーボンフットプリントは、商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルまでの一連のサイクルによるCO2排出量の数値のことを言います。

例えば、缶飲料の場合、原料の砂糖キビ栽培・アルミ缶製造の「原材料調達」、ジュース製造 ・パッケージングでの「生産」、輸配送 ・冷蔵輸送における「流通・販売」、商品を冷蔵しておく「使用・ 維持管理」、空き缶収集 ・リサイクル処理における「廃棄・ リサイクル」までに排出されるCO2排出量全てがカーボンフットプリントということになります。

このカーボンフットプリントは、私たちが生活する上で使用するエネルギー消費によって排出されたCO2を吸収する役割を担っている森林のエコロジカルフットプリントに大きな影響があります。

エコロジカルフットプリントの概要

出典:環境省『生物多様性民間参画ガイドライン(第3版)』p,34.(2023/03/14)

出典:環境省『カーボンフットプリント』p,1.p,2.(2014/03/19)

企業におけるエコロジカルフットプリントの重要性

生物多様性を含む環境は経済・社会の基盤となっており、特に経済的な観点では、生物多様性が支える自然資源が生み出す生態系サービス等を利用することで、企業や社会が経済活動を行い便益を生み出すという関係となっています。

そのため、企業における経済活動は、自然資源に依存しており、資源の過剰利用や生態系の分断、気候変動の寄与など自然資本に大きな負荷を与えています。エコロジカルフットプリントは、企業における自然資源の負荷を把握するためにも重要なものとなっています。その一方で、企業における経済活動は、敷地の回復に向けた企業投資による生態学的再生や処理水のろ過と浄化による水質改善など、自然資本に貢献することもできます。

自然資本プロトコルにおける自然資本と企業・社会の相互作用の概念モデル出典:環境省『我が国の経済活動による自然資源利用の現状と課題』p,2.p,3.(2020/09/15)

2. 企業が取り組めるアクションとは?

自然資本における資源には限りがあり、取り返しがつかない状況になる可能性があり、企業は、環境負荷(エコロジカルフットプリント)を下げる取り組みを進めていく必要があります。ここでは、企業が取り組めるエコロジカルフットプリントのアクションをご紹介します。

再エネ電力への切り替え

CO2排出の大きな原因は、自然由来の化石燃料の使用であり、企業で使用するエネルギーを化石燃料由来のものを使い続けると自然環境に影響を及ぼし続け、エコロジカルフットプリントの回復は望めません。

再生エネルギーは、CO2削減効果に期待ができ、企業で使用するエネルギーを再生エネルギーに転換することでエコロジカルフットプリントの回復に貢献することができます。簡単に導入する方法として再エネ電力を取り扱っている電気事業者に切り替えることでCO2削減が可能となります。

出典:環境省『はじめての再エネ活⽤ガイド(企業向け)』p,38.(2023/04/27)

バリューチェーンの見直し

エコロジカルフットプリントを下げるためには、商品やサービスに関わる一連の流れを持続可能な方法にすることが有効的です。そのためには、サプライチェーンやバリューチェーンの見直しが重要であり、生物多様性に配慮し、持続可能な方法で商品やサービスを生産することで生物多様性の負荷を軽減し、エコロジカルフットプリントの軽減に貢献することができます。また、消費者がこのような商品やサービスを手に取ることで、消費者まで価値を届けることが可能となります。

バリューチェーンと生物多様性 出典:環境省『生物多様性地域戦略策定の手引き (令和5年度改定版)』p,61.(2023/05/28 )

30by30への取り組み

「30by30」とは、生物多様性の損失を止め、人と自然との結びつきを取り戻す取り組みで、2030年までに陸と海の30%以上を保全することを目標として掲げています。効果として、健全な生態系を回復させ、豊かな恵みを取り戻す効果が挙げられ、エコロジカルフットプリント軽減に貢献することができます。

出典:環境省『30by30目標が目指すもの』p,1.(2023/05/11)

3. エコロジカルフットプリントを下げるための企業の環境への取り組み事例

ここでは、エコロジカルフットプリントを下げるために行なっている企業の取り組み事例をご紹介します。自社のエコロジカルフットプリントを下げる取り組みのアクションへとつなげて行きましょう。

積水ハウス株式会社

積水ハウス株式会社では、日本の生物多様性の保全を図るべく、2001 年から「5本の樹」計画に取り組んでいます。これは、家の庭は「小さな自然」という考えから、「3 本は鳥のため、2 本は蝶のために、日本の在来樹種を」という思いでお客さまに計画を提案し、お客さまのお庭に植樹を行なう取り組みです。その結果として年間 100 万本以上、累計 1,611 万本の植樹(2020 年 1 月末時点)を達成しています。失われていく生態系を、もっと身近な所で回復を図ることで多くの人の賛同を得ることができます。

出典:環境省『庭からはじめる生物多様性保全「5 本の樹」計画』(2020/04/14)

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社では、「地域の水資源を大切に利用し“地域一番の工場”に」を目標に「水環境インパクト 最小化チャレンジ 」に取り組んでいます。これは、各工場で水の取水量を最小化し、さらに雨水を活用することで地域の水資源への影響を最小化することで水使用量の徹底的な削減を図る取り組みです。また、使用した水は、排水リサイクルすることで徹底的にきれいにしてから地域に還しています。

出典:環境省『2. 水資源』p,10.(2019/04/11)

株式会社三陽商会

株式会社三陽商会では、欧州発のサステナブルファッションブランド「ECOALF(エコアルフ)」を展開し、すべての製品を再生素材や環境負荷の低い天然素材のみで作っています。再生素材利用の効果として、「水消費20%削減」「エネルギー消費50%削減」「温室効果ガス排出量60%削減」を達成しています。また、商品にはリサイクル素材の使用量を表示し消費者にも情報を提供しています。

出典:環境省『No.12 株式会社三陽商会(1/2)』p,1.p,2.(2022/04/18)

株式会社叶 匠寿庵

和菓子屋を経営している「株式会社叶 匠寿庵」は、「里山プロジェクト」を掲げ取り組んでいます。約20ヘクタールの里山に「寿長生の郷」を開設し、その豊かな里山で二ホンミツバチの養蜂に取り組み里山の保全に貢献しています。ワークショップや巣箱見学会、採蜜体験なども行い、観光客にも自然の知恵を共有しています。また、山林の整備活動にも取り組み、次の世代へ続く100年の里山づくりを目指しています。

出典:環境省『二ホンミツバチ養蜂ー里山の保全再生』(2022/12/20)

4. まとめ:エコロジカルフットプリントへの理解を深め、アクションを起こせる企業へ

エコロジカルフットプリントについてご紹介しました。エコロジカルフットプリントは、人々が自然環境にかけている負荷を表す数値で、企業は経済活動の中で資源資源に依存することで生態系に負荷をかけていることになります。

しかし、その一方で、持続可能な方法の導入やバリューチェーンの見直し、植樹などの里山保全などで自然環境を回復させることに貢献できます。エコロジカルフットプリントを下げる取り組みは、企業の環境保護に真面目に向き合っている表れでもあります。エコロジカルフットプリントへの理解を深めて、環境保全のアクションを起こせる企業を目指しましょう。

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