ESGとは?意味やメリット、企業運営に取り入れ方を解説

ESGとは、企業が環境、社会、ガバナンスの3つの観点から持続可能性を追求する概念です。この記事では、ESGの意義を解明し、その取り組みが企業にもたらすメリット、社会との関連性、そしてその実践的な取り入れ方について詳しく探ります。

目次

  1. ESGとは

  2. ESGが企業にもたらすメリット

  3. ESGにおける社会との関連

  4. ESGを企業経営に取り入れる方法

  5. まとめ:ESGを取り入れて持続可能な企業を目指そう!

1. ESGとは?

国際社会におけるサステナビリティ社会の実現に向けて、ESGが重視されています。では、ESGとは一体なにを意味するのでしょうか。

(1)ESGの概要

ESGとは、国際社会における気候変動問題や人権問題等の深刻化する現状を危惧し、環境・社会・ガバナンス(企業統治)を考慮した投資活動や経営、および事業活動を促進する取り組みを指します。2006年に国連が提唱した責任投資原則の中で、国際的な社会課題を解決し持続可能な世界を実現するための国際目標として紹介されました。

ESGは投資活動から始まった概念であり、企業の財務情報に加えて、環境や社会へ配慮し、また企業統治の向上等の情報に基づき中長期的なリターンが目指されていましたが、現在は企業経営においてもESGに配慮した事業運営が促進され、また社会的に重視されています。

出典:内閣府「ESGの概要」

(2)ESGの基本的な意味

以下は、ESGを構成する環境・社会・ガバナンス(企業統治)の基本的な意味にあたります。

(1)環境(Environment)

ESGのEは、Environment(環境)を意味します。現在、気候変動やCO2排出が重視されていますが、他にも森林破壊や海洋汚染、動植物の減少および絶滅等の環境破壊が深刻化しています。ESGの世界目標である持続可能な世界を実現するためには、環境問題を解決し自然資源を保護することが重要になっています。

(2)社会(Social)

ESGのSは、Social(社会)を意味します。経済が発展する裏では、人権問題や労働問題、ダイバーシティ、他にも人口問題などの社会問題が起きています。これら社会問題の解決は、持続可能な社会の実現に必要不可欠な問題であり、国際的に解決に向けた活動が必要とされています。

(3)ガバナンス(Governance)

ESGのGは、Governance(企業統治)を意味します。社会経済の持続的発展を遂げるためには、経済の裏にある人・資源・エネルギー・原材料等の環境や社会の流れを把握し、それらを企業価値に結び付ける企業統治が必要とされています。したがって、企業はESG活動における透明性かつ健全な体制を整え、また適切な情報を開示することが必要といわれています。

出典:財務省「ESG投資について」p3・p4・p6

出典:経済産業省「「SDGs経営/ESG投資研究会報告書」を取りまとめました」

2. ESGが企業にもたらすメリット

持続可能な世界の実現には、政府および企業のESG活動が必要とされています。では、ESGは企業にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

(1)企業価値の向上

ESGがもたらす企業価値の向上

  • ⾃社の価値創造の流れの全体像が伝わるように、体系的・統合的に整理すること

  • ⾃社やその業種の独⾃性を考慮して、重要性の⾼い項⽬を柔軟性をもって検討・選択すること

  • 各項⽬の相互依存性(相互結合性)を考慮しつつ、企業価値の創造までの「価値創造ストーリー」として⽰すこと

出典:経済産業省「価値協創ガイダンス」p4

(2)持続可能な企業経営の促進

以下の項目によって企業経営を促進します。

  • ⻑期的な視点のもとで持続的な価値創造と成⻑を⽀える要素

  • ESGといった⾮財務ファクター、 持続可能性

  • 価値観 戦略 成果と重要な成果指標(KPI) ビジネスモデル 持続可能性・ ガバナンス 成⻑性

  • 脅威やリスクを含め、ビジネスモデルの「持続可能性・成⻑性」に影響するESG等の要素

  • 中⻑期的視点から、ESG等に基づいて持続可能性上の重要性等を評価

  • ビジネスモデルを⽀える主要なステークホルダーとの関係性の構築・維持

  • 複雑化する事業環境下で持続可能性や成⻑性に影響するリスクや不確実性

出典:経済産業省「価値協創ガイダンス」p9

3. ESGにおける社会との関連

企業の持続可能性はそのESG目標と取り組みにより定義されます。これは、企業戦略の一部として位置づけられ、社会との相互作用における役割を明確に示します。ここでは、これらの目標とその実装における位置づけ、そして企業戦略への取り組みについてみていきましょう。

(1)ESGの関連目標

社会に関連する目標について具体的な例を示しています。

SDGsでは、貧困や健康・福祉。教育、ジェンダー平等、働きがい等、ESGの「S(Social)」に関係する様々なゴール・ターゲットを設定。

ESGの「S(Social)」に関係するターゲット例

  •  全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。

  • 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。

  • ジェンダー平等の促進、並びに全ての女性及び女子のあらゆるレベルでの能力強化のための適正な政策及び拘束力のある法規を導入・強化する。

  • 強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。

  • 2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。

  • 10.3 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、並びに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。

(2)実施における位置づけ

日本政府のSDGs実施指針では、「あらゆる人々の活躍の推進」と「健康・長寿の達成」を優先課題として位置づけています。

これらの優先課題を達成するための具体的な施策

  • 働き方改革

  • 女性活躍推進

  • ダイバーシティ

  • 貧困対策

  • 教育

  • データヘルス改革

  • 健康経営の推進

これらの項目は、社会に関連する取り組み(ESGの"S")における実施に関する位置づけとなります。

(3)企業戦略への取り組み

企業がSDGsを自身の戦略に組み込む方法とその重要性

  1. 「SDG Compass」は、SDGsを企業戦略に組み込むステップを整理しています。これにより、企業は自身の活動がSDGsの目標達成にどのように関連しているかを特定し、その影響を評価することが推奨されています。

  2. 企業の活動がSDGsの目標達成に貢献する可能性があることは、自社の最終製品・サービスだけでなく、バリューチェーンの各段階でも見られます。

  3. バリューチェーンにおける自社の位置づけを分析することで、SDGsへの貢献可能性とその手法について評価を行うことが考えられます。

  4. 例えば、操業段階で従業員への配慮を行うことで、適正な賃金の支払いやスキル向上、健康増進などを通じて、SDGsの目標(ジェンダー平等を実現しよう)や目標(働きがいも経済成長も)などに貢献できる可能性があると提案されています。

これらの点は、企業がSDGsを戦略に取り入れる際の具体的なアプローチとなります。

出典:経済産業省「事務局説明資料」(2019年2月)P6~9

4. ESGを企業経営に取り入れる方法

(1)ESGを推進する社内体制を整える

企業は、ESGの推進を重視し、価値観と課題を理解すると共に主要ステークホルダーとの関係性を強化します。テクノロジーの進化と事業環境の変化を認識し、リスク管理と機会把握を平衡させ、事業の持続可能性と成長を追求します。

(2)ESG課題とESG投資の現状を理解する

現代のビジネス環境は、IoTや全球化など、複雑性が増しており、企業のESG対策が投資家の関心事となっています。ビジネスモデルを見直し、技術革新に対応しながら、ESG課題を考慮に入れた経営を行うことで、企業価値を高め、投資家の信頼を得ます。

(3)企業戦略におけるESG課題を特定する

企業は、自社の価値観と事業環境を基にESG課題を特定し、その対策を組み込んだ戦略を形成するべきです。それにより企業価値を高め、投資家の信頼を獲得し、持続可能な成長を達成します。

出典:経済産業省「価値協創ガイダンス 2.0」p29

5. まとめ:ESGを取り入れて持続可能な企業を目指そう!

ESGとは、企業が社会的・環境的な問題とガバナンスを意識した経営をするための評価基準です。この視点を取り入れることで、企業はリスク管理を強化し、新たなビジネスチャンスをつかむことが可能です。

その結果、企業価値の向上と持続可能な成長を実現できます。企業はESGを組織文化の一部にし、積極的な社会貢献活動や透明性の高いガバナンスを推進することで、ステークホルダーの信頼を獲得し、成功へと導きます。

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