サステナブル農業とは?実際の活用事例を踏まえて解説!
- 2023年07月14日
- SDGs・ESG
サステナブル農業は、地球環境や生物多様性の保護を重視しながら、温室効果ガスの排出を削減する手段として注目されています。本記事では、サステナブル農業の概要、活用事例について解説します。
目次
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サステナブル農業とは?
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サステナブル農業の活用事例
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オランダのサステナブル農業の事例
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まとめ:サステナブル農業にシフトして、今後より一層求められるであろう気候変動や生物多様性の保護を図ろう!
1. サステナブル農業の概要
サステナブルの概要とサステナブル農業の概要を踏まえて、現代社会で注目される理由が何かを解説します。
サステナブル農業の概要
サステナブル農業は、健康な環境、経済的収益性、社会的および経済的公平性という3つの主要な目的を追求しています。生産者、加工業者、流通業者、小売業者、消費者、廃棄物管理者など、食品システムの関係者全員がサステナブル農業システムを確保する役割を果たすことができます。
サステナブル農業にはさまざまな実践方法があります。例えば、生産者は土壌の健康を促進し、水の使用を最小限に抑え、農場の汚染レベルを低下させるための手法があります。その他にも、サステナブル農業に関心を持つ消費者や小売業者は、労働者の幸福を促進する方法で栽培された食品や環境にやさしい商品を求めることができます。
またサステナブル農業の実践は、地域経済の強化にも繋がる場合があります。このように多様な側面を有することから、サステナブル農業の研究者は、生物学、経済学、工学、化学、コミュニティ開発などの領域を統合して研究を行うことがあります。
もっとも、サステナブル農業は、個々人だけで成立するものではなく、食料や繊維の栽培方法に関する複雑な問題の解決において、個々の農家や地域社会の人々は競合する利益の間で調整し、協力してなされる必要があります。
サステナブル農業が注目される理由
サステナブル農業が注目される理由は、気候変動や環境破壊の問題が深刻化していることが要因であり、サステナブル農業では、温室効果ガスの排出削減や土壌保全などの取り組みを行い、農業の環境負荷を低減することが魅力の一つです。
さらに、持続可能な農業は、健康的で安全な食料の供給にも影響しており、有機農法や農薬の最小化などの手法を基盤としているため、農産物の品質と安全性を高めることができます。
出典:農林水産省「より持続性の高い農法への転換について」
出典:農林水産消費安全技術センター「大きな目小さな目 2022年夏号 No.69」(2022)p.13
2. サステナブル農業の活用事例
一般的なサステナブル農業の活用事例と最新のサステナブル農業について解説しています。
サステナブル農業の活用事例
以下は、現在行われているサステナブル農業の具体例になります。
(1)有機農法の導入
化学合成農薬や化学肥料の使用を最小限に抑え、自然な肥料や有機的な害虫管理方法を使用して作物を栽培することで、土壌や水質の汚染を軽減し、農産物の品質と安全性を高めます。
(2)水資源管理の改善
持続可能な灌漑システムの導入や節水技術の採用により、水の効率的な利用と節約を図ります。
(3)多様な作物の栽培
モノカルチャーではなく、異なる種類の作物を交互に栽培する輪作や混合栽培を取り入れることで、土壌の栄養価を保持し、害虫や病気のリスクを分散させます。
(4)農業廃棄物のリサイクル
農業の廃棄物や副産物を有効活用することで、資源の浪費を減らし、循環型経済を促進します。例えば、農業廃棄物を堆肥化して肥料として再利用したり、バイオガスでエネルギーを生み出したりすることがあげられます。
(5)持続可能な畜産
畜産業においても、環境への負荷を軽減する取り組みが行われており、例えば、牧草地の持続的な管理や放牧方式の改善、エネルギー効率の高い飼料の使用、畜産排出物の処理方法の改善などがあります。
これらの活用事例は、環境保護、資源の持続的な利用、生物多様性の維持、地域経済の活性化など、サステナブル農業の目標を達成するための手段として重要であり、これらを効果的に実現するためには、農業者や地域社会、消費者など、多くのステークホルダーによる協力と意識の高まりが必要です。
※ステークホルダーとは、株主・経営者・従業員・顧客・取引先のほか、金融機関、行政機関、各種団体など、企業のあらゆる利害関係者を指します。
出典:Union of concerned Scientists「What Is Sustainable Agriculture?」(2017/4/10)
最新のサステナブル農業の紹介
現在、農業と土地利用は二酸化炭素排出という課題・機会に直面しており、現在の状況が継続されると気候変動と生物多様性に直面してしまいます。農業、林業等は、温室効果ガス排出量の約4分の1を構成しているため、農業、林業等へのサステナブル農業の導入は必要不可欠なものとなっています。
最新のサステナブル農業では、地球全体への大きな影響である地球温暖化への対策として、CO2削減へ寄与する農業体制を整えることとなっており、具体例として、以下の2点をあげます。
1つ目は、肉に変わる代替タンパク質の生産で、代替タンパク質は、カーボンニュートラルな食品の一つとして注目されています。従来の畜産業は、牛や豚などの家畜の飼育に大量の資源とエネルギーを必要とし、また排出されるメタンガスなどの温室効果ガスも多く生成します。一方で、代替タンパク質の製造には、植物由来の原料を使用するか、細胞培養などの技術を活用するため、肉製品の生産に比べて温室効果ガスの排出量が大幅に削減される可能性があります。
植物由来の代替タンパク質は、農作物の生産においても、畜産業に比べてより少ない土地、水、肥料を必要とします。さらに、植物ベースの食品は土壌や水資源への負荷も低く、環境への影響が比較的少ないとされています。
2つ目は、遺伝子組み換え土壌微生物技術です。遺伝子組み換え土壌微生物は、カーボンニュートラルな農業システムの構築に向けた一つのアプローチとして注目されており、具体的には以下のような効果があります。
(1)窒素循環の最適化
遺伝子組み換え土壌微生物は、土壌中の窒素の循環を効率化することができます。窒素は植物の成長に必要な栄養素ですが、従来の肥料の使用によって土壌中に余分な窒素が蓄積されることがあり、これにより温室効果ガスの生成や水質汚染などの環境問題が引き起こされるという問題がありました。
遺伝子組み換え土壌微生物は、窒素をより効率的に植物に供給できるため、窒素の過剰供給を抑制し、環境への負荷を軽減する役割を果たします。
(2)土壌の炭素貯留
遺伝子組み換え土壌微生物は、土壌中の有機物の分解を調節することができます。有機物の分解は、二酸化炭素の放出を引き起こし、温室効果ガスの生成につながるため、遺伝子組み換え土壌微生物は、有機物の分解を制御し、土壌中の炭素をより長期間保持、炭素の貯留を促進します。
これによって、農地や森林などの土壌がカーボンニュートラルな状態を維持し、気候変動への対策に貢献することが期待されます。
遺伝子組み換え土壌微生物の利用は、持続可能な農業のベストプラクティスを促進する一環としても位置づけられます。持続可能な農業は、温室効果ガスの排出削減、土壌保全、水資源の効果的な利用などを重視し、環境への負荷を最小限に抑えながら食料生産を行うことを目指しています。
遺伝子組み換え土壌微生物は、持続可能な農業の一環として、環境への影響を軽減しながら生産性を向上させることができる技術です。以上のように、サステナブル農業は農業自体の持続性だけでなく、カーボンニュートラルを捉えた農業の推進も近年では発展しており、本分野への投資金額が右肩上がりに増えています。
出典:日経経済新聞「「ミートレス」の破壊力 200兆円食肉市場を脅かす」(2019/12/2)
出典:日本土壌肥料学会「遺伝子組換え微生物応用食品の安全性評価」(1996/8/23)p12-13
3. オランダのサステナブル農業の事例
オランダは、小さな国でありながら、世界第2位の農産物輸出国であり、高度な機械化による高い生産性を誇っており、サステナブル農業でも最先端の国となっています。その具体例として、バイオマスを活用した農業を紹介します。
農業におけるバイオマスは、農業で生じる植物や動物の廃棄物を利用することを指し、有効な資源として再利用することができるという特徴があります。以下にバイオマスの活用を例として解説します。
1つ目の活用方法は、農業廃棄物の再利用で、農業で出る廃棄物(農作物の残渣や家畜の排泄物など)を捨てるのではなく、有効に活用する方法です。例えば、今まで廃棄していた廃棄物を堆肥として利用することで、肥料として農地の肥沃度を高め、土壌の健康を保ちながら、農作物の生育をサポートする事ができるというものです。
2つ目の活用方法は、バイオマスをエネルギー源として利用する方法です。例えば、農業廃棄物をバイオガスに変換することで、発電や暖房に利用する方法です。バイオマスを燃料として使用することで、エネルギーの需要を満たすことができるほか、農業経営者は自家消費のエネルギーコストを削減し、経済的な利益を得ることができます。
バイオマスの活用は、農業において持続可能性を追求する上で重要な役割を果たし、農業廃棄物の再利用やエネルギーの生産、肥料や飼料の製造など、多くの利点があるものです。これにより、農業部門は環境への負荷を軽減するほか、経済的なメリットを享受することができます。
出典:農林水産省『バイオマス活用推進基本計画の変更について』(2022/9/6 )p1.p5-11.p14-15
出典:JAIST Repository『オランダ農産業界におけるサーキュラーエコノミーの 進展』(2019/10/26)p/7
4. まとめ:サステナブル農業にシフトして、今後より一層求められるであろう気候変動や生物多様性の保護を図ろう!
農業と土地利用は気候変動や生物多様性喪失に直面しており、炭素吸収源と自然回復への取り組みは積極的に行われています。そして、今後このような傾向はより必要とされるでしょう。
そこで、今から農業と土地利用は気候変動や生物多様性喪失といった問題に対する理解を深めることが肝心であり、中でもサステナブル農業は手段として有効であるため、サステナブル農業の導入を検討してみてはいかがでしょうか。