サプライチェーンマネジメントとは?導入メリットや事例をご紹介
- 2023年06月30日
- SDGs・ESG
物と金、情報の流れを全体の流れと紐づけて、商品が製造されてから消費者のもとに届くまでを指すサプライチェーン全体で共有し、連携して全体の最適化を図る手法である「サプライチェーンマネジメント」。
ここでは、製造業を含むさまざまな事業において、労働環境の変化やビジネスモデルの変化、企業のグローバル化などを背景に注目を集めているサプライチェーンマネジメントについて、その仕組みや導入するメリット、導入方法、実際に導入している企業事例などを解説します。
目次
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サプライチェーンマネジメントとは
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サプライチェーンマネジメントを導入するメリット
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サプライチェーンマネジメントの導入方法
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サプライチェーンマネジメントの成功事例
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サプライチェーンマネジメントを有効活用しよう
1. サプライチェーンマネジメントとは
サプライチェーンとは、原料調達に始まり、製造、在庫管理、物流、販売などを通じて、消費者の手元に届くまでの一連の流れを指します。 サプライチェーンマネジメントは、このサプライチェーン全体で物と金、情報の流れを共有し、連携して全体の最適化を図る手法のことです。
サプライチェーンマネジメントではモノとお金の情報を全体の流れと紐付け、サプライチェーン全体で共有することで全体最適化を図ります。また、過去の業務データから需要を予測して最適な生産計画を立てることで、供給過剰や供給不足を起こさない合理的な生産管理を可能にします。
サプライチェーンマネジメントにおいては、企業やグループの域を越え、協力関係にある他社までも包括した大規模な体制が構築されるケースも珍しくありません。こうしたサプライチェーンマネジメントが必要とされている背景には労働環境の変化、ビジネスモデルの変化、そして企業のグローバル化などがあります。
出典:経済産業省 サプライチェーンリスクと危機からの復旧 p1
出典:経済産業省 デジタル時代におけるグローバル サプライチェーン高度化研究会(2022.6.2)p10~13
出典:経済産業省 デジタル技術の活用によるサプライチェーンの強靱化
2. サプライチェーンマネジメントを導入するメリット
サプライチェーンマネジメントを導入することで得られるメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
メリット1:人的リソースの最適化
サプライチェーンマネジメントの導入後は、物・金・情報の流れが可視化されます。そのため、需要の拡大や市場の変化を早めに察知して、必要なリソースの投入時期を把握できるようになるでしょう。需要が少ない時期に大量のスタッフが勤務していたり、繁忙期に人手不足だったりといったアンバランスな状態を避けられ、人的リソースの合理的な活用が可能になります。
出典:朝日新聞デジタル サプライチェーンとは?意味や仕組みを事例を用いてわかりやすく解説(2023.05.27)
メリット2:物流に伴うコストの削減
企業にとって、利益の最大化が重要な経営目標となります。そのため、コストの削減はどの企業に対しても重要な課題です。サプライチェーンマネジメントの導入によって、サプライチェーンの最適化と、業務プロセスの可視化によってコストカットを実現できます。
たとえば、仕入れの適正数量や、小売店舗への最適な配送タイミングを知ることで無駄なく商品を配送することができます。また、各店舗の必要とする種類などを把握することで、適正な配送ルートを設定でき、輸送費や配送時間コストを大幅に削減することができます。
出典:朝日新聞デジタル サプライチェーンとは?意味や仕組みを事例を用いてわかりやすく解説(2023.05.27)
3. サプライチェーンマネジメントの導入方法
サプライチェーンマネジメントは導入しただけで効果が現れるわけではありません。自社分析や比較検討などを行い、自社にとって最適なソリューションを選択することが大切です。最後に、サプライチェーンマネジメントの導入から運用までのステップをご説明します。
(1)導入の目的や解決すべき課題を明確にする
まずはサプライチェーンマネジメント導入の目的や自社が改善したい課題を事前に洗い出しましょう。自社が直面する課題を明確化することで、導入や運用に必要な人員の検討、役割分担も検討しやすくなります。課題を解決するために、サプライチェーンマネジメントにはどのような機能や使い勝手を求めるのかまで内容を詰められれば、その後のフローもスムーズになります。
(2)サプライチェーンマネジメントの担当者を決める
次に、サプライチェーンマネジメントを導入しても、うまく運用できなければ意味がありません。円滑に運用が軌道に乗るためにも、サプライチェーンマネジメントを推進する専任担当者がいると良いでしょう。人員の選定が終わったら、ステップ1で決定した導入の目的やプロジェクトのゴールをメンバーに共有し、メンバー個々の役割や動きについても明確に分担しておきます。
(3)デジタル化に必要なシステムを選定・導入する
サプライチェーンマネジメントに取り組むには、以下のように売上情報や需要予測などの情報をシステム上で共有できるようなデジタル化が欠かせません。基幹業務プロセスと連携するようなシステムや受注から製造、出荷にいたるまでの生産スケジュールを自動計算するシステムなど、自社のサプライチェーン上の課題に合わせて選定する必要があります。
(4)効果測定をおこなう
選定したシステムを自社に導入したら、収益面はもちろん人的・時間的なコストの削減結果など、具体的なサプライチェーンマネジメントの導入効果を算出しましょう。サプライチェーンマネジメントの導入は生産・在庫の最適化を目指すだけではありません。経営の全体像も意識するようにして、経営の最適化を目指しましょう。
出典:朝日新聞デジタル「サプライチェーンとは?意味や仕組みを事例を用いてわかりやすく解説」 (2023.05.27)
出典:中小企業基盤整備機構 サプライチェーン・マネジメントを導入するには、どのようにすると良いですか?
4. サプライチェーンマネジメントの成功事例
自社で検討すべきサプライチェーンマネジメントのお手本として、3つの企業が実際に取り組んでいる先行事例をご紹介します。
(1)花王株式会社「原材料調達から生産、物流、販売までを、速やかに滞りなく」
花王は、在庫管理を徹底して革新的なSCMを実現するために、専門のロジスティクス部門を設置し、サプライチェーンに役立つ需要予測や運用技術の開発に取り組んでいます。需要分析によって各拠点の在庫数をコントロールすることで、サプライチェーン全体の在庫管理を最適化し、滞りなく商品を店頭に届けられるように輸送計画の策定および指示を行っています。
サプライチェーンマネジメントを最適化し、在庫ロスを減らしたり、輸送効率を最適化してCO2排出量を減らしたりすることは、自然環境保護にも通じる施策として高く評価されています。
(2)トヨタ自動車株式会社「ムダの徹底的排除と造り方の合理性を追い求めた生産方式」
トヨタ自動車株式会社のクルマを造る生産方式は、「リーン生産方式」、「JIT(ジャスト・イン・タイム)方式」ともいわれ、異常が発生するとすぐに機械を停止し、不良品を作らないようにする「自働化」と、各工程が必要なものだけを、流れるように停滞なく生産する「ジャスト・イン・タイム」の2つの考え方が軸となっています。
この方式の根底には徹底した「ムダ」の排除があり、トヨタは品質管理と在庫管理にかかるコスト、そしてリードタイムとのバランスを取ることで、柔軟性と対応力のあるグローバルサプライチェーンマネジメントを実現しているのです。
(3)株式会社トーハン「広大な出版情報ネットワークを形成するTONETS NETWORK」
出版物の流通販売を手掛ける株式会社トーハンは、書店向けのシステム「TONETS V」と、出版社向けのシステム「TONETS i」と呼ばれる、書店と読者を最適なタイミングでつなげるシステムを開発しました。
このシステムにより、全国の市場動向をもとに、書店ごとに必要な商品あるいは回転率の悪い商品を可視化し、最適な仕入れを可能にします。トーハンの構築したシステムは、流動的に変化する読者ニーズを的確に捉え、書籍の最適な流通を構成した出版サプライチェーンマネジメントの模範例といえるでしょう。
出典:TOHAN 情報流通機能 TONETS NETWORK
5. サプライチェーンマネジメントを有効活用しよう
企業には市場競争での優位性を確立するために、サプライチェーン全体の最適化が求められています。サプライチェーンマネジメントの導入には、生産・流通プロセスの可視化ができ、関連情報の一元管理ができるなどさまざまなメリットがあります。この記事で解説した方法を参考にしてサプライチェーンマネジメントを導入し、経営の最適化を実現しましょう。