バイオ燃料とは?注目されている理由やメリット、今後の課題について

国際社会が温室効果ガスの削減に向けて取り組む中で、現在バイオ燃料が注目されています。この記事では、バイオ燃料がどのようなエネルギー源なのか、また注目されている理由やメリット今後の課題を中心に解説しています。

目次

  1. バイオ燃料とは?

  2. バイオ燃料が注目されている理由

  3. 国内外におけるバイオ燃料普及の取り組み

  4. バイオ燃料の供給拡大に向けた課題

  5. まとめ:バイオ燃料を促進して環境保全に努めよう!

1. バイオ燃料とは?

現在国際社会において、バイオ燃料が注目されています。それにより、各国はバイオ燃料の製造に取り組んでいます。では、バイオ燃料とはどのようなエネルギー源なのでしょうか。

(1)バイオ燃料について

バイオ燃料とは、バイオマス(生物資源)を原料とする燃料を指します。主に農作物や食品廃棄物を原料に精製され、地球温暖化に影響を与える化石燃料の代替エネルギーとして注目され利用拡大が期待されています。

バイオ燃料を燃焼させた場合にも二酸化炭素は必ず発生しますが、排出した二酸化炭素を吸収し、またバイオ燃料が再生可能なエネルギーであることから、全体として大気中の二酸化炭素量が増加することがない(カーボンニュートラル)とされています。

出典:国立研究開発法人・国立環境研究所「バイオ燃料」

(2)バイオ燃料の種類

カーボンニュートラルの実現に期待されているバイオ燃料は、現在以下の種類が利用されています。

  • バイオエタノール

バイオエタノールとは、トウモロコシやサトウキビ、小麦などの植物を発酵・蒸留して製造されるエタノールです。バイオエタノールは燃料としての使用が可能であり、主にガソリンとの任意の濃度での混合利用が一般的とされています。化石燃料と比べて二酸化炭素の排出量が少ないことから、自動車等の輸送用エコ燃料として期待されています。

  • バイオディーゼル

バイオディーゼルとは、菜種油等の植物油廃食用油などから製造されるディーゼルエンジン燃料です。石油を原料とするディーゼル燃料に比べて二酸化炭素の排出量が少ないことから、化石燃料の代替燃料として利用の拡大が期待されています。主にディーゼルエンジンを搭載した自動車等に利用されます。

  • バイオガス

バイオガスとは、農業廃棄物や家畜排泄物、食品廃棄物を発酵・分解させる際に生じるガスから製造されます。主な成分はメタンであり、発電や暖房等の熱供給に利用されます。バイオガスは、再生可能なエネルギー、また廃棄物の処理とエネルギーの生産を同時に実現できることから高く注目されています。

出典:国立研究開発法人・国立環境研究所「バイオ燃料」

2. バイオ燃料が注目されている理由

バイオ燃料は、化石燃料に比べて二酸化炭素の排出量が少ないなど、地球にやさしいエネルギーとして現在注目されています。ここでは、より詳しくバイオ燃料が注目される理由を解説します。

(1)資源の循環的利用の推進

バイオ燃料は、植物・農作物・食品廃棄物などから製造されるエコ燃料です。廃棄物等の有効利用の用途拡大、廃棄物等の適正な循環利用の促進を通じて、循環型社会の形成に繋がるものとして位置付けられています。またエネルギー資源が乏しい日本は、化石燃料だけではなくバイオマスも海外からの輸入に頼っている一面があります。

貴重な資源を単に廃棄物として処理するのではなく、連鎖的に利用し尽くすプロセスを構築する必要があり、これらバイオマスの循環利用は重要な施策とされています。さらに、バイオマスを用いたエコ燃料への取り組みは、環境保全や資源、エネルギーの有効利用に関わる社会的な啓発効果をもたらすものと期待されています。

出典:環境省「輸送用エコ燃料の普及拡大について」p15

(2)温室効果ガスの削減

バイオ燃料の利用は、燃焼時に発生する二酸化炭素が温室効果ガス排出量としてカウントされません。それにより、温室効果ガス排出量の削減に有効な手段と位置付けられています。

しかし、バイオ燃料の製造等において発生する温室効果ガスは別途排出量として考慮する必要があるため、ライフサイクル全体での温暖化対策としての有効性は確認するべきとされています。持続可能な循環型社会を実現していく観点からは、エコ燃料の製造から供給に至る過程において環境汚染を引き起こさないことが重視されています。

出典:環境省「輸送用エコ燃料の普及拡大について」p15

(3)エネルギーセキュリティの向上

エネルギー資源の乏しい日本は、エネルギー自給率の向上エネルギー源の多様化が必要です。バイオ燃料は、国内で発生するバイオマスからのバイオ燃料生産、および海外からのバイオ燃料輸入はエネルギーセキュリティの向上に繋がるものと位置付けられています。

それにより、燃料価格の安定化、またバイオエタノール等のバイオ燃料は、従来の石油燃料と一定の範囲で混合利用が可能なため、化石燃料代替の観点からは柔軟性に優れた燃料とされています。そのためには、既存の燃料に対してある少なくとも5%以上の割合で導入する必要があり、また中長期的な観点からその割合を増加させる必要性があるとされています。

出典:環境省「輸送用エコ燃料の普及拡大について」p15

3. 国内外におけるバイオ燃料普及の取り組み

温室効果ガスの排出量が少なく地球温暖化に効果的なバイオ燃料は、世界各国で注目されており、同時にバイオ燃料の普及に取り組んでいます。ここでは、国内外におけるバイオ燃料普及の取り組みを紹介します。

(1)アメリカ

アメリカは、2005年の包括エネルギー法により、再生可能燃料基準(RFS)を策定し、燃料供給事業者の輸送用ガソリン、ディーゼル販売量に対して一定比率の再生可能燃料の供給を義務づけました。

また2007年には、エネルギー⾃⽴・安全保障法(EISA)において再生可能燃料基準を改定(RFS2)し、2008~2022年までの再⽣可能燃料の供給⽬標量を設定しています。主な取り組みとして、EISAでは定められた目標量の達成が経済的・環境的に深刻な影響を与える場合、⽬標量を修正する権限を持っている環境保護庁(EPA)が翌年の修正⽬標を毎年発表することとしています。

PFS2では、バイオ燃料の生産量に対してRINと呼ばれる売買可能なクレジットが発行され、ガソリンやディーゼル燃料の精製 業者・輸⼊業者は、⽬標達成のために必要量のRINを調達することが求められています。

出典:経済産業省「バイオ燃料を取り巻くエネルギー情勢について」p16

(2)EU

EUは、2009年に再生可能エネルギー指令(RED)を施行し、再生可能エネルギーの利用を促進しています。2018年には2030年に向けて再⽣可能エネルギー指令の改正指令(REDⅡ)を施行しています。欧州委員会においては、2021年7月に「Fit for 55」として再生可能エネルギー指令の改正指令を含む多数のエネルギー関連の施策パッケージを公表しました。

それにより、2030年までに1990年比で二酸化炭素やメタン等の温室効果ガス(GHG)の排出量を55%削減する目標を設定し、また新たな導入目標等の提案がされるなど、積極的にバイオ燃料普及を含めた地球温暖化対策に取り組んでいます。

出典:経済産業省「バイオ燃料を取り巻くエネルギー情勢について」p18

(3)日本

日本は、2050年カーボンニュートラル実現に向けて策定された第6次エネルギー基本計画において、燃料の脱炭素化を図る上でバイオ燃料や合成燃料等が重要であることを示し、各分野においてバイオ燃料や合成燃料の製造技術開発を進め、製造と供給の拡大に取り組んでいます。

具体的な目標として、技術開発・実証を今後10年間で集中的に⾏い、2030年までに⾼効率かつ⼤規模な製造技術を確⽴し、2030年代に導⼊拡⼤とコストの低減、2040年までに環境価値を踏まえた⾃⽴商⽤化を目指しています。

ジェット燃料の代替燃料であるバイオジェット燃料や合成燃料等(SAF)に関しては、国際⺠間航空機関(ICAO)における国際航空分野の規制に対応するため、必要な原料確保やサプ ライチェーンの構築を踏まえ、国と企業が連携して技術開発と⼤規模実証に取り組む体制構築を⾏うとされています。

カーボンニュートラルに向けた製品の脱炭素化出典:経済産業省「バイオ燃料を取り巻くエネルギー情勢について」p5

4. バイオ燃料の供給拡大に向けた課題

国内外のバイオ燃料普及に関する取り組みを紹介しました。地球温暖化への対策として、国際社会は一丸となってバイオ燃料の開発と普及に取り組んでいることがわかります。しかし、バイオ燃料の普及には課題が残されているのも事実です。ここでは、バイオ燃料の供給拡大に向けた課題を解説します。

(1)バイオ燃料生成における高コスト

バイオ燃料は、温室効果ガスの排出抑制効果、地球温暖化の防止効果が期待される一方で、製造コストおよび製造技術の開発費用の高さが課題の1つに挙げられています。

例えば、航空機等のジェットエンジン用として、藻類の培養によるバイオ燃料の開発が行われていますが、現状の化石燃料1L100円に対して藻類のバイオ燃料は1L1,600円と高いコストがかかっている状態です。現在、官民が連携してバイオ燃料の製造コストを2030年までに既存のジェット燃料と同等まで低減することを目標に掲げ、製造技術の開発や大規模実証の実施等を行っています。

出典:経済産業省「今後の資源・燃料政策の課題と 対応の方向性(案)」p107

(2)食料・環境問題への懸念

トウモロコシやサトウキビ等の農産物は、バイオ燃料の主な原料である一方、人類の重要な食料でもあります。バイオ燃料の生産が活発化することにより、食料との競合や生態系の破壊といった問題を招くリスクがあるとされています。

事実、農産物の生産量を増やすための畑作りを目的に山林を切り拓くという環境破壊に繋がる事例も報告されているといいます。これらの問題を解決するために、ライフサイクル全体での温室効果ガス削減効果や土地改変の効果を評価し、持続可能性を重視する必要があり、また各国に対策が求められています。

出典:国立研究開発法人・国立環境研究所「バイオ燃料」

5. まとめ:バイオ燃料を促進して環境保全に努めよう!

現在、温室効果ガス削減を中心とした地球温暖化に関する対策が急がれています。その解決策の1つがバイオ燃料であり、各国は今以上にバイオ燃料の普及に取り組む必要があるのかもしれません。しかし、バイオ燃料を製造する過程において、食料問題や環境破壊が懸念されています。これらの食料・環境問題に配慮しながらバイオ燃料の促進に努め、持続可能な地球を目指しましょう。

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