サステナブル調達とは?重視される理由と実施ポイントを解説

この記事では、サステナブル調達の意味重視される理由、また企業事例をもとにサステナブル調達のポイントを解説します。近年、国際社会においてサステナビリティに対する関心が高まる中で、サステナブル調達が重視されるようになってきています。中小企業を含めた各企業さまは、ぜひ最後まで読んで今後の事業運営の参考にしてみてください。

目次

  1. サステナブル調達とは?

  2. サステナブル調達が重視される理由

  3. サステナブル調達のポイント

  4. サステナブル調達を実践する企業の事例

  5. まとめ:社会的配慮をしたサステナブル調達を実践しよう!

1. サステナブル調達とは?

サステナブル調達とは、企業がサプライチェーン上において社会的責任を果たし、持続可能な経済や社会を実現していく取り組みを意味します。

現在の国際社会は、経済を発展させる一方で、貧困層の拡大や強制労働、また気候変動といった数多くの問題を抱えており、これらは企業の事業運営と密接に関連しています。

企業は、世界の国々とともに国際的な社会問題の解決を図るために、原材料の購入・調達するにおいて、品質や価格等に加え、環境労働環境人権等への影響を確認し、また配慮した活動が必要とされています。

出典:内閣官房「責任あるサプライチェーン等における 人権尊重のためのガイドライン」p4

2. サステナブル調達が重視される理由

サステナブル調達は、国際社会における人権や貧困等の社会・環境問題に配慮した取り組みです。ここでは、より具体的にサステナブル調達が重視される理由を解説します。

(1)取引先を含めて企業が社会的責任を果たすため

「サステナブル調達とは?」の章で解説しましたが、サステナブル調達が重視される一番の理由は、企業が取引先を含めて事業活動における社会的責任を果たすことです。

事業活動における原材料の調達から製造、物流というサプライチェーン全体において、企業は有害物質の使用や環境汚染をしていないか、取引先を含め事業に関わる人たちが強制的に働かされたり、人権を無視した状況に置いていないかといったことを把握し、問題があれば適時改善していくことが求められています。

出典:厚生労働省「サプライチェーン全体で企業の社会的責任に取り組む」

(2)経営上で直面するリスクを抑制するため

企業は、事業活動を行う主体として人権を尊重する責任があります。これは、企業が他者への人権侵害を回避し、また企業が関与した人権への負の影響に対処すべきことを意味します。人権尊重への取り組みは、企業が直面する経営リスクの抑制に繋がるのです。

具体的には、人権侵害を理由とした不買運動、投資先からの評価の降格や引き揚げ、投資先候補からの除外等のリスクの回避に繋がります。事実、欧米を中心に人権尊重に向けた取り組みを企業に義務付ける法案の導入が進むほか、輸入差止を含む人権侵害に関連する法規制が強化されています。

内閣官房「責任あるサプライチェーン等における 人権尊重のためのガイドライン」p7

(3)企業価値の向上および持続的な成長を促すため

事業活動において、環境や人権へ配慮する取り組みは、いわゆるESG投資「社会」に該当する重要な要素です。現在ESG投資は重視されており、多くの投資家は企業の環境や社会問題という非財務的な要素を考慮して投資先の選択等を行っています。

したがって、企業が社会問題を考慮したサステナブル調達に取り組むことは、自社の価値向上および持続的な成長を促すことに繋がるといえます。

出典:経済産業省「ビジネスと人権~責任あるバリューチェーンに向けて~」

3. サステナブル調達のポイント

ここまで、サステナブル調達の意味や重視される理由を解説してきました。では、企業はサステナブル調達にどのように取り組むべきなのでしょうか。ここでは、サステナブル調達のポイントを解説します。

(1)経営陣による人権方針の策定とコミットメント

サステナブル調達を実践するためには、経営陣が人権方針を策定し、また実施していくことについてコミットメントすることが重要です。事業活動における人材の採用、原材料の調達、また製品の製造から販売を含む企業活動全般において、全社的に関与し、人権尊重責任を十分に果たしていかなければなりません。

以下は、ビジネスと人権に関する指導原則の中に記されている「人権への負の影響を防止・軽減と救済するための具体的な措置」です。

(a)方針によるコミットメント

(b)人権 デュー・ディリジェンスの実施

(c)救済措置

企業は人権に関する対応方針を策定しコミットメントを表明し、また社内外での調査の実施と人権への影響の把握および特定、また特定した人権に関するリスクに対して予防策・対応策を実施した上で、適切な救済を提供することが求められています。

人権方針は、自社の人権尊重に関する考え方を人権関連の国際ルールとの関連性を踏まえながら自社の人権課題の実態の調査と分析を行い、現状を把握して策定することが求められています。策定した人権方針は、従業員はもとより関係者全員への周知徹底が必要です。

出典:法務省「今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応」p20

(2)人権への影響評価

サステナブル調達を実施する上で、企業は事業活動における潜在的な人権への負の影響を特定し、その重要度を分析・評価(人権への影響評価(人権インパクト・アセスメント))することが求められます。

自社の従業員およびマネジメント、取引先やその他関係者への聞き取りやアンケート、社内書類や記録レビュー等から人権リスクの特定や分析を行い、社内外の専門家等を通じて影響を受ける可能性がある関連グループやステークホルダーと協議し、その内容を組み込むことが推奨されています。

出典:法務省「今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応」p22

(3)経営陣および従業員への教育・研修の実施

ビジネスと人権に関する指導原則において「人権への影響評価で得た調査結果は全社的に関連する職務部門および手続きに組み込み適切な措置を取るべき」としています。

これは、人権リスクの特定・分析・影響評価の中で、経営陣や従業員へ人権に関する知識や理解不足が原因で起こりうる人権リスクが発見された場合、企業は教育・研修プログラムの提供を通じて適時対応していく必要性を説いています。

出典:法務省「今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応」p23

(4)社内環境および制度の整備

サステナブル調達を実施するためには、社内環境や制度の整備が必要とされています。長時間労働・労働環境、差別的な要素を含む人事評価など、社内環境や制度が整備されていないことにより発生する人権リスクは多くあるといわれ、これらの問題はサステナブル調達を実施する上で改善しなければなりません。

現状のルールに潜む人権リスク等の課題を洗い出し、そこから既存の制度やルールの改善に繋げていくことが重要とされています。

出典:法務省「今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応」p23

(5)サプライチェーンの管理

潜在的・顕在的な人権リスクは、自社ではなく取引先が起因の場合があります。そのため、企業がサステナブル調達を実施する際は、サプライチェーンの管理体制やそのスキームを強化することが重要です。

事実、ビジネスと人権に関する指導原則では、企業に「たとえその影響を助長していない場合であっても、取引関係によって企業の事業や製品、サービスと直接的に繋がっている人権への負の影響を防止、軽減するように努める」ことが示されています。

これにより、取引先に対して人権尊重を遵守する内容を明記したサプライヤー行動規範調達ガイドラインを策定し、公開することが推奨されています。

出典:法務省「今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応」p23

(6)モニタリングの実施

策定した人権方針は、関連会社やステークホルダーを含め、全社的に取り組むことが大切です。とはいえ、策定した人権方針の実効性を把握し、継続的に改善を進めていかなければ意味がありません。したがって、企業は人権方針の実施を追跡調査する必要があります。

出典:法務省「今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応」p25

4. サステナブル調達を実践する企業の事例

サステナブル調達を実施するポイントを解説しました。企業は、人権尊重を中心とした環境や社会に配慮したサプライチェーンの構築が求められます。事実、すでに多くの企業がサステナブル調達を実践しています。ここでは、サステナブル調達を実践する企業事例を紹介します。

サントリーホールディングス株式会社

大手飲料メーカーのサントリーホールディングス株式会社(以下、サントリー)は、サステナブル調達を実践する企業です。サントリーは「人と自然と響きあう」という企業理念に基づき、安全・安心で高品質な商品・サービスをお届けするために6つのサステナブル調達基本方針を策定し、関連グループ全体、取引先への周知と理解を求める取り組みを行っています。

また、サステナブル調達基本方針を推進するために調達開発推進部を設立、またサステナビリティ経営推進本部と連携し、グループ全体の長期的な原材料戦略の推進、およびグローバルでの最適な調達活動に取り組み、グループ全体のサステナブル調達の推進を担う新体制で活動推進の強化を図っています。

それに加え、国内外のサプライヤーに対して人権・法令遵守・環境等の分野における具体的な遵守事項で構成されたサプライヤーガイドラインを制定しています。これにより、サントリーグループとサプライヤー間で同じ倫理的価値観を共有しながら、サステナブル調達を実施しています。

出典:サントリーホールディングス株式会社「サステナブル調達」

5. まとめ:社会的配慮をしたサステナブル調達を実践しよう!

サステナブル調達の意味や重視される理由、実践するポイントを中心に解説してきました。現在、経済発展の裏では労働時間・労働環境・人権等に関する問題が起きています。これらは、企業の事業活動と密接な関係があることがわかっているため、各企業はサプライチェーンにおいて社会的責任を果たす必要があるといえます。国内外で事業活動をしている企業さまは、社会的配慮をしたサステナブル調達を実践していきましょう。

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