スチュワードシップコードにESGを考慮する必要性について

機関投資家の行動指針であるスチュワードシップコードは、2017年の有識者検討会においてESGに関する内容が組み込まれました。それはなぜなのか、投資家および企業にどのような影響を与えるのか、この記事ではスチュワードシップコードの意味ESGを考慮する必要性について解説しています。

目次

  1. スチュワードシップコードとは?

  2. ESGとは?

  3. スチュワードシップコードにESG要素を考慮する必要性

  4. まとめ:ESG経営は企業価値の向上に繋がる!

1. スチュワードシップコードとは?

スチュワードシップコードとは、機関投資家や株主が投資先企業との建設的な対話を通じて、企業の持続的成長と顧客や受益者の中長期的な投資リターンの拡大という責任を果たすための行動原則を指します。いうなれば、投資家は企業の継続的な成長において監視・監督する責任を示すものといえます。これにより、別名「スチュワードシップ責任」とも呼ばれています。

出典:金融庁「スチュワードシップ・コード再改訂 のポイント」p4

スチュワードシップコードの背景

スチュワードシップコードが国際社会で重視されている背景には、2008年に起きたリーマンショックによる世界的金融危機が深刻化した要因のひとつに、機関投資家による企業の監視・監督が不十分だったことが挙げられます。日本においては、2014年に日本版のスチュワードシップコードが策定され、2017年に改訂、2020年に再改訂されています。

これほど短期間にスチュワードシップコードの改訂が繰り返されているのは、国際社会において重要課題とされているESGが影響しており、実際に2020年度のスチュワードシップコードの再改訂に関しては、ESGの考慮が組み込まれました。

出典:金融庁「スチュワードシップ・コード再改訂 のポイント」p4

日本版スチュワードシップコードの特徴

日本版スチュワードシップコードは、日本経済の成長戦略が大前提にあります。リーマンショックで経験した未曾有の金融危機を今後起こさないために、機関投資家に対して企業の経営状態を監視・監督する責任があることを明確にしました。以下は、日本版スチュワードシップコードの基本的原則です。

日本版スチュワードシップコードの原則

(1)スチュワードシップ責任を果たすための「基本方針」を策定し、これを公表すべきである

(2)顧客・受益者の利益を第一として行動するため、「利益相反」を適切に管理すべきである

(3)投資先企業のガバナンス、企業戦略等の状況を的確に把握すべきである

(4)建設的な対話を通じて投資先企業と認識を共有し、問題の改善に努めるべきである

(5)「議決権行使」の方針と行使結果を公表すべきである

(6)議決権行使結果は、個別の投資先企業及び議案ごとに公表し、形式的に議決権行使助言会社の助言等に依拠せず、自らの責任と判断の下、議決権を行使すべきである

(7)顧客・受益者に対して、自らの活動について定期的に報告を行うべきである

(8)投資先企業に関する深い理解に基づき、適切な対話と判断を行うための実力を備えるべきである

(9)機関投資家がスチュワードシップ責任を果たすにあたり、適切にサービスを提供するように努めるべきである

とくに原則(4)の機関投資家と投資先企業の建設的な対話は重要といえます。投資家と企業が適切な情報を開示し、かつ対話を繰り返す中で経営ビジョンの共有および現状の問題に取り組むことが、企業の中長期的な経営成長に繋がり、双方に大きな利益をもたらすと考えられます。

出典:金融庁「スチュワードシップ・コード再改訂 のポイント」p2

出典:金融庁「責任ある機関投資家の諸原則」p10

3. ESGとは?

近年、国際社会においてESGへの関心が高まり、企業の評価基準になりつつあることから、2020年に再改訂された日本版スチュワードシップコードにはESGを含むサステナビリティに関する方針が組み込まれました。

ESGの背景

ESGとは、E:Environment(環境)、S:Social(社会)、G:Governance(企業統治)を組み合わせた言葉です。責任投資原則(PRI)において、​​投資決定やアクティブ・オーナーシップに組み込むための新しい戦略および慣行と定義しています。

また現在、国際社会は気候変動や人権問題などの問題解決に向けた取り組みを強めるとともに、これらの問題に積極的に取り組むことが企業の中長期的な成長に繋がるという考えが広がっています。

ESGの意味

では、ESGとはどのような意味があるのか、ESGの取り組みは一体どのようなものなのかについて解説します。

  • E:Environment(環境)

ESGのEは、Environment(環境)を意味します。現在、気候変動問題をはじめ、動植物の絶滅保護や水資源といった環境問題が深刻化していますが、世界が持続的な発展を遂げるためには、環境問題を解決し自然資源を保護することが重要になっています。

  • S:Social(社会)

ESGのSは、Social(社会)を意味します。時代が進化するとともに人権問題や労働問題、ダイバーシティやLGBT、他にも人口問題などの社会問題が顕著化しています。これら社会問題の解決は、持続可能な社会の実現に必要不可欠と考えられ重視されています。

  • G:Governance(ガバナンス・企業統治)

ESGのGは、Governance(企業統治)を意味します。社会経済の持続的発展を遂げるためには、企業が透明性かつ健全な管理体制を整え、また適切な情報を開示することが求められています。とくに情報開示は、スチュワードシップコードの原則である投資家との建設的な対話を行ううえで重視されています。

ESGのそれぞれの意味を解説しました。これまでの投資家は、企業の財務状況をもとに経営状況を判断し投資先を選択していましたが、今後は企業のESGへの取り組みがより重視されると予想されます。ESG投資は今後の経済における主軸となり、また大企業だけではなく中小企業にも求められると考えられます。

大企業・中小企業問わず、今の経営方針を見直し、国際社会や日本政府の方針に沿った形でESGへの取り組み目標や結果を開示するなど、積極的にESGと経営を一体化させる動きをはじめる必要があるといえるのかもしれません。

ESG投資とは

出典:財務省「ESG投資について」p3・p4・p6

4. スチュワードシップコードにESG要素を考慮する必要性

2020年に再改訂されたスチュワードシップコードにおいて、機関投資家に対するスチュワードシップ責任の定義を変更し、投資先企業へのESG要素などのサステナビリティを考慮する旨が付け加えられました。その目的と理由について解説します。

経済社会の持続可能性を実現するため

経済社会の持続可能性を実現するために、機関投資家は企業のESGを考慮することを求めています。機関投資家が投資先企業やその事業環境等に関する深く理解し、運用戦略に応じたESG要素を考慮した建設的かつ目的を持った対話を行うことによって、企業価値の向上や持続的成長の促進に繋がると示しています。また機関投資家へのリターンが拡大し、社会経済全体の成長にも繋がるとされています。

一方で、企業にはコーポレートガバナンスにおいて社会や環境問題をはじめとするESG(サステナビリティ)を巡る課題について適切な対応を求めています。機関投資家と投資先企業が財務情報のほかESGを含む非財務情報を適時開示し対話をすることが、今後の企業成長における重要なポイントであり、機関投資家も持続的な利益が得られると考えられます。

出典:金融庁「ESG要素を含む中長期的な持続可能性 (サステナビリティ)について」p2

国際社会における環境および社会問題の解決に繋げるため

ESGの基本概念である持続可能な社会を実現するためには、国際社会における環境および社会問題の解決が必要とされています。以下は、環境と社会の主な問題です。

【環境問題】

・気候変動

・生物多様性

・海洋汚染

・プラスチック等の廃棄物

・水資源

【社会問題】

・人権問題

・貧困問題

・ダイバーシティ

・人口問題

・労働問題

これら環境や社会問題は、それぞれ自然資本人的資本に分けられ、社会経済において必要不可欠な要素とされています。個人・企業・政府がESG問題の解決へ積極的に取り組むことは、自然・人類・経済のすべてにおいて持続可能な社会に繋がるといえるのではないでしょうか。

出典:財務省「ESG投資について」p4・p5

投資家が安定した収益を得るため

スチュワードシップコードは、機関投資家が投資先企業の環境等を深く理解したうえで建設的な対話を通じ、企業価値の向上や持続可能な成長を促すことによって、投資先企業および投資家の双方が安定した収益を得るための方針です。そのため、機関投資家は企業の状況を適切に把握し、また長期的な視点で経営を見守る責任があり、投資先企業に対しても透明性かつ健全な経営を強く求める必要があるのです。機関投資家と企業の対話が深まれば、双方にとって継続的な利益がもたらされるといえます。

出典:金融庁「スチュワードシップ・コード再改訂 のポイント」p7

4. まとめ:ESG経営は企業価値の向上に繋がる!

スチュワードシップコードは、機関投資家が投資先企業の価値向上と持続的成長を促すための行動規範です。機関投資家は、投資先企業との対話を通じてESG諸問題を考慮させ、また双方が継続的な利益を得るために企業とどのように向き合うかを考えなければいけません。

一方で企業側は、コーポレートガバナンスを重視し、透明かつ健全な経営を行い、財務および非財務情報を適時開示することが今後の成長に繋がります。大企業に限らず、中小企業においてもESGは今後重視されますので、ESGを踏まえた経営へ切り替え、また投資家との関わり方を見直す必要性があるといえるのではないでしょうか。

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