カーボンオークションとは?日本とアメリカの最新トレンドを解説!

カーボンオークションは、地球温暖化や気候変動といった環境問題に対処するための効果的な手段として注目されています。この仕組みは、企業や国が排出する二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの量を制限し、環境に与える悪影響を軽減することを目的としています。この記事では、カーボンオークションとは、仕組み、目的、利点、課題、そして将来展望について解説します。

目次

  1. カーボンオークションとは?

  2. カーボンオークションの市場動向

  3. カーボンオークションの将来展望

  4. まとめ:カーボンオークションに関する情報に触れておこう!

1. カーボンオークションとは?

カーボンオークションの概要と魅力について解説します。

(1)カーボンオークションの概要

カーボンオークションとは、温室効果ガス(主に二酸化炭素)の排出権を購入する仕組みのことをいいます。具体的には、温室効果ガスの排出権を企業同士が競売によって取引する仕組みであり、一般的なものだと株の取引と同様の仕組みで形成されています。

企業は、あらかじめ設定された排出枠(エミッション・アロケーション)内での排出が求められているため、排出枠を超過すると罰金などの制裁が科されてしまいます。そこで、排出枠を超えてしまうと予想される企業が事前に排出枠をカーボンオークションによって購入します。

カーボンニュートラルが求められる現代社会において、カーボンオークションは、持続可能な社会の実現に向けた重要な仕組みであり、気候変動対策の一環として世界中で注目されています。

出典:EuropeanCommission「Auctioning

(2)カーボンオークションのメリット・デメリット

カーボンオークションは、競売によって購入価格が確定するため、需要が増加すると排出枠の価格も高騰します。企業は排出枠の高値で購入を行う必要が出てくるため、排出をどのように抑えるかという問題に必然的に取り組むこととなり、カーボンニュートラル促進へ寄与する事ができます。

排出枠は企業に対して割り当てられるものであるため、排出枠が余った企業は排出枠を売る事ができ、新たな収入源を得ることができます。そのため、カーボンオークションで決済された収益の一部がグリーンエネルギーやカーボンニュートラルの研究開発費へ投じられることも、カーボンオークションで期待されています。
もっとも、オークション形式では、価格が自然形成される反面、価格が十分ではない場合や、買い手がそもそも現れないといったデメリットも存在し、これはオークションの特性上当然に予想され、この点をいかに解決することが課題であるといえます。

出典:国立環境研究所地球環境研究センター「ココが知りたい地球温暖化」(2010/3)
出典:環境省「国内排出量取引制度について」(2013)p3-5

2. カーボンオークションの市場動向

カーボンオークションに関する、アメリカと日本の市場動向を解説します。

(1)アメリカのカーボンオークションの市場動向

カリフォルニア州とケベック州のカーボン市場における最新のオークションでは、すべての排出権が買い占められ、前回よりも高い価格で取引されました。

カリフォルニア州とケベック州は、5月17日に行われたオークションで、2023年の排出権を5610万枚、2026年の排出権を760万枚提供しました。今年使用される排出権の価格は、トン当たり30.33ドルで決済され、前回の四半期オークション(2月に開催)よりもトン当たり2.48ドル高い価格となりました。

また、将来の排出権の希少性が高まっていることから、先行販売された2026年の排出権のカバーレシオは、前回のオークションの2.43から2.63に上昇しました。

※カバーレシオは、参加者が入札した枠の数と実際に落札された枠の数との比率を表しており、需要と供給のバランスや市場の状態を示す重要な指標となります。例えば、カバーレシオが1よりも低い場合は、需要よりも供給が過剰であり、競争が激しいことを示し、カバーレシオが1よりも高い場合は、需要が供給を上回り、枠の不足が起こっていることを意味します。

一方で、カーボンニュートラルへの取り組みが増えることで、排出が減少することも予想されることから、排出権の価格が今後下落する可能性もあるという意見もあり、市場の予想が困難であるが市場への注目は今後も伸びていくと考えられます。

出典:The California Air Resources Board「California and Quebec release summary results from 35th joint cap-and-trade allowance auction」(2023/5/25)
出典:CISION「Carbon Market: Results of May 17 Auction held between Québec and California」(2023/5/25)

(2)日本のカーボンニュートラルの市場動向

日本では、現状カーボンオークションは行われていませんが、排出権取引というものが行われています。排出権取引とカーボンオークションの違いは、以下の点にあります。

排出権取引は、企業や国家に対して割り当てられた温室効果ガス排出の許容量を取引する仕組みです。一般的に、政府や国際的な規制機関が排出権を発行し、それを排出量を抱える企業や産業部門に配布します

カーボンオークションは、GHG排出権やカーボンクレジットなどのカーボン単位を競売によって取引する仕組みです。カーボンオークションでは、売り手が排出権やクレジットを競売にかけ、買い手が需要に応じて入札を行います。

つまり、排出権取引は、政府や規制機関によって割り当てられた排出権を取引するのに対し、カーボンオークションは市場で需要と供給に応じて価格が形成される競売方式です。

もっとも、日本は排出権取引以外にもカーボンニュートラルを目指して、以下のような取り組みも行っています。

  • 再生可能エネルギーの導入

日本では太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入が進んでおり、化石燃料に依存するエネルギーからの脱却を図り、低炭素な電力供給を実現しています。

  • エネルギー効率の向上

省エネルギー家電の普及や建築基準の強化など、エネルギー効率の向上を促す政策が実施されており、日常的な製品分野の温室効果ガス削減をしています。

  • 交通部門の脱炭素化

自動車や交通機関の脱炭素化も課題視されているため、日本では、電気自動車(EV)や水素燃料電池車(FCV)の普及を推進するための政策が進められています。また、公共交通機関の利用促進や自転車の普及など、持続可能な交通手段の選択も推進されています。

  • グリーンテクノロジーの発展

持続可能な社会を実現するため、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギー技術や省エネルギー技術の開発が推進されています。

以上のように、2050年のカーボンニュートラルへ向けて、さまざまな取り組みが日本でも行われています。

出典:環境省「脱炭素ポータル」(2021/7)
出典:国際炭素行動パートナーシップ(ICAP)事務局『世界に広がるカーボンプライシング』(2017/6/14) 

3. カーボンオークションの将来展望と課題

カーボンオークション、及びカーボンニュートラルに関する将来展望、課題を解説しています。

(1)カーボンオークションの将来展望

現在は一部の国や地域のみで行われているカーボンオークションですが、将来的にはより多くの国や地域で導入され、気候変動対策における重要なツールとして、世界中での導入が進むと考えられています。

また、カーボンニュートラルへの注目により、環境に配慮した金融商品やグリーンファイナンスの需要が高まり、投資家や金融機関は環境リスクを考慮した投資を促進することが予想されます。

カーボンニュートラル市場の展望は、地球温暖化の抑制や持続可能な社会の実現に向けた重要なものであるため、政府、企業、市民が協力し、クリーンな未来を築くための取り組みがますます進展することが期待されています。

出典:経済産業省資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラルを目指す 日本の新たな「エネルギー基本計画」」(2022/1/14)

(2)カーボンオークションに関する課題

カーボンオークションには、市場の需要と供給によって価格が決定される事による、企業や組織の経済的負担が増加する点が課題としてあげられています。さらに、国際的な協力や統一的な基準の確立も重要な要素となっているため、課題に対して、さまざまな国や地域でベストプラクティスの共有が進められる必要があるといえます。

特に、カーボンオークションは、競争の原則や公正な取引を確保する必要があることや参加者間で情報の対称性、市場の透明性の確保も必要となっているため、テクノロジーの発展も同様に重要な要素を担っているといえます。

その他、カーボンニュートラル分野では、温室効果ガスの排出量の測定に関する監視と報告の信頼性を確保する必要がある事や排出枠の分野では、特定の産業や地域に影響が大きいことを配慮し、影響を受ける側へのサポートや適切な補償策を検討することができるかなども課題にあります。

出典:経済産業省「カーボン・クレジット・レポート 」(2022)p29-31

4. まとめ:カーボンオークションに関する情報に触れておこう!

カーボンオークションは、企業や国が排出枠の取引を通じて排出削減に取り組むことで、環境保護と経済の両立を実現することができ、地球温暖化や気候変動といった環境問題に対処するための手段として世界的に注目されおり、今後日本における導入の可能性についても注目です。そのため、今から情報を集め対応できるようにしておくことが必要となります。

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