EUで進む自動車排気ガス汚染規則を解説!EU8か国がユーロ7を反対する背景とは

自動車排気ガス汚染規則は、カーボンニュートラル推進に当たって、重要な要素の1つですが、その自動車排気ガス汚染規則を巡って、EUで論争が繰り広げられています。この記事では自動車排気ガス汚染規則に関する解説とEUでの論争の背景、自動車分野のカーボンニュートラルの現状を解説していきます。

目次

  1. 自動車排気ガス汚染規則

  2. EUの自動車排気ガス汚染規則の撤回

  3. 自動車排気ガス汚染に関する取り組み

  4. まとめ:新たな排気ガス規制に関する情報をいち早く受け取り、今後予想される排気ガス規制に対応できるようにしよう!

1. ​自動車排気ガス汚染規則

自動車排気ガス汚染規則の概要と具体的な自動車排気ガス汚染規則について、解説しています。

(1)自動車排気ガス汚染規則とは?

自動車排気ガス汚染規則は、自動車の排気ガスに関する規制基準のことです。これは、環境保護と公衆衛生の観点から、自動車が排出する有害なガスや微粒子の量を制限し、大気汚染の低減を目指しています。

主な規制基準としては、排気ガス中の二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOx)、微粒子(PM)などがあり、規制されている物質は、大気汚染や気候変動に対し、影響を及ぼす可能性のある物質となっています。

自動車排気ガス汚染規則は、自動車メーカーに対してよりクリーンな車両の製造を促すための規制基準を設けており、具体的には、効率的なエンジン技術の採用や浄化装置、燃料の品質基準の遵守などが求められています。

自動車排気ガス汚染規則は、国や地域によって異なる場合がありますが、近年では多くの国や地域で厳格な基準が定められており、自動車産業全体がよりクリーンで環境に優しい車両の開発に取り組んでいます。

上記の取り組みは、環境の保護と公衆衛生の向上を目的としており、クリーンな車両の普及による大気汚染の低減や気候変動対策、健康な環境と持続可能な未来の実現を目指しています。

出典:国立環境研究所 環境情報メディア 環境展望台『自動車排出ガス対策』(2017年3月)

(2)自動車排気ガス汚染規則の具体例

自動車排気ガス汚染規則には、以下のような様々な基準や要件があります。一般的な自動車排気ガス汚染規則の具体例をいくつか記載します。

  • 排気ガス成分の制限

排気ガスに関する規制では、排気ガス中の特定の成分や汚染物質の量に制限が設けられています。例えば、二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)、微粒子(PM)などが制限され、国や地域が定めた基準を順守する必要があります。

  • 浄化装置の要件

自動車には排気ガスの浄化装置が搭載されることが要件となっています。これには、触媒コンバーターや粒子フィルターなどが含まれており、浄化装置は有害なガスや微粒子を取り除き、クリーンな排気を実現する役割を果たします。

  • 燃料品質の基準

自動車の排気ガスは燃料の品質にも影響します。規制では、燃料の硫黄含有量や有害物質の削減など、燃料品質に関する基準が設けられており、クリーンな燃料の使用が促進されています。

  • 車両の燃費基準

燃費効率の向上も自動車排気ガス汚染規則で規定があり、自動車メーカーは、一定の燃費基準を満たす車両の開発を求められています。

  • 定期的な排気ガス検査

自動車の排気ガスに関する規則では、定期的な排気ガス検査が義務付けるものです。車両の排気ガス成分や浄化装置の機能などが定期的に検査され、保有している自動車自体が基準を満たしているかどうかが確認されます。

上記は自動車排気ガス汚染規則の一例であり、国や地域によって異なる規制基準が存在していますが、カーボンニュートラルへの注目が集まっている現代では今後より厳しい規則が設けられていくと考えられます。

出典:独立行政法人環境再生保全機構『大気環境の情報館』

2. EUの自動車排気ガス汚染規則の撤回

EUの自動車排気ガス汚染規則延期の撤回の概要と論点について、従来の排気ガス規制を踏まえたユーロ7、自動車排気ガス汚染規則の反響に対する反響について解説します。

(1)従来の排気ガス規制(ユーロ6)とユーロ7の比較

ユーロ7は、自動車の排気ガスに関する規制基準のことで、これらの基準は、欧州連合(EU)によって設定され、新しい自動車の排気ガスのクリーンさを向上させることを目的としています。

※ユーロ7以外にユーロ6…ユーロ1があり、番号が上がるにつれ規制が厳しくなります。

ユーロ6基準は、2014年に導入され、ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの両方の車両に適用されており、この基準では、窒素酸化物(NOx)および微粒子(PM)の排出レベルを大幅に削減することが求められていました。

一方、ユーロ7基準は、ユーロ6基準の更なる強化版であり、さらに厳しい排出基準を設けるものとなっており、自動車の排気ガスに含まれる有害物質の削減を目指しています。

ユーロ7規制は、過去には規制されていない二酸化炭素(CO2)以外の汚染物質(例:一酸化炭素、窒素酸化物)やブレーキやタイヤからの微粒子に対する規制も含まれていることから厳しい規制とされています

出典:EuropeanCommission「Commission proposes new Euro 7 standards to reduce pollutant emissions from vehicles and improve air quality」(2022/11/10)

出典:環境省「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」(2014)10頁

(2)EUの自動車排気ガス汚染規則延期の撤回

ユーロ7の規則発表に対し、フランス、チェコ、イタリア、ブルガリア、ルーマニア、スロバキア、ポーランド、ハンガリーの8か国は反対を表明してます。中でも、フランス、イタリアは、EUの自動車排気ガス汚染規則は、他の環境政策や目標とのバランスを欠いていると主張しており、投資や努力の優先順位を再評価し、自動車産業の持続可能な変革を妨げることなく、環境保護と産業の発展を両立させたいと考えています。

また、ユーロ7による影響によって、コストにどのような影響が生じるかについて、欧州自動車工業会(ACEA)の委託を受けて調査したFrontier Economics社によると
車両のユーロ 7 準拠にかかる追加の直接コストとして、乗用車/バンで 180〜 450 ユーロ、バス/トラックで 2,800 ユーロ程度と発表しています。
以上のように、ユーロ7の発表はヨーロッパの八か国が反対を表明しており、その理由にはコスト面や方向性といった複雑な問題が絡み合っています。

出典:EURACTIV「Czech-led coalition of eight countries opposes Euro 7 car emissions standards」(2023/5/23)
出典:Frontier Economics「Regulatory Costs of Euro 7 matter」

(3)自動車排気ガス汚染規則延期の反響

フランスとイタリアがユーロ7排出規制の延期を求めたことに対し、支持及び批判の声が寄せられています。

  • 自動車産業の支持

自動車メーカーや関連企業からの支持を大きく受けており、その理由は各企業からは十分な準備期間が必要であり、規制の遵守にかかる費用や技術開発の負担が大きいためとされています。

  • 環境保護団体からの批判

一方で、環境保護団体はフランスとイタリアの要求に批判的な立場を取っており、ユーロ7規制の厳格化が環境保護や健康への取り組みの一環であり、遅延や撤回は環境に対する取り組みの後退とみなされると主張しています。

  • EU内での議論の高まり

フランスとイタリアの要求はEU内でも議論がされており、他のEU加盟国もフランスとイタリアに同調する声を上げており、ユーロ7規制の厳格化や適用時期に関してより緩和的なアプローチを求める声が広がっています。

フランスとイタリアの要求が具体的な結果につながるかどうかは不透明であり、EU内では規制の見直しや適用時期の議論が続いています。

出典:AutmoutiveNewsEurope「Automakers critical of EU's new Euro 7 pollution rules」(2022/11/10)

3. 自動車排気ガス汚染に関する取り組み

自動車排気ガス市場の動向と具体的な取り組みについて解説します。

(1)我が国における自動車排気ガス市場の動向

以下の資料は、日本国土交通省より公開されている「運輸部門における二酸化炭素排出量」の関するものとなっているが、データを見ると分かる通り、自動車が属する運輸部門は全体の17.4%も占めており、その中でも自家用乗用車は44.3%と全体の中でも非常に多くの割合を占めています。

そのため、カーボンニュートラルが求められる現代社会では重要視すべき要素の1つであり、規制が多く、さまざまな取り組みがなされている分野です。

出典:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」(2023.6.12)

以下の資料は、国土交通省より公開されている「運輸部門における二酸化炭素排出量の推移」に関するデータだが、2001年を基準とし増加傾向であった二酸化炭素排出量が、減少傾向へ転じています。

この背景には、自動車メーカーの燃費改善や技術革新によるものだと考えられ、カーボンニュートラルへの兆しが感じられます。また、2020年では新型コロナウイルスによる外出自粛により本傾向は強まっており、カーボンニュートラルが加速しています

出典:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」(2023.6.12)

(2)自動車排気ガスに対する取組事例

自動車排気ガス汚染に関する具体的な取り組み例は以下のようなものがあります。

  • 電気自動車(EV)の普及

自動車メーカーや政府は、電気自動車の普及を推進しており、EVはガソリンやディーゼルを燃料とせず、電気のみを使用するため、ゼロエミッションで走行することができます。

そのため、多くの国や都市がEVの導入を奨励するために、充電施設の整備や購入補助金などの政策を導入しています。

  • ハイブリッド車の開発

ハイブリッド車は内燃エンジンと電気モーターの組み合わせで動作し、燃費の向上と排出ガスの削減を図っています。この技術は、従来のガソリン車と比較して排気ガスの削減効果があります。

  • 燃料の改良

自動車メーカーは、クリーンな燃料の開発にも取り組んでおり、具体的には、バイオディーゼルや天然ガスなどの代替燃料は、石油由来の燃料に比べて排気ガスの削減効果があります。 

  • エンジン技術の改善

自動車メーカーは、エンジンの燃焼効率を改善するための技術革新にも注力しており、具体的には、直噴エンジンや可変バルブタイミングなどの技術は、燃費の向上と排気ガスの削減に寄与しています。

上記で紹介したように、自動車業界は、カーボンニュートラル(二酸化炭素排出量ゼロ)を目指す取り組みにも力を入れていれており、特に、再生可能エネルギーの活用やカーボンオフセットの導入、持続可能な製造プロセスについて、強く推進しています。

出典:国立環境研究所『自動車排出ガス対策』(2017/10)

4. まとめ:今後、自動車排気ガス汚染に対処するため自動車産業はさらなるカーボンニュートラルを目標とする!

フランス、イタリアその他各国が、投資や努力の優先順位を再評価し、自動車産業の持続可能な変革を妨げることなく、環境保護と産業の発展を両立させたいと考え、自動車排気ガス規制であるユーロ7の延期を求めました。しかし、これは国際的に排気ガス規制がなくなることを意味するわけではありません。

そのため、今後予想される排気ガス規制に備えて、電気自動車(EV)、ハイブリッド車、燃料問題、エンジン技術等の自動車に関連する情報を受け取れるようにしておくことが肝要といえるでしょう。

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