「CSRD」と「ISSB」との違いとは?「CSRD」と「ISSB」との違いを分かりやすく解説
- 2024年01月11日
- SDGs・ESG
「CSRD」と「ISSB」の違いとはどういうことなのか、それぞれの意味や企業が取り組むべきことを分かりやすく解説します。「CSRD」と「ISSB」は、どちらもサステナビリティに大きく関係しており、企業にとっても関連付けるものとなっています。
ただ、「CSRD」と「ISSB」には違いがあるので、それぞれの意味をよく理解することが重要です。ここでは、2024年度からEU加盟国で本格的に適用される「CSRD」と「ISSB」の概念や取り組みについてご紹介します。
目次
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CSRDの概要
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ISSBの概要
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CSRDやISSBにおける企業の取り組み
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まとめ:CSRDとISSBの違いを理解して、取り組みについて考えることから始めてみましょう!
1. CSRDの概要
欧州委員会が中心となって取り組みを開始したCSRDは、早ければ2024年度から適応が開始されます。それにより、EU加盟国はCSRDに定められた目標を達成する必要があります。ここでは、CSRDの概要や適応となる対象についてご紹介します。
CSRDとは
CSRDの正式名称は、「Corporate Sustainability Reporting Directive(略してCSRD)」で、「企業サステナビリティ報告指令」を意味します。これは、気候変動リスクをはじめとするサステナビリティの情報開示をすることが目的で、欧州委員会が2021年4月にCSRDの提案を公表し、2023年1月に発行、2024年1月に本格的に適用が開始されるEUの指令によるサステナビリティ情報規制です。EUでは、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「欧州グリーンディール」を掲げています。
出典:Action(活動) 週刊 経団連タイムス 『No.3559 欧州の企業サステナビリティ報告指令を踏まえて日本企業が留意すべき事項』(2022年9月15日)
CSRDが提案された背景
CSRDが提案された背景には、投資家をはじめ金融機関や消費者のサステナビリティに対する情報のニーズが高まっていることが挙げられます。もともとEUでは、「NFRD(Non-Finacial Reporting Directive、非財務報告指令)」により、サステナビリティ情報開示の義務がありました。しかし、NFRDは、利用者のニーズを満たすものではないことが課題とされており、欧州委員会はより詳細なサステナビリティ情報を開示するCSRDを提案しました。具体的な報告要件を提供することで、利用者がより簡単にサステナビリティの情報を得られるようにするためです。開示した情報の信頼性や比較可能性が高いほど、企業のサステナビリティへの取り組みの貢献度にもつながります。
出典:金融庁『事務局説明資料②(サステナビリティに関する開示(1))』p,10.(2021/10/01)
出典:環境省『EUにおけるサステナビリティ開示関連規則の策定の動き』p.26,(2021年9月)
CSRDの適用対象
CSRDの適用対象は、EUでは全ての大企業と上場企業(一部除外を除く)となっており、日本のようにEU域外企業でも、「EU域内で150百万ユーロの売上がある(ただし、2会計期間継続して)」、「EU域内の子会社が大企業または上場企業」などの一定の条件のもとCSRD適用対象となっています。
現在、日本のサステナビリティの情報の開示の対象は、上場会社(金融商品取引法適用会社)などとなっていますが、EUでCSRDが適用された場合、EU域と取引のある日本のグループ会社にもサステナビリティ情報開示の要求等の影響が及ぶ可能性があると予測されます。
2. ISSBの概要
ISSBは、2021年11月に国際財務報告基準団体(IFRS)の配下で設立した組織で、CSRDと並んでサステナビリティの情報に大きく関係します。ここでは、ISSBの概要や取り組み、CSRDとの違いについてご紹介します。
ISSBとは?CSRDとの違い
ISSBは、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」の提言をもとに企業の情報開示基準のベースラインを開発、提案し最終的に統括する民間機関です。ISSBの正式名称は、「International Sustainability Standards Board(略してISSB)」で、「国際サステナビリティ基準審議会」を意味し、気候変動による金融システムのリスクが主軸となっています。
具体的な金融リスクとして「物理的リスク:気候変動による災害等での財物損破壊(直接的)、グローバルチェーンの中断・資源の枯渇(間接的)によるもの」・「賠償責任リスク:気候変動による損失による賠償責任の回収によるもの」・「移行リスク:低炭素経済への移行おけるGHG排出量の大きい金融資産の再評価によるもの」が挙げられます。
CSRDとISSBのどちらも気候変動を含むサステナビリティ情報開示が目的とされていますが、CSRDは、政府指令のもと脱炭素社会への取り組みによる利用者の企業に対するイメージに影響があり、それに対してISSBは、気候変動による企業の資産損失に影響があるという大きな違いがあります。また、CSRDは法的な拘束性がありますが、ISSBには法的な拘束性がないという違いもあります。
出典:環境省『シナリオ分析の実施ステップと最新事例』p,11.(2023年3月)
出典:金融庁『事務局説明資料②(サステナビリティに関する開示(1))』p,10.(2021/10/01)
ISSBが提案された背景
ISSBが提案される以前は、サステナビリティ情報開示の指標や報告基準が定まらず利用者や企業から比較可能性や開示基準の統合を求める声が上がっていました。そこで、世界共通の会計基準を作成しているIFRSは、関係者団体の意見を踏まえた上でIFRSの中に、世界共通のサステナビリティ情報開示の統一基準を設定するため、ISSBを新たに創設しました。
CSRDは、投資家をはじめ金融機関や消費者など利用者から情報開示を求める声を受けて提案されたものに対し、ISSBは、企業による情報開示のための共通基準を求める声から提案されているという違いがあります。
出典:経済産業省『第1回非財務情報の開示指針研究会 事務局資料』p,14.(2021年6月)
ISSBの今後の取り組み
ISSBのサステナビリティ情報開示基準として、「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項(S1)」と、「気候関連開示(S2)」の公開草案が提案されています。今後は、この2つの基準の最終化に向け審議を加速するとされています。
出典:経済産業省『ISSB開示基準の審議状況について (事務局資料①)』p,12.(2022年10月)
3. CSRDやISSBにおける企業の取り組み
日本の企業のサステナビリティの取り組みは、海外からも高い評価を得ています。企業が今後、ISSBのサステナビリティ情報開示基準に沿って、投資家や消費者にCSRDを公表することは、とても大きな意義があります。
ISSBやCSRDの取り組みをすることで、自社のサステナビリティへの高い意識を印象付けることができ、投資家や消費者の企業に対する信頼につながります。
CSRDにおける今後の日本企業の取り組み
CSRDにおける企業のサステナビリティの対応として、社会と企業のサステナビリティの取り組みを一本化させることが今後の課題となります。
社会のサステナビリティとは「持続可能な社会に対する対応」を意味し、企業のサステナビリティは「企業が長期的かつ持続的に成長原資を生み出す力の維持・強化」を意味します。CSRDは気候変動リスクがベースとなっていることから、日本の企業はカーボンニュートラルを軸としたCO2削減などの取り組みの継続、強化が目標となります。
出典:経済産業省『価値協創のための統合的開示・ 対話ガイダンス 2.0』p,6.(2022年8月)
ISSBにおける今後の日本企業の取り組み
ISSBは、気候変動における市場関係者の金融リスクがベースにあります。企業の最終利益は、最終的に株主に帰属されるので企業は気候変動での金融リスクを回避する必要があります。
企業の取り組みとして「取引先(顧客・バリューチェーン)」「パートナー(共同研究や共同事業)」「地域社会や公的機関等のステークホルダーの課題の解決」によって企業の利益を得ていくことが重要とされています。また、投資家や資本市場と対話をすることで常に課題と向き合い解決していく姿勢を見せていくことも企業への信頼の面でも重要となります。
出典:経済産業省『価値協創のための統合的開示・ 対話ガイダンス 2.0』p,6.(2022年8月)
「CSRD」と「ISSB」に関して情報開示のための取り組み
CSRDとISSBのどちらも、「サステナビリティ情報開示」が目的であり、情報開示には①データ収集(自社におけるエネルギー使用量やスコープ1・2・3算定に必要なデータ)と②データの算定(GHGプロトコルに準じた算定)が重要です。
この時、企業の気候に影響する情報開示の場合は「CSRD」に該当し、気候による企業のマネーリスクの情報開示の場合は、「ISSB」に該当します。どちらも、気候変動と経営を統合をゴールとして目指します。
出典:経済産業省『サステナビリティ関連データの効率的な収集と 戦略的活用における各社の実態と実務課題』p,9.(2023/03/01)
4. まとめ:CSRDとISSBの違いを理解して、取り組みについて考えることから始めてみましょう
CSRDとISSBの違いについてご紹介しました。CSRDは企業と関係を持つ投資家や金融機関、ユーザーなどに企業の環境への負荷に関する情報を開示することであり、それは環境への貢献度のアピールともなります。また、ISSBは気候変動による金融リスクを予測することで、金融リスクの回避につながります。そのためには、投資家や市場関係者との情報共有などの連携が重要となります。
CSRDとISSBは、ともに2024年の適用を目指しており、企業の取り組みが注目されます。まずは、CSRDとISSBの違いをしっかりと理解して、企業が目指す取り組みについて考えることから始めてみましょう!