小売業におけるカーボンニュートラルの達成に向けた企業の取り組み事例を紹介!

政府が示した「2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現」の目標達成には、小売業の脱炭素化が重要不可欠です。

小売業は製造業など、ほかの業種に比べて脱炭素の取り組みが遅れていることが課題となっています。この記事では、小売業におけるカーボンニュートラルに必要な取り組みを企業の取り組み事例とともに具体的にご紹介します。

目次

  1. カーボンニュートラルとは?

  2. 小売業におけるCO2排出量の現状とは?

  3. 小売業における省エネ化・再エネ化を促進!

  4. 小売業のカーボンニュートラルに向けた取り組み

  5. カーボンニュートラルに取り組む企業事例

  6. まとめ:社会の先駆けとなるカーボンニュートラルを目指そう!

1. カーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルとは、CO2を始めとした温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにすることを意味し、政府は2050年までの実現を目指しています。排出せざるをえない温室効果ガスについては、排出量と同じ量を「吸収」「除去」することで、差し引きゼロにする考えです。

出典:環境省『カーボンニュートラルとは - 脱炭素ポータル』(2023/01)

2. 小売業におけるCO2排出量の現状とは?

2020年度における日本の小売業におけるCO2排出量は、電気・熱配分後排出量から見たエネルギー起源CO2排出量を部門別に分けた結果、小売業が含まれる「業務その他部門」のうち2割(3800万トン)を卸売・小売業が占めています。これは、「業務その他部門」の中で、CO2排出量がいちばん多いという状況です。 

業種別排出量

出典:環境省『業務その他部門からのエネルギー起源CO2排出量の内訳』p,5.(2022/03)

3. 小売業における省エネ化・再エネ化を促進!

省エネ規制法改定

省エネ法とは、一定以上(原油換算1,500kl/年以上使用)の事業者に、エネルギー使用量の定期的な報告が課せられる、エネルギーの使用の合理化に関する法律です。化石エネルギーの使用量の合理化を目的としていましたが、「2050年カーボンニュートラル宣言」のもと省エネ法が改定され、新たに非化石エネルギーを含めたエネルギー使用の合理化および非化石エネルギーへの転換が求められるようになりました。「業務その他部門」においてのエネルギー消費量は卸売・小売業が最も多くなっており、カーボンニュートラル実現のためには省エネ法の対象とならない企業においても対応が必要となります。

出典:資源エネルギー庁『省エネ法の改正 | 事業者向け省エネ関連情報』(2023/05)

小売業の再エネ化に期待!

経済産業省は、2030年までに再生可能エネルギーの比率を36%〜38%に引き上げることを目標としています。そのためには、小売業での店舗運営における使用電力を100%再生可能エネルギーにすることでカーボンニュートラル達成に貢献することができます。

出典:資源エネルギー庁『今後の再生可能エネルギー政策について』p,4.(2022/04/07)

4. 小売業のカーボンニュートラルに向けた取り組み

(1)高効率照明の導入

政府は、業務部門において2030年までに高効率照明の導入100%を目指しています。店舗などで使用する照明に、高効率LED照明、有機EL照明などの少ないエネルギーで十分な明るさを実現できる照明の導入が重要となります。

出典:資源エネルギー庁『2050年カーボンニュートラルの実現 に向けた需要側の取組』p,16.(2021/02)

(2)既築建築物の断熱改修の推進

お客様に快適に過ごしてもらうため冷暖房は欠かせません。しかし、冷暖房の使用は多くのCO2を排出します。CO2の排出を削減するには、既築建築物の断熱改修が有効であり、断熱改修をすることで外気温の影響を受けにくく、少ないエネルギーで冷暖房を使用することができます。

出典:資源エネルギー庁『2050年カーボンニュートラルの実現 に向けた需要側の取組』p,16.(2021/02)

(3)再生可能エネルギーによる電力供給

今、多くの小売電気事業者が太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを電源としたプランを提供しています。自社の再生可能エネルギー割合が100%のプランにすることで、CO2排出量実質ゼロの電気となります。

再エネ電気プランとは

出典:環境省『再エネ電気プラン(企業・自治体向け) | 再生可能エネルギー導入方法』(2022/03/16)

出典:資源エネルギー庁『2030年度におけるエネルギー需給の見通し (関連資料)』p,4.(R3/10))

5. カーボンニュートラルに取り組む企業事例

株式会社おきそ(以下おきそ)

リサイクル食器販売のおきそでは、リサイクル販売で以前から脱炭素に取り組んでいました。キズや割れなどが生じた食器を修復して再活用する「リペア事業」を新たに考案し、食器1トンあたりの製造で排出されるCO2を4.67トンから1.34トンまで削減することに成功しました。リペア事業の高い脱炭素貢献性を示すことにより、新規事業への発展にもつながっています。

出典:環境省『中小規模事業者向けの脱炭素経営導入』p,26.

株式会社ドール

日本でもっとも食べられている果物は、バナナです。スーパーなどで販売されているバナナは3〜4本をまとめてプラスチックパッケージに入れられて売られているのが当たり前でした。そのため株式会社ドールでは、「食品ロス削減」、「家庭ゴミ削減」のための取り組みとして「量り売り」で、袋を使わず必要な分だけ購入するスタイルをスタートさせ、食品ロス削減やプラスチック梱包削減に貢献しています。

出典:環境省『株式会社ドール | 脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動』

株式会社セブン&アイホールディングス

株式会社セブン&アイホールディングスでは、店舗運営に伴うCO2排出量を2013年度比で2030年までに50%、2050年までに実質ゼロを目標として掲げています。セブン-イレブンを始めとするグループ各社で8,800以上の店舗に太陽光パネルを設置し、再生可能エネルギーを活用しています。この取組みによって、年間約43,000トンのCO2排出量削減効果が見込まれています。

出典:環境省『持続可能な地域社会でありつづけるために、セブン&アイグループが挑戦する「再エネの地産地消」』

6. まとめ:社会の先駆けとなるカーボンニュートラルを目指そう!

小売業のカーボンニュートラルについて、企業の取組事例を交えてご紹介しました。小売業は消費者とのつながりがとても強く、消費者へ情報提供の場を持つことができ、省エネ・再エネの情報提供や環境に配慮した商品は、消費者の行動意識を変えるきっかけともなります。カーボンニュートラルの理解を深め、社会の一歩先をいく企業を目指しましょう!

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