pathfinder frameworkとは!?利用メリットや概要をカンタン解説

「Pathfinder Framework」とは、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が発表した「バリューチェーン全体で製品レベルの炭素排出量データを算出・交換するためのガイダンス」です。

この記事では「Pathfinder Framework」とはどのようなものか詳しく解説します。

目次

  1. Pathfinder Frameworkとは?

  2. Pathfinder Frameworkを利用するメリット

  3. Pathfinder Frameworkの概要

  4. まとめ:Pathfinder Frameworkへの理解を深め活用を検討しよう!

1. Pathfinder Framework(パスファインダーフレームワーク)とは?

「Pathfinder Framework」とは2021年のCOP26の開催に合わせ、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が発表した「バリューチェーン全体で製品レベルの炭素排出量データを算出・交換するためのガイダンス」です。

WBCSDとは

WBCSDは、環境問題に取り組み持続可能な開発を目指す企業のCEO連合体です。政府やNGO、国際機関などと連携し、環境問題の課題と向き合い持続可能な社会の実現に向け活動しています。現在参加企業は約35カ国に広がっており、スイスのジュネーブに本部を置いています。

1990年に前身となるBCSD(Business Council for Sustainable Development)が発足し、その後別団体であったWICE(World Industry Council for the Environment)と合併、1995年に今のWBCSDとなっており、現在「日立製作所」、「三菱商事」、「住友化学」など日本企業を含んだ約200社以上が参加しています。

出典:Sustainable Japan『WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)』(2017.8.6)

Pathfinder Frameworkの定義

脱炭素化の推進の課題として、温室効果ガス排出量の多くを占める「Scoop3(バリューチェーン全体で発生する排出量)」の透明性の欠如があります。透明性を高めるためには、製品レベルでの排出量を一貫して計算・計上するためのガイドラインと、信頼できるデータをバリューチェーン全体で交換するためのインフラの確立が必要となります。

Pathfinder Frameworkはこれらのニーズに対応する最初のステップを構成するもので、35以上の企業、基準設定機関、業界のイニシアチブにより開発されており、検証された1次データに基づく製品のカーボンフットプリントをサプライチェーン内の企業と共有できるように設計されています。

Pathfinder Frameworkが開発された背景

2021年に発表されたIPCCの第6次報告書では、2019年の大気中のCO2濃度は410ppmで、工業化前より約47%高くなっているとされ、世界の平均気温は2011年から2020年で工業化前と比べ約1.09℃上昇しています。

これにより今世紀末(2081年~2100年)の世界平均気温の予測は工業化前と比べ最大で5.7℃上昇、年平均降水量は1995年~2014年と比べ最大で13%増加、2100年までの世界平均海面水位は1995年~2014年と比べ最大1.01m上昇するとされています。

出典:全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)

この原因は人間活動による影響、つまり温室効果ガスの排出であることは「疑う余地がない」とされ、すべての人が取り組むべき問題であると言えます。企業としても顧客の問題意識に応える必要があるのです。

Scope1(事業者自らによる温室効果ガスの排出)、Scope2(他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う排出)については世界中の多くの企業で公表が義務化されていますが、Scope3は企業全体の排出量の大部分を占めるにもかかわらずあまり注目されてきませんでした。

出典:WBCSD『Pathfinder Framework』(自己申告によるCDPデータ6に基づくScope1~3の総排出量に占める割合)

これにより「バリューチェーンで発生する温室効果ガス(Scope3)」の情報を正確に把握する必要があり、この問題を解決するためにPathfinder Frameworkが開発されました。

2. Pathfinder Frameworkを利用するメリット

Pathfinder Frameworkは企業レベル、製品レベルの両方で温室効果ガスの排出を理解することができます。

  • 企業レベル

企業の上流・下流で発生する排出量に焦点をあてることで、バリューチェーン全体の排出量をトップダウン方式で把握することができます。これは組織が提供する商品やサービスの他、企業活動に関連するその他の間接的な排出に関しても適用することができます。

  • 製品レベル

個々の製品に焦点をあて、製品のライフサイクルを通じた排出量を算出することができます。これにより企業の業績と照らし合わせより細かいアプローチが可能となり、改善が必要な問題の絞り込みが可能となります。

Pathfinder Frameworkは製品のライフサイクル排出量データをすべてのバリューチェーンパートナーと共有することで、データの正確性、比較可能性を高めることができ、バリューチェーン全体で排出量の透明性を高めることにもつながります。

これにより、企業の業績を改善しながら脱炭素化の加速をサポートできるのです。

出典:WBCSD『Pathfinder Framework』

3. Pathfinder Frameworkの概要

Pathfinder Frameworkは次のようなセクションに分かれています。

  • 既存の方法と標準

排出量の算定のためには既存の方法と基準を活用し、整合させる必要があります。「欧州委員会によるフットプリントカテゴリー規格(PEF)」、「環境製品宣言による製品分類ルール(PCR)」、「ISO規格」などの規格に準拠したデータを活用することで粒度を高め、バリューチェーン全体でより一貫性・透明性のあるデータを共有することができます。

  • 範囲と境界線

Pathfinder Frameworkの範囲とは製品サイクルにおける原材料の入手から生産、流通、使用、廃棄の5段階となります。上流から下流へと情報を共有することにより、製品と炭素排出をバリューチェーン全体で結びつけ、企業と消費者の両方へ高い透明性をもたらすことができます。

  • データソースと階層構造

Pathfinder Frameworkで使用されるデータは基本的に既存の規格(1次データ)をベースとして算出されますが、この情報が入手できない場合は定められた検証済みの排出係数データを2次データとして使用します。

  • データ交換に必要な要素

データを共有するために重要なことは「一貫性」です。これには一定の決まりが必要となり、Pathfinder Frameworkでは、「データ所有者の会社名」・「製品名・国連中央製品分類コード」・「表示単位」・「データの期間、地域」などをガイドラインで共有項目として細かく設定しています。

  • 検証・監査

Pathfinder Frameworkの強みは「信頼性」です。様々な規格データを組み合わせ、検証されたデータは今後の炭素排出量削減に取り組むうえで正確性の高いデータとして活用が期待されています。

  • パスファインダー・ネットワーク

Pathfinder Frameworkを活用するためにはバリューチェーンや業界間でのデータ共有の容易さと機密性を確保することが重要です。そのため複数の基本的な技術ソリューションを接続する相互可能なネットワークとして、「Pathfinder network」の開発も進めています。

出典:WBCSD『Pathfinder Framework』

4. まとめ:Pathfinder Frameworkへの理解を深め活用を検討しよう!

炭素排出削減はサプライチェーン全体で取り組むことが重要で、そのためには共有された既定のデータに基づく算出基準が必要です。Pathfinder frameworkはすべての企業が活用できる炭素排出量の一貫した計算方法のガイドラインとなっています。

現在はまだ日本での活用は進んでいませんが、炭素排出削減に積極的に取り組んでいる企業はすでに実践段階に入っています。今後のスタンダードとなると考えられるPathfinder Frameworkへの理解を深め、今後の活用を検討してみて下さい。

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