2050年カーボンニュートラル宣言!企業による取り組みやメリットとは?

地球温暖化がすすみ、各国政府はもちろん、企業の間でも温室効果ガスの削減に向けた動きが加速しています。企業単位でもカーボンニュートラルを宣言するところも少なくはありません。

ではそもそもカーボンニュートラルとはどのようなもので、企業が取り組むメリットとはどのようなものなのでしょうか。ここではカーボンニュートラルについての解説と、企業が取り組むメリットを取り組み事例を交えてご紹介します。これからの企業経営に欠かせない環境問題への取り組みについて参考にしてみて下さい。

目次

  1. カーボンニュートラルとは

  2. 企業がカーボンニュートラルに取り組むメリット

  3. 企業のカーボンニュートラルへの取り組み

  4. 【まとめ】カーボンニュートラルを宣言する企業が増加!

1. カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、「カーボン=炭素」、「ニュートラル=中立」を組み合わせた言葉で、人間の社会活動において、排出されるCO2を人間の活動で吸収・除去し、排出量をプラスマイナスでゼロにしようという考え方です。このカーボンニュートラルが達成された社会を「脱炭素社会」といい、地球温暖化への対策とひとつとなっています。

出典:『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)』(2021.2.16)

ここでいうカーボンとはCO2のこととなりますが、温室効果ガスはCO2以外も存在し、他の温室効果ガスを含めた「ニュートラル=中立」は「クライメイトニュートラル(気候中立)」と呼びます。世界的には認識が統一されておらず、どちらの意味も合わせて「カーボンニュートラル」を使用することが一般的となっています。

カーボンニュートラルで重要なことは、まず現状のCO2の排出量を正しく認識し、そこから排出削減により減らしていくこと、そのうえで排出されたCO2と同量の吸収活動を行うことで「プラスマイナスゼロ」にしようということになります。

2050年カーボンニュートラル宣言について

2020年10月に菅義偉内閣総理大臣は、国会の所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。すなわちカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。

出典:首相官邸『第203回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説』

これにより日本は、政府による国家レベルで温室効果ガスの削減、カーボンニュートラルの実現に向けて動き出しています。

カーボンニュートラルに向けた日本の現状は?

2020年度の総排出量は11億5,000万トンになっております。

温室効果ガス総排出量

出典:環境省『2020年度温室効果ガス排出量(確報値)概要』(p2)

2050年カーボンニュートラルの宣言をうけ、地球温暖化対策推進本部は「地球温暖化対策計画」、「エネルギー基本計画」、「パリ協定に基づく長期戦略」の見直しを加速させることを発表しています。

また、気候変動対策に資するESG投融資の普及啓発や地域におけるESG金融の促進など環境金融の拡大(金融のグリーン化)に取り組んでいます。

経済産業省では、2050年カーボンニュートラル達成に向け、「グリーン成長戦略」という政策をすすめています。これは環境への取り組みを経済成長への制約やコストと考えるのではなく、「成長の機会」ととらえ、脱炭素をきっかけに産業構造を抜本的に改革し、排出削減を実現しつつ、次なる大きな成長へつなげていこうという考えです。

出典:環境省『2050年カーボンニュートラルの実現に向けて』

以上のように日本政府は、カーボンニュートラルの達成に向け様々な政策を打ち出しています。これに合わせて企業でも温室効果ガス排出削減に向けた動きがすすみ、独自でカーボンニュートラルを経営目標とした企業も増えています。

これは日本全体の温室効果ガス排出を部門別で見たとき、産業部門で37.4%、運輸部門20.0%、商業・サービス部門(業務その他)18.8%となっており、合わせて76.2%が事業系の排出となっているからです。カーボンニュートラル達成のためには企業の取り組みが必要不可欠なのです。

出典:環境省『2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)』(p3)

これをふまえて、ここからは企業がカーボンニュートラルへ取り組むメリットや、の取り組みの内容についてご紹介します。

2. 企業がカーボンニュートラルに取り組むメリット

企業がカーボンニュートラルを宣言するメリットとは

企業がカーボンニュートラルに取り組むには実利につながるメリットも必要です。利潤を追求する企業にとってのメリットとはどのようなものなのでしょうか。

  • 企業のイメージアップと信頼性

社会的に環境問題への取り組みは会社のイメージアップにつながります。多くの企業のホームページには環境問題への取り組みが掲載されています。これは消費者の他に取引先への信頼度の向上にも効果があり、経営の安定化にもつながるものとなるでしょう。

  • コストの削減

太陽光発電などによる再生可能エネルギーの自家消費は電力コストの削減となります。また、今後は化石燃料の高騰も予想され、将来的なコストの不安も考えられます。カーボンニュートラルへの取り組みは化石燃料由来の電力の利用を減らすことで、このコスト面でのリスクを低減することができます。

  • ESG投資対策

ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governence)を重視した投資法で、金融機関や投資家の間で一般的となっています。カーボンニュートラルへの取り組みは長期的に成長が見込める企業としての信頼性の向上につながり、資金調達を有利にする効果が見込めます。

以上のように企業はカーボンニュートラルに取り組むことによって他社との差別化を図ることができるのです。逆に考えると環境問題への取り組みの遅れは会社経営のリスクとなると言えるでしょう。

また、環境問題への取り組みは会社単位だけではなく、大きな組織として協働での取り組みも始まっています。

3.企業のカーボンニュートラルへの取り組み

JCLP カーボンニュートラルへの取り組み

JCLP(日本気候リーダーズパートナーシップ)は、持続可能な脱炭素社会の実現には産業界が健全な危機感を持ち、積極的な行動を開始すべきであるという認識の下に2009年に発足した、日本独自の企業グループです。

出典:経済産業省資源エネルギー庁『今さら聞けない「パリ協定」~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~』

JCLPでは、気候危機の回避へ速やかな脱炭素社会への移行と、パリ協定で定められた1.5℃目標(*1)の達成を目的とし、脱炭素社会への移行を先導することで、社会から求められる企業となることを目指しています。

活動方針として、

  • 政策関与

  • 自社の脱炭素化の推進

  • 社会の脱炭素化へのソリューション提供

  • 社会とのコミュニケーション

  • グローバルネットワークとの連携

を掲げ、様々な環境問題対策への参加・協働を行っています。現在189社が参加し、その売り上げ規模は144.8兆円にのぼります。参加企業は今後も増えていくと予想されます。

(*1)2015年にパリで開かれた「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」で環境に関する国際的な取り決めが合意さ れ、これを「パリ協定」と呼び、

  • 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする。

  • そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる。

という内容になっています。

RE100のカーボンニュートラルへの取り組み

RE100は、「The Climate Group」がCDPとのパートナーシップのもとで主催する、事業で使用する電力の100%再生可能エネルギー化をコミットする協働イニシアチブです。世界では約500社が参加しており、売り上げ総額は4兆5000億ドルを超えています。日本ではJCLPが地域パートナーとして主催し、2021年11月現在64の企業が参加しています。

出典:環境省『環境省RE100の取組 | 地球環境・国際環境協力 | 環境省 (env.go.jp)』(p25)

出典:JCLP『RE100参加企業数』

※CDPはイギリスの慈善団体が管理するNGOで、環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営しています。

また、各企業単位でもカーボンニュートラル宣言をおこなっている企業も多く、今後も続々と増えていくことが予想されます。

4.【まとめ】カーボンニュートラルを宣言する企業が増加!

  • カーボンニュートラルとは、「カーボン=炭素」、「ニュートラル=中立」を組み合わせた言葉で、排出されるCO2を人間の活動で吸収・除去し、排出量をプラスマイナスでゼロにしようという考え方。

  • 日本では、菅義偉内閣総理大臣により、2050年カーボンニュートラルが宣言され、「パリ協定に基づく長期戦略」の見直しや、「グリーン成長戦略」などの政策をすすめている。

  • 企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットとして、企業のイメージアップと信頼性、コストの削減、ESG投資対策などがあげられる。

  • 日本企業はJCLPという企業グループを発足し、RE100への参加など、環境問題への取り組みをすすめており、今後さらに増加していくことが予想される。

カーボンニュートラルは世界各国の共通認識であり、企業の取り組みなくして達成はあり得ません。今後も各国政府主導のもと、温室効果ガスの排出削減に向けた動きは拡大していくことでしょう。

 

アスエネESGサミット2024資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
アスエネESGサミット2024