「再生可能エネルギー」導入に向けた日本の取り組みとは
2022年 06月 15日, 13:34:36 発電・エネルギー
再生可能エネルギー(以下、再エネ)が社会に浸透し、クリーンなエネルギーの利用が世界的に進んでいます。日本も21年7月にエネルギー基本計画を更新し、再エネ比率を36~38%にすると野心的な目標を掲げました。しかし、実際の日本における取り組みや企業・自治体での活用方法の現状はどうなっているのでしょうか。
今回は海外・日本の再エネの現状、企業が再エネに取り組むポイントなどを整理しています。今後の経営に関わる再エネの知識を、ぜひ一度確認しておきましょう。
目次
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再生可能エネルギーと日本の取り組み状況
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日本の企業や自治体の再エネ取り組み事例
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日本国内で再生可能エネルギーへの取り組みをはじめる際のポイント
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まとめ:補助金をうまく活用しながらデッドスペースで無駄なく発電しよう
1. 再生可能エネルギーと日本の取り組み状況
再エネへの日本の取り組み現状は、諸外国と比べてどのような状況なのかをチェックしましょう。
出典:資源エネルギー庁『日本のエネルギー2020年度版「エネルギーの今を知る10の質問」』
日本の再生可能エネルギーの現状
日本の再エネに対する現状は、約18%となっており一番活用が進んでいるカナダと比べると4分の1程度となっています。
日本の目標としては2030年には全体の発電の内、再エネが占める比率を36%~38%にしていくことを念頭に施策を進めています。
出典:資源エネルギー庁『エネルギー基本計画(素案)の概要』p12(2021.7.21)
海外の再生可能エネルギーの現状
海外では、日本と比較して全体的に再エネの活用は進んでいます。発電量に対して一番再エネの割合が高いカナダでは、約66%となっています。EUではフランスを除けば軒並み約30%〜約40%程度の比率を占めていて、充分主力の発電と捉えられます。
一方で、フランスでは約20%、アメリカにおいては約17%と日本と同等の18%程度の活用に留まっているという結果もあり、再エネ電力活用が進んでいる国との差が明確になっています。
日本の再生可能エネルギーに対する課題
日本の再エネ活用は、積極的に進んでいるとは言えず、全世界の基準と比べると少し低い傾向にあります。
再エネが日本国内で進みづらい理由は主に2つあります。
1つ目は、再エネを利活用するための機器や設置のコストが高いことです。日本において、国際的に取引される太陽光パネルなどの発電機器は欧米と比べて約1.5倍であり、その設置費も約1.5倍~2倍であるという調査結果があります。
出典:自然エネルギー財団『日本の太陽光発電はなぜ高いのか(2016.2.4)』
2つ目は、平野部が少なく、太陽光発電に必要な日照や風力発電に必要な風況といった自然エネルギーを安定的に得るのが難しいからです。その為、火力や原子力といった他の発電方法と比べて発電コストが高い傾向があります。
例えば、太陽光発電所と火力発電所を比較すると、火力発電所は半分の面積で発電量は1,300倍となります。
出典:資源エネルギー庁『資源エネルギー庁がお答えします!~再エネについてよくある3つの質問』
2. 日本の企業や自治体の再エネ取り組み事例
日本全体ではまだまだ再エネを十分に活用しているとは言えませんが、企業や自治体レベルでは、効率良く運用し主要な電力源としてうまく活用しているところもあります。
日本企業の再生可能エネルギーへの取り組み例
日本企業の再エネへの取り組み事例として、2つご紹介します。
・東京メトロ株式会社
東京メトロ株式会社は、東西線の地上駅に太陽光発電システムを導入する計画を実施し、2015年には8駅で実践しています。また、各駅の照明をLEDにしたり、電車のブレーキによって生まれるエネルギーを電力として活用するといった取り組みもはじめています。
・東急不動産株式会社
不動産大手の東急不動産株式会社は2025年までに事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーにするという目標を掲げています。東急不動産株式会社は、2014年に再エネ事業に参入し、開発中のものを含めると全国で50箇所以上の発電事業を行っています。全体では原子力発電所1基以上の発電量を誇るほどの規模です。
出典:『東急不動産の再生可能エネルギー戦略』(2021年03月15日)
自治体の再生可能エネルギーへの取り組み
自治体の再エネ活用に向けた取り組みにおいて、代表的なものを2つご紹介します。
・神奈川県
神奈川県では2050年の二酸化炭素排出実質ゼロを目標に進められている取り組みがあります。県内で再エネによって生み出された電気を販売する小売業者のプランを神奈川県が広く周知することで、家庭への普及を目指します。また、再エネを積極的に活用する企業を認定・公表することで、再エネ電力の利用拡大を図ります。
・大阪府高槻市
高槻市は2014年から公共施設の屋根というデッドスペースに太陽光パネルを設置し、再エネを生み出すという取り組みを実施しています。自治体自らが再エネの利活用という問題にアプローチしており、他の自治体のモデルケースになることが期待されています。
出典:自治体通信オンライン『太陽光発電で再生可能エネルギーを地域に浸透【自治体(高槻市)の取組事例】』
日本の再生可能のエネルギーの今後
日本における再エネの取り組みは、特に地方自治体や企業を中心に広がりを見せることが想定されます。スペースがあれば太陽光発電システムを導入し経費削減に繋げたり、売電によって新たな収入源を確保するといった取り組みも考えられます。
3. 日本国内で再生可能エネルギーへの取り組みをはじめる際のポイント
日本国内で再エネを利活用する取り組みをはじめる際には、注意すべきポイントがあります。事前にチェックすることでスムーズに再エネ施策へ取り組みましょう。
デッドスペースの活用
日本で再エネを活用する際には、施設の屋根などを有効に利用して発電するといった工夫が重要なポイントです。日本は平地が少なく山林が多いという土地なので、広大な平野で風力発電機を並べて再エネを生み出すという形態は取りづらいのです。
だからこそ、デッドスペースを活用して行く必要があります。もちろん国単位だけでなく、自分の家の屋根にソーラーパネルを付けて発電を行うなど個人的な再エネへの取り組みも広がりを見せています。
補助金も活用
再エネの利活用には補助金もあります。太陽光発電を実施する際に費用を一部負担してもらえたり、企業であれば税率が抑えられたりといったものもあります。
環境配慮のために再エネを使いつつ、補助金も活用してなるべく負担を減らして実施しましょう。
注意すべきポイントは電力量の不安定さ
再エネを利活用する上では、状況によって電力不足になる可能性があることに注意しましょう。実際に、火力発電や原子力発電に比べて自然のクリーンなエネルギーは得られる電力量が不安定であることは否めません。
また、FIT制度導入などにより日本でも発電コストが落ちてきているのも事実ですが、場合によっては発電コストが高くなり電気代がアップする可能性もあります。
4. まとめ:補助金をうまく活用しながらデッドスペースで無駄なく発電しよう
再エネへの日本の取り組みの現状は、諸外国と比べて先進的であるとは言えません。発電量に対して、一番再エネの割合が高いカナダでは約65%ですが、日本は未だ16%台と低い水準です。
2030年には全体の発電のうち、再エネが占める比率を36%~38%にしていくことを目標としています。
平野が少ないことや山林が多く風量が得にくいという国土の問題など課題があるのも事実ですが、一方で、東京メトロ株式会社が東京メトロ東西線で地上駅に太陽光発電システムを導入したり、高槻市がデッドスペースを有効活用して再エネの活用を進めるといった形で企業、地方自治体単位での再エネ活用は広がりを見せています。
日本で再エネを活用する際のポイントは、補助金をうまく活用しながらデッドスペースで無駄なく発電することです。
ちなみに、自然由来のクリーンなエネルギーは火力発電や原子力発電などに比べると供給が安定しない場合もありますが、最近では技術の発達やクリーンエネルギーを購入する仕組みも整ってきているので不安視する要素は減ってきているといえます。
再エネの利活用は日本のみならず全世界的な目標でもあります。企業も地域社会の一員として、ぜひ再エネを導入してみてはいかがでしょうか。