太陽光発電のコストは何で決まる?内訳や今後を解説!

最近、再生可能エネルギーという言葉をよく聞きます。日本の再生可能エネルギーで太陽光発電は2番目に発電量が多いですが、気になるのはやはり発電コストです。カーボンニュートラル、脱炭素が潮流の世の中で決して無視出来ません。本記事ではそんな太陽光発電の発電コストについて内訳や各国との比較、国の施策を交えてお話します。

目次

  1. 太陽光発電のコストの内訳
  2. 太陽光発電のコスト~各国との比較~
  3. 発電コスト低減の為の施策
  4. 発電コストの今後の動向
  5. まとめ

1. 太陽光発電のコストの内訳

太陽光発電の発電コストはどのように決まるのでしょうか。コストや施策をお話する前に太陽光発電の発電コストの構造を解説します。主な発電コストとして資本費と運転維持費があります。1つずつ内訳を説明します。

太陽光発電の資本費

まずは太陽光発電の発電コストにおける資本費です。下記表が詳細となりますのでご覧ください。いわゆるイニシャルコスト、初期費用のような費用です。

  1. 開発費(土地取得費、FIT認定権利取得費等)
  2. 許認可取得費
  3. 設計費
  4. 造成費(伐採にかかる費用も含む)
  5. 太陽電池モジュール
  6. パワコン
  7. 架台
  8. ケーブル・接続箱等資材
  9. 据付施工費
  10. 変電設備およびその据付費
  11. 接続費
  12. その他経費

出典:自然エネルギー財団『日本の太陽光発電の発電コスト 現状と将来推計』(2019年7月)

自然エネルギー財団によると資本費は年々下落していますが、2017年から2018年は資本費の下落が顕著です。ただ近年の傾向としては価格低減は鈍化しています。

さらにその内訳を見ると太陽電池モジュールが下落に大きく寄与していると言えます。特に17年からは1年で32%の下落が見られます。海外製品の流入や国際的なパネル価格の下落トレンドが原因と考えられます。

太陽光発電の運転維持費

続いて太陽光発電の発電コストにおける運転維持費を見てみましょう。表のような内訳になっております。資本費に対してこちらはランニングコストのような費用とお考え下さい。

  1. 運転維持費
  2. 日常運転管理・監視費
  3. 除草作業
  4. 定期検査費(法定点検含)
  5. 事故対応・修繕費(そのための積立費用含む)
  6. 保険費
  7. 土地賃貸料

出典:自然エネルギー財団『日本の太陽光発電の発電コスト 現状と将来推計』(2019年7月)

発電規模によって電気主任技術者の雇用が必要であったり、運転維持費は施設の規模によって大きく異なります。一概に比較は出来ないので、ここでは高圧と特別高圧に着目して確認しましょう。太陽光発電として認定された年度により維持費に差があり、認定年度が新しい施設の運転維持費が低いとわかります。

次に内訳を見てみましょう。古い認定年度の太陽光発電所は運転管理費と賃貸料に多くコストがかかっています。このコストは売買価格に転嫁されます。一方で新しい発電所は賃貸料/運転管理共に低コストです。これは近年の太陽光発電の発電コスト低減に寄与しています。

2. 太陽光発電のコスト~各国との比較~

続いて日本の太陽光発電の発電コストに関して日本と各国との比較をしてみます。下図は各国の事業用太陽光発電の発電コストをグラフにしたものです。どの国も発電コストは下落傾向です。さらに紫線で示される日本の発電コストは2012年を覗いて他国に比べて高い水準にあります。

出典:資源エネルギー庁『太陽光発電について』(2020年11月)

さらに制度の遅れもあり世界と比較しても日本は太陽光発電の発電コストが高い傾向にあります。2020年上半期のコストの実績は世界実績5.5円/kWhに対して、日本実績13.2円/kWhと7.7円/kWhもの差があります。日本の太陽光発電の発電コスト低減は喫緊の課題と言えそうです。

3. 発電コスト低減の為の施策

太陽光発電の発電コストの内訳と各国比較やボトルネックを説明したところで、コスト低減の為の国の施策について説明したいと思います。

FIT(固定価格買取制度)からFIP(市場連動型)へ

日本において現在FIT(固定価格買取制度)という制度で、再生可能エネルギーの売買が行われています。この制度は電力会社が一定価格で一定期間電力を買い取る制度です。高コストであった再生可能エネルギー導入当初に制定され、固定価格で売買する為安心して企業が売買に参入出来ました。

しかし昨今の再生可能エネルギー需要の高まりの中で、価格競争の起りにくいFIT制度では太陽光発での発電コスト低減は難しいです。そこで2022年4月にFIPという市場連動型の制度の導入が予定されています。この制度のメリットは市場連動により小売業者の収益拡大が望める事と、積極的な入札による価格競争の発生です。

FITとFIPの制度の違いについては別記事を参照してください。

各国の取り組み

海外ではFIPや類似の制度の導入がすでに始まっています。特にドイツでは2012年からFIPを導入しています。FITとの選択制や太陽光発電以外の電源の入札可否等々、日本では制度設計の真っ最中ですが今後の動向は目が離せません。

出典:資源エネルギー庁『太陽光発電について』(2020年11月)

4. 発電コストの今後の動向

太陽光発電の発電コストの内訳や今後の施策等説明したところで、今後の価格推移にも触れたいと思います。資源エネルギー庁によると2019年度時点での13.1円/kWhから2030年には5.8円/kWhになる見通しです。新制度導入での価格競争や技術に発展により、今後さらなる発電コスト低減が見込めそうです。

出典:資源エネルギー庁『太陽光発電について』(2020年11月)

今後日本の太陽光発電の発電コストは順調に低減していく見込みですが、2020年前期の世界実績が5.5円/kWhであることを考えると、日本の発電コストが世界基準と大きな乖離があるとわかります。

5. まとめ

いかがでしたでしょうか。新技術の開発や太陽電池モジュール価格の下落や新制度の施行で、太陽光発電の発電コストは世界的に下落してきます。日本も遅れをとることなく太陽光発電を始めとした再生可能エネルギーをより使用しやすくしてクリーンで持続可能な社会になることを願っています。

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