従業員エンゲージメントとは?重視される背景やメリット、取り組み方を解説

近年、企業間において従業員エンゲージメントへの関心が高まっていますが、具体的な取り組み方がわからないと悩んでいる経営者は多いのではないでしょうか。この記事では、従業員エンゲージメントが重視される背景やメリット具体的な取り組み方について解説しています。

目次

  1. 従業員エンゲージメントとは?

  2. 従業員エンゲージメントが重視される背景

  3. 取り組みのメリット

  4. 従業員エンゲージメントを向上させるために

  5. まとめ:従業員エンゲージメントの向上は企業の持続的な成長に繋がる

1. 従業員エンゲージメントとは?

政府は、経済産業省が主催する経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会において、デジタル化やグローバル化、少子高齢化が進む日本経済を見直すため、人材マネジメント上の向上および、従業員エンゲージメント向上の必要性を唱えています。

(1)従業員エンゲージメントの定義

従業員エンゲージメントとは、従業員の会社に対する自発的な貢献意欲を意味します。企業の価値観や行動規範を意識的かつ計画的に従業員へ働きかけることにより、従業員の会社に対する信頼や貢献意欲を高め、また企業と従業員の会社の関係性を強化することです。

(2)従業員エンゲージメントを構成する要素

従業員エンゲージメントは、MVV、貢献意欲、組織能力と連携を強化する3つの要素で構成されており、これらの要素を満たすことが従業員エンゲージメントの向上に繋がります。

【MVVの浸透】

MVVとは、企業の使命や理念行動指針を意味します。企業の存在理由や今後のビジョンを従業員へ浸透させ、全社的なエンゲージメントの向上を進めるものです。また自社のMVVを積極的に発信すると、優秀な人材の流入にも繋がります。

【貢献意欲の向上】

従業員の会社に対する貢献意欲は、従業員エンゲージメントの向上に直結します。報酬や福利厚生の充実化はもとより、従業員の個を把握し、また組織課題の分析や改善、エンゲージメントを通じた人材確保をすることが必要とされています。今後は「会社が好きだから辞めたくない」と、思われる企業作りが求められます。

【組織能力・連携の強化】

仕事や働き方への価値観の多様化により、優秀な人材が流出する可能性は高まり、企業規模や収入面で優秀な人材を確保することは難しくなっています。企業と従業員や、従業員同士のコミュニケーションを強め、また従業員の意見を取り入れる中で必要な投資をし、全社的な能力を強化する必要があるといえます。

出典:経済産業省「経営競争力強化に向けた人材マネジメント 研究会」p1,5

(3)日本企業の従業員エンゲージメントの現状

従業員エンゲージメントが重視される背景には、現在日本企業の従業員エンゲージメントが世界最低水準であることがあります。

従業員エンゲージメントの国際比較

出典:経済産業省「未来人材ビジョン」p34

日本の従業員エンゲージメントは5%であり、世界平均の20%に遠く及ばないのが現状です。これにより、日本企業の従業員が勤めている会社に対して、やりがいや貢献意欲を持っていないということがわかります。

出典:経済産業省「経営競争力強化に向けた人材マネジメント 研究会」p4

2. 従業員エンゲージメントが重視される背景

日本の従業員エンゲージメントが極めて低いことは、日本経済を活性化する上で重要な課題です。ここでは、より具体的に従業員エンゲージメントが重視される背景を解説します。

(1)働き方および価値観の多様化

近年、デジタル技術の革新に伴って働き方が多様化しているため、個人の働き方に対する価値観にも変化が起きているのです。テレワークの導入や個人のスキルアップに繋がる仕組みを導入し、従業員のモチベーションを上げることが重要といえます。

(2)人材の流動化が進んでいる

働き方や価値観の多様化に伴い、同じ会社で定年まで働く人が減少しています。実際に経済産業省の報告によると、日本人の現在の勤務先で継続して働きたい人の割合は52%とされており、世界最低水準になっています。

現在の勤務先で継続して働きたい人の割合

出典:経済産業省「未来人材ビジョン」p35

人材の流動化は、企業にとって優秀な人材を失い経営成長の行き詰まりに繋がるため、従業員の定着率を高める必要があるのです。

(3)個人のキャリア自律が求められている

従業員エンゲージメントの低さは、従業員の働く上でのモチベーションの低さを表しています。事実、日本人のキャリア自律は低く、また企業側の人材育成への取り組み人材育成への投資は不十分とされています。

人材投資(OJT以外)の国際比較(GDP比) 社外学習・自己啓発を行っていない人の割合

出典:経済産業省「未来人材ビジョン」p41

グローバル競争を戦う日本企業は、人的能力や特性に加えて、個人のアイデアを生み出す力や実行スピードが重要になると考えられます。今後は人材育成に投資し、社内スキルアップ研修を充実化させるなど、従業員が自発的にキャリア自律を高める取り組みが求められています。

出典:経済産業省「「未来人材会議」を開催します」p1

3. 取り組みのメリット

では、企業がエンゲージメントの向上に取り組むことにより、一体どのようなメリットがあるかを解説します。

(1)従業員のモチベーションの向上

まず、従業員の個々のモチベーションが上がります。従業員は仕事にやりがいを見出し前向きに取り組みます。そのために企業は、理念や行動指針を浸透させ、また人材育成および個々の能力を把握した人材配置を行う必要があります。

(2)従業員の定着率の向上

次に定着率の向上に繋がります。仕事にやりがいを持ち、会社への貢献意欲がある従業員が離職を考える可能性は低いといえるため、よりよい職場環境の構築に繋がります。

(3)業績アップおよび顧客満足度の向上

従業員エンゲージメントが高い企業は、従業員が与えられた仕事にやりがいを持ち、また自発的なキャリア自律の向上を望んでいます。したがって、生産性や質の向上に繋がり、業績アップと顧客満足度の向上という結果をもたらしてくれると考えられます。

(4)優秀な人材の確保

従業員エンゲージメントの指標の1つである離職率は、就職および転職活動をしている人たちの重要な判断材料になっています。従業員エンゲージメントの向上に向けた取り組みや、従業員の実際の声を世間へ発信することにより、優秀な人材の確保に期待できます。

出典:経済産業省「経営競争力強化に向けた人材マネジメント 研究会」p9

4. 従業員エンゲージメントを向上させるために

従業員エンゲージメントが企業にもたらすメリットを紹介しました。続いては、従業員エンゲージメントを向上させるための企業の取り組みを解説します。

(1)企業理念や目標とする先を浸透させる

企業の持続的な成長のためには、MVVである企業理念や経営ビジョン、行動規範を従業員に浸透させ、経営陣と従業員が同じ意識のもと業務に携わることが最も重要とされています。MVVを社内報や従業員の目に入る位置に張り出すなど、情報を発信していくことも効果的です。

(2)公平性の高い人事制度の整備

そして、公平性の高い人事制度の整備が必要です。具体的には、トップダウンで従業員の配置を決定するのではなく、個人の能力や特性および要望を把握した上で適材適所の配属をすることです。

(3)社内コミュニケーションの活性化

経営陣と従業員、上司と部下で壁がある環境は、従業員がストレスを抱える原因の1つとされています。1対1による対話やグループ活動を行うなど、積極的に従業員とコミュニケーションを図ることが重要です。

(4)上司のフィードバック能力を高める

仕事へのやりがいと、会社への貢献意欲向上のためには、正当な評価をすることが大切です。

(5)ワークライフバランスを整える

働き方や仕事に対する価値観の多様化に伴い、従業員の職場環境はエンゲージメントに大きく左右します。フレックスタイム等を取り入れるなど、従業員のワークライフバランスを整えることが大切です。

(6)キャリア開発を支援する

従業員のキャリア自律は、エンゲージメントの向上と企業の経営成長に大きく影響します。したがって、社内の人材育成の環境を整備し、従業員の能力や要望を把握したうえでキャリアアップを支援していくことが必要です。

出典:経済産業省「経営競争力強化に向けた人材マネジメント 研究会」p8

出典:経済産業省「経営競争力強化に向けた人材マネジメント 研究会」p18

5. まとめ:従業員エンゲージメントの向上は企業の持続的な成長に繋がる

従業員エンゲージメントは、単なる従業員のやる気という意味ではありません。グローバル競争を戦わなければいけない企業において、従業員の会社に対する貢献意欲や自発的なキャリア自律が必要不可欠な時代になるといえます。

とくに資金面が弱い中小企業は、今後の変化の激しい時代を生き残るためにも、MVVの浸透・貢献意欲の向上・組織能力と連携の強化を軸に、従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいきましょう。

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