【目指せ再エネ100%】いま注目されているCDP・RE100とは?

Apple社、IKEAなど、サプライヤー企業にも再エネ100%や温室効果ガス排出削減を要求する企業が増えています。しかし、再エネに取り組んでも国際的に認められる基準でわかりやすく開示しなければ、ビジネスの機会で不利になりかねません。

もはやどの企業も無関係ではいられない状況ですが、環境関連の用語はカタカナやアルファベットが多くて混乱していませんか?そんな環境関連の用語の中からCDPとRE100について整理しましょう。

目次

  1. CDPは環境への取り組み情報のプラットホーム

  2. RE100は環境問題に立ち向かう企業連合

  3. 環境への取り組み開示の重要性とは

  4. まとめ:CDPでTCFDにも対応した情報開示ができる

1. CDPは環境への取り組み情報のプラットホーム

CDPとは

CDP(=Carbon Disclosure Project)は英国が管理する国際的なNGO(非営利団体)で、投資家、企業、国家、地域、都市自らが環境への影響を管理するための情報開示システムを運用しています。CDPは、情報開示を通じて投資家、企業、自治体に自らの活動による環境への影響を認識させ、持続可能な経済の実現へ向けて行動を起こすよう働きかけています。

2000年に発足し、日本では2005年に活動を開始しました。CDPの質問書に回答することで、サプライヤーにTCFD、SBT、RE100、ACTなどの世界基準とのつながりを提供します。

出典:CDPジャパン『CDPについて
出典:経済産業省『CDPサプライチェーンプログラムにおける サプライヤーエンゲージメント』P.9

CDPの仕組み

CDPは企業に向けて環境への取り組みについての質問書を送り、回答を要請します。集まった回答を評価したうえで情報を開示し、投資家や企業はCDPのデータを利用できます。

CDPは515以上の機関投資家、155以上の購買企業・機関からの要請を受け企業に質問書を送っており、8400社以上から回答を受け情報開示を行っています。

出典:経済産業省『CDPサプライチェーンプログラムにおける サプライヤーエンゲージメント』P.2

CDPの国際的認知

第八代国連事務総長 潘 基文(バン・ギムン)氏はCDPについて「CDPの詳細なレポートは世界中の企業がそれぞれの温室効果ガス排出を測定、管理、開示し最終的に削減を促進することに貢献している。このような企業の気候変動に関するデータを収集し、市場に提供している機関はCDP以外には存在しない」と評価しています。

出典:経済産業省『CDP概要と 非化石価値証書の再エネ属性証書 としての妥当性と提言』P.3

主要な株式情報提供サービスには、CDPへの回答が多く利用されています。投資家も直接・間接にCDPのデータを多く活用して投資判断をしており、21世紀の国際的ビジネスにおいてCDPは欠かせない存在になっています。

出典:経済産業省『CDP概要と 非化石価値証書の再エネ属性証書 としての妥当性と提言』P.4

2. RE100は環境問題に立ち向かう企業連合

RE100とは

RE100は100%再生可能電力に率先して取り組む世界で最も影響力のある国際的な企業連合です。CDPと協力して、大規模なカーボンニュートラルに向けた変化の推進を目的としています。

参加企業は製造、製薬からファッション、テクノロジーに至るまで多様な分野に広がっています。世界レベル・地域レベルで変化を提唱し、再生可能電力の需要などで市場や政府に影響を与えています。

出典:RE100『100%再生可能エネルギーに向けた進展を加速しています』(公式ホームページ)
出典:RE100『私たちに関しては』(公式ホームページ)

RE100に参加するメリット

環境省はRE100に参加するメリットとして以下の4つを挙げています。

  1. 再エネに切り替えることで、温暖化やエネルギーコスト上昇などの化石燃料発電によるリスクを回避でき、かつ気候変動も防ぐことができる
    出典:環境省『RE100について』p.7

  2. 企業が再エネ調達の必要性を発信することで、再エネの市場規模が拡大し、再エネの調達選択肢の増加や価格低下につながる
    出典:環境省『RE100について』p.10

  3. 再エネの導入比率はCDPの加点対象にもなり、投資家からのESG投資の呼び込みにに役立つ
    出典:環境省『RE100について』p.17

  4. 再エネ100%を目指すことは世界的な対外アピールになり、世界の企業と情報交換や新たな供給企業と出会う機会になる
    出典:環境省『RE100について』p.20

出典:環境省『RE100について』p.12

RE100の基準と要件

参加対象企業は以下のいずれか1つ以上に当てはまる「影響力のある企業」です。

  • 世界、または国内で認知度・信頼度が高い

  • 主要な多国籍企業(フォーチュン1000またはそれに相当)

  • 電力消費量が大きい(100GWh以上・日本企業は特例として50Wh以上)

  • RE100の目的に寄与する、何らかの特徴と影響力を持つ

  • 再エネ設備事業の収入が売り上げの50%以下、0.1Wh以上の電力消費、8年以内の100%再エネ化を目標とする再エネ設備メーカー

これらの参加条件の対象とならない日本企業や自治体は、同じく再エネ100%を目指す「再エネ100宣言 RE Action」という日本独自の取り組みに参加可能です。

RE100の参加企業に求める要件は以下の項目です。

  • 日本の再エネ普及目標の向上と企業が直接再エネを利用できる透明性のある市場の整備に関与する

  • 責任ある政策関与と公的な要請を積極的に行う

  • 遅くとも2050年までに再エネ100%を達成することを目標にする

  • 進歩報告は毎年、所定フォーマットにて行う(CDP質問書の所定の回答欄で代替可)

https://earthene.com/form/download/general

3. 環境への取り組み開示の重要性とは

情報開示・評価の影響力が拡大している

企業が気候変動に関してどのような対応を行っているかは、投資家や金融機関にとって、投資・融資の判断をするための重要な基準となりました。特にリーマンショック以降、企業の将来性を判断する手がかりとして、企業の「非財務情報(財務諸表に書かれてない情報)」に注目が集まりました。

出典:資源エネルギー庁『企業の環境活動を金融を通じてうながす新たな取り組み「TCFD」とは?

そこで、2015年に金融安定理事会によりTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が設立され、2017年に一貫した気候関連の情報開示を企業に勧める提言の最終報告書を公表しました。2000年から活動しているCDPは、TCFDの最終報告書公表の翌年2018年、すぐにその枠組みをCDPの質問書に反映させました。

つまり、CDPの質問書に回答することでTCFDの基準も同時に満たすことができるということです。日本でもCDPの質問書に回答する形で環境への取り組みを開示する企業が増え、2020年に日本企業がCDPの質問書へ回答した数は375社となりました。

出典:環境省『TCFD提言に沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援 政策概要』p.35
出典:CDP『CDP 気候変動 レポート 2020:日本版』p.10

出典:CDP『CDP 気候変動 レポート 2020:日本版』p.11

環境への取り組みを効果的に開示しよう

CDP質問書への回答はCDPの公式サイトにアカウントを作成すれば、CDPから質問書を送付されていない企業でも参加することができます。CDPには無償のオンラインプログラムや有償のレポーターサービスがあり、企業の質問書への回答を支援しています。

出典:CDP『開示サポート

CDP質問書を利用すれば世界的な基準に沿って、自社の環境への取り組み情報を対外的にアピールできます。TCFDの提言するガバナンス・戦略・リスク管理・指標を具体的に文書にすることで自社の現実的で理論的な経営の分析に役立ち、今後の経営を考える材料にもなります。

出典:環境省『TCFDを活用した経営戦略立案のススメ』1-6

4. まとめ:CDPでTCFDにも対応した情報開示ができる

中小企業も他人事ではない環境関連情報開示

最近では若年層を中心に環境問題や社会問題に取り組む企業への需要が高まっています。半数以上の若者は環境問題や社会問題に取り組む企業の商品には普通よりも高い値段を支払っても良いと考えています。投資への意欲がある若者では、7割が環境問題や社会問題に取り組む企業に投資したいと考えています。

出典:金融庁『ESG要素を含む中長期的な持続可能性 (サステナビリティ)について』p.18

TCFDの枠組みに基づき環境への取り組みの開示を具体的に有価証券報告書に記載する企業も出ています。企業として信頼されるためには、環境への取り組みの開示が必須となる未来が近いと言えます。

住み続けられる地球の維持のための取り組みは、今後企業がビジネスを続けて生き残っていくための取り組みに直結しているのです。中小企業であっても、負担の少ないことから対応を始めましょう。

出典:金融庁『ESG要素を含む中長期的な持続可能性 (サステナビリティ)について』p.43~44

出典:環境省『TCFDを活用した経営戦略立案のススメ』2-49

早い流れに乗り遅れない対応をしよう

地球温暖化抑制のためのカーボンニュートラルへの大きな動きは、日本をはじめ世界のすべての国、政府、自治体、企業、家庭に影響を与えています。将来、化石燃料に依存する産業構造に戻ることはないでしょう。持続可能な社会へ変革する中で、環境への取り組みは制約ではなく、投資を促し、生産性を向上させ、経済の成長を生み出す鍵なのです。

日本が世界に先駆けてカーボンニュートラルを実現するためには、中小企業ができることから一歩を踏み出すことが大きな鍵となります。まずは可能な取り組みを探してみる、情報開示のための分析をしてみる、といった無理のないことから始め、急速に進む市場・経済の流れの力を自社にも呼びこみましょう。

出典:金融庁『ESG要素を含む中長期的な持続可能性 (サステナビリティ)について』p.3~5

CDP質問書への回答はCDPの公式サイトでアカウントを作ればどの企業も参加することができ、それはTCFDの基準に沿った企業経営の分析情報となります。環境への取り組みを始めると同時に、どのように情報の開示を求められているかを確認しておきましょう。

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