COP27の結果は!?抑えておきたいポイントをカンタン解説

気候変動に関する国連会議である「COP27」が11月6日からエジプトで開催されました。ここではCOP27の内容や結果について解説していきます。

先進国から途上国まで世界各国が本会議に参加し、今後の環境問題について話し合いが行われました。会議で決められる各国の方針は、今後の企業経営にも大きく関わってくる問題ですのでしっかり理解しておきましょう。

目次

  1. COP27とは

  2. COP27で議論された「シャルム・エル・シェイク実施計画」その内容と結果とは

  3. COP27での日本の動き

  4. 【まとめ】COP27での結果を理解し今後の環境問題について考えよう!

1.COP27とは

まず、「COP27」とはどのようなものかをご紹介します。

COP27とは

COPは「Conference of the Parties」の頭文字で「国連気候変動枠組条約締約国会議」の略となります。これは国連の気候変動に関する枠組条約に加盟する約200国が参加し、地球温暖化対策について世界規模での取組みを話し合うもので、今年で27回目となり、「COP27」と呼ばれています。

出典:経済産業省資源エネルギー庁『あらためて振り返る、「COP26」(前編)』(2022.3.3)

COP27に至るまでのこれまでの経緯

COPで最も注目された出来事としては2015年にパリで開催された「COP21」で採択された「世界の平均気温上昇を2030年までに産業革命以前に比べ、2℃より低く保ち、1.5℃に抑える」という目標です。これを「パリ協定」と呼び、現在でも世界の共通認識として掲げられています。

前回の2021年にイギリスのグラスゴーで開催された「COP26」では、日本の岸田首相を含む約130か国の首脳が集まり、以下の内容が決定し、パリ協定の実施に向けた具体的なルールブックが完成しています。

  1. 締約国に対し、今世紀半ばの「カーボンニュートラル」、またその経過点である2030年に向けた野心的な気候変動対策

  2. すべての国が排出削減対策が行われていない石炭火力発電のフェーズダウンや非効率な化石燃料補助金からのフェーズアウトを含む努力の加速

日本としても「気候変動問題に対して誰一人取り残されることがあってはならない」とし、以下のような発展途上国への支援策を表明しています。

  1. アジアなどの脱炭素化を支えるため今後5年間で最大100億ドルの追加資金支援を行う

  2. 発展途上国が気候変動の影響に対応するための「適応策」に関して資金支援を倍増

  3. アジアにおける「ゼロ・エミッション」火力への転換を支援

出典:経済産業省資源エネルギー庁『あらためて振り返る、「COP26」(後編)』(2022.3.11)

COP26からの課題とは

COP26では「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」の報告を受け、科学的根拠に基づき温室効果ガスの排出を大幅に削減しない限り、パリ協定で採択された「1.5℃目標」の達成は困難であるとの認識を各国が共有し、さらなる温暖化対策への取組み目標を明確に掲げるかたちとなりました。

また、途上国の排出削減や気候変動への適応には先進国からの資金支援が必要であることが強調されています。この他、石炭・イノベーション・森林・メタンなどの問題が論点とされましたが、特に石炭火力発電については削減への表現がトーンダウンしていることに反発や失望の声があがっています。

この内容を踏まえ、COP27では先進国から途上国への支援、世界全体の目標への取組みを確立する「グラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画」の立ち上げが明記され、今後の実現が課題となっています。

2.COP27で議論された「シャルム・エル・シェイク実施計画」その内容と結果とは

では、今回のCOP27で話し合われた内容とはどのようなものだったのでしょうか。ホスト国となったエジプトの議長は今回のテーマとして、「損失と損害」に対する資金支援についてを正式な議題として議論することを発表しました。また、注目すべき課題として

  1. <緩和>各国はどのように排出量を減らしているのか

  2. <適応>各国はどのように適応し、他国の適応を支援するのか

  3. <気候変動対策資金>資金支援目標の早期達成と目標の引き上げ

の3点が挙げられます。気候変動対策の各分野における全体決定である「シャルム・エル・シェイク実施計画」。それぞれ詳しく内容をみていきましょう。

損失と損害

気候変動による豪雨や干ばつなどが世界で顕著になっている中、途上国は先進国に比べ気候変動の原因である温室効果ガスをほとんど排出していないにも関わらず悪影響を強く被ることになっています。

このため途上国は、気候変動による「損失と損害」に特化した実質的な制度・新たな基金の設置を求めてきました。これに対して先進国はこの議論を避けてきました。

COP27ではこの問題に対して議論が進み、気候変動の影響を受けた途上国の「損失と損害」への対応を支援するため専用の基金を設置。さらに新たな資金支援組織を設立する点で合意に至っています。

出典:外務省『国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)結果概要』(2022.11.22)

<緩和>温室効果ガス排出削減対策

気候変動の「緩和」とは温室効果ガス排出の削減・防止対策を指します。また、新技術の開発、再生可能エネルギーの利用、エネルギー効率の向上なども含むこともあります。

COP27では2030年までの緩和実施を緊急に高めるため「緩和作業計画」が策定されました。これは1.5℃目標達成の重要性や、期間計画を2026年までとし毎年議題として進捗を確認すること、すべてのセクターや分野横断的事項を対象とすること、最低年2回のワークショップの開催と報告、毎年閣僚級ラウンドテーブルでの議論を開催などが盛り込まれています。

出典:外務省『国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)結果概要』(2022.11.22)

<適応>途上国に対する支援

気候変動はすでに始まっており、各国は排出量を削減し、温暖化のスピードを遅らせる対策を行うだけでなく、火災、洪水、干ばつ、海面上昇などの気候変動の結果に適応する必要があります。

COP26ではパリ協定で定められた世界全体の適応目標に関する作業プログラムを採択しましたが、COP27では各国がレジリエンス(強靭性)の向上や最も脆弱な立場のコミュニティの支援についての進展が求められていました。

COP27では昨年に設置が合意された「適応に関する世界全体の目標(GGA)に関するグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画」について作業進捗の確認と来年に向けた進め方についてが議論されています。その他優先テーマや横断的課題を含むフレームワークの設置に向けた議論の開始が決定しています。

<気候変動対策資金>達成されていない目標について

2015年にデンマークのコペンハーゲンで行われた「COP15」で採択された「コペンハーゲン合意」では途上国の温暖化対策の支援として先進国が2020年までに年間1,000億ドルの資金動員目標を約束することが盛り込まれていましたが、この目標は現在も達成されていません。

この点でCOP27では特に脆弱な国への「損失と損害」支援として新たな資金面での措置を講じること、その一環として「ロス&ダメージ基金(仮称)」を設置することを決め、この運用についてCOP28に向けて勧告を作成するための移行委員会を設置することを決定しました。

1,000億ドル問題についても隔年で進捗報告書の作成と2025年までの適応資金倍増の報告書の作成を行うことになっています。

出典:外務省『コペンハーゲン合意の先へ~気候変動をめぐる国際交渉』(2010.1.22

出典:外務省『国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)結果概要』(2022.11.22)

3.COP27での日本の動き

COP27に対して日本は西村明宏環境大臣の他、各省庁の関係者が参加しています。ここからはCOP27での日本の対応について解説します。

COP27閣僚級会合

西村環境大臣が参加した閣僚級会合は21の国・地域・国際機関の閣僚級要人が集まり、二国・二者間会合や気候変動対策への意見交換が行われました。西村環境大臣は、「排出削減は先進国、途上国を合わせ世界全体が一丸となり、特に主要排出国の協力なくては進まない」と述べ、先進国の他、中国やインドなどの新興国の協力を求める発言をしました。

今後、新興国の削減強化を求める先進国と削減に消極的な新興国との意見の隔たりを縮め、実行性のある計画を策定できるかが注目されます。

出典:環境省『国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)の結果について』(2022.12.15)(p17)

ジャパン・パビリオンでの発信

日本はCOP27の会場に「ジャパン・パビリオン」を設置し、日本企業の「緩和・適応」、「CO2有効活用」、「福島環境再生に関する技術」などの取り組みへの実施展示を行いました。また、オンラインパビリオンで「環境インフラ海外展開プラットフォーム(JPRSI)」の展示も行っています。

また、日本が国内で取り組んでいる気候変動対策や海外のパートナー国と取り組む脱炭素移行への取組みに関してのセミナーを開催し、今後の活動や方向性について世界の関係者や専門家と議論も行っています。

出典:環境省『国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)の結果について』(2022.12.15)(p19)

日本主導のイニシアティブ

企業の削減貢献を評価する新しい価値軸の「削減貢献度」について、ビジネス・ファイナンス・国などの主要ステークホルダーを巻き込み政府間議論をリードし、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が策定中の概要を発表し、概念の確立に向けて進めていくことになりました。

また、ロス&ダメージに対する支援の包括的提供のため、防災から災害支援・災害リスク保険の包括的技術支援「日本政府の気候変動の悪影響に伴う損失及び損害支援パッケージ」を公表しました。これにより、すでに脆弱国が直面している損失と損害に対して迅速な支援を国際社会が力を合わせ充実させていくことを目指しています。

出典:外務省『国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)結果概要』(2022.11.22)

出典:環境省『日本政府の気候変動の悪影響に伴う損失及び損害(ロス&ダメージ)支援パッケージの公表について』(2022.11.15)

化石賞を受賞

「化石賞」とは環境NGOの「Climate Action Network」が気候変動対策に対して足を引っ張った国に与える賞のことです。気候変動への取組みが後退していることを「化石」と表現しています。COP開催中に毎日発表しており、日本はCOP25から3回連続での受賞となりました。

受賞理由は化石燃料に対する世界最大の公的資金拠出国であることで、日本が2019年から2021年の間に化石燃料に拠出した公的資金は平均で年間106億ドル(1兆5,900億円)、3年の総額は318億ドル(4兆7,700億円)で世界最大となっています。

出典:WWFジャパン『【COP27】日本が化石賞を受賞しました』(2022.11.10)

4.【まとめ】COP27での結果を理解し、脱炭素経営を取り入れよう!!

COP27の閉会時に国連のグテーレス事務総長は「COP27は多くの宿題を残し閉幕したが、時間は残されていない」と声明を残しています。また、国連環境計画の報告では「1.5℃目標の窓は閉まりつつある」と表現されています。

また、アスエネはCOP27に視察団として参加しました。企業の脱炭素経営について課題がある方はお気軽にお問い合わせください。

資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
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