ZEV規制とは?ZEV規制の背景や対応する次世代自動車についても解説!

ZEVとは、走行時に二酸化炭素などの排出ガスを出さない車両のことです。アメリカのカリフォルニア州で導入されたZEV規制は自動車業界に大きな変革を迫っています。

今回はZEV規制の概要や背景、ZEV規制に対応した次世代自動車、次世代自動車に必要なレアメタルなどについてまとめます。

目次

  1. ZEV規制とは何か

  2. ZEV規制の背景

  3. ZEV規制に対応した次世代自動車

  4. ZEVに欠かせないレアメタル

  5. ZEV規制への理解を深め、今度の日本・世界の動向に注意しよう

1. ZEV規制とは何か

普段、あまり耳にしない「ZEV」とはどのようなものなのでしょうか。ZEVやZEV規制の概要についてまとめます。

(1)ZEVとは何か

ZEVとはZero Emission Vehicleの頭文字をとったもので、走行時に二酸化炭素などの排出ガスを出さない車両という意味です。ZEVに該当するのは電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)です。

電気自動車は文字通り、電気を動力源として走行する車両のことです。一方、燃料電池車は水素と酸素の化学反応で発生させた電気を動力源として走行する車両のことで、両者とも走行中に温室効果ガスを排出しません。

(2)ZEV規制の概要

ZEV規制とは、アメリカのカリフォルニア州で導入し始めた規制で大気汚染を防止するのが目的です。カリフォルニア州内で自動車を販売する場合、電気自動車や燃料電池車など温室効果ガスを排出しないZEVを一定比率以上販売することを義務付けています。

2012年にクライスラー、フォード、GM、ホンダ、日産、トヨタが対象となり、2018年以降、さらにBMW、ダイムラー、現代、起亜、マツダ、フォルクスワーゲンの各社が追加されました。

ZEV規制の基準を達成できないメーカーは罰金を支払うか、基準を達成した他のメーカーから超過分の枠(クレジット)を購入しなければなりません。つまり、基準未達成の場合、メーカーは追加コストを支払わねばならないというわけです。

出典:一般社団法人 次世代自動車振興センター『ZEV規制』

2. ZEV規制の背景

アメリカでZEV規制が進む背景には、地球温暖化の急速な進行があります。温暖化を食い止めるため、各国はパリ協定を結び予想以上の速さで発効させました。

一方、トランプ政権時に環境問題に後ろ向きだったアメリカはバイデン政権成立後にパリ協定に復帰。二酸化炭素排出削減の動きに拍車がかかりました。

(1)パリ協定の締結・発効

2015年12月、パリで開かれたCOP21において京都議定書に代わる新たな温室効果ガス排出削減のための国際的枠組みであるパリ協定が締結されました。その後、2016年にパリ協定が発効します。

パリ協定では地球の温度上昇を1.5℃〜2.0℃に収める努力を各国がすることや全ての国が5年ごとに削減目標を提出すること、長期目標を制定すること、実施状況を報告することなどが定められました。

カーボンニュートラルの考え方

出典:環境省 脱炭素ポータル『カーボンニュートラルとは - 脱炭素ポータル』

日本ではパリ協定の目標を達成するため、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを宣言しました。

(2)バイデン政権のパリ協定復帰

2020年11月3日、アメリカで行われた大統領選挙で民主党のバイデン候補が勝利し、2021年1月からバイデン政権がスタートしました。同年2月24日、アメリカはパリ協定に正式復帰。同年4月にアメリカで気候変動サミットを開催しました。

前任のトランプ大統領が環境問題に後ろ向きだったのに比べ、バイデン政権は積極的に脱炭素に向けて舵を切りました。

2050年までにカーボンニュートラルを表明した国

出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』

そして、2021年12月にバイデン政権はアメリカ連邦政府の運営を2050年までにカーボンニュートラルにすると発表しました。こうして、世界的に脱炭素の方向性が強化されていったのです。

出典:外務省『2020年以降の枠組み:パリ協定』

出典:資源エネルギー庁『今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~』

3. ZEV規制に対応した次世代自動車

ZEV規制は世界的な脱炭素の流れに沿ったものです。ZEV規制に対応した次世代自動車とはどのようなものなのでしょうか。

xEVの種類

出典:資源エネルギー庁『「電気自動車(EV)」だけじゃない?「xEV」で自動車の新時代を考える』

自動車の動力として電気を用いる車両を「xEV」といい、日本語では電動車と訳されます。電動車は電気だけで走行する電気自動車、電気とガソリンエンジンを併用するプラグイン・ハイブリッド車、原則、エンジンだけで走行するハイブリッド車、水素と酸素の反応で得た電気で走行する燃料電池車に分けられます。

このうち、ZEV規制をクリアしているのは電気自動車と燃料電池車のみで、エンジンを使用しているハイブリッド車やプラグイン・ハイブリッド車は規制をクリアできません。

今後、日本もZEV規制をクリアできる電気自動車・燃料電池車の開発やシェア拡大を求められるでしょう。

出典:資源エネルギー庁『「電気自動車(EV)」だけじゃない?「xEV」で自動車の新時代を考え』

4. ZEVに欠かせないレアメタル

日本でも本格的に次世代自動車の普及を図る動きがみられます。

日本と諸外国の電気自動車(EV)普及目標

出典:資源エネルギー庁『EV普及のカギをにぎるレアメタル』

日本では2030年までにEVやPHVの新車割合を20〜30%にするとの目標を立てました。しかし、イギリスやフランスはより厳しい目標である2040年までのガソリン・ディーゼル車販売終了を掲げています。

今後、二酸化炭素を排出しないZEVの開発・販売競争はさらに激しさを増すことが予想されます。ZEVの開発に欠かせないのがレアメタルです。

電気自動車に利用されるレアメタル

出典:資源エネルギー庁『xEVに必須のレアメタル「コバルト」の安定供給にオールジャパンで挑戦』

電気自動車の心臓部ともいえるバッテリー(リチウムイオン電池)にはリチウムやコバルト、ニッケル、グラファイトが使用されます。また、足回りを左右する駆動モーターにはジジムやジスプロシウムといったレアメタルが使用されます。

海外に依存するベースメタルやレアメタル

出典:資源エネルギー庁『世界の産業を支える鉱物資源について知ろう』

産業の中心ともいえるベースメタルはもとより、数多くのレアメタルを海外からの輸入に頼っています。また、希土類とよばれるレアアースも輸入に頼っていることから、ZEVの開発生産のためレアメタルの安定確保に努めなければなりません。

現在、備蓄の増加や供給先の多角化、海洋資源の開発、リサイクルなどを進めていますが今後もさらなる技術革新が必要でしょう。

出典:資源エネルギー庁『EV普及のカギをにぎるレアメタル』

5. ZEV規制への理解を深め、今度の日本・世界の動向に注意しよう

今回はZEVについてまとめました。電気自動車や燃料自動車については日本でも研究が進んでいますが、海外はより速いスピードで変化しています。

日本でも2050年のカーボンニュートラル達成のため各省庁が動き始めました。日本の基幹産業である自動車業界でもZEVの開発・販売が進むと予想されます。

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