ネットゼロとカーボンニュートラルの違いとは?関連用語を一挙に解説
- 2023年12月15日
- SDGs・ESG
世界が温室効果ガス削減のため大きく動く中、環境対策はすべての企業が将来の成長をかけて取り組まなければいけない課題です。
ZEB(ネットゼロエネルギービル)やZEH(ネットゼロエネルギーハウス)など、省エネや再エネ導入の場面で目にする「ネットゼロ」ですが、正確な意味は理解できていますか?環境問題でよく使われる「カーボンニュートラル」「カーボンオフセット」「カーボンネガティブ」との違いも合わせて確認しましょう。
目次
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ネットゼロとは?概要や関連用語を解説
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ネットゼロとカーボンニュートラル
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排出削減が難しい場合はカーボンオフセットを利用しよう
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カーボンニュートラルの一歩先?カーボンネガティブとは
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ネットゼロとカーボンニュートラルについてまとめ:環境関連の情報は常に新しいものが必要
1. ネットゼロとは?概要や関連用語を解説
ネットゼロの解説
ネットゼロとは「温室効果ガスの排出が正味ゼロ」という意味で、カーボンニュートラルや実質ゼロ(=温室効果ガス排出ゼロ)という言葉とほとんど同じ意味で使われます。
温室効果ガスにはCO2だけでなくメタンなど地球環境に影響を与える全ての排出ガスを含み、温室効果ガス排出量から森林などの吸収量などを差し引いて合計がゼロになる状態を指します。
出典:資源エネルギー庁『日本のエネルギーの今を知る10の質問』
ネットゼロを目指した建築「ZEB:ネットゼロエネルギービル」
1990年以降の経済成長に対して産業部門からのCO2排出量は2016年までに17%減少したにもかかわらず、業務部門からのCO2排出量は66%と大幅に増加してしまいました。このように業務部門は他部門に比べ増加が顕著であることから、省エネ・再エネの活用によるCO2削減が課題です。
ZEBとはネットゼロエネルギービル(Net Zero Energy Building)のことで、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間のエネルギー収支をゼロにすることを目指した建物を意味します。ZEHはネットゼロエネルギーハウス(Net Zero Energy House)で同様の住宅を指します。
出典:環境省『ZEBの定義』
出典:環境『ZEBとは?』
2. ネットゼロとカーボンニュートラル
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出量を森林などによる吸収量やCO2回収技術などによる回収量と差し引きでゼロにする」という意味で、ネットゼロと同じ意味で使われています。
資源エネルギー庁ではカーボンニュートラルを下記のように説明しており、ネットゼロとほぼ同等の意味の言葉として扱われています。
『排出を完全にゼロに抑えることは現実的に難しいため、排出せざるを得なかったぶんについては同じ量を「吸収」または「除去」することで、差し引きゼロ、正味ゼロ(ネットゼロ)を目指しましょう、ということです。これが、「カーボンニュートラル」の「ニュートラル(中立)」が意味するところです。』
引用:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?』
ネットゼロとカーボンニュートラルの違い
ネットゼロとカーボンニュートラルは厳密にはどう違うのでしょうか?英国のエネルギー気候変動省のカーボンニュートラルの定義についての文から見てみましょう。
『Carbon neutral means that – through a transparent process of calculating emissions, reducing those emissions and offsetting residual emissions – net carbon emissions equal zero.
カーボン・ニュートラルとは排出量の算定、削減、残りの排出量のオフセットのス テップを通じて、ネット排出量がゼロであること』
引用:環境省『カーボンオフセットの現状とカーボン・ニュートラル>英国政府:エネルギー・気候変動省』p.66
ネットゼロのnetとはここでは「正味」という意味で使われており、カーボンニュートラルが「CO2排出量(と吸収量)がいずれにも偏らない=CO2排出量がCO2吸収量と中立している」という状態を表すのに対し、ネットゼロは「(CO2排出量が)正味ゼロ=実質のCO2排出量がゼロ」という質量を表すことが分かります。
しかし最終的には同じことを指すため、厳密な使い分けに注意する必要はありません。海外と英語でビジネスをする企業は確認しておきましょう。
3. 排出削減が難しい場合はカーボンオフセットを利用しよう
カーボンオフセットとは
オフセット(offset)とは埋め合わせる・相殺するという意味で、カーボンオフセットは「自ら温室効果ガス排出をゼロにできない部分を別の温室効果ガス削減の活動に投資するなどして埋め合わせる」ことです。
「温室効果ガスの排出量を吸収量から差し引いてゼロにする」という状態を表すネットゼロやカーボンニュートラルと、排出を間接的に埋め合わせるカーボンオフセットは違った意味の言葉です。
日本でもJ-クレジット制度などでカーボンオフセットを推進し、CO2排出削減につなげています。J-クレジット制度とは省エネ設備の導入や再エネによるCO2排出量の削減、適切な森林管理によるCO2などの吸収量をクレジットとして国が認証する制度です。
4. カーボンニュートラルの一歩先?カーボンネガティブとは
カーボンネガティブとは
カーボンニュートラルを目指すために、特に大手企業がCO2排出量削減を力強くリードすべきだという考えから、アメリカの大手IT企業Microsoft(マイクロソフト)が広めたのがカーボンネガティブという言葉で、森林などによるCO2吸収量よりも排出するCO2が少ない状態を指します。
マイクロソフトは「世界がCO2排出量の実質ゼロを目指さなければならない中、より迅速かつ徹底的に動くことができる者はそうすべきだ」と述べ、2030年までにカーボンネガティブとなり、2050年までに1975年の創業以来の電力消費により排出してきたCO2の環境への影響を完全に排除することを宣言しました。
出典:日本経済新聞『マイクロソフト、2030年までにカーボンネガティブとなることを発表』
カーボンネガティブを目指す企業
海外ではマイクロソフトをはじめ、Apple(アップル)、MercedesBenz(メルセデスベンツ)など、日本では花王などがカーボンネガティブを宣言しています。
また、Unilever(ユニリーバ)などいくつかの企業は「ネガティブ」という言葉の印象に配慮して、同じ意味で「カーボンポジティブ」という言葉を使っています。
出典:Microsoft『2030 年までにカーボンネガティブを実現するという目標の進捗状況について』
出典:Apple『Apple、2030年までにサプライチェーンの 100%カーボンニュートラル達成を約束』
出典:unilever公式『自然エネルギーへの取り組み』
5. ネットゼロとカーボンニュートラルについてまとめ:環境関連の情報は常に新しいものが必要
2021年4月22日の気候サミットで参加各国が次々と2030年までのCO2削減目標の引き上げを発表する中、日本は2030年度に2013年度から46%削減を目指すこと、さらに50%の高みに挑戦を続けることを表明しました。
出典:資源エネルギー庁『2050年カーボンニュートラルを見据えた 2030年に向けたエネルギー政策の在り方』p.4
今後も増々ビジネスの現場において環境・CO2削減の知識は必要となります。環境関連の情報はこまめに新しいものを取り入れ、知らなくて損をしたり新規ビジネスの機会を逃さないようにしましょう。
温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」による世界のCO2濃度分布観測結果
大手企業がネットゼロを目指して巨額の投資に踏み切っているのは、地球の環境問題がそれほどまでに深刻であるのと同時に、いま全力で対処する以外の道がないゆえに抜本的な産業システムの変革をはじめ、世界を取り巻く様々な問題に世界が力を合わせて積極的に立ち向かうことで持続可能な新たな世界へと成長し、末永くビジネスを続けていくためです。
中小企業もすでにその流れの中にあることをしっかりと認識して、この急速な流れに取り残されないよう取り組み、将来の自社の成長を確かなものにしましょう。
出典:資源エネルギー庁『カーボンニュートラルに向けた産業政策“グリーン成長戦略”とは?』
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