温暖化の原因?GHG排出量に関する基礎知識を徹底解説
- 2023年12月15日
- 環境問題
世界に深刻な影響を与えている温暖化を食い止めるには、温室効果のあるGHG(温室効果ガス)排出量削減が重要な鍵を握っています。GHGに占める割合が大きいことから、GHG=二酸化炭素と認識されがちですが、実は二酸化炭素だけがGHGではありません。この記事では、企業から排出されるGHGに関する基本的な知識をご紹介します。GHGに関する理解を深め、企業でGHG排出量削減に向けた取り組みを始めましょう!
目次
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GHG(温室効果ガス)とは?
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GHG排出量で最も多い二酸化炭素
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二酸化炭素に次ぐGHG排出量メタン
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GHGの一酸化ニ窒素とは
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フロンガスもGHG
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まとめ:GHG排出量への理解を深め、温暖化を食い止めよう!
1. GHG(温室効果ガス)とは?
気候変動を引き起こす主な原因として、世界各国でGHG排出量削減に向けた取り組みが行われています。ここでは、GHGと温暖化の関係やGHG排出量割合などGHGに関する基本的な知識についてご紹介します。
GHGと温暖化の関係
GHGとは、Greenhouse Gasの略称であり、温室効果ガスと訳されています。人間の活動により排出される主なGHGは、二酸化炭素とメタン、一酸化二窒素、フロンガスです。GHG排出量が増えるとなぜ気温が上昇するのかについて、環境省は次のように説明しています。『太陽光により暖まった地表面は、赤外線として熱を宇宙空間に放射する。大気中に温室効果ガスがあるとそれが熱の一部を吸収し、地球温暖化につながる。』温室効果ガスには大気中にある熱を吸収する性質があるため、大気中の濃度が高いほど気温を上昇させます。
出典:気象庁『温室効果』とは
GHG排出量の割合
経済産業省によると、2019年度の日本におけるGHG排出量はCO2換算で12億1200万トンです。主なGHGの内訳は、以下のように公表されています。
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二酸化炭素:11億800万トン(91.4%)
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メタン:2840万トン(2.3%)
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一酸化二窒素:1980万トン(1.6%)
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ハイドロフルオロカーボン類(代替フロン):4700万トン(4.1%)
出典:環境省『2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について』(2021/4/16)(p.2)
2. GHG排出量で最も多い二酸化炭素
日本が排出するGHGの9割以上を占めているのが二酸化炭素です。二酸化炭素排出量を削減することは、温暖化を食い止めるために欠かせない取り組みです。ここでは、二酸化炭素が発生する原因や削減する方法、日本における二酸化炭素排出量の推移をご紹介します。
日本のGHG排出量で最も多い二酸化炭素排出量の推移
日本は2013年度をピークに二酸化炭素排出量が減少しており、2019年度は2013年度比で15.9%減少しています。前年度比では3.3%減少していますが、減少した背景には、省エネの取り組みや再生可能エネルギーの拡大などがあります。
2019年度における二酸化炭素排出量の内訳は以下のようになっています。
エネルギー起源10億2900万トン:内産業部門2億7900万トン、運輸部門1億9900万トン、業務その他部門6470万トン、家庭部門5340万トン、エネルギー転換部門4330万トン
非エネルギー起源792万トン:内工業プロセス及び製品の使用452万トン、廃棄物309万トン、その他31万トン
出典:環境省『2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について』(2021/4/16)(p.2)を元にアスエネが作成
GHG排出量で最も多い二酸化炭素が発生する主な原因と削減方法
二酸化炭素は、石炭・石油・LNG(天然ガス)の燃焼時に多く排出されます。再生可能エネルギーは、燃焼時においては二酸化炭素を排出しませんが、発電所が建設されてから廃棄まではライフサイクルを通して排出されます。
しかし化石燃料使用による二酸化炭素排出量と比較すると、少ない量です。再生可能エネルギーの使用割合を増やすことや、省エネに取り組むことで、企業は二酸化炭素排出量を削減することができます。
2019年度のIEA省エネレポートによると、自動車の省エネ性能の向上や製造プロセスの改善などにより、世界的に二酸化炭素排出量が大幅に削減しています。企業が省エネを実践する方法として、LEDや産業用ヒートポンプの導入などがあります。
出典:資源エネルギー庁『「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点』(2019/6/27)
出典:資源エネルギー庁『省エネルギー政策の進捗と今後の方向性-省エネから需要高度化への転換-』(2020/8/7)(p.9)
3. 二酸化炭素に次ぐGHG排出量メタン
メタンは、二酸化炭素に次ぐ排出量が多いGHGです。日本におけるメタンの排出量の推移や、メタンが発生する主な原因や削減方法などについてご紹介します。
日本の二酸化炭素に次ぐGHG排出量メタン排出量の推移
メタンが発生する要因は、湿地や水田、家畜、天然ガスの生産やバイオマス燃焼など様々です。メタンの温室効果作用は二酸化炭素の約25倍もあるため、二酸化炭素と比較して排出量が少なくても、削減に取り組む必要があります。
日本におけるメタン排出量は、1990年以降減少しており、以下のように推移しています。メタン排出量が減少している背景には、農業・家畜分野におけるメタン削減に向けた取り組みがあります。
出典:環境省『2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について』(2021/4/16)(p.2)を元にアスエネが作成
出典:経済産業省『温室効果ガス排出の現状等』(p.12)
出典:気象庁『メタン』
二酸化炭素に次ぐGHG排出量メタンが発生する主な原因と削減方法
日本における2019年度のGHG排出量は12億1200万トンで、メタンが占める割合は2.3%の2840万トンです。メタンを最も多く排出しているのは農業・家畜分野で、77%にあたる2190万トンです。
次に多いのが廃棄物の470万トンで、16%を占めています。燃料の燃焼で排出されるメタンの量は4%の110万トンです。日本は、農業・家畜分野におけるメタン排出量を削減するために、メタン発生の少ない稲や家畜の開発、農地・家畜の管理技術、メタン削減量を可視化するシステム開発などに取り組んでいます。
出典:環境省『2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について』(2021/4/16)(p.9)
出典:農林水産省『気候変動に対する農林水産省の取組』(2020/11/20)(p.7)
4. GHGの一酸化ニ窒素とは
海洋や土壌など自然界にも存在する一酸化二窒素は、大気中の寿命が121年と長く、温室効果が高いガスです。ここでは日本における一酸化二窒素排出量の推移や発生する主な原因、削減方法などについてご紹介します。
日本の一酸化ニ窒素排出量の推移
日本における一酸化二窒素排出量は減少傾向にありましたが、2018年度と2019年度は横ばいです。
出典:環境省『2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について』(2021/4/16)(p.2)を元にアスエネが作成
出典:経済産業省『温室効果ガス排出の現状等』(p.5)
一酸化二窒素が発生する主な原因と削減方法
一酸化二窒素は主に、海洋や土壌、窒素肥料、工業活動などから排出されます。2019年度における日本の一酸化二窒素排出量1980万トンの内、排出量が最も多いのは農業・家畜分野の47%で、燃料燃焼による28%、廃棄物の21%が続きます。
日本では一酸化二窒素の除去設備の設置や適切な土壌管理などによる取り組みにより、一酸化二窒素排出量の削減が行われています。
出典:環境省『一酸化二窒素に係る地球温暖化対策大綱に基づく取組の進捗状況の評価について』(p.6)
5. フロンガスもGHG
フルオロカーボンが一般的にフロンと呼ばれる物質です。フロンの1つである代替フロンのハイドロフルオロカーボンに、強い温室効果があります。ハイドロフルオロカーボンには塩素が含まれないためオゾン層を破壊しませんが、温室効果は二酸化炭素の数百倍~数万倍あります。
ここでは、日本におけるハイドロフルオロカーボン排出量の推移と発生する主な原因、削減方法などについてご紹介します。
日本のハイドロフルオロカーボン類排出量の推移
日本におけるハイドロフルオロカーボン排出量は、2005年以降増加しています。オゾン層を破壊する原因物質であるフロンガスの代わりに、ハイドロフルオロカーボンが冷媒分野で使用されるようになったためです。
出典:環境省『2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について』(2021/4/16)(p.2)を元にアスエネが作成
ハイドロフルオロカーボンが発生する主な原因と削減方法
2019年度における日本のハイドロフルオロカーボン排出量は4970万トンですが、冷媒分野が9割以上を占めています。今後はハイドロフルオロカーボンに代わるノンフロンガスの技術開発が求められます。
6. まとめ:GHG排出量への理解を深め、温暖化を食い止めよう!
GHG排出量削減の取り組みに関心のある法人の皆さまが知っておくべき、GHGに関する基礎知識をお伝えしました。GHGには二酸化炭素の他に、少量でも高い温室効果を持つメタンや一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン(代替フロン)があります。企業がどんなGHGを多く排出しているかを可視化し、削減に向けた取り組みを行いましょう!