温室効果ガスとは?概要や事例の理解を深め、削減に取り組もう!

大雨など世界に深刻な影響を与えている気候変動の原因は、人間の活動により大量に排出されている温室効果ガスです。

気候変動問題を解決するには、企業の温室効果ガス排出量削減への取り組みが欠かせません。この記事では、温室効果ガスに関する基本的な知識や、削減に関心のある法人の皆さまが知っておくべき情報についてご紹介します。

目次

  1. 温室効果ガスに関する基礎知識

  2. どのようにして温室効果ガスは排出されるのか?

  3. 温室効果ガス削減に向けた取り組み

  4. まとめ:温室効果ガスについての理解を深め、削減に取り組もう!

1. 温室効果ガスに関する基礎知識

日本は、2030年までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを目標として掲げており、多くの企業が温室効果ガスの9割以上を占めているCO2排出量削減に取り組んでいます。ここでは、温室効果ガスにはどのような種類があるのか、なぜ問題視されているのかなど、基本的な知識をご紹介します。

温室効果ガスとは?なぜ問題視される?

大気圏には、もともとCO2や水蒸気などの温室効果ガスが存在していて、地球の平均温度を14℃前後に保っています。もしも温室効果ガスがなければ、地球の平均温度はマイナス19℃程度になります。

このように温室効果ガスはなくてはならないものですが、現在問題視されているのは、人間の様々な活動により温室効果ガスが大量に排出されているためです。これにより温暖化が進行し、平均気温や海面水位の上昇、大雨災害など様々な気候変動問題が起きています。

気象庁によると、世界の年平均気温は、変動を繰り返しながら、100年あたり0.72℃の割合で上昇しています。気温の上昇が世界各地での山火事を加速させていることをBBCニュースが報じています。

出典:気象庁『世界の年平均気温』(2021/5/18)

出典:BBCニュース『カリフォルニアの山火事、「気候変動で加速」科学者が警告』(2020/9/25)

出典:環境省『温室効果のメカニズム』

主要な温室効果ガスの種類

「温室効果ガス=CO2」と捉えられていますが、この理由は温室効果ガス排出量の9割以上をCO2が占めているためです。

温室効果が高い温室効果ガスは、CO2とハイドロフルオロカーボン、メタン、一酸化二窒素です。

経済産業省によると、2019年度における日本の温室効果ガス排出量は12億1300万トンで、その内11億600万トンがCO2で、全体の91.2%を占めます。CO2は84.9%がエネルギー起源CO2で、6.3%が非エネルギー起源CO2に分けられています。

CO2に次いで排出量が多いのが、ハイドロフルオロカーボン類の5040万トンで、全体の4.2%を占めています。メタンは3000万トンで全体の2.5%、一酸化二窒素は2020万トンで1.7%を占めています。

出典:経済産業省『温室効果ガス排出の現状等』(p.12)

2. どのようにして温室効果ガスは排出されるのか?

温暖化を加速させている主な4種類の温室効果ガスは、どのようにして排出されるのか、ここではその原因についてご紹介します。

CO2が排出される原因

人間の活動により排出されるCO2は、大きくエネルギー起源CO2と非エネルギー起源CO2に分類されています。

エネルギー起源CO2は、化石燃料を燃焼させる時や供給された電気や熱を使用する時に排出されます。資源エネルギー庁によると、2018年度における日本のエネルギー起源CO2排出量は10.6億トンで、排出量が多い順に電力の4.5億トン、産業3.0億トン、運輸2.0億トン、家庭・第3次産業部門が1.1億トンです。

CO2の総排出量から燃料の燃焼や電力の消費に伴い発生するCO2を差し引いたものが、非エネルギー起源CO2です。2019年度における日本の非エネルギー起源CO2排出量は7700万トンで、工業プロセスからの排出量が59%を占めています。次に多いのが37%を占める廃棄物です。

出典:資源エネルギー庁『カーボンニュートラルって何ですか?(後編)~なぜ日本は実現を目指しているの?』(2021/3/16)

出典:環境省『エネルギー起源以外のCO2』(p.3)

出典:経済産業省『温室効果ガス排出の現状等』(p.18)

ハイドロフルオロカーボン類が排出される原因

ハイドロフルオロカーボンは、オゾン層を破壊する物質としてモントリオール議定書において削減対象とされた特定フロンに代わる物質として開発された代替フロンです。オゾン層は破壊しませんが、CO2より数百倍〜1万倍以上の強い温室効果を持っています。

2019年度の日本におけるハイドロフルオロカーボン類の排出量は5040万トンで、そのうち冷媒分野からの排出量が92%を占めています。

出典:経済産業省『温室効果ガス排出の現状等』(p.21)

出典:環境省『地球温暖化にも大きな効果が』

メタンが排出される原因

メタンは主に農業分野(稲作・家畜)から排出されます。メタンは、CO2の約25倍の温室効果を持っています。2019年度の日本におけるメタン排出量は3000万トンで、農業分野が78%を占めています。農業分野でメタン排出量が最も多いのは45%の稲作、次に25%の家畜の消化管内発酵、8%の家畜の排泄物管理です。

出典:経済産業省『温室効果ガス排出の現状等』(p.19)

出典:環境省『温室効果ガスインベントリの概要』

一酸化二窒素が排出される原因

一酸化二窒素の温室効果は、CO2の約298倍です。2019年度における日本の一酸化二窒素排出量は2020万トンで、最も多くを占めるのが農業で全体の47%です。次に多いのが29%の燃料の燃焼、20%の廃棄物です。

出典:経済産業省『温室効果ガス排出の現状等』(p.20)

出典:環境省『温室効果ガスインベントリの概要』

3. 温室効果ガス削減に向けた取り組み

2015年12月12日に採択されたパリ協定のもと、世界各国で温室効果ガス削減に向けた取り組みが本格化しています。ここではパリ協定の概要と世界各国が掲げる目標、日本の取り組みなどについてご紹介します。

パリ協定とは?

パリ協定は、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みです。先進国だけでなく参加国全てに温室効果ガス削減を求める枠組みであることから、世界各国で削減に向けた取り組みが本格化しています。パリ協定では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること」と「できるかぎり早く世界のGHG排出量をピークアウトし、21世紀後半には、GHG排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとること」を世界共通の長期目標として掲げられています。

出典:資源エネルギー庁『今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~』(2017/8/17)

世界が掲げる目標

パリ協定のもと世界各国がどのような温室効果ガス削減目標を掲げ、現在どのような状況にあるかをご紹介します。

(1)日本

2030年度までに温室効果ガスを2013年度比で26%削減することを目標に掲げています。日本におけるCO2排出量は、2013年度比で以下のように推移しています。

(2)イギリス

2030年度までに温室効果ガスを1990年度比で57%削減することを目標に掲げています。イギリスにおける2013年度のCO2排出量は5.7億トンで、緩やかに減少し、2019年度は4.5億トンです。2013年度比で−21.6%削減しています。

(3)アメリカ

2025年度までに温室効果ガスを2005年度比で26〜28%削減することを目標に掲げています。アメリカにおける2013年度のCO2排出量は67.7億トンで、2014年は68.3%に増加しています。その後は微妙に増減を繰り返し、2019年度のCO2排出量は2013年度比で−1.4%です。

(4)ドイツ

2030年度までに温室効果ガスを1990年度比で55%削減することを目標に掲げています。ドイツにおけるCO2排出量は以下のように推移しています。ドイツにおける2013年度のCO2排出量は9.4億トンで、2014年以降緩やかに減少しています。2019年度のCO2排出量は2013年度比で−14.5%です。

出典:資源エネルギー庁『「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み① 各国の進捗は、今どうなっているの?』(2019/5/14)

出典:2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について』(p.2)

出典:環境省『2019年度における地球温暖化対策計画の進捗状況』(2021/3)(p.7)

企業による取り組み

日本では企業や自治体を中心に、CO2削減に向けた取り組みが広がっています。企業による取り組みの事例をご紹介します。

(1)山田建設株式会社

山形県にある建設会社で、省エネやJクレジットなどによりCO2排出量実質ゼロを実現させています。山田建設株式会社は気候変動対策の短中長期目標として2021年までに2014年比で6%削減することを設定しています。

出典:山田建設株式会社『取り組みの概要』

(2)杜陵高速印刷株式会社

SDGsに取り組んでいる岩手県にある印刷業者で、RE Actionにも加盟しています。2020年を目標に印刷電力による二酸化炭素排出量ゼロを目指すことを宣言しています。

出典:杜陵高速印刷株式会社『SDGs(持続可能な開発目標)への取り組み』

(3)エコワークス株式会社

福岡・熊本にある木の家専門工務店・住宅メーカーです。ゼロエネルギーハウスなどにより家庭から排出されるCO2を大幅に削減しています。一般的な省エネ建築と比較すると、約116世帯分CO2排出量が少ないです。

出典:エコワークス株式会社『SDGsへ向けてエコワークスの取り組み』

4. まとめ:温室効果ガスについての理解を深め、削減に取り組もう!

温室効果ガスに関心のある法人の皆さまが知っておくべき基本的な知識についてご紹介しました。日本で排出されている温室効果ガスの9割以上をCO2排出量が占めています。

CO2排出量が少ない再生可能エネルギーを導入するなど、企業にできることが必ずあります。温室効果ガスについての理解を深め、温室効果ガス削減に取り組みましょう!

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