脱炭素の取り組みが企業価値に与えるメリットとは

2020年10月に政府が発表した「2050年には温室効果ガスをゼロにする脱炭素社会を実現する」によって企業の間で脱炭素に対する急務となっています。しかし実際にはどのような方法で脱炭素対策に取り組んでよいのか迷う企業も少なくありません。ここでは、脱炭素対策に取り組んでいる企業の事例と、企業価値を向上させるための方法について紹介します。

目次

  1. なぜ脱炭素対策が企業に求められているのか

  2. 脱炭素社会に向けた企業の取り組み

  3. 脱炭素社会で企業価値を高める方法はPDCAと情報開示

  4. 企業ならでは方法で、脱炭素対策に取り組んでみよう

1. なぜ脱炭素対策が企業に求められているのか

出典:Pixabay

現代の企業社会は、モノづくりを中心に、多くの石炭や石油などの炭素系を使用してきました。そのおかげで人々の暮らしも便利で豊かなものになってきました。

しかしその反面、大量の二酸化炭素(CO2)および大気汚染の原因となる物質を空気中に排出してしまい、公害病や地球温暖化を引き起こしてしまいました。

1962年、アメリカの生物学者レイチェル・カーソンが出版した著書「沈黙の春」を発表したのをきっかけに、世界中で脱炭素をはじめとする地球環境問題について考えるようになり、1997年京都で開かれた気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP13)で「京都議定書」が採択されると、CO2をはじめとする温室効果ガスの削減行動が義務化されるようになり、企業もその対策に動き出しました。

出典:世界史の窓「環境問題」

出典:レイチェル・カーソン日本協会「レイチェル・カーソン日本協会のあゆみ」

2. 脱炭素社会に向けた企業の取り組み

出典:Pixabay

製造業

モノづくりを生業とする製造業では、商品の製造時に多くのCO2が排出されます。そこで製造業では、CO2排出量削減に向けて、カーボンフットプリントやカーボンオフセットの取り組みが行われています。

「カーボンフットプリント」とは、企業と消費者の間で、商品の製造から流通、廃棄までの流れを表した製品ライフサイクルに、CO2排出量をプラスして計算したものをいいます。

しかし、商品を製造する過程でCO2排出量を削減する努力はしても、削減できない事例もあります。その場合、その量に見合ったCO2を、グリーンエネルギー事業などに投資するなどして、排出されるCO2を埋め合わせる考えがあります。これを「カーボンオフセット」といいます、

  • サッポロビール株式会社

大手ビール企業であるサッポロビール株式会社では、2008年8月に日本企業で初めてアルミ製のビール缶にカーボンフットプリントを表示させて販売しました。

カーボンフットプリントを表示させた商品を販売することで、商品が消費者に届くまでに費やしたCO2排出量を見える形で知らせていました。

現在ではカーボンフットプリントに代わって、カーボンオフセットを採用しており、消費者に向けて、さらにCO2排出量をラベル化で開示しています。

出典:サッポロ-ホールディングス株式会社「サッポロビールでの取り組み|環境保全」

運送業

人や物資を運ぶ運送業では、エコドライブ管理システム(EMS)の導入や、燃料電池自動車(FCV)など、主に省エネ対策を通してCO2削減に取り組んでいます。

  • JRグループ

大手鉄道会社であるJRでは、2020年10月に政府が発表したカーボンニュートラムル(2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロし、脱炭素社会の実現を目指す)を、政府より先に2020年5月メディアに向けて公表しました。

その内容は、企業グループ全体でCO2排出量を2030年までに現在より50%削減し、さらに2050年にはCO2排出量を事実上ゼロにするというものです。

出典:ITmediaビジネス「鉄道と脱炭素、JR東日本とJR西日本の取り組み」

  • トラック運送業界

運送業の代表でもあるトラック運送業界では、脱炭素化実現に向けて「新・環境基本行動計画」を2014年策定し、エコトライブの推進やアンドリンク・ストップの徹底、各地域を往来するための輸送の効率化、カーボンオフセットの活用などでCO2排出量削減に取り組み、さらに地域住民の生活環境を考慮して、騒音の低減にも取り組んでいます。

出典:全日本トラック協会「環境対策推進に係る啓発資料一覧」

3. 脱炭素対策で企業価値を高める方法はPDCAサイクルと情報開示

出典:Pixabay

「脱炭素社会に向けた企業の取り組み」で紹介した企業では、その取り組み結果を実績として自社ホームページやメディアなどで公開しています。

初めて脱炭素対策に取り組むときは、まず実績のある企業をインターネットなどで調べてみましょう。また取引先のなかで脱炭素対策を実施していたら、その方法をヒアリングしてみるのもひとつの情報収集です。

情報収集が終わったら、どのような方法で脱炭素対策をしていくかを計画を立て、それを実行します。そして脱炭素対策をして立てた計画が上手くいっているかをチェック・評価し、それが上手くいかなかった場合は、その改善点を考えます。

このPDCAサイクルを定期的に自社ホームページに公表すると、株主や投資家たちが「この会社は熱心に脱炭素対策しているし、環境へ配慮した経営をしている」と評価され、企業価値の向上に繋がっていきます。

このPDCAサイクルを使った脱炭素対策は、さまざまな業種で使われています。

出典:環境省「ISO14001」

4. 企業ならでは方法で、脱炭素対策に取り組んでみよう

2020年10月に政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」で、脱炭素対策が急務となった今では、企業の間でさまざまな脱炭素対策が行われています。

多くの企業で、カーボンフットプリントやエコドライブ管理システムの導入、カーボンオフセットなど、企業の事業内容に合った形で脱炭素に取り組み、そしてその結果を自社ホームページなどを通して公開しています。脱炭素対策の結果を取引企業や消費者に公開することで信頼度を上げ、さらには企業価値向上にも繋がっていきます。

企業の状況に合わせ、実現可能な脱炭素の取り組みは多種多様になっています。ぜひ一度周りの企業などから情報収集し、企業に合った方法を探してみましょう。

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