wbcsdとは?wbcsdがかかげる「ビジョン2050」の内容についても解説!

環境関連用語の一つに「wbcsd」というものがあります。wbcsd(World Business Council for Sustainable Development)は、日本語に訳すと「持続可能な開発のための世界経済人会議」となります。この組織はいったいどのような組織なのでしょうか。

今回はwbcsdとは何か、wbcsdが掲げる「ビジョン2050」の内容、ネットゼロエネルギーへの移行などについてまとめます。

目次

  1. wbcsdとは何か

  2. wbcsdが掲げる「ビジョン2050」とは

  3. wbcsdが目指すネットゼロエネルギーへの移行

  4. まとめ:中小企業もネットゼロエネルギーへの移行が必要

1. wbcsdとは何か

wbcsdとはどのような組織なのでしょうか。wbcsd誕生のいきさつやwbcsdの概要とこの組織が持つ影響力についてまとめます。

(1)wbcsdの誕生

wbcsdの前身となるbcsd(Business Council for Sustainable Development:持続可能な成長のための経済人会議)が1990年に作られました。

bcsdは1992年に開かれるリオデジャネイロでの地球サミットに向けて作られたものです。参加したのは27ヵ国48人の経済人でした。bcsdは世界各地で準備のための会合やシンポジウムなどを開催し、環境問題に取り組む企業活動を推進しました。

そして、1995年にWICE(World Industry Council for the Environment:環境のための世界産業会議)と統合し、wbcsdが発足しました。経済界の指導者が循環型社会を目指す動きを見せたという画期的な出来事でした。

(2)wbcsdの参加企業

2022年10月現在、wbcsdには世界各地の約200の企業が参加しています。参加している企業の割合は以下のとおりです。

ヨーロッパ

46%

北米

23%

アジア(日本を除く)

14%

日本

10%

ラテンアメリカ

3%

中東

2%

アフリカ

1%

オーストラリア

1%

出典:wbcsd『Our members

この中にはアマゾン、アップル、3Mなど日本でもなじみのある米国企業が名を連ね、トヨタや富士通、損保ジャパンといった日本企業も参加しています。

(3)wbcsdの活動内容

wbcsdの主な活動内容は以下の6点です。

  • 循環経済の構築

  • 持続可能な都市の形成

  • 気候とエネルギーに関する改革

  • 持続可能性と健康のための食料改革

  • ソーシャルインパクト

  • ビジネスの意思決定

資源を使い捨てにせず、再利用する循環経済(サーキュラエコノミー)の推進や都市内でどのように人や物が移動するのか(アーバンモビリティ)、気候変動にどう対処するのか、安定的に食料を供給するにはどうすればいいのかなど様々な課題を検討し活動しています。

出典:wbcsd『影響力 価値 声』(p.4)

2. wbcsdがかかげる「ビジョン2050」とは

wbcsdが掲げる「ビジョン2050」とはどのようなものなのでしょうか。目的や達成のための道筋などについて解説します。

(1)wbcsdについて「ビジョン2050」の目的

ビジョン2050はwbcsdが作成した2050年までの目標のことです。ビジョン2050年では2050年までに90億人の幸せな人生を限られた地球資源の枠内で実現することを目的としています。wbcsdが提唱するのは「人々が真に豊かに生きられる」社会です。主なポイントは以下の5つです。

  • 人々は自由で、平等の尊厳と権利がある

  • すべての人に健康と幸福がある

  • コミュニティは繁栄し、かつ結び付いている

  • 誰一人取り残さない

  • 人々は機会と志に満ちた世界にアクセスできる 

これらの目標は国連が掲げる「SDGs」の目標とも似ています。どちらとも、限られた資源で多くの人々が平等に生きることを理念としています。

出典:wbcsd『ビジョン2050 日本版』(p.16)

(2)wbcsdについて「ビジョン2050」に向けた大変革の道筋

「ビジョン2050」の実現のため、wbcsdは9つの変革の道筋を提示しています。提示している9つのテーマは以下のとおりです。

  • エネルギー

  • 交通・輸送とモビリティ

  • 生活空間

  • 製品と物質・材料

  • 金融商品・サービス

  • コネクティビティ

  • 健康とウェルビーイング

  • 水と衛星

  • 食料

これらのテーマは単独で存在しているのではなく、相互に複雑に絡み合っています。wbcsdでは、今後の10年間でこれらの問題に解決に道筋をつけることが緊急に必要であると考えているのです。

出典:wbcsd『ビジョン2050 日本版』(p.28)

3. wbcsdが目指すネットゼロへの移行

ネットゼロエネルギーという言葉をご存じでしょうか。今後の環境問題を占ううえでネットゼロという言葉は避けて通れません。wbcsdが目指しているネットゼロの意味やネットゼロへの移行についてまとめます。

(1)wbcsdが「ビジョン2050」で掲げるネットゼロとは

ネットゼロとは、大気中に排出されるCO2と吸収され大気中から除去されるCO2が等しくなる状態のことです。燃料や電気の使用によるCO2排出量だけではなく、流通や使用・廃棄の際に排出するCO2も計算に入れる基準のため、日本政府が掲げるカーボンニュートラルよりも厳しい基準となります。

(2)ネットゼロ移行に必要なこととは

ネットゼロに移行するために必要なことは何でしょうか。1つ目はゼロカーボン発電技術の導入による技術促進です。具体的には化石燃料への補助金の廃止や脱炭素エネルギーへの補助金、再生可能エネルギーの低価格化などがあげられます。

2つ目は重工業や輸送部門の脱炭素化です。現在、化石燃料由来のエネルギーで清算されている工業製品やガソリンなどによって稼働している大型輸送部門のエネルギー源をサステナブルな低炭素なエネルギー源に切り替える必要があります。

3つ目は全てのセクターでのエネルギー効率の向上です。電動化や電気消費量の見える化などの取り組みを通じ、省電力化を推進するとともに、循環型社会を実現することで資源の効率的な利用を図ります。

こうした先進的な取り組みによりネットゼロに移行することが重要だとwbcsdは提言しているのです。

出典:wbcsd『ビジョン2050 日本版』(p.32-34)

4. まとめ:wbcsdを理解しカーボンニュートラル達成に向けて取り組みを進めよう

今回はwbcsdとは何かと題して、wbcsdが掲げる「ビジョン2050」やその実現に必要とされるネットゼロについてまとめました。日本では2050年までにカーボンニュートラルを達成するとの目標を掲げ、その実現に向けて動き出しています。

これまでは大企業を中心に進められてきた脱炭素・カーボンニュートラルの動きは、中小企業に間違いなく及ぶでしょう。再生可能エネルギーの導入や電気自動車の使用など何らかの形でカーボンニュートラルへの協力が求められます。

となれば、世界的な潮流をしっかりと読み、wbcsdを理解したうえでカーボンニュートラル達成に向けて主体的に行動することが必要なのではないでしょうか。

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